ひろ)” の例文
「そら、どらねこがきた。」といって、かおすとみずをかけたり、いたずらっは、そばをとおると、小石こいしひろってげたりしました。
ねこ (新字新仮名) / 小川未明(著)
若い人は、いせいよく声をかけながら、新しい麻裏あさうらぞうりで要吉のまいた水の上を、ひょいひょいとひろあるきにとんでいきました。
水菓子屋の要吉 (新字新仮名) / 木内高音(著)
砧村きぬたむら途中とちう磨石斧ませきふひろひ、それから小山こやまあがくちで、破片はへんひろつたが、此所こゝまでに五ちかあるいたので、すこしくまゐつてた。
九州きうしうさるねらふやうなつまなまめかしい姿すがたをしても、下枝したえだまでもとゞくまい。小鳥ことりついばんでおとしたのをとほりがかりにひろつてたものであらう。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
王子は石を一つひろって、それを力まかせにげてみました。石ははるか下の方のくもきこまれたまま、なんのひびきもかえしませんでした。
強い賢い王様の話 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
すぐをつとそばから松葉まつばひろげてあななかをつついた。と、はちはあわててあなからたが、たちま松葉まつばむかつて威嚇的ゐかくてき素振そぶりせた。
画家とセリセリス (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
取り出し是は一昨日お前樣の歸りしあとおちてありししなゆゑ何心なくひろひしが不斗ふと此場の役に立つ傳吉殿讀給よみたまへと差出すを傳吉取上とりあげ讀下よみくだすに
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
かぜでもいてくりえだれるやうなあさとうさんがおうちから馳出かけだしてつてますと『たれないうちにはやくおひろひ。』とくりつて
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
王子ははんけちを出してひろげましたが、あまりいちめんきらきらしているので、もうなんだかひろうのがばかげているような気がしました。
おんなあぶらつぼ断崖がけうえりまして、しきりに小石こいしひろってたもとなかれてるのは、矢張やは本当ほんとう入水にゅうすいするつもりらしいのでございます。
雄二が腰をおろした切株きりかぶそばに、ふと一枚の紅葉もみじの葉が空から舞って降りてきました。雄二はそれをひろいとると、ポケットに収めておきました。
誕生日 (新字新仮名) / 原民喜(著)
『まだ/\もつとおほくの證據しようこ御座ございます、陛下へいかよ』とつて白兎しろうさぎは、にはかあがり、『文書もんじよ只今たゞいまひろひましたのです』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
れとらねばくるまそのまヽ玄關げんくわんにいそぐを、さとしなにものともらずあわたヽしくひろひて、懷中ふところにおしれしまヽあとずにかへりぬ。
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
十個ばかりひろって、艇内にはこんでおく必要がある。これからまだどういう目にあうかもしれないから、水の用意はしておかないといけないんだ
恐竜艇の冒険 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ピストルをひろいあつめ、それをカバンにおさめるついでに、その中のいろいろな品物を紛失ふんしつしていないかどうかを、念入りに点検するのでした。
怪人二十面相 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
オーサは、しばらくだまったまま、このひろい物のことを考えていました。それから、ゆっくりと、考え考え言いました。
あしをばた/\やつて大聲おほごゑげていて、それでらず起上おきあがつて其處そこらのいしひろひ、四方八方にけてた。
画の悲み (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
それをどもがひろつておもちゃにしてあそんでゐるのをつくつたので、さういふ材料ざいりようをごく重々おも/\しく爲上しあげてゐるのです。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
ヂュリ なみだ創口きずぐちあらはしゃるがよい、そのなみだころにはロミオの追放つゐはうくやわしなみだ大概たいがいつけう。そのつなひろうてたも。
彼女はひろよみにぽつぽつ読み下した。ブック・オフ・ジョークス。イングリッシ・ウィット・エンド・ヒュモア。……
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
手荷物を水畔すいはんの宿に預けて、石山の石に靴や下駄の音をさせつゝ、余等は石をひろい、紅葉を拾いつゝ、石山寺にまいった。うどくらい内陣の宝物も見た。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
ひろはれてまゐつてから三ねんほどちましたとき食堂しよくだう上座じやうざざうかうげたり、燈明とうみやうげたり、そのほかそなへものをさせたりいたしましたさうでございます。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
だからおまえたちもこれからこころれかえて分相応ぶんそうおうに、ひとてたもののこりや、たわらからこぼれたおこめまめひろって、いのちをつなぐことにしてはどうだ。
猫の草紙 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
といって、身をまもる唯一ゆいつの愛刀、般若丸はんにゃまるはそのまえに、卜斎の足蹴あしげにはねとばされて、ひろいとって立つはない。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
