はなし)” の例文
ほんとうに、毎日まいにちはたらいても、つまらないはなしだ。大金持おおがねもちになれはしないし、また、これという安楽あんらくもされない。ばかばかしいことだ。
天下一品 (新字新仮名) / 小川未明(著)
久保田氏を評する時により多く面白い證明のよすがとなる可きはなしで、作品としては可も無く不可も無い、極めて平凡なものだと思ふ。
それにくはへてをとこ周旋業しうせんげふも一かううまくはかないところから、一年後ねんごには夫婦別ふうふわかれとはなしがきまり、をとこはゝいもうととをれて関西くわんさいく。
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
まへ講釈かうしやくのと読較よみくらべると、按摩あんまのちさむらひ取立とりたてられたとはなしより、此天狗このてんぐ化物ばけものらしいはうが、かへつて事実じゝつえるのが面白おもしろい。
怪力 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
このはなし但馬守たじまのかみが、與力よりきからいて、一そう玄竹げんちくきになつたのであつた。それからもうひとつ、玄竹げんちく但馬守たじまのかみよろこばせた逸話いつわがある。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
しかこれきたはなしとか、交際かうさいとかとふものとはまたべつで、あま適切てきせつれいではりませんが、たとへば書物しよもつはノタで、談話だんわ唱歌しやうかでせう。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
野生やせいけものだけでも、二百六十八種にひやくろくじゆうはつしゆうしうまそのほか家畜かちく動物どうぶつ十六種じゆうろくしゆもゐますが、こゝではやま動物どうぶつについてすこしくおはなししませう。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
ちゝと高木とが第一にはなしを始めた。梅子はおもに佐川の令嬢の相手になつた。そこへあに今朝けさの通りの服装なりで、のつそりと這入つてた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
和尚おしょうさま、きますとゆうべねずみがこちらへがって、わたくしどもの悪口わるくちもうしたそうですね。どうもけしからんはなしでございます。
猫の草紙 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
大久保おほくぼ出発しゆつぱつしてからもなく、彼女かのぢよがまたやつてた。そのかほつてあかるくなつてゐた。はなしまへよりははき/\してゐた。
彼女の周囲 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
とうさんもたこあげたり、たこはなしいたりして、面白おもしろあそびました。自分じぶんつくつたたこがそんなによくあがつたのをるのもたのしみでした。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
さてはなしまへもど古墳こふんなかには、どういふものがうづめられてゐるかとまをしますと、石棺せきかんあるひは石室せきしつなか死體したいをさめてあつたところ
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
「よくくおまえはなしでは、千きちとやらいうにいさんは、まる三ねん行方ゆくえれずになっていたとか。——それがまた、どうしてきゅうに。——」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
よく「おもしろくて、ためになるほん」と、いうことが、いわれますが、一休いっきゅうさんのはなしなどは、その代表的だいひょうてきなもののひとつだろうとおもいます。
先生と父兄の皆さまへ (新字新仮名) / 五十公野清一(著)
かねのどこかに、その鐘師かねしりつけてあるそうな、とばあさんはいった。これは木之助きのすけじいさんのはなしよりよほどほんとうらしい。
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
A 仕樣しやうがないなア。ぢや説明せつめいしてやる。よく寄席よせ落語家らくごかがやるぢやないか。横丁よこちやう隱居いんきよくまさん八さんに發句ほつくをしへるはなしだ。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
島本しまもとはなしでは、ぼたんのはちつてきたのが、事件発見じけんはっけんのあの日、つまり五がつからいうと、一昨日おとといだといつたんじやないでしようか。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
そのことをおはなしするのには、いま一人ひとり赤人あかひと先輩せんぱいとも、先生せんせいともいはなければならない、柿本人麿かきのもとのひとまろのことをまをさねばなりません。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
あらたまつてのはなしとは何事なにごとだらうと、わたくしにわかにかたちあらためると、大佐たいさ吸殘すひのこりの葉卷はまきをば、まど彼方かなたげやりて、しづかにくちひらいた。
が、しばらくすると中根なかねはなしにもきがた。そして、三十ぷんたないうちにまた兵士達へいしたち歩調ほてうみだれてた。ゐねむりがはじまつた。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
うしてあいちやんは自問自答じもんじたふつゞけてましたが、しばらくしてそとはうなにこゑがするのをきつけ、はなしめてみゝそばだてました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
もうして、このはなしはぶいてしまえばわたくし幽界生活ゆうかいせいかつ記録きろくおおきなあなくことになって筋道すじみちたなくなるおそれがございます。
諭吉ゆきちは、自分じぶんのむすめが、しょうじをやぶるのをながめながら、おくさんと、こんなはなしをかわしながら、よろこんでいました。
とも二人ふたりでブラリといへた。もとより何處どこかうといふ、あてもないのだが、はなしにもきがたので、所在なさに散歩さんぽ出掛でかけたのであツた。
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
