)” の例文
もし、二つなり、三つなりが、いっしょにあかるい世界せかいることがあったら、たがいにってちからとなってらしそうじゃないか。
明るき世界へ (新字新仮名) / 小川未明(著)
火事くわじをみて、火事くわじのことを、あゝ火事くわじく、火事くわじく、とさけぶなり。彌次馬やじうまけながら、たがひこゑはせて、ひだりひだりひだりひだり
寸情風土記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
といって、くわしくみちおしえてくれました。ぼうさんはなみだをこぼして、わせておがみながら、ころがるようにしてげていきました。
人馬 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
その広い座敷がただ一枚の絨毯じゅうたんで敷きつめられて、四角よすみだけがわずかばかりはなやかな織物の色とうために、薄暗く光っている。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
毛といふ毛はこと/″\く蛇で、其の蛇は悉く首をもたげて舌を吐いて、もつるゝのも、ふのも、ぢあがるのも、にじり出るのも見らるゝ
毒と迷信 (新字旧仮名) / 小酒井不木(著)
翌朝よくちょうセルゲイ、セルゲイチはここにて、熱心ねっしんに十字架じかむかって祈祷きとうささげ、自分等じぶんらさき院長いんちょうたりしひとわしたのであった。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
ところが、この家にひとりだけ、どうしても目をわすのが、いやでたまらないものがおりました。それはネコのクローリナでした。
近來きんらい世界せかい文運ぶんうん急激きふげき進展しんてんしたのと、國際的交渉こくさいてきかうせふいそがしくなつたのとで、わがくににおいても舊來きうらい言語げんごだけでははなくなつた。
国語尊重 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
ふたりのものはこしもかけないで、おまえが口上こうじょうもうしてくれ、いやおまえがと、小声こごえってる。老人はもとより気軽きがるな人だから
告げ人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
現在げんざいうけひしはれにおぼえあれどなにれをいとことかは、大方おほかたまへきゝちがへとたてきりて、烟草たばこにふきわたしらぬとすましけり。
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そらにあるつきちたりけたりするたびに、それと呼吸こきゅうわせるような、奇蹟きせきでない奇蹟きせきは、まだ袖子そでこにはよくみこめなかった。
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
それは丁度ちょうどおさなときからわかわかれになっていたははが、不図ふとどこかでめぐりった場合ばあい似通にかよったところがあるかもれませぬ。
「お手間てまらせることじゃない。ちとおりいって、相談そうだんしたいわけもある。ついそこまで、ほんのしばらく、つきっておくれでないか」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
をどりながら周圍しうゐつて村落むら女等をんならつゝうて勘次かんじ容子ようすてはくすくすとひそか冷笑れいせうあびけるのであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「六部になった倉松は、町内の顔役で、日頃宗次郎とは、つのいばかりしていますよ。宗次郎が死んで一番伸び伸びするのは倉松で」
そのうち上座じやうざざう食事しよくじそなへていて、自分じぶんつて一しよにべてゐるのを見付みつけられましたさうでございます。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
たま/\おんわせがしぜんとそうなっているまでだと、いくたびもおもいかえしておりますうちに、又もや朝露軒どのは
盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
『おろかものの愚老ぐらうろく智慧ちゑはせませんが、どういふでござりませうか。』と、玄竹げんちくはまた但馬守たじまのかみ氣色けしきうかゞつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
神聖たふとことば二人ふたりむすはしてくだされば、こひほろぼため此身このみ如何樣どのやうにならうとまゝ。つまぶことさへかなへば、心殘こゝろのこりはない。
つきすると、木々きぎこずえ青葉あおばつつまれ、えだえだかさなりって、小鳥ことりもりこだまこして、うえはならすくらいに、うたしました。
それであいちやんは、なぐさみに雛菊ひなぎく花環はなわつくつてやうとしましたが、面倒めんだうおもひをしてそれをさがしたりんだりして勘定かんぢやうふだらうかと
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
せめていへひとつて、ものをいはうとしても、それさへつてくれぬ始末しまつで、人々ひと/″\はいよ/\んでさわぐのでした。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
だれ戦争せんそうまうけ、だれなんうらみもない俺達おれたちころひをさせるか、だれして俺達おれたちのためにたたかひ、なに俺達おれたち解放かいほうするかを
「あの友人の細君があなたの娘さんのチーちゃんにいたい、るたけ早く来て呉れと言って居りましたよ」と言ったんです。
そんなことを、あまり熱心ねつしんに、そして感傷的かんしやうてきはなつたのちは、二人ふたりとも過去くわこやまかはにそのこゝろいとられたやうに、ぽかんとしてゐた。
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
