ひがし)” の例文
あるあさのこと、ひがしそらがやっとあかくなりはじめたころ、いつものごとくふねそうと、海岸かいがんをさして、いえかけたのであります。
羽衣物語 (新字新仮名) / 小川未明(著)
なにしろ西にしひがしからない原中はらなかの一軒家けんや一人ひとりぼっちとりのこされたのですから、心細こころぼそさも心細こころぼそいし、だんだん心配しんぱいになってきました。
安達が原 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
西尾にしをからひがしして小僧こぞう皆身みなみため年季奉公ねんきぼうこうと、東西南北とうざいなんぼくで書いてると、おまへ親父おやぢがそれをくにへ持つてつて表装へうさうを加へ
にゆう (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
みなみまはすと、玄關げんくわんからの入口いりぐち半分はんぶんふさいで仕舞しまふし、ひがしすとくらくなる、とつて、のこ一方いつぽうてればとこかくすので、宗助そうすけ
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ると、太陽たいやうがキラ/\とかゞやいてひがしほうの、赤裸あかはだかやまいたゞきなゝめかすめて、一個いつこ大輕氣球だいけいききゆうかぜのまに/\此方こなたむかつてんでた。
ひがしそらのききょうのはなびらはもういつかしぼんだようにちからなくなり、あさ白光しろびかりがあらわれはじめました。ほしが一つずつきえてゆきます。
いちょうの実 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
しかそのもつとおそれをいだくべき金錢きんせん問題もんだいそのこゝろ抑制よくせいするには勘次かんじあまりにあわてゝかつおどろいてた。醫者いしや鬼怒川きぬがはえてひがしる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
兵法へいほうに申す、小河しょうがひがしにあるを田沢でんたくといい、流水りゅうすいみなみにあるを青龍せいりゅうとよび、西に道あるを朱雀すじゃくづけ、北に山あるを玄武げんぶ、林あるを白虎びゃっこしょう
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すはだしで、その染殿そめどのひがしもんよりはしで、きたざまにはしつて、一條いちでうより西にしへ、西にし洞院とうゐん、それからみなみへ、洞院下とうゐんさがりはしつた。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
武王ぶわう(二六)木主ぼくしゆせ、がうして文王ぶんわうし、ひがしのかた(二七)ちうつ。伯夷はくい叔齊しゆくせい(二八)うまひかへていさめていは
但馬守たじまのかみなつかしさうにつて、築山つきやま彼方かなたに、すこしばかりあらはれてゐるひがしそらながめた。こつな身體からだがぞく/\するほどあづまそらしたはしくおもつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
また明治四十三年(1910)博文館発行の妹尾秀美ひでみ、鐘ヶ江東作、ひがし道太郎三氏の著『日本有用魚介藻類図説』によれば
植物一日一題 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
此學校このがつこう敷地しきちは、數年前すうねんぜん水田すいでん埋立うめたてゝつくられたものであつて、南北なんぼくなが水田すいでん一區域いちくいきなかに、半島はんとうかたちをなして西にしからひがし突出とつしゆつしてゐた。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
こゝは釜山ふざんから京城けいじよう汽車きしやつて、一時間いちじかんばかりで大邱たいきゆうき、そこで下車げしやして自動車じどうしやひがしほう三四時間さんよじかんはしるとすぐかれるところです。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
ところどころ大きなガレがあって、そんなところは特にその感を深くした。ひがし木賊とくさの廃屋の手前の沢で軽い昼食をとる。
「さうだ、もうつき時分じぶんだな‥‥」と、しばらくしてわたしとほひがしはう地平線ちへいせんしらんでたのにがついてつぶやいた。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
飴売あめうり土平どへい道化どうけ身振みぶりに、われをわすれて見入みいっていた人達ひとたちは、っていたような「おせんがた」というこえくと、一せいくびひがしけた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
これは大變たいへんと、總掛そうがゝりでならしをして、今度こんどまたおもおもひにぢんり、西にしからひがしむかつて坑道こうだうすゝけた。
斯樣かやうにして印度いんど亞刺比亞あらびや波斯ぺるしやから、ひがし日本にほんまで、西にし歐羅巴ようろつぱまでの化物ばけもの總括そうくわつしてると、化物ばけもの策源地さくげんち亞細亞あじあ南方なんぱうであることがわかるのである。
妖怪研究 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
それで朝日あさひはびつくらしてひがしやまからましたので、お月様つきさまはなごりしいけれどそれきりよるわかれました。
東海道名所図絵めいしょずえつてみると、夜啼石は小夜の中山街道のまん中にあつて、それからひがし一町ばかりの左側に夜啼松よなきまつがある。そのほとりに妊婦塚はらみおんなづかといふのがある。
小夜の中山夜啼石 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
ぼくまたしてもおもいした、吉彦よしひこさんがかねをつくときった言葉ことばを——「西にしたにひがしたにも、きたたにみなみたにるぞ。ほれ、あそこのむらもここのむらるぞ。」
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
また日高郡上山路かみさんじ村は、大小七十二社をひがし大字の社に合併し、小さきほこらはことごとく川へ流さしむ。
神社合祀に関する意見 (新字新仮名) / 南方熊楠(著)
一まいのはねは、ひがしのほうへ とんでいきました。もう一まいは、西にしのほうへ とんでいきました。ところが、三まいめのはねだけは、まっすぐ 上にまいあがったのです。
大阪おおさか俳優中村福円なかむらふくえん以前もと住居すまいは、鰻谷うなぎだにひがしちょうであったが、弟子の琴之助ことのすけが肺病にかかり余程の重態なれど、頼母たのもしい親族も無く難義なんぎすると聞き自宅へ引取ひきとりやりしが
枯尾花 (新字新仮名) / 関根黙庵(著)
