)” の例文
はて、なんだ、とおもひながら、こゑけようとして、ひとしはぶきをすると、これはじめて心着こゝろづいたらしく、あらをんなかほげた。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
でたごとくにしたのであろうが手数のかることは論外であったろう万事がそんな調子だからとてもややこしくて見ていられない
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
門野かどの一寸ちよつと其様子をのぞきにたが、代助の平生を知つてゐるので、言葉も掛けず、椅子にけてある羽織丈をかゝへてて行つた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
單純たんじゆんなレウマチスせい頭痛づつうではあつたが、りよ平生へいぜいからすこ神經質しんけいしつであつたので、かりつけ醫者いしやくすりんでもなか/\なほらない。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
それから——遠目とおめにも愛くるしい顔に疑う余地のない頬笑ほほえみを浮かべた? が、それはのない一二秒の間の出来ごとである。
少年 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
それは、茶いろの少しぼろぼろの外套がいとうを着て、白いきれでつつんだ荷物を、二つに分けて肩にけた、赤髯あかひげのせなかのかがんだ人でした。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
しな硬着かうちやくした身體からだげて立膝たてひざにして棺桶くわんをけれられた。くびふたさはるのでほねくぢけるまでおさへつけられてすくみがけられた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
一寸法師は、目の前のぞうふくろのすそをめくりました。一しゃくほど象の鼻の先があらわれると、一寸法師はそれへ片手かたてけました。
曲馬団の「トッテンカン」 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
「心あひの風」はいわゆるけ言葉で、風を孤独の身の友と呼びかけたのであろうが、もうあの頃から発音は今と同じであった。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
けてゐる眼鏡めがねをはづして、蘿月らげつつくゑを離れて座敷ざしき真中まんなかすわり直つたが、たすきをとりながら這入はいつて来る妻のおたき来訪らいはうのおとよ
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
けてたびをしてある飴屋あめやさんは、何處どことほいところからかついでかたけて、ふえき/\出掛でかけました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
それは勿論もちろん、これは我々われわれだけのはなしだが、かれあま尊敬そんけいをすべき人格じんかくおとこではいが、じゅつけてはまたなかなかあなどられんとおもう。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
糟谷かすやは明治十五年ごろから、足け十二年のあいだ、下総種畜場しもうさしゅちくじょう技師ぎしであった。そのころ種畜場は農商務省のうしょうむしょう所管しょかんであった。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
返事へんじいから二けましたがそれでも返事へんじいからじゆくではどうなつたことかと非常ひじやう心配しんぱいして責任せきにんつたものは一ねむらなかつたくらゐ
女教邇言 (旧字旧仮名) / 津田梅子(著)
「板倉屋は雲南麝香うんなんじゃこうこうを持っているから、一二けん離れていても解るので、遠慮して誰も捕まえなかったと言うんだろう」
二人の刑事は、あんじょう大手柄を立てたことになった。そのよろこびのあまり、一旦不審ふしんけた私だったが、何事もなく離してくれたのだった。
疑問の金塊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
今は、汚れをいとうひまもなく、延べのきせるを投げ捨てて、ぎぬをつかんで、投げ捨てると、両手で、死骸の首を抱き上げるように——
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
此家うちでは賓客きやくかへつたあとと見えまして、主人あるじみせ片付かたづけさせて指図さしづいたしてりますところへ、おもてからこゑけますから、主
しかしながら遠地の諸氏は勿論、在京の諸氏すら小生の容態を御存じなき方多き故かへつて種々の御心配をけ候事と存候。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
「どなたですか」というと「このお方は法王の……」とちょっと言いけたから「黙れ、貴様馬鹿な事を言ってはいけないぞ」としかり付けた。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
むをず、まつ東面とうめんはうあなひらかうとして、草原くさはらけてると、其所そこけの小坑せうかうがある。先度せんど幻翁げんおう試掘しくつして、中止ちうししたところなのだ。
此順序は遺跡發見物中に存在するつくけの土噐を比較ひかうして明かに知るを得るなり。土噐の底面には網代の痕又は木の葉の痕を存するものあり。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
風呂場シャワルウム兼用けんようになっている、その部屋で、ぼくは冷っこい便器に、こしけると、封筒を裏返してみました。ただ、K生より、となっています。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
『あゝ、柳川やながはさん、わたくしは、貴方あなた此世このよ御目おめからうとは——。』とつたまゝ、そのうるはしきかほわたくし身邊しんぺん見廻みまはした。
いて伊香刀美いかとみかえってみますと、すぐうしろのまつの木のえだに、ついぞたこともないような、うつくしいしろ着物きものけてありました。
白い鳥 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