正面まともに見れば、その表情は少し曖昧あいまいで不定で複雑だった。眼と顔とが不いだった。彼女のうちには、強健な民族の面影が感ぜられた。
そして美佐子と青年とは扉の外でささやっていた。しばらくすると、美佐子だけが、微笑ほほえみながら部屋の中へ這入はいって来た。
秘密の風景画 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
その健吉の影が、路地を抜けて、もう銀座横町へ出ているのを見送りながら、急に、わめったが、誰の顔にも、酒の気はふき消されていた。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
臆病に、大胆に、他を傷つけたり、疑つたり、連日連夜の紛争と愛情の交錯とはいよ/\こじれて、長時のけ難いにらひの状態になつた。
途上 (新字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
快活な聲がもつつてゐるのを聞きとることが出來るか出來ぬ中に(その間にアデェルの聲を聞きわけたやうに思ふ)、ドアしまつてしまつた。
人生に微笑を送る為に第一にはひの取れた性格、第二に金、第三に僕よりも逞しい神経を持つてゐなければならぬ。
闇中問答 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
若者わかものおもはずはしました。るがうち波間なみまはなれ、大空おほぞら海原うなばらたへなるひかり滿ち、老人らうじん若者わかもの恍惚くわうこつとして此景色このけしきうたれてました。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
到底とてものがれぬ不仕合ふしあわせと一概に悟られしはあまり浮世を恨みすぎた云い分、道理にはっても人情にははずれた言葉が御前おまえのその美しいくちびるから出るも
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
その汁を地蔵尊の冷たい石の鼻の穴のあたりに塗り附けて見る。そうして手をってはやしたてる。「鼻垂れ地蔵だ。やい」というのである。
低い街々ののあたらぬ屋根裏や塵埃溜ごみためや、それともまたは、歯車のう機械や飲食店の積み重なった器物の中へ、胞子を無数にきながら
花園の思想 (新字新仮名) / 横光利一(著)
「はつ‥‥」と、田中たなかはあわてて路上ろじやう腹這はらばひになつてばした。が、はなかなかとどかなかつた。手先てさき銃身じうしんとが何度なんど空間くうかん交錯かうさくつた。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
そこでさかずきかわして、つて、今日までもしずまつておいでになります。これらの歌は神語かむがたりと申す歌曲かきよくです。
「さようでございますか。そこで、富士見の馬場へ飛びこんでみますと、大分の人数がわたっておりますので……」
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
下の方から見る見るうちにいて来て、それが互にせめってはどちらとへともつかず動かされながら、そこいら一面を物凄いほど立ちこめ出していた。
かげろうの日記 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
という一定の観念の上に立って現実にはごたつく気持のもついに身をまかせ、身をよじり、手をふりしぼる心の姿態を作家的自覚によって描いてゆく。
「無礼をするな、拙者は御徒町おかちまちの島田虎之助じゃ、はたいならば時を告げてきたれ、恨みがあらばそのよしを言え」
こつちでは五ひきがみんなことりことりとおたがひにうなづきつてりました。そのときにはかにすゝんでつた鹿しか竿立さをだちになつてをどりあがつてげてきました。
鹿踊りのはじまり (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
端役ははせに大森鬘おほもりかつらを買ひ込む事にしやうと、紅葉自身がワザ/\買ひ出しに行つた処が、例の凝り性と来てゐるので、気に入つたのが見当らなかつた。
硯友社と文士劇 (新字旧仮名) / 江見水蔭(著)
自分は却て大なる苦痛に悩むがやうにどつさりふ長椅子に身を落し、遠く空のはづれに眼を移した。
黄昏の地中海 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
小屋の中では佐藤の長女がすみの方に丸まって痛い痛いといいながらまだ泣きつづけていた。を間に置いて佐藤の妻と広岡の妻とはさし向いにののしっていた。
カインの末裔 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
何よりも、りきかえること、大声おおごえを立てることがきらいです。どんなことでも、静かに話せばわかり、また、静かにはなわなければ面白おもしろくないという主義しゅぎなのです。
母の話 (新字新仮名) / アナトール・フランス(著)
とよくよく目をけて見ると、詩などは円朝わたくしわかりませんが、ゐんをふむとか、平仄ひやうそくふとかいひますが、まるちがつてりまして詩にもなんにもなつてりません。
詩好の王様と棒縛の旅人 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
四邊あたり部室へやでは甲乙たれかれかたこゑかまびすしく、廊下ろうかはしひと足音あしおともたゞならずはやい、濱島はまじまむかしから沈着ちんちやくひとで、何事なにごとにも平然へいぜんかまへてるからそれとはわからぬが
浅草公園で一度春泥にったのを元にして、原稿取りの仕事の暇々ひまひまには、熱心に探偵の真似事を始めた。
陰獣 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
とくにブラジルの沿岸えんがんのでつぱりに丁度ちようど割符わりふあはせたようにつぎはされることを氣附きづかれるであらう。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)