だま)” の例文
新字:
中途ちゆうとからかほした宗助そうすけには、くもせなかつたけれども、講者かうじや能辯のうべんはうで、だまつていてゐるうちに、大變たいへん面白おもしろところがあつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
だまれ! をひくせ伯父樣をぢさまめかけねらふ。愈々いよ/\もつ不埒ふらちやつだ。なめくぢをせんじてまして、追放おつぱなさうとおもうたが、いてはゆるさぬわ。
麦搗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
芋蟲いもむしあいちやんとはたがひしばらだまつてにらめをしてましたが、つひ芋蟲いもむし其口そのくちから煙管きせるはなして、したッたるいやうなねむさうなこゑ
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
カピ長 なゝ、なぜぢゃ、賢女けんぢょどの! 聰明樣おりこうさま、まゝ、おだまりなされ。喋々語べちゃつきたくば、とっとゝ彼方あちて、冗口仲間むだぐちなかま饒舌しゃべれ。
あゝ、これ一生いつしやうわかれとなるかもわからぬ。櫻木大佐さくらぎたいさも、日出雄少年ひでをせうねんも、だまつて吾等われら兩人りやうにんかほながめ、ちからめて吾等われらにぎつた。
ロチスター氏は優しく眞面目まじめに私を見つめながら默して坐つてゐた。だまつたまゝでしばらくの時が經つた。とう/\彼は口を切つた——
うだこたれ、だまつてりや隣近所となりきんじよでもわかんねえもんだが勘次等かんじらえゝしばら味噌みそせえくしてくんだから、一杓子ひとつちやくしりやしねえんだ。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
大和尚だいおしよう大笑おほわらひにわらひすてゝ、だまつてろ、だまつてろ、貴樣きさまなどがらぬことだわとて丸々まる/\相手あいてにしてはれず、朝念佛あさねんぶつ夕勘定ゆふかんぢよう
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
や、巡査じゆんさ徐々そろ/\まどそばとほつてつた、あやしいぞ、やゝ、またたれ二人ふたりうちまへ立留たちとゞまつてゐる、何故なぜだまつてゐるのだらうか?
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
たらよろしく被仰おつしやつください、』とぼく眞實ほんたうにしないのでむすめだまつてわらつてた。おきぬ此娘このむすめ從姉妹いとこどうしなのである。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
以て私しへ仰せきけらるゝやと申立るを越前守殿きかだまれ長庵其みぎりは確然しかとした證據人のなかりし故なり此度は其せつの證據人と對決申し付る間其時有無うむ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
きでないかあのものしづかなかけひおとを。とほりにゆき眞白ましろやまつもつてゐる。そして日蔭ひかげはあらゆるものの休止きうし姿すがたしづかにさむだまりかへつてゐる。
日の光を浴びて (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
其處そこをよくわきまへて、たゞしくはたらいてもらひたい。つめあかほどでも、不正ふせいがあつたら、この但馬たじまけつしてだまつてゐない。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
しかも、肩とかむねとかの高くなつてゐる部分ぶゞんに、ぼんやりした火の光をうけて、低くなつてゐる部分の影を一そうくらくしながら、永久におしの如くだまつていた。
羅生門 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
そうだまつてつてゐるのでりようて見た。「わたしにひたいとはれたさうだが、なんの御用ごようかな。」
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
どうもそんな時はしかたがないから、だまつて、おこがましいが、土地ツ子の代表なやうに拜聽してゐる。
東京に生れて (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
といふうたみました。女官じよかんたちは、その返歌へんか出來できなかつたので、わらつていやがらせることもならず、だまつて一人ひとりち、二人ふたりちして、みなおくげてしまひました。
誰にもだまツて、此處に引込むでゐて、何か出來た時分に、ポカリ現はれて呉れる………屹度きつと大向おほむかふやンやと來る。そこで大手を振ツて阿父のとこへ出掛けて、俺の腕を見ろいさ。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
「へ、ゝ。」といふだけで、あとはしよちうだまり込んでばかりゐる。どんな女だかまだ見もしないが、どうせこのあたりの汚いうちの子で、行儀も何も知らない、下司げすな子らしかつた。
赤い鳥 (旧字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
だまつてをんな凝視ぎようししてゐたをとこは、まへとは全然ぜんぜんちがつたやさしさでいつた。
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
だまつてゐるね。』と末男すゑを退屈たいくつさうにつた。
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
しんとだまつてしんと默つて顫えてゐやる。
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
と、あはれや夕飯ゆふめし兼帶けんたいだいざるはしげた。ものだと、あるひはおとなしくだまつてたらう。が、對手あひてがばらがきだからたまらない。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そうさんおこつちや不可いけませんよ。たゞ叔父をぢさんのつたとほりをはなすんだから」と叔母をばことわつた。宗助そうすけだまつてあとをいてゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
