)” の例文
ことしは芳之助よしのすけもはや廿歳はたちいま一兩年いちりやうねんたるうへおほやけつまとよびつまばるゝぞとおもへばうれしさにむねをどりて友達ともだちなぶりごともはづかしく
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ようやく、あちらに、かがやうみが、わらっているのが、にはいった時分じぶん、どこからか、自分じぶんたちをぶ、はとのこえがきこえてきました。
兄弟のやまばと (新字新仮名) / 小川未明(著)
たとへば、淡路あはぢ和泉いづみあひだうみは、古來こらい茅渟ちぬうみせうたつたのを、今日こんにちはこの名稱めいせうばないで和泉洋いづみなだまたは大阪灣おほさかわんせうしてゐる。
国語尊重 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
けら殿どのを、ほとけさんむし馬追蟲うまおひむしを、鳴聲なきごゑでスイチヨとぶ。鹽買蜻蛉しほがひとんぼ味噌買蜻蛉みそがひとんぼ考證かうしようおよばず、色合いろあひもつ子供衆こどもしう御存ごぞんじならん。
寸情風土記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
代助は此細君をつらまへて、かつて奥さんと云つた事がない。何時いつでも三千代みちよさん/\と、結婚しない前の通りに、本名ほんみようんでゐる。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
わたしはあんまりやりすぎると思ったから、ジョリクールをせた。けれどもかれはとても言うことを聞くどころではなかった。
先生せんせいわたしどもにをしへたから、先生せんせいかめ先生せんせいッてんだのさ』と海龜うみがめ腹立はらだゝしげにつて、『眞個ほんとうにおまへ鈍物どんだね!』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
「あたしゃみじかいから、どこへくにしても、とてもあるいちゃかれない。千きちつぁん、ぐに駕籠かごんでもらおうじゃないか」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
谷の向こうがわから森のところまでずっとつづいている、こんもりしたたけのみじかい林を、村の人たちは荒れ地とんでいたのです。
それは、いつも人をびあつめるこっけいな道化どうけたあいさつとは、まるっきりちがった調子ちょうしでした。見物人けんぶつにんたちはへんな気がしました。
活人形 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
あみつたたか竹竿たけざをには鳥籠とりかごかゝつてました。そのなかにはをとりつてありまして、小鳥ことりむれそらとほたびこゑびました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
『ぢや、エウゲニイ、フエオドロヰチでも此處こゝんでい、ちよつおれれツてつてるとへ……ちよつとでいからツて!』
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
「おとなでも僕をかわいがってくれるからです。僕がこの部屋にいるつもりで、夜なんか時々、『正三』ってんでみるそうです」
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
二つのを口にかざしながら、雲とも夕霧ゆうぎりともつかない白いものにボカされているてへ、声かぎりび歩いてきた。返辞へんじがない。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ボズさんの本名ほんみやう權十ごんじふとか五郎兵衞ろべゑとかいふのだらうけれど、この土地とちものだボズさんとび、本人ほんにん平氣へいき返事へんじをしてた。
都の友へ、B生より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
最後さいごったのはたしか四五月頃しごがつごろでしたか、新橋演舞場しんばしえんぶじょう廊下ろうかたれうしろからぼくぶのでふりかえっててもしばらたれだかわからなかった。
夏目先生と滝田さん (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
おかあさんはその夕方ゆうがたひいさんをそっとまくらもとせて、やせおとろえた手で、ひいさんのふさふさしたかみをさすりながら
鉢かつぎ (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
そう云う、熱いもの、乾かそうとするもの、光るもの、照らそうとするもの軽いもの騰ろうとするものそれを焔とぶのだから仕方ない。
りよ小女こをんなんで、汲立くみたてみづはちれていとめいじた。みづた。そうはそれをつて、むねさゝげて、ぢつとりよ見詰みつめた。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
そこから着目ちゃくもくしてある程度ていど内偵ないていすすめて、その容疑者ようぎしゃを、べつべつに任意出頭にんいしゅっとうかたち警察けいさつし、井口警部いぐちけいぶ直接ちょくせつ訊問じんもんしてみた。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
すすむこと一里半にしてきふ暖気だんきかんず、俯視ふしすれば磧礫間温泉おんせんありて数ヶ所にづ、衆皆くわいぶ、此処はあざはな或は清水沢しみづさはと称し
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
紳士は手ずから瓦斯ガスストーブに火をつけて電気をひねった。その前の椅子に徳市を坐らせて差し向いになった。机の上のりんを押した。
黒白ストーリー (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
しかし尾羽張神は、天安河の水をせきあげて、道を通れないようにしておりますから、めったな神では、ちょっとびにもまいれません。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
わたくし内心ないしん不服ふふくでたまりませんでしたが、もともと良人おっと見立みたててくれたうまではあるし、とうとう『若月わかつき』とぶことになってしまいました。
