ふね)” の例文
そのとき、露子つゆこは、いうにいわれぬなつかしい、とおかんじがしまして、このいいおとのするオルガンはふねってきたのかとおもいました。
赤い船 (新字新仮名) / 小川未明(著)
それに、洋画家やうぐわか梶原かぢはらさんが、あめしのぎ、なみびて、ふねでも、いはでも、名勝めいしよう実写じつしやをなすつたのも、御双方ごそうはう御会心ごくわいしんことぞんじます。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
すべて、海上かいじやう規則きそくでは、ふね出港しゆつかうの十ぷん乃至ないし十五ふんまへに、船中せんちうまは銅鑼どらひゞききこゆるととも本船ほんせん立去たちさらねばならぬのである。
これから大阪おおさかまであるこうというのです。それでもふねよりははやく大阪おおさかにつくことがわかったので、ふねからおろしてもらったのでした。
明治十二年めいじじゆうにねんふね横濱よこはまきまして、そのころ出來できてゐました汽車きしや東京とうきよう途中とちゆう汽車きしやまどからそこらへん風景ふうけいながめてをりました。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
船頭せんどうくら小屋こやをがらつとけてまたがらつとぢた。おつぎはしばらつててそれからそく/\とふねつないだあたりへりた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
遠くのほうに、いくそうかのふねが見えました。船はなみの上で、おどったりはねたりしながら、鉄砲てっぽうをうって、たすけをもとめていました。
ふねおかきますと、宝物たからものをいっぱいんだくるまを、いぬさきってしました。きじがつないて、さるがあとをしました。
桃太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
が七になつても、ふねはひた/\と波止場はとばきはまでせてながら、まだなか/\けさうにない。のうちまたしても銅鑼どらる。
検疫と荷物検査 (新字旧仮名) / 杉村楚人冠(著)
「船頭の娘なら、頓兵衛とんべえの内のおふねじゃア無いか。矢口やぐちもここも、一ツ川だが、年代が少し合わないね」と宗匠は混ぜ返した。
悪因縁の怨 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
ぞ出帆したり追々おひ/\かぜも少し吹出ふきいだ眞帆まほを七分に上てはしらせハヤ四國のなだを廻りおよそ船路ふなぢにて四五十里もはしりしと思ふ頃吉兵衞はふねみよしへ出て四方を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ふねのはげしき動揺どうようにつれて、幾度いくたびとなくさるるわたくしからだ——それでもわたくしはその都度つどあがりて、あわせて、熱心ねっしんいのりつづけました。
其所そこなにはじめるかとおもふと、遼河れうが利用りようして、豆粕大豆まめかすだいづふねくだす、大仕掛おほじかけ運送業うんそうげふ經營けいえいして、たちま失敗しつぱいしてしまつたのださうである。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
どうしたのかなあ、ぼくには一昨日おとといたいへん元気な便たよりがあったんだが。今日きょうあたりもうくころなんだが。ふねおくれたんだな。ジョバンニさん。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「これもいまとなつてみれば、んでもない。ふねからうみてようかとおもつたけれど、到頭たうとうまた日本にほんつてかへつた。」
彼女の周囲 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
その弟忍熊の王、そのしわざかしこまずして、軍を興し、待ち向ふる時に、喪船にむかひてむなふねを攻めたまはむとす。ここにその喪船より軍を下して戰ひき。
それはね、エジプトからとんでくるとちゅう、あたらしいふねにたくさん、わたしは出あったのだが、どの船にもみんな、りっぱなほばしらが立っていた。
間もなく、ポウワタンふねの提督の船室で、二人の日本青年の希望を容れるかどうかについて、会議が開かれた。
船医の立場 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
鉄道病と云っても、私の取り憑かれた奴は、よく世間の婦人にあるような、ふねくるまえいとか眩暈めまいとか云うのとは、全く異なった苦悩と恐怖とを感ずるのである。
恐怖 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
月光げつこうてらもときこえてるそのなみひゞきも、おもへばけたかんじのすることだ。かうしたばんに、このうみ舟旅ふなたびをして、ふねなかめてゐるひともあらう。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
どうぢゃ! 噴水像みづふきどの! え、まだいておぢゃるか? え、いつまでも雨天しけつゞきか? 其許おぬしたんだひとつのちひさい身體からだで、ふねにもなれば、うみにもかぜにもなりゃる。
国道こくどうは日にらされて、きいろい綺麗きれいなリボンのように牧場まきばはたけ沿って先へとび、町や村を通りぬけ、人の話では、ふねの見える海までつづいているということです。
母の話 (新字新仮名) / アナトール・フランス(著)
大陸たいりくは、たとへばあめうみうかんでゐるふねである。これが浮動ふどうさまたげゐるのは深海床しんかいしようからばされた章魚たこである。そしてこの章魚たこ大陸たいりく船縁ふなべりつかんでゐるのである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
さすがは人間にんげんだ、すこし窮屈きうくつ窮屈きうくつだが、それも風流ふうりゆうでおもしろいや。や、うみがみえるぞ、や、や、ふねふねだ。なんといふことだ。どももつれてくるんだつけな。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
それは水害すゐがいのためにもしふね転覆ひつくりかへると蘇生よみがへ亡者やつが多いので、それでは折角せつかくひらけようといふ地獄ぢごく衰微すゐびだといふので、とほ鉄橋てつけうになつちまいました、それ御覧ごらうじろ