愚物ばかだわねえ!』とあいちやんはおほきなこゑ齒痒はがゆさうにしましたが、『だまれ!』と白兎しろうさぎさけんだので、いそいでめました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
カピ長 だまれ、むが/\むが/\と、阿呆あはうめ! 其許おぬし御託宣ごたくせんは、冗口仲間むだぐちなかまさけでも飮合のみあとき被言おしゃれ、こゝにはよういわ。
やがて彼等かれらいた藁屑わらくづ土間どまきおろしてそれから交代かうたい風呂ふろ這入はひつた。おしなはそれをながらだまつてつてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
幾百萬の人々は私よりはもつと靜止せいしした生涯に運命づけられてゐる、また幾百萬の人々は彼等の運命にだまつて反抗してゐる。
二人ふたりだまる。厨房くりやからダリユシカがにぶかぬかほて、片手かたて頬杖ほゝづゑて、はなしかうと戸口とぐち立留たちどまつてゐる。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
わたくしだまつて點頭うなづくと夫人ふじんしづか立上たちあがり『皆樣みなさまのおみゝけがほどではありませんが。』とともなはれてピアノだいうへのぼつた。
だまつてては際限さいげんもなくつのつてれはれはくせつて仕舞しまひます、だい一は婢女をんなどもの手前てまへ奧樣おくさま威光ゐくわうげて、すゑには御前おまへことものもなく
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
先刻せんこくより主税之助は聞居たりしがこらへ兼だまれ平左衞門今となりて然樣なる儀を口賢くちかしこくも申が此度このたびの事は皆其方のすゝめしに非ずや然すれば此惡事このあくじの元は其方なり夫を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
打つて下さらないのは不平ですけれど、それは特別にだまつてゐて上げます。
半日 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
はれなければだまつてます。はれてもふてえきなき仲間なかまむかつてはだまつてます。けれども諸君しよくんごと教育けういくたか紳士しんしはれてはじつ眞面目まじめぼく大島小學校おほしませうがくかう出身しゆつしんといふことを公言こうげんするのです。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
彼女かのぢよだまつてくびつた。そのにはなみだがいつぱいにたまつた。
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
だまつて縫ふ女の髮が
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
「えゝてよ」と柱時計はしらどけいると、もう四時よじちかくである。御米およねは「四時よじ五時ごじ六時ろくじ」と時間じかん勘定かんぢやうした。小六ころくだまつてあによめかほてゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
オペラバツグをげて、飛模樣とびもやう派手はで小袖こそでに、むらさき羽織はおりた、十八九のわかをんなが、引續ひきつゞいて、だまつてわきこしける。
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
勘次かんじほどそれがげきしたこゝろ忌々敷いま/\しくくてもれをたしなめてしかつてなんがかりもつてらぬ。三にんたゞだまつてあるいた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
みんほかものまつただまつて、きはめて不快ふくわい容貌かほつきをしてゐるにもかゝはらず、女王樣ぢよわうさまなにからなにまで一人ひとり饒舌しやべつてられました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
乳母 はい/\、だまりまする、でもな、わらはいではをられませぬ、くのをめて、「あい」とはッしゃったとおもふと。
騷々さう/″\し過ぎます、グレイス。」とフェアファックス夫人は云つた。「吩咐いひつけを守るんですよ。」グレイスは、だまつてお辭儀して、這入つていつた。
れはういふ子細しさいでとちゝはゝ詰寄つめよつてとひかゝるにいままではだまつてましたれどわたしうち夫婦めをとさしむかひを半日はんにちくださつたら大底たいてい御解おわかりになりませう
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
つて、つてれ、だまつてゐてれとはかれにははれぬので、じつ辛抱しんばうしてゐるつらさは一ばいである。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
殺すべきや殊に憑司父子の者は私し親類しんるゐに御座候へば何故意恨等いこんなどふくみ申さんやと云ふをだまれ汝人を殺さぬ者か衣類いるゐすそを付け其の上我が入口の飛石へ血のあと
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
をはつて、少年せうねんだまつて點頭うなづくのをましやりつゝ、三人みたりうながして船室キヤビンた。
ラクダルはさまをぢろり横目よこめたが、だまつてた。
怠惰屋の弟子入り (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
だまつてきねえ、厭味いやみ加減かげんつてけ。此方こつち其處そこどころぢやねえ、をとこつかたないかと羽目はめなんだぜ。
一席話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
なにおどろかせるがるしさに結局つまりいはねばならぬこと今日けふまでもだまつてりしなり、三ねんか五ねんかへるつもりなれどもそのほどは如何どうわからねばまづ當分たうぶんわかれの覺悟かくご
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ふうちに、フトの(おなごり)とつたのがつて、これだと前方さき言葉通ことばどほり、うやらなにかがおなごりにりさうだ、とおもつてだまつた。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)