むら)” の例文
それは、ひろい、さびしい野原のはらでありました。まちからも、むらからも、とおはなれていまして、人間にんげんのめったにゆかないところであります。
公園の花と毒蛾 (新字新仮名) / 小川未明(著)
四国しこくしまわたって、うみばたのむら托鉢たくはつしてあるいているうちに、ある日いつどこでみち間違まちがえたか、山の中へまよんでしまいました。
人馬 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
が、道行みちゆきにしろ、喧嘩けんくわにしろ、ところが、げるにもしのんでるにも、背後うしろに、むらさと松並木まつなみきなはていへるのではない。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
でもこれがもしほんとうだったとすれば、はなのきむら人々ひとびとがみなこころ人々ひとびとだったので、地蔵じぞうさんが盗人ぬすびとからすくってくれたのです。
花のき村と盗人たち (新字新仮名) / 新美南吉(著)
お茶の仕度をしていたのは、甚兵衛の末の娘のおむら、これはまだ十九になったばかり、敵討とは縁の遠い、下町娘らしい利発者でした。
ハイ、御覽ごらんとほり、むらではおほきな建物たてものです。しかしこのおてら村中むらぢう人達ひとたちめにあるのです。わたしはこゝに御奉公ごほうこうしてるのです。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
勘次かんじ近所きんじよ姻戚みよりとのほかには一ぱんさなかつたがそれでもむらのものはみなせんづゝつてくやみにた。さうしてさつさとかへつてつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
けばこのむらはかつて壯丁そうてい多數たすう出漁中しゆつりようちゆうしつして全村ぜんそん灰燼かいじんしたことがあるさうで、これにかんがみて其後そのご女子じよし消防隊しようぼうたいをも編成へんせい
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
其の方如何様いかように陳じても天命はのがれ難い事で有る、其の方は監物の妾むらと申す者と密通致し、村の腹へ宿したる鐵之丞を家督に直さんが為に
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ては半燒酎なほしむらたのんでひにつて、それをみながら大氣焔だいきえんく。留守居るすゐ女中ぢよちうけむまかれながら、ちやれてす。菓子くわしす。
この居士こじかほばうさんらしいので、時々とき/″\僧堂そうだうしゆうまじつて、むら御齋おときなど出掛でかけることがあるとかつて宜道ぎだうわらつてゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
また當時とうじ少女しようじよはまだきてゐて、そこからあまりとほくないむらんでゐるといふことを番人ばんにんをんなからきましたが
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
そのうちにも、病人びやうにん容態ようたいは、刻々こく/\險惡けんあくになつてゆくので、たうとう、そこからあまとほくない、府下ふか××むらのH病院びやうゐん入院にふゐんさせるより仕方しかたがなくなつた。
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
たしか走水はしりみずというところ浦賀うらが入江いりえからさまでとおくもない、うみやまとのったせま漁村ぎょそんで、そしてひめのおやしろは、そのむら小高こだかがけ半腹はんぷくって
むら離れて林やはたの間をしばらく行くと日はとっぷり暮れて二人の影がはっきりと地上に印するようになった。
忘れえぬ人々 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
その習慣しゆうかんは、旅行りよこうをしないでも、一年いちねんのうちに、かならず一回以上いつかいゝじようは、自然しぜんむらにゐておこなうたものでした。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
はなしくと、なんでも韃靼人だったんじんむらに、その夫人ふじんと、土地とち某公爵ぼうこうしゃくとのあいだ小説しょうせつがあったとのことだ、とかと。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
あやしき書風しよふう正躰しやうたいしれぬ文字もじかきちらして、これが雪子ゆきこ手跡しゆせきかとなさけなきやうなるなかに、あざやかにまれたるむらといふらうといふ、あゝ植村うゑむら録郎ろくらう植村うゑむら録郎ろくらう
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
其時そのときむらうち一人ひとり老人としよりがありまして、其塲そのばけてまいり、おあしんだとはなしきいたがついては、わたくし實驗じつけんがあるから、れをば何卒どうぞツてれ、其法そのはうまうすは