おつおとこだけは、だれもいないしまのこって、こうへい二人ふたりが、いさましいごえをしながら、わんからおきほうてゆくのを見送みおくっていたのであります。
幽霊船 (新字新仮名) / 小川未明(著)
略筮りゃくぜいを立てて算木をかえし、馬春堂はうしろへ忍びこんだうどんけが、あたら冷えることを頭の一部で惜しんでいる。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それから、イーダちゃんはお花たちをお人形のベッドに寝かせて、小さなけぶとんを、かけてやりました。そして
とソフアにけてたオックスフオード出身しゆつしん紳士しんしおこしていた。其口元そのくちもとにはなんとなく嘲笑あざけりいろうかべてる。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
種吉では話にならぬから素通りして路地のおくへ行き種吉の女房にょうぼうけ合うと、女房のおたつは種吉とは大分ちがって、借金取の動作に注意の目をくばった。
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
それではこの時代じだい繪畫かいがといふものはのこつてゐるかといひますと、もちろんふすま唐紙からかみき、じくにしたなどは、この時代じだいにはないばかりでなく
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
ベッドには、ちゃんとけぶとんがありますし、壁には、三人の騎士きしのかいてある、長いぬのもかかっています。
また誰かにもらって来たローマ旧教カトリックの僧の首にけ古された様な連珠れんじゅに十字架上のクリストの像の小さなブロンズのかかったのを肌へ着けたりして居ました。
自分じぶん好運かううん衰勢すゐせいにだらしなく感情かんじやう動亂どうらんさせるなどははなはだしばしばぼくのおかることだが、そして、ぼくいへどへてそれが全然無ぜんぜんないとははないが
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
おろしありしかば甚兵衞勝手はかねて覺え居れば今日こそ好機よきをりなれと裏口うらぐちまはり水口をおして見ればあんの如く掛錠かけがねけざる樣子故シテやつたりとついと入り居間ゐま箪笥たんす
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「そら! また見えた、橋桁はしげたに引っかかったよ。」と、欄杆に手をけて、自由に川中を俯瞰みおろし得る御用聴ごようききらしい小僧こぞうが、自分の形勝の位置をほこるかのように
死者を嗤う (新字新仮名) / 菊池寛(著)
すなは初期微動繼續時間しよきびどうけいぞくじかん秒數びようすうはちといふ係數けいすうけると、震原距離しんげんきよりおよそのあたひきろめーとるるのである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
清潔好きれいずきのお客のなかには気を悪くする向きもあつたが、近頃はうした事か、そんな物も余りかまはなくなつたばかしか、友達の顔を見ると、よくこんな事をいふ。
こしをだにくる所もなく、唯両脚を以てたいささへて蹲踞そんきよするのみ、躰上に毛氈もうせんと油紙とをかふれども何等なんらこうもなし、人夫にいたりては饅頭笠まんじうがさすでに初日の温泉塲をんせんばに於てやぶ
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
父の風琴は、おそろしく古風で、大きくて、肩にけられるべく、皮のベルトがついていた。
風琴と魚の町 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
紀昌の家にしのび入ろうとしたところ、へいに足をけた途端とたんに一道の殺気が森閑しんかんとした家の中からはしり出てまともにひたいを打ったので、覚えず外に顛落てんらくしたと白状した盗賊とうぞくもある。
名人伝 (新字新仮名) / 中島敦(著)
第三十四 鯛のしるけ飯 も大層たいそう結構なものですがそれは先ず鯛を丸のまま白焼しらやきにして肉と骨とを別々にします。その骨や頭を水から三時間ほど煮てスープを取っておきます。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
源三の方は道を歩いて来たためにちとあし草臥くたびれているからか、こしけるには少し高過ぎる椽の上へ無理に腰をせて、それがために地に届かない両脚をぶらぶらと動かしながら
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
ローザラインのほしのやうな眼附まみつき、あの高々たか/″\としたひたひ、あの眞紅まっくれなゐくちびる、あの可憐かはゆらしいあし、あの眞直まっすぐすね、あのぶる/\とふるへる太股ふともゝ乃至ないしその近邊ちかまにある處々ところ/″\けていのりまするぞ。
ハンドルが水牛の角のやうな形をし、ブレーキと荷けとチエーンのカバーがない。
坂道 (旧字旧仮名) / 新美南吉(著)
そして、両側の柱には四幅しふくの絵をけて、その中間になった所にも何かの神の像をえがいた物を掛けてあった。神像の下には香几こうづくえがあって、それには古銅の香炉こうろ花瓶かびんを乗せてあった。
蛇性の婬 :雷峰怪蹟 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「お前さん、大変困っているようだが、これを上げよう」と声をけました。で、怠け者のクシベシはひょいと顔を上げますと、目の前にいろいろな御馳走がにゅっと出ているのです。
蕗の下の神様 (新字新仮名) / 宇野浩二(著)
学生時代がくせいじだい石橋いしばしふ者は実に顔が広かつたし、かつぜん学習院がくしうゐんた事があるので、く売りました、第一だいいちかたちふものが余程よほど可笑をかしい、石橋いしばし鼻目鏡はなめがねけて今こそ流行はやるけれど
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
はござらぬ。銀之丞でござる。……ところで貴殿はどなたでござるな?」
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ときはあるもの飯田町いひだまち學校がくかうよりかへりがけ、日暮ひくまへ川岸かしづたひをさびしくれば、うしろより、ごゑいさましくけしくるまのぬしは令孃ひめなりけり、何處いづくかへりか高髷たかまげおとなしやかに
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)