“地(ぢ)” の例文
馬方(うまかた)と馬方(うまかた)が喧嘩(けんくわ)をはじめました。砂(すな)ツぽこりの大道(だいどう)の地(ぢ)べたで、上(うへ)になつたり下(した)になつたり、まるであんこ の中(なか)の團子(だんご)のやうに。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
肌着の上に着(ちやく)す、地(ぢ)の色(いろ)、衣(きぬ)の類、好によりていろ/\あらむ。袖は友染か、縮緬か、いづれ胴とは異なるを用ふ、裏なき衣なり。
当世女装一斑 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
尤(もつと)も元(もと)は一面(いちめん)の竹藪(たけやぶ)だつたとかで、それを切(き)り開(ひら)く時(とき)に根丈(ねだけ)は掘(ほ)り返(かへ)さずに土堤(どて)の中(なか)に埋(うめ)て置(お)いたから、地(ぢ)は存外(ぞんぐわい)緊(しま)つてゐますからねと
門 (旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
單に美しい藤娘や鷹匠の踊の地(ぢ)を附ける爲めに二十人の樂人が歌を唄ひ三味線を彈くのを見るときには、人をして涙ぐましむる哀愁がある。
海郷風物記 (旧字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
羽織は最初に見捨てた女が拵(こさ)へてくれたので、地(ぢ)は薄かつたが、女の心よりは長持もしたし、値段も幾らか張つてゐた。
あるかぎり展開(みひら)かれた麥畑を地(ぢ)の色にして、岡を越え、河に絶たれては打ちつづく桃の花の眺めは、紅霞(こうか)といふ文字はこれから出て、此野を吹く風が
春 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
桟橋へ上(あが)つて東洋汽船会社の前あたりへ来ると、一本線の電車や二頭の牛を附けた撒水(さんすゐ)車や、赤い地(ぢ)に真鍮粉(しんちうこ)の梨地(なしぢ)をした力車(りきしや)などが先(ま)づ目を引いた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛、与謝野晶子(著)
地蜂(ぢばち)といふ蜂(はち)は、よく/\土(つち)のにほひが好(す)きと見(み)えまして、地(ぢ)べたの中(なか)へ巣(す)をかけます。土手(どて)の側(わき)のやうなところへ巣(す)の入口(いりぐち)の穴(あな)をつくつて置(お)きます。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
これは大變(たいへん)と、總掛(そうがゝ)りで地(ぢ)ならしをして、今度(こんど)は又(また)思(おも)ひ思(おも)ひに陣(ぢん)を取(と)り、西(にし)から東(ひがし)に向(むか)つて坑道(こうだう)を進(すゝ)め掛(か)けた。
「さう。お糸(いと)ちやんなら、きつと売れるわね。何(なに)しろ綺麗(きれい)だし、ちやんともう地(ぢ)は出来(でき)てゐるんだし………。」
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
三千五百石取の旗本の妾——地(ぢ)の町藝妓が匂ふにしても、何となく不思議な魅力(みりよく)を持つた女です。
それからといふものはどんな姿(なり)にも日(ひ)が朝(あさ)から射(さ)すやうになつた。それでも有繋(さすが)に森(もり)はあたりを威壓(ゐあつ)して夜(よる)になると殊(こと)に聳然(すつくり)として小(ちひ)さなお品(しな)の家(いへ)は地(ぢ)べたへ蹂(ふみ)つけられたやうに見(み)えた。
土 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
眞黒(まつくろ)な艷(つや)の佳(い)い洋犬(かめ)が一匹(ぴき)、腮(あご)を地(ぢ)に着(つ)けて臥(ねそ)べつて、耳(みゝ)を埀(た)れたまゝ是(こ)れ亦(また)尾(を)をすら動(うご)かさず、廣庭(ひろには)の仲間(なかま)に加(くは)はつて居(ゐ)た。そして母屋(おもや)の入口(いりくち)の軒陰(のきかげ)から燕(つばめ)が出(で)たり入(はひ)つたりして居(ゐ)る。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
正面には緑葉(りよくえふ)の地(ぢ)に「聖壽萬歳(せいじゆばんざい)」と白く菊花にてぬきたる大額をかゝげ、天井には隙間(すきま)もなく列国旗を掛けて、五色のアーク灯の光もあやに、床は鏡の如く磨きたればきら/\しく照り渡りて
燕尾服着初めの記 (新字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
木々若葉し日は照りかがやく地(ぢ)おもてを壓(お)しひしぎ行くタンクの齒ぐるま
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
廿三日八つ比(ごろ)に、何かとあとの所もよくよく申、此方なくなり候ても、何もかはり候事はなく、とんと/\此儘にて、此所地(ぢ)かりゆゑ、家は此方家ゆゑ、ほそ/″\に取つゞき、二人の子ども
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
庭先(にわさ)きの土(つち)の中(なか)に、大(おお)ぶりな瀬戸物(せともの)の金魚鉢(きんぎょばち)が、ふちのところまでいけこんであつて、その鉢(はち)のそばで、セルの和服(わふく)を着(き)、片足(かたあし)にだけ庭下駄(にわげた)をつつかけた人間(にんげん)の死体(したい)が、地(ぢ)べたに這(は)いつくばつている。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