園絵を乗せて神田へ飛び帰る時の用意に、途中一つ空駕籠をひろって、三梃、裏木戸まえの横町に並んで下りた。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
気楽きらくなるものは文学者ぶんがくしやなり、うらやましきもの文学者ぶんがくしやなり、接待せつたいさけまぬ者も文学者ぶんがくしやたらん事をほつし、ちたるをひろはぬ者も文学者ぶんがくしやたるをねがふべし。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
たけなかからひろつてこの年月としつき大事だいじそだてたわがを、だれむかへにようともわたすものではない。もしつてかれようものなら、わしこそんでしまひませう
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
みなさんが、もしさういふところつたならば、いしをのいしなどのちてゐるのをひろふことが出來できるのでありますが、むかしはたくさんにありましたけれど
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
勘次かんじいへもどると飯臺はんだいそこにくつゝいてめしなかから米粒こめつぶばかりひろしてそれを煙草たばこ吸殼すひがら煉合ねりあはせた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「ああ、とうとうやって来たな。まず、たき火をしようじゃあないか。かれ枝を少しひろって来ておくれ。」
貝類はいそにて集むる事も有り、干潟ひかたにてひろふ事も有り、時としては深く水をくぐりてことも有りしならん。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
ものが欲しいというのと、見る人がなければひろうということは遠くとも従兄弟いとこ同士ぐらいである。欲しがる人が拾わぬというは、世の中に制裁があるからである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
これでは国語調査会こくごてうさくわいが小説家や新聞記者を度外視どぐわししするのも無理はないと思ふ。萬朝報よろづてうはうに限らず当分たうぶん此類このるゐのがに触れたら退屈たいくつよけにひろひ上げて御覧ごらんきようさう。(十五日)
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
私はそのあいだに部屋片附けたり、寝台綺麗きれいに直したりして、床の上にってた光子さんの足袋ひろて、——帰りしなに光子さんは私の足袋穿いて行きなさったのんです。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
友人いうじんいはく、我がしたしき者となり村へ夜話よばなしゆきたるかへるさ、みちかたはら茶鐺ちやがまありしが、頃しも夏の事也しゆゑ、農業のうげふの人の置忘おきわすれたるならん、さるにてもはらあしきものはひろかくさん
ましてこれをひろい読みするものは、もとよりこれが信ずるに足るほんものだというはずがない。
なんじらの穀物こくもつかるときには汝等なんじらその田野たはた隅々すみずみまでをことごとかるべからずまたなんじ穀物こくもつ遺穂おちぼひろうべからずまたなんじ菓樹園くだものばたけくだもの取尽とりつくすべからずまたなんじ菓樹園くだものばたけおちたるくだもの
聖家族 (新字新仮名) / 小山清(著)
綾羅りようらの袂ゆたかにひるがへるは花に休める女蝶めてふの翼か、蓮歩れんぽふしきふなるは蜻蛉かげろふの水に點ずるに似たり。折らば落ちん萩の露、ひろはば消えん玉篠たまざゝの、あはれにも亦あでやかなる其の姿。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
湯屋ゆやひろあつめたつめじゃァねえよ。のみなんざもとよりのこと、はらそこまでこおるようなゆきばんだって、おいらァじっとえんしたへもぐりんだまま辛抱しんぼうして苦心くしんたからだ。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
毎日三人で焼けあとに出かけていって、人足にんそくの人なんかに、じゃまだ、あぶないといわれながら、いろいろのものをひろい出して、めいめいで見せあったり、取りかえっこしたりした。
火事とポチ (新字新仮名) / 有島武郎(著)
角兵ヱかくべえかわのふちのくさなかからふえひろってヒャラヒャラとらしていきました。
花のき村と盗人たち (新字新仮名) / 新美南吉(著)
するとマリちゃんは、自分じぶん箪笥たんすって、一ばんした抽斗ひきだしから、一ばん上等じょうとうきぬ手巾はんけちしてて、食卓テーブルしたほねを、一つのこらずひろげて、手巾はんけちつつみ、きながら、戸外おもてってきました。
或時あるとき此奴こいつが自分の日記帳をおとした。それひろつてんで見ると
行倒の商売 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
ごめんね そのうちにどこからかひろつてきてあげるわよ
まめをとこ、栗鼠りすひろひて
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
ひろふがごとくさまよひきぬ
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
ばゞ洗濯せんたくかはにて、ひろ
鬼桃太郎 (旧字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
かひひろはん莫告藻なのりそ
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
ぼくたちだって、そのかわり、くりや、どんぐりを、ひろうことができないのだから、おんなじこった。」と、三郎さぶろうさんはおもいました。
おかめどんぐり (新字新仮名) / 小川未明(著)
此邊このへんまではるのだ。迂路うろつきまわるのですでに三以上いじやうあるいたにかゝはらず、一かう疲勞ひらうせぬ。此時このときすで打石斧だせきふ十四五ほん二人ふたりひろつてた。