つゑ)” の例文
按摩あんまつゑちからに、かはべりの水除みづよづゝみると、つゑさき両手りやうてをかけて、ズイとこしばし、みゝそばだてゝかんがえて様子やうす、——とふ。
怪力 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
私も、窓から顔を出して見ましたら、一人の工夫がシャベルを両手でつゑにして、線路にまっすぐに立ち、笑ってこっちを見てゐました。
化物丁場 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
さうして女房にようばう激烈げきれつ神經痛しんけいつううつたへつゝんだ。卯平うへい有繋さすがいた。葬式さうしき姻戚みより近所きんじよとでいとなんだが、卯平うへいやつつゑすがつてつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
O君はつゑ小脇こわきにしたまま、或大きい別荘の裏のコンクリイトの塀に立ち小便をしてゐた。そこへ近眼鏡きんがんきやうか何かかけた巡査じゆんさ一人ひとり通りかかつた。
O君の新秋 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
貴嬢あなたは特に青年の為に御配慮です、乍併しかしながら今日こんにちの青年は、牧者のつゑを求むる羊と云ふよりは、母雞おやどりの翼を頼むひなであります
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
嵯峨さがからやまけて高雄たかをある途中とちゆうで、御米およね着物きものすそくつて、長襦袢ながじゆばんだけ足袋たびうへまでいて、ほそかさつゑにした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
にぎりには緑色のぎよく獅子頭ししがしらきざみて、象牙ぞうげの如く瑩潤つややかに白きつゑを携へたるが、そのさきをもて低き梢の花を打落し打落し
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
ひそむれば公用人三人は中間體ちうげんていに身をやつし外に入用の品々は駕籠の下へ敷込しきこみ二人にて駕籠をき今一人は湯灌盥ゆくわんたらひつゑ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
与兵衛はギクリ! として釣竿つりざをつゑについたまゝ立つて居ると、猿が何疋も枝から枝へ跳びあるいてゐるのです。
山さち川さち (新字旧仮名) / 沖野岩三郎(著)
こゝを一應いちおう見物けんぶつするだけでも一日いちにちようしますが、入場にゆうじよう無料むりようであり、かさつゑあづかつてくれても賃錢ちんせんりません。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
これだけの建物の内に起臥きぐわしてゐるものは、家族でも学生でも、ことごとく平八郎が独裁のつゑもとうなじを屈してゐる。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
次に杖と云ふのはつゑであります。これも同じく竹で拵つた棒で叩く、この杖も實は臀を叩くのであります。
支那の古代法律 (旧字旧仮名) / 桑原隲蔵(著)
へえ有難ありがたぞんじます、只今たゞいまつゑを持つてまゐりませう。近「もうつゑらねえから薬師やくしさまへをさめてきな。 ...
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
雪につぶされざるため也。庭樹にはきは大小にしたがえだまぐべきはまげて縛束しばりつけ椙丸太すぎまるた又は竹をつゑとなしてえだつよからしむ。雪をれをいとへば也。冬草ふゆくさるゐ菰筵こもむしろを以おほつゝむ。
何も見ないで、はるか遠くのことを思ひふけつてゐるやうに、じつとしてゐた。つゑのやうに細い肢の先は、ひづめが二つに割れて、みづみづしいはこべらの緑をんでゐた。
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
雷鳥らいちようははひまつの高山植物こうざんしよくぶつ若芽わかめ食物しよくもつとしてゐます。性質せいしつ遲鈍ちどんですから、ひと近寄ちかよつても容易よういげません。つゑたゝけばおとせそうなひくそらを、うろ/\まはつてゐます。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
幼児をさなごしろ蜜蜂みつばち分封すだちのやうに路一杯みちいつぱいになつてゐる。何処どこからたのかわからない。ごくちひさな巡礼じゆんれいたちだ。胡桃くるみ白樺しらかんばつゑをついて十字架クルス背負しよつてゐるが、その十字架クルスいろ様々さまざまだ。
つるぎつゑに。松陰まつかげの。いはほさゝへて。吐息といきつく。時哉をりしも見ゆる。若武者わかむしやは。そもいくさの。使つかひかや。ればころもの。美麗うるはしさ。新郎はなむことかも。あやまたる。其鬚髯そのほうひげの。新剃にひそりは。秋田あきたを刈れる。刈稻かりしねの。そろへるさまに。
「西周哲学著作集」序 (旧字旧仮名) / 井上哲次郎(著)
『これはなことをはるゝものじや、あんなおほきいし如何どうしてたもとはひはずがない』と老人ろうじんに言はれて見ると、そでかるかぜひるがへり、手には一本のながつゑもつばかり、小石こいし一つ持て居ないのである。
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
あるじ一〇あふごをとりて走り出で、の方を見るに、年紀としのころ一一五旬いそぢにちかき老僧の、かしら紺染あをぞめ一二巾をかづき、身に墨衣のれたるを穿て、一三つつみたる物を背におひたるが、つゑをもてさしまねき
とおきやうものさしつゑ振返ふりかへりて吉三きちざうかほ諦視まもりぬ。
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
カピ妻 つゑをば、つゑをば! なんためながけんを?