「然し地(ぢ)まはりは相變らずか」と、呑牛がからかひ氣味に云ふ。
泡鳴五部作:05 憑き物 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
滿は女の様な地(ぢ)の声で云つた。
帰つてから (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
飢(う)ゑて足(あ)悩(な)ゆむ湿(しめ)り地(ぢ)に
茴香 (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
と、あはれや夕飯(ゆふめし)兼帶(けんたい)の臺(だい)の笊(ざる)に箸(はし)を投(な)げた。地(ぢ)ものだと、或(あるひ)はおとなしく默(だま)つて居(ゐ)たらう。が、對手(あひて)がばらがきだから堪(たま)らない。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
ある日(ひ)の午後(ごゞ)。ぱちツと不思議(ふしぎ)な音(をと)がしました。莢(さや)が裂(さ)けたのです。豆(まめ)は耳(みゝ)をおさえたなり、地(ぢ)べたに轉(ころ)げだしました。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
地(ぢ)の色は濃茶(こいちや)である。それに若茶柳から松葉納戸・明石鼠に至るまでのさまざまの色をした葉が乱れ垂れるのである。
本の装釘 (新字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
地(ぢ)の厚きタオルなれば、彼(か)のいひなづけの許(もと)に行(ゆ)き給ふ中の一人二人(ひとりふたり)の姫達のために私はいたましき気の致し候(さふらふ)。審判長は鷲鼻(わしばな)せる英人の大僧正に候(さふらふ)。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛、与謝野晶子(著)
「一度申訳だけに舞台で被(き)て、あとは縫ひ返して子供の外套に仕立(したて)るんだ、型は古いが地(ぢ)が好(い)いんだからね。」
何所(どこ)で地(ぢ)が尽(つ)きて、何所(どこ)で雲(くも)が始まるか分(わか)らない程に嬾(ものう)い上(うへ)を、心持(こゝろもち)黄(き)な色がふうと一面にかゝつてゐる。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
枯々(かれ/″\)とした裏庭(うらには)に出(で)て、父(とう)さん達(たち)は『シヨクノ』の遊(あそ)びにする細(こまか)い木(き)を探(さが)したり、それを手(て)ごろの長(なが)さに切(き)つたり、地(ぢ)べたへよく打(う)ちこめるやうに先(さき)の方(はう)を尖(とが)らせたり
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
陸稻(をかぼ)も地(ぢ)が珍(めづ)らしい内(うち)は出來(でき)るもんだわ、穗(ほ)の出(で)た割(わり)にや分(ぶ)は拔(ぬ)けねえが、そんでも開墾(おこ)したばかしにや草(くさ)は出(で)ねえから手間(てま)が要(え)らねえしな、それに肥料(こやし)つちやなんぼもしねえんだから
土 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
木々若葉し日は照りかがやく地(ぢ)おもてを圧(お)しひしぎ行くタンクの歯ぐるま
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
はつと下(した)に置(お)くと、はづみで白(しろ)い花片(はなびら)は、ぱらりと、藤色(ふぢいろ)の地(ぢ)の友染(いうぜん)にこぼれたが、こぼれた上(うへ)へ、園(その)は尚(な)ほ密(そ)と手(て)を当(あ)てゝ蓋(ふた)を傾(かたむ)けた。
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
堂内はゴシツク式建築の大寺院の例に漏れず薄暗い中に現世(げんせ)と掛(かけ)離れた幽静(いうせい)を感ぜしめ、幾つかの窓の瑠璃(るり)の地(ぢ)に五色(しき)を彩(いろど)つた色硝子(ガラス)が天国を覗(のぞ)く様に気高(けだか)く美しい。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛、与謝野晶子(著)
旅廻りは言ふまでもない事、地(ぢ)の市村座興行も余り気乗がしない、座方(ざかた)の都合で達(たつ)て顔を出さなければならない場合でも、端役(はやく)の外は決して引(ひき)うけようとは言はない。
けれども南瓜(かぼちや)はくやしくつて、くやしくつて、たまらず、その晩(ばん)、みんなの寢靜(ねじづ)まるのを待(ま)つて、地(ぢ)べたに頬(ほつぺた)をすりつけて、造物(つくり)主(ぬし)の神樣(かみさま)をうらんで男泣(をとこな)きに泣(な)きました。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
たゞ単調に澄んでゐたものの中(うち)に、色が幾通りも出来(でき)てきた。透(す)き徹(とほ)る藍(あゐ)の地(ぢ)が消える様に次第に薄(うす)くなる。其上に白い雲が鈍(にぶ)く重(かさ)なりかゝる。重(かさ)なつたものが溶けて流(なが)れ出(だ)す。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
一体わたくしの表紙画は多くは庭の草木の寓目の写生であるから、其地(ぢ)のいろはいつも茶いろである。ちかごろは旅先でゆつくり写生をするやうな事は無いので、モチイフが限られるのである。
本の装釘 (新字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