明治の地獄 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
江戸には雪のふらざる年もあれば、初雪はことさらに美賞びしやうし、雪見のふね哥妓かぎたづさへ、雪のちや賓客ひんかくまねき、青楼せいろうは雪を居続ゐつゞけなかだちとなし、酒亭しゆていは雪を来客らいかく嘉瑞かずゐとなす。
ぶつけて行くふね々々——。しぶきと、血うめきと、剣戟のつむじ、まさにこの世の修羅だった。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ふねよりふねわたりて、其祝意そのしゆくいをうけらるゝは、当時そのかみ源廷尉げんていゐ宛然えんぜんなり、にくうごきて横川氏よこかわしとも千島ちしまかばやとまでくるひたり、ふね大尉たいゐ萬歳ばんざい歓呼くわんこのうちにいかりげて
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
宇治川うぢがはふねわたせをとばへどもきこえざるらしかぢもせず 〔巻七・一一三八〕 作者不詳
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
ふところの所に僕がたたんでやった「だまかしふね」が半分顔を出していた。僕は八っちゃんが本当に可愛そうでたまらなくなった。あんなに苦しめばきっと死ぬにちがいないと思った。
碁石を呑んだ八っちゃん (新字新仮名) / 有島武郎(著)
空想旅行の方はとつくにふねはてて上陸し、パリの友達の寓居をノツクしてゐた。
あるとき (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
百姓ひやくしやうれ、町人ちやうにんれ、同船どうせんゆるす。』と、手招てまねきした。天滿與力てんまよりきがすご/\とふねからるのに、ざまアろとはぬばかりの樣子やうすれちがつて、百姓ひやくしやう町人ちやうにんはどや/\とふねつてた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
汽車きしゃふねに乗って、逃げられないように、えきみなとにも見はりをつけてほしいですな。あの男は、かけがえのない物と考えているノートを取りもどすまでは、この町をはなれないと思います。
銀座裏の酒場バー、サロンふねを出たときには、二人とも、ひどく酩酊めいていしていた。
西湖の屍人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
こうわたとき蛟龍かうりようふねを追ふ、舟中しうちゆうひとみなおそる、天を仰いで、嘆じていはく、われめいを天にく、力を尽して、万民を労す、生はなり、死はなりと、りようを見る事、蜿蜓えんていの如く、眼色がんしよくへんぜず
母となる (新字旧仮名) / 福田英子(著)
かの明治二十九年めいじにじゆうくねん三陸地方さんりくちほう海嘯つなみ被害區域ひがいくいきなが百五十ひやくごじゆうまいるにわたり、死者ししや二萬二千人にまんにせんにん重傷者じゆうしようしや四千四百人しせんしひやくにんいへや、ふねながされたもの、農地のうち損失そんしつなどで損害そんがい總額そうがく數千萬圓すうせんまんえんのぼりました。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
小判こばんふねでもきゃしめえし、御念ごねんにゃおよもうさずだ」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
ふねの曳かれながらに時雨しぐれ来る
(新字新仮名) / 富田常雄(著)
げとこそふねをまつらめ
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
ふね酒船さかぶねちちふね
どんたく:絵入り小唄集 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
ふねうへ
偏奇館吟草 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
これから、どうあるいていったら、ふねった親方おやかたや、ともだちに、しまいにはいつくことができるだろうかとかんがえていたのでしょう。
海と少年 (新字新仮名) / 小川未明(著)
うなじてたとまふなばた白銀しろがねに、珊瑚さんごそでるゝときふねはたゞゆきかついだ翡翠ひすゐとなつて、しろみづうみうへぶであらう。氷柱つらゝあし水晶すゐしやうに——
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
本船ほんせんより射出しやしゆつする船燈せんとうひかりでチラとみとめたのはその船尾せんびしるされてあつた「海蛇丸かいだまる」の三、「海蛇丸かいだまる」とはたしかにかのふね名稱めいしやうである。
勘次かんじはしつて鬼怒川きぬがはきしつたとききりが一ぱいりて、みづかれ足許あしもとから二三げんさきえるのみであつた。きしにはふねつないでなかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
そうすれば、きっと王女のお気にめしましょう。わたくしどもは、それをもって、ふねにのってまいり、うんだめしをすることにいたしましょう。
これで諭吉ゆきちは、ぶじにふねにのり、いのちびろいをしたわけですが、神戸こうべ宿屋やどやについてみると、東京とうきょう塾頭じゅくとう小幡おばたから、手紙てがみがきていました。
背景にふねほばしらを大きくいて、其あまつた所に、際立きはだつて花やかなそらくもと、蒼黒あをぐろみづの色をあらはしたまへに、裸体らたいの労働者が四五人ゐた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ふねすすむにしたがって、くものようにえていたものが、だんだんはっきりとしまかたちになって、あらわれてきました。
桃太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
そのとき私達わたくしたち人数にんずはいつもよりも小勢こぜいで、かれこれ四五十めいったでございましょうか。仕立したてたふねは二そう、どちらも堅牢けんろう新船あらふねでございました。