)” の例文
ゆきがふるとられなくなるから、ちょっと、となりむらまでようたしにいってくる。」と、父親ちちおやは、じたくをしながら、いいました。
ペスときょうだい (新字新仮名) / 小川未明(著)
が、道行みちゆきにしろ、喧嘩けんくわにしろ、ところが、げるにもしのんでるにも、背後うしろに、むらさと松並木まつなみきなはていへるのではない。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
居室へやかへつてると、ちやんと整頓かたづいる。とき書物しよもつやら反古ほごやら亂雜らんざつきはまつてたのが、もの各々おの/\ところしづかにぼくまつる。
都の友へ、B生より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
爺さんはこんな事を云つて、頻りに女を慰めて居た。やがて汽車がとまつたら、では御大事にと、女に挨拶をして元気よくて行つた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ところがうまいことはいきなり私どもははぎぼだしにはしました。そこはたしかに去年の処ではなかったのです。ですから私は
(新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
元気げんきこえをのこして、ていきました。おじいさんとおばあさんは、もんそとって、いつまでも、いつまでも見送みおくっていました。
桃太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
られる都合つがふならばまたいままでのやうにお世話せわりにまする、るべくは鳥渡ちよつとたちかへりにぐも出京しゆつけうしたきものとかるくいへば
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ちりの身体付の何処となく暖かく重いような具合やら、これに対すると何となく芸者らしくない濃厚と自由の気味合を感じるのが
夏すがた (新字新仮名) / 永井荷風(著)
道翹だうげうこたへた。「豐干ぶかんおつしやいますか。それは先頃さきころまで、本堂ほんだう背後うしろ僧院そうゐんにをられましたが、行脚あんぎやられたきりかへられませぬ。」
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
りつする山と山の間の、土質の悪い畑地の中を緩やかにうねつて東に向つてゐた。日はもう高くのぼつて、路傍の草の葉も乾いた。
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)
義男はその爲に毎日出て行くある群れの塲所にゐても絶へず苦笑を浮べてゐなければならない樣な、にがい刺戟にくわすのであつた。
木乃伊の口紅 (旧字旧仮名) / 田村俊子(著)
「洗濯物取りにりゃあの雷だね、わたしゃ薪小屋まきごやに逃げ込んだきり、出よう/\と思ったけンど、如何しても出られなかったゞよ」
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
たとへば越中えつちゆう氷見ひみ大洞穴だいどうけつなかには、いまちひさいやしろまつられてありますが、そのあななかから石器時代せつきじだい遺物いぶつがたくさんにました。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
みなまた少時しばしもくしてしまふ。其中そのうちちやる。ドクトル、ハヾトフはみなとの一ぱんはなしうちも、院長ゐんちやうことば注意ちゆういをしていてゐたが突然だしぬけに。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
ところで、たけなかからは、そだかたがよかつたとえて、ずん/\おほきくなつて、三月みつきばかりたつうちに一人前いちにんまへひとになりました。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
桟橋さんばしると、がらんとした大桟橋だいさんばし上屋うはやしたに、三つ四つ卓子テーブルならべて、税関ぜいくわん役人やくにん蝋燭らふそくひかり手荷物てにもつ検査けんさをしてる。
検疫と荷物検査 (新字旧仮名) / 杉村楚人冠(著)
貝層かひそうきはめてあさいが、其下そのした燒土やけつちそうつて、其中そのなかすくなからず破片はへんがある。幻翁げんおうげんると、香爐形こうろがたさう同一どういつだといふ。
また日本にほん小説せうせつによくあらはれる魔法遣まはふづかひが、不思議ふしぎげいえんずるのはおほくは、一はん佛教ぶつけうから一はん道教だうけう仙術せんじゆつからたものとおもはれる。
妖怪研究 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
けれども鼻唄はなうたまじりに頂上てうじやう目指めざしてるラランも、ひとりぼつちになると、やつとつかれがてきた。鼻唄はなうたもくしゃみになつてしまつた。
火を喰つた鴉 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)
あいちやんは一ぱうした、一ぱううへと一まいごとしらべてから、その眞中まんなかつてました、どうしたらふたゝられるだらうかとあやしみながら。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
そして五人はかけました。一れつになって規則正きそくただしく進んで行きます。これくらいきちんとして出かければ、もうぶんはありません。
母の話 (新字新仮名) / アナトール・フランス(著)
すぐをつとそばから松葉まつばひろげてあななかをつついた。と、はちはあわててあなからたが、たちま松葉まつばむかつて威嚇的ゐかくてき素振そぶりせた。
画家とセリセリス (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
てんにでもいゝ、にでもいゝ、すがらうとするこゝろいのらうとするねがひが、不純ふじゆんすなとほしてきよくとろ/\と彼女かのぢよむねながた。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
そこで天皇てんのう大勢おほぜい家來けらいたちをおつれになりそのながい/\丸木橋まるきばしうへをおわたりになつたといふことが、日本書紀につぽんしよきといふほんてゐます。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