時雨(しぐれ)の雲(くも)に映(えい)ずる槭(もみぢ)の梢(こずゑ)は確然(かくぜん)と浮(う)き上(あが)つて居(ゐ)ながら天鵞絨(びろうど)の地(ぢ)に深(ふか)く浸(し)み込(こ)んで居(ゐ)る樣(やう)にも見(み)えた。其(そ)の前(まへ)に空(そら)を支(さゝ)へて立(た)つた二條(でう)の白(しろ)い柱(はしら)は幟旗(のぼりばた)であつた。幟旗(のぼりばた)は止(や)まずばた/\と飜(ひるがへ)つた。
土 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
子の母の今のなげきは道芝の照る日に萎(な)えて地(ぢ)しばりの花
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
蓑(みの)の外(ほか)に、ばんどりとて似(に)たものあり、蓑(みの)よりは此(こ)の方(はう)を多(おほ)く用(もち)ふ。磯(いそ)一峯(いつぽう)が、(こし地(ぢ)紀行(きかう))に安宅(あたか)の浦(うら)を一里(り)左(ひだり)に見(み)つゝ、と言(い)ふ處(ところ)にて
寸情風土記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
色々(いろん)な事を知つた女が、生(うぶ)で、無垢な昔馴染の男に出会つた時の事で、女はそんな時には、極(きま)つたやうに頭の地(ぢ)を掻き/\、その後昵懇(なじみ)になつた男の数を懐中(ふところ)で数(よ)みながら
風の力が烈しいと見えて、雲の端(はし)が吹き散(ち)らされると、青(あを)い地(ぢ)が透(す)いて見える程に薄くなる。あるひは吹き散(ち)らされながら、塊(かた)まつて、白く柔らかな針(はり)を集めた様に、さゝくれ立(だ)つ。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
地(ぢ)を梅鼠がかつた濃い茶にして、其一枝を写し試みた。
本の装釘 (新字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
やあれ、日はよし、地(ぢ)はよし、海や凪ぐし
畑の祭 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
恁(か)う言(い)ふ時(とき)は、其(そ)の粉雪(こゆき)を、地(ぢ)ぐるみ煽立(あふりた)てますので、下(した)からも吹上(ふきあ)げ、左右(さいう)からも吹捲(ふきま)くつて、よく言(い)ふことですけれども、面(おもて)の向(む)けやうがないのです。
雪霊記事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
平岡は暗(くら)い調子で、地(ぢ)に息(いき)を吐(は)く様に答へた。代助は堪(た)えられない思がした。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
樣子(やうす)が何(ど)うも、ふびんや、餘(あま)り小遣(こづかひ)がなかつたらしい。尤(もつと)も地(ぢ)もの張(はり)と俗(ぞく)に號(がう)する徒(てあひ)は、懷中(くわいちう)の如何(いかん)に係(かゝ)はらず、恁(か)うしたさもしい料簡(れうけん)と、昔(むかし)から相場(さうば)づけに極(き)めてある。
麦搗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
根方(ねかた)の処(ところ)の土(つち)が壊(くづ)れて大鰻(おほうなぎ)を捏(こ)ねたやうな根(ね)が幾筋(いくすぢ)ともなく露(あら)はれた、其(その)根(ね)から一筋(すぢ)の水(みづ)が颯(さつ)と落(お)ちて、地(ぢ)の上(うへ)へ流(なが)れるのが、取(と)つて進(すゝ)まうとする道(みち)の真中(まんなか)に流出(ながれだ)してあたりは一面(めん)。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
ほんのりとして、床(ゆか)しく薄(うす)いが、夜(よる)などは灯(ともしび)に御目(おんまな)ざしも黒(くろ)く清(すゞ)しく、法衣(ほふえ)の色(いろ)がさま/″\と在(いま)すが如(ごと)く幽(かすか)に濃(こ)い。立袈裟(たてげさ)は黒(くろ)の地(ぢ)に、毛(け)よりも細(ほそ)く斜(なゝめ)に置(お)いた、切込(きりこ)みの黄金(きん)が晃々(きら/\)と輝(かゞや)く。
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
商(あきなひ)に出(で)た留守(るす)の、晝過(ひるすぎ)は森(しん)として、柳(やなぎ)の蔭(かげ)に腰障子(こししやうじ)が閉(し)まつて居(ゐ)る、樹(き)の下(した)、店(みせ)の前(まへ)から入口(いりくち)へ懸(か)けて、地(ぢ)の窪(くぼ)むだ、泥濘(ぬかるみ)を埋(う)めるため、一面(いちめん)に貝殼(かひがら)が敷(し)いてある、白(しろ)いの、半分(はんぶん)黒(くろ)いの、薄紅(うすべに)
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
で、時々(とき/″\)ずつと寄(よ)つては、じろりと車(くるま)を見上(みあ)げるので、やがては、其(そ)の婦(たぼ)ツンとして、向(むか)うを向(む)いて、失禮(しつれい)な、と云(い)つた色(いろ)が見(み)えた。が、そんな事(こと)に驚(おどろ)くやうでは、なか/\以(もつ)て地(ぢ)ものは張(は)れない。
麦搗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
若旦那(わかだんな)、地(ぢ)たゝらを踏(ふ)みながら
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)