マーキュ うんうん引掻ひっかかれた/\。はて、これで十ぶんぢゃ。侍童こやっこめは何處どこにをる? 小奴やっこ、はよって下科醫者げくわいしゃんでい。
これを竪穴式石室たてあなしきせきしつんでゐるひとがありますが、じついし部屋へやといふほどのものではなく、たゞ簡單かんたんいしかこひにすぎないのであります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
検疫船けんえきせん検疫医けんえきいむ。一とう船客せんかくどう大食堂だいしよくだうあつめられて、事務長じむちやうへんところにアクセントをつけて船客せんかくげる。
検疫と荷物検査 (新字旧仮名) / 杉村楚人冠(著)
そのほかに、懐中電灯が六個、登山ようのピッケルが三本、そして、みんなが、おべんとうと、水筒と、の笛を持っているのでした。
探偵少年 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
数かぎりない因子たちをまし、それを通じてそれらの因子を共有する他の無数の現実断片に交感し呼応するものでなければならない。
チェーホフの短篇に就いて (新字新仮名) / 神西清(著)
じつくもつかむやうなはなしだが、まんが一もと旅亭やどや主人しゆじんんでいてると、果然くわぜん! 主人しゆじんわたくしとひみなまではせず、ポンと禿頭はげあたまたゝいて
ゆかにポッカリといた穴に身体を入れて見えなくなったと思うと、それから間もなく、ワッという悲鳴と共に、一同をぶ声が聞えてきた。
月世界探険記 (新字新仮名) / 海野十三(著)
さういふかたわの年輪ねんりんのことを『擬年輪ぎねんりん』とびます。これはその生長年數せいちようねんすうかぞへるときはのぞいてかぞへなければなりません。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
「いいか、朝食ちょうしょくを二人まえ用意よういして、ここまでもってきなさい。そしてわしがぶまで、二かいへかってにくることはならんよ。わかったな」
けんにて住居ぢうきよなし此近邊このきんぺん大身代おほしんだいなり主は入聟いりむこにてしやう三郎と云今年ことし六十さいつまは此家のむすめにて名をおつねび四十さいなれども生得しやうとく派手はでなる事を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
坊さんの足音にしては、すこしへんだと思いながら、耳をかたむけていると、とつぜん、ふとい声で、ちょうど武士ぶしが、けらいをぶように
壇ノ浦の鬼火 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
「えいくそッ、びっくりした。おかしらなどとぶんじゃねえ、さかなあたまのようにこえるじゃねえか。ただかしらといえ。」
花のき村と盗人たち (新字新仮名) / 新美南吉(著)
ラランのやつにだまされたとづいても、可哀かあいさうなペンペはそのえぐられた両方りやうほうからしたたらすばかりだつた。もうラランのばない。
火を喰つた鴉 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)
駭然がいぜんとして夢かうつつ狐子こしへんせらるるなからむやと思えども、なお勇気をふるいてすすむに、答えし男急にびとめて、いずかたへ行くやと云う。
突貫紀行 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
それからむすめだの、子供こどもたちだの、職人しょくにんだの、小僧こぞうだの、女中じょちゅうだのをびましたので、みんな往来おうらいて、とりながめました。
この火山かざん噴出時ふんしゆつじける閃光せんこうとほ百海里ひやくかいりらすので、そこでストロムボリが地中海ちちゆうかい燈臺とうだいばれる所以ゆえんである。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
そこでその大神が出て見て、「これはアシハラシコヲの命だ」とおつしやつて、び入れて蛇のいるむろに寢させました。
そのおおかみの群れの王と見られるのは、土地の人々からロボとばれる、まことに悪がしこく獰猛どうもうなやつであった。
お政はきゅうにやとい女をんで灯明とうみょうめいじ、自分はちゃ用意よういにかかった。しとしとと雨はる、雨落あまおちの音が、ぽちゃりぽちゃりとちはじめた。
告げ人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
百石ひやくこくでも別當べつたうはこの土地とち領主りやうしゆで、御前ごぜんばれてゐた。した代官だいくわんがあつて、領所りやうしよ三ヶそん政治せいぢつてゐた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
浦中と黙々は復讐戦ふくしゅうせんをやる、そのつぎには決勝をやる、復讐のまた復讐戦をやるという風にこの町のものになった。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
それからはこのやま不死ふしやまぶようになつて、そのくすりけむりはいまでもくもなかのぼるといふことであります。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
ペール・オーラも、まもなくトーケルンにのりだして、大すきなヤッローの名まえをしきりにびまわりました。
はがらず迷信家めいしんか信仰心しんこうしん喚起よびおこし、あるひまた山師輩やましはいじやうずるところとなつて、たちまちのうち評判ひやうばん大評判おほひやうばん『お穴樣あなさま』とび『岩窟神社がんくつじんじや』ととなへ、參詣人さんけいにんきもらず。
さりながら人気じんき奴隷どれいとなるも畢竟ひつきやう俗物ぞくぶつ済度さいどといふ殊勝しゆしようらしきおくがあればあなが無用むようばゝるにあらず、かへつ中々なか/\大事だいじけつして等閑なほざりにしがたし。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
早川はやかわさんが、早く往ってうで来いと云うたよ、早川さん、歯の脱けた口をばくばくやって、周章あわてちょる」
海神に祈る (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)