そのつゑを失ひし時、みづからをも失はん。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
壁のなかよりつゑつきて
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
按摩あんまその仰向あをむいて打傾うちかたむいた、みゝかゆいのをきさうなつきで、右手めて持添もちそへたつゑさきを、かるく、コト/\コト/\とはじきながら
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
れた鳳仙花ほうせんくわえだたけつゑしばりつけようとしてれたらぽろりとくきからはなれてしまつた。卯平うへい忌々敷相いまいましさう打棄うつちやつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
法律は鉄腕の如く雅之をらつし去りて、あまつさへつゑに離れ、涙によろぼふ老母をば道のかたはら踢返けかへして顧ざりけり。ああ、母は幾許いかばかりこの子に思をけたりけるよ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
馬鹿七は腰に山刀をさして、手には竹のつゑを一本提げてゐました。そして段々、山を奥へ奥へと登つて行つて、大きな暗い/\森の中へ入つてしまひました。
馬鹿七 (新字旧仮名) / 沖野岩三郎(著)
四ばんに小児の警固けいごおもひ/\身をかざりてしたがふ。次に大人の警固けいご麻上下つゑを持て非常ひじやうをいましむ。
成程なるほど、そこで寿老神じゆらうじんは。甲「安田善次郎君やすだぜんじらうくんよ、茶があるからおつな頭巾づきんかむつて、庭をつゑなどをいて歩いてところは、まる寿老人じゆらうじんさうがあります。乙「シテ福禄寿ふくろくじゆは。 ...
七福神詣 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
「ここはどこでござりまするな。」と云ひながらめくらのかげろふがつゑをついてやって来た。
洞熊学校を卒業した三人 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
此駿河屋方へあづけ置しが十四日の夜討のことを聞き如何に本望遂ほんまうとげたるや子息せがれ庄左衞門は高名なしたるかと案事居あんじゐけるに浪士らうし泉岳寺へ引取しと聞き二本のつゑすがり大勢の見物を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
良寛さんはつゑと鉢を拾つて立ちあがつた。
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
むかしながらのふとつゑかな
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
あかい芽をふくつゑがある。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
あらためて、これからぐに、つゑのなり行脚あんぎやをして、成田山なりたさんまうでましてな。……經一口きやうひとくちらぬけれども、一念いちねんかはりはない。
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ひろくもないはたけのこらずが一くはれるのでおの/\たがひ邪魔じやまりつゝ人數にんずなかば始終しじうくはつゑいてはつてとほくへくばりつゝわらひさゞめく。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
彼のせはしげに格子をあくるを待ちて、紳士は優然と内にらんとせしが、土間の一面に充満みちみちたる履物はきものつゑを立つべき地さへあらざるにためらへるを、彼はすかさず勤篤まめやか下立おりたちて
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
いためしとてつゑすがりて參りし處惡い駕籠舁かごかきどもに付込れ當底たう/\あざむかれ乘て參りたるが今頃いまごろは此熊谷土手の中程なかほどにて路金も女も定めしとられ給ひしならんアヽ思ひ出しても可愛かあいさうな事を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
京伝翁のせつに、かゆの木とは正月十五日粥をたるたきゞつゑとし、子もたぬ女のしりをうてば男子をはらむといふ祝ひ事なりとて、○まくら草紙さうし狭衣さごろも弁内侍べんのないし日記にきその外くさ/\のしよひき
かさ脚絆きやはん、手甲、つゑ掛絡けら
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
つゑを振り振り駆けて来た。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
つぎをんなは、こしからかげつち吸込すひこまれさうに、悄乎しよんぼりこしをなやしてしやがむ……びんのはづれへ、ひよろりとつゑさきけてあをい。
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
京伝翁のせつに、かゆの木とは正月十五日粥をたるたきゞつゑとし、子もたぬ女のしりをうてば男子をはらむといふ祝ひ事なりとて、○まくら草紙さうし狭衣さごろも弁内侍べんのないし日記にきその外くさ/\のしよひき
出水でみづあぶない、と人々ひと/″\此方こなたきしからばゝつたが、強情がうじやうにものともしないで、下駄げたぐとつゑとほし、おびいて素裸すはだかで、ざぶ/\とわたりかける。
怪力 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
つゑをとゞめずして立さりけり。
わたしげようとちますすそを、ドンとつゑさきおさへました。熊手くまでからみましたやうなひどちからで、はつとたふれるところを、ぐい、とつてくのです。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ところに、みぎ盲人めくら、カツ/\とつゑらして、刎上はねあがつて、んでまゐり、これは無體むたいことをなされる。……きつ元氣げんきぢや。
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
けてこゝに、がたりびしりは、文章ぶんしやうさえで、つゑおと物凄ものすごみゝひゞく。なか/\くちつてもあぢこゑせぬ。
怪力 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
わたしは、好意かうい感謝かんしやしながら、ちおもりのしたよくぢて、やせたつゑをついて、うつむいて歩行あるした。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)