幾月いくつきかをすごうちに、てき監視みはりもだんだんうすらぎましたので、わたくし三崎みさきみなとからとおくもない、諸磯もろいそもう漁村ぎょそんほうてまいりましたが
そうって、扉口とぐち拍子ひょうしに、ドシーン! ととり石臼いしうすあたまうえおとしたので、おかあさんはぺしゃんこにつぶれてしまいました。
かごなかには、青々あを/\としたふきつぼみが一ぱいはひつてました。そのおばあさんは、まるでお伽話とぎばなしなかにでもさうなおばあさんでした。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
ぼくも臆面おくめんなく——かにかくにオリムピックのおもとなりにし人と土地のことかな、——と書きなぐり、中村嬢にわたしておきました。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
サア、みな水兵ものどもた/\、大佐閣下たいさかくかのおかへりだよ、それに、めづらしい賓人おきやくさんと、可愛かあいらしい少年せうねんとが御坐ござつた、はや御挨拶ごあいさつまうせ/\。
と対馬がそこのとばりを上げたのとあいがしらに、やあと、いう者があった。清水谷に陣している佐久間勝政の部下今井角次かくじなのである。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
昭和二年しようわにねん大噴火だいふんかをなしたときも噴火口ふんかこうからなが鎔岩ようがんが、あだか溪水たにみづながれのように一瀉千里いつしやせんりいきほひもつくだつたのである。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
なかにはえだこしかけて、うえから水草みずくさのぞくのもありました。猟銃りょうじゅうからあおけむりは、くらいうえくもようちのぼりました。
師父ブラウンは今やわずかに日の輝いた芝生の上に踊りしたい歓びを押えかねる様な顔付をした。彼は気の毒そうに子供の様に叫んだ。
それが次第しだいすゝんで、旅行中りよこうちゆううたにはほんとうに自然しぜんみこなした立派りつぱなものが、萬葉集まんようしゆうになると、だん/\てゐます。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
もしってみずなかったら、どこにでもおまえさんのきなところにらしてあげよう。あのへんは、みな、わしの土地とちだから。
牛をつないだ椿の木 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
著者ポール氏自らかの孤児院に往きてその一人を延見ひきみしに普通の白痴児の容体で額低く歯やや動作軽噪時々歯を鳴らし下顎ひきつる
そしてその窓にりかかって、いましがたどちらの目からにじたのかも分らない熱いものが私の頬を伝うがままにさせながら
風立ちぬ (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
「おい、どうしたんだい」と、その周圍まはりあつまりました。「またか。晝稼ひるかせぎになんかにるからさ。しつかりしろ、しつかりしろ」
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
「そのとおり。——おかみさん。太夫たゆう人気にんきたいしたもんでげすぜ。これからァ、んにもこわいこたァねえ、いきおいでげさァ」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
その證據しようこには、婦人雜誌ふじんざつし女學校ぢよがくかう校長かうちやうせつなどをむと、色々いろ/\ほん名前なまへげてゐても、ことごとくもつともらしい出鱈目でたらめである。
読書の態度 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
とも二人ふたりでブラリといへた。もとより何處どこかうといふ、あてもないのだが、はなしにもきがたので、所在なさに散歩さんぽ出掛でかけたのであツた。
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
いや勿論もちろん、これには御主おんあるじ擁護おうごもあらうて。自分じぶんふことは、兎角とかく出放題ではうだいになる、胸一杯むねいつぱいよろこびがあるので、いつもくちからまかせを饒舌しやべる。
「なに、向うの室へ、船長がこいというのか。なかなか無礼なことをいうね。用があれば、そっちがここへいといえ」
火薬船 (新字新仮名) / 海野十三(著)
それがこの自分じぶんでもひどいやであつたが、冬至とうじるから蒟蒻こんにやく仕入しいれをしなくちやらないといつて無理むりたのであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
宜しゅう御座います、証拠と申す程のものでも御座いませんが、私の申すことは、決してたらでないという所だけをお目にかけましょう。
悪人の娘 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
シューラはやぶれたシャツをて、学校がっこうかけなければならなくなる——そうしたら、シャツはばんまでには、どんなになるかわかりゃしない!
身体検査 (新字新仮名) / フョードル・ソログープ(著)
はいりの時に生徒でいっぱいになる下駄箱のあたりも今はしんとして、広場には白斑しろぶちの犬がのそのそと餌をあさっていた。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
フト何処どこかの隅っこで飛んでもない事柄にくわすような気がした。何かしら素晴しいものが発見できそうにも思われた。
一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
議場ぎぜう政治家せいちかでも、両国れうこく土俵とへう力士りきしでも、伝統的でんとうてきなものがほろびて、段々だん/\小粒こつぶになつてるのにも不思議ふしぎはない。
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
「ちがうでしよう。女中じょちゅうから板前いたまえまで調しらべてある。夕方ゆうがたかけて、十二ごろ、タクシーでかえつたことがわかつている」
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)