ロミオ いや/\、あさらする雲雀ひばりぢゃ、ナイチンゲールのこゑではない。戀人こひびとよ、あれ、おやれ、意地いぢわる横縞よこじまめがひがしそらくも裂目さけめにあのやうなへりけをる。
「それはいと安いこと、しからば鳳雲の雲をお前に上げよう。藤次郎の藤をひがしに通わせて、今後東雲と名乗ったがよかろう」とのことに、東雲はよろこび、なお、言葉を
とは見る人の杞憂うれひにて、蝴蝶はひたすら花を尋ね舞ふ。西へ行くかと見ればひがしへかへり、東へ飛んでは西へ舞ひもどる。うしろの庭をあさりめぐりて前なる池を一とまはり。
北村透谷詩集 (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
私達わたくしたちちてうみ修行場しゅぎょうばあとに、波打際なみうちぎわのきれいな白砂はくさんでひがしひがしへとすすみました。
ひがしの絹は質がしゃんとしていますし、それに色も大そう白いのですから、見つけはちょっといようですけれど、使ってみると何かごそついて私にはどうも描きにくいのです。
迷彩 (新字新仮名) / 上村松園(著)
うまうま仲善なかよく、はなをならべて路傍みちばたくさみながら、二人ふたり半死半生はんしはんしやう各自てんで荷馬車にばしやひあがり、なほ毒舌どくぐちきあつて、西にしひがしへわかれるまで、こんなはなしをしてゐました。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
かくて推古天皇の使つかいを隋に遣わし給うに及んで、初めてその義にとって、「日出処ひいづるところ」またはひがしの文字を用い給うたが、しかしこれまた以て我が国号として定まったものではない。
国号の由来 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
秋風あきかぜに白波さわぎと萬葉集にうたはれたのはおもへば久遠の時代であるやうだけれど、たひら將門まさかどが西の大串おほくしから、ひがし小渡こわたりへ船を漕いだ時は、一面の水海みづうみだつたとはいふまでもない。
筑波ねのほとり (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
わかまをすがしいとつてもれがゆめならば仕方しかたのないこと、さ、おいでなされ、わたくしかへります、けてはみちさびしう御座ござりますぞとて空車からぐるまいてうしろく、其人それひがしへ、此人これみなみ
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
高倉たかくらみや宣旨せんじ木曾きそきたせきひがしに普ねく渡りて、源氏興復こうふくの氣運漸く迫れる頃、入道は上下萬民の望みにそむき、愈〻都を攝津の福原にうつし、天下の亂れ、國土の騷ぎをつゆ顧みざるは
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
ひがし印度インド商会の設立を見るに及び、駸々乎しんしんことして支那辺海に迫るの勢を養えり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
其一軒は、ひがしといつて、眇目めつかちの老人の頑固つむじまがりが村人の気受に合はなかつた。
刑余の叔父 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
天正十九年に、豊臣秀吉とよとみひでよしから現在の、京都下京堀川、本願寺門前町に寺地じちの寄附を得た。しかし、この時に今日こんにちの東西本願寺——本願寺派本山のお西にしと、真宗大谷派本願寺のおひがしとが分岐した。
九条武子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
そのあくる朝早く、まだひがしがやっとしらみかけたころ、新吉しんきちは、しもふりの夏服にくつをはき、むぎわらぼうをかむり、ふろしきづつみ一つを持って、一年間あまり住みなれたテント小屋ごやをぬけ出しました。
曲馬団の「トッテンカン」 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
さて北海道のエドモは室蘭むろらんの東南半里ほどの磯山陰にあるアイヌ部落である。古い頃ひがし場所の一つであったために内地人にも知られている。絵鞆崎とも江友ともあるが元禄郷帳にはエンドモという。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
二日二夜半にて紀州和歌山へ着しける此時和歌山の町奉行鈴木重兵衞出迎いでむかへ彼奉行所本町ひがしの本陣に旅館致させけるに次右衞門三五郎の兩人は休息きうそくもせず鈴木重兵衞へ申達し大黒屋源左衞門榎本屋三藏の兩人を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
余は此の句に送られてひがしに帰った。
子規居士と余 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
海凪ぎぬ、陽炎かぎろひひがしに立つと
新頌 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
瀬戸せどの海、ひがしをさしし
おもひで (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
ひがしへ、ゆるに峰越をごし
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
この金貨きんかは、西にしくに金貨きんかだ。この金貨きんかは、ひがしくに金貨きんかだ。この銀貨ぎんかは、おもい。しかしこちらの銀貨ぎんかのほうは、もっと目方めかたがある。
汽船の中の父と子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのうちずんずんそらあかるくなってきて、ひがしそら薄赤うすあかまってくると、どこかのむらにわとりてるこえがいさましくこえました。
安達が原 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
家財道具かざいだうぐもんそとはこばれたとき火勢くわせいすですべてのものちかづくことを許容ゆるさなかつた。いへかこんでひがしにもすぎ喬木けうぼくつてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
ほしがすっかりきえました。ひがしそらしろくもえているようです。がにわかにざわざわしました。もう出発しゅっぱつもないのです。
いちょうの実 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
心持こゝろもち西にしと、ひがしと、真中まんなかやまを一ツいて二すぢならんだみちのやうな、いかさまこれならばやりてゝも行列ぎやうれつとほつたであらう。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)