振分ふりわけにして、比較的ひかくてきかるさうなのをかついでると、おもいのおもくないのと、おはなしにならぬ。肩骨かたぼねはメリ/\ひゞくのである。
というのは、いのきちが、よしむらさんにほしはなしをせがむより、いつも、よしむらさんがいのきちに、山のはなしや、みずうみはなしをさきにききだした。
ラクダイ横町 (新字新仮名) / 岡本良雄(著)
巻中の画、老人が稿本かうほん艸画さうぐわしんにし、あるひは京水が越地にうつし真景しんけい、或里人さとびとはなしきゝに作りたるもあり、其地にてらしてあやまりせむることなかれ。
そんなはなし最中さいちうにサァーツとおとをたてゝうるしのやうにくらそらはうから、直逆まつさかさまにこれはまた一からすがパチパチえてる篝火かがりびなかちてきた。
火を喰つた鴉 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)
他国にてもする事なり。或人あるひとはなしに、此事百余年前までは江戸にもありしが、火災くわさいをはゞかるためにきんくだりてやみたりとぞ。
さうしてると、唐書たうしよ列傳れつでんてゐるはずだとふのである。しかしりよがゐなくてははなしたぬから、かくもゐたことにしてくのである。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
パリス かういふ愁傷なげき最中さなかには祝言しうげんはなし出來できまい。おうちかた、おさらばでござる。娘御むすめごによろしうつたへてくだされ。
うかゞはするに茲は召仕めしつかひ丁稚でつち和吉糊賣のりうりお金のもとへ至り委細ゐさいきくより大きに驚きすぐ立歸りて管伴ばんたう如此しか/″\の由はなしたりしに忠兵衞もまた驚嘆きやうたんし此事主個あるじ夫婦を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
これから、その母のはなしというのを一つ二つ紹介しょうかいするが、僕は出来できるだけ彼女の話しっりをそのままつたえることにしよう。これがまた素敵すてきなのである。
母の話 (新字新仮名) / アナトール・フランス(著)
みぎはなしすゝめるについて必要ひつようなのは津浪つなみ概念がいねんである。津浪つなみ海嘯かいしようなる文字もんじがよくあててあるがこれは適當てきとうでない。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
「あんたかって、めったにそんなはなししに来たんと違いますやろ? さあ、用件の方聞かして頂戴。」「あて、姉ちゃんにそないいわれたら、……」と
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
『其の教師のはなしは面白いな。然し劍持の分類はまだ足らん。』最初高橋の噂を持ち出した安井といふのが言つた。
我等の一団と彼 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
拙郎やつがれ皆目かいもくるはずなけれど、一昨年をとゞし病亡なくなりしぢやうさまの乳母うばが、常日頃つねひごろあそびにてのはなしなりといふ、おとしは十九なれどまだまだ十六七としかえず
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
それがどうも盜人ぬすびと言葉ことばに、つてゐるやうにえるではないか? おれはねたましさに身悶みもだえをした。が、盜人ぬすびとはそれからそれへと、巧妙かうめうはなしすすめてゐる。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
きぬはなして、おきぬ愈々いよ/\小田原をだはらよめにゆくことにまつた一でうかされたときぼく心持こゝろもちぼく運命うんめいさだまつたやうで、今更いまさらなんともへぬ不快ふくわいでならなかつた。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
このことがみかどのおみゝたつしましたので、お使つかひをくだされてお見舞みまひがありました。おきな委細いさいをおはなしして
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
安藤ははなしの口があくと、まず自分が一年まえにったときと、きょう会った花前はよほどわっている。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
想像した千世子は今その事について考えなければならないほどにまではなしに深入するのをいやがった。
千世子(二) (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
ここに至りてようやく其者流に移る者多し。およそ儒者に漢土のことを談ずるときは意をそそいでき、商估しょうこに利得のことをはなしするときは耳をそばだてて聴く。農や工や皆しかり。
平仮名の説 (新字新仮名) / 清水卯三郎(著)
一通りの挨拶があって、値段のはなしになったが、今度はポーニン氏の腰は、すこぶる妥協的であって、ほとんど極東セメント商会の言い値でもって、はなしがまとまった。
火薬船 (新字新仮名) / 海野十三(著)
其時そのときむらうち一人ひとり老人としよりがありまして、其塲そのばけてまいり、おあしんだとはなしきいたがついては、わたくし實驗じつけんがあるから、れをば何卒どうぞツてれ、其法そのはうまうすは
いままで、ごろごろとのんきにころがつてつみのない世間話せけんばなしをしてゐたうりが、一せいにぴたりとそのはなしをやめて、いきころしました。みんな、そしてねむつた眞擬ふりをしてゐました。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
「そうですか……ではおはなししますが、奥さん、びっくりしてはいけません。お嬢さんは何者かに殺されなすったのです。こちらのはその死骸の片手から取った指紋なのです」
一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
三人は声をあわせてわらいころげた。いつまでたっても、かれらのはなしはつきそうもなかった。
「ご挨拶ね、あの方、あたい達が入って来ると、すぐ後からいらしった方よ、あたいの顔ばかり見ていて、おはなししかけるみたいように、にこにこしていらっしゃるじゃないの。」
蜜のあわれ (新字新仮名) / 室生犀星(著)
けれど、もっと大胆に、いいところをいってもいい、人間らしいところをはなしても、あの方の苦節にきずはつきはしない。お人形さんに、あの晩年の、目覚めざめてきた働きは出来ない。
九条武子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)