てもてましものを山城やましろたかつきむらりにけるかも 〔巻三・二七七〕 高市黒人
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
極め成ほど御客おきやくさまの云るゝ通り實は酒も肴も御座れ共是は今申通り今晩こんばんむら寄合よりあひ使つかふ仕込のさかな夫ゆゑ御斷り申せしなり此上は何卒なにとぞ御免ごめん下さるべしと詫入わびいるを武士は一向聞入ずおのれ又僞りを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
一通の手紙を書いて、上に三田みたむら村長石野栄造様という宛名あてなを書いた。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
むら酒屋さかや店前みせさきまでくると、馬方うまかたうまをとめました。いつものやうに、そしてにこにことそこにはいり、どつかりとこしをろして冷酒ひやざけおほきなこつぷ甘味うまさうにかたむけはじめました。一ぱいぱいまた一ぱい
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
代紙よがみ江戸絵えどゑをお土産みやげにもらつて、あくむらへかへつてきました。
桜さく島:見知らぬ世界 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
そして、ひとめぐりの巡礼じゅんれいをすましたら、ふるさとのむらへ帰るだろう。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
むらの人たちは、よそゆきをきて、教会きょうかいへでかけました。
むかふのむらからも
赤い旗 (旧字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
北のむらより君出でて
筑波ねのほとり (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
むらはづれのおばにきく
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
城下は岩船郡いはふねこほりむら上(内藤侯五万九千石ヨ)蒲原かんばら郡に柴田しばた(溝口侯五万石)黒川くろかは(柳沢侯一万石陣営)三日市(柳沢弾正侯一万石陣営)三嶋郡に与板よいた(井伊侯二万石)刈羽かりは郡に椎谷しひや(堀侯一万石陣営)古志郡に長岡ながをか(牧野侯七万四千石ヨ)頸城くびき郡に高田たかた(榊原侯十五万石)糸魚川いといかは(松平日向侯一万石陣営)以上城下のほかすこぶる豊饒ぶねう
ゆきがふるとられなくなるから、ちょっと、となりむらまでようたしにいってくる。」と、父親ちちおやは、じたくをしながら、いいました。
ペスときょうだい (新字新仮名) / 小川未明(著)
それといふのが、時節柄じせつがらあつさのため、可恐おそろしわるやまひ流行はやつて、さきとほつたつじなどといふむらは、から一めん石灰いしばひだらけぢやあるまいか。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「ばかな六部ろくぶめ。よけいなところへして、かみさまのおばつをうけたにちがいない。そのたたりがむらにかかってこなければいいが。」
しっぺい太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
やがて夕方ゆうがたになりました。松蝉まつぜみきやみました。むらからはしろゆうもやがひっそりとながれだして、うえにひろがっていきました。
花のき村と盗人たち (新字新仮名) / 新美南吉(著)
しなはやしいくつもぎて自分じぶんむらいそいだが、つかれもしたけれどものういやうな心持こゝろもちがして幾度いくたび路傍みちばたおろしてはやすみつゝたのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
ひながら、とうさんは蝙蝠かうもりと一しよになつてあるいたものです。どうかすると狐火きつねびといふものがえるのも、むら夕方ゆふがたでした。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
あんな悲慘事ひさんじ自分じぶんむらおこつたことを夢想むそうすることも出來できず、翌朝よくあさ跡方あとかたもなくうしなはれたむらかへつて茫然自失ぼうせんじしつしたといふ。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
其中そのなかには宮籠みやごもりといふ慣例もあつた。三四郎のうちでは、年に一度いちどづゝむら全体へ十円寄附する事になつてゐる。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
大島小學校おほしませうがくかういまむら經濟けいざい維持ゐぢしてますが、しかしむら經濟けいざい首腦しゆなう池上權藏いけがみごんざうですから、學校がくかう保護者ほごしや依然いぜんとしてむかし覺悟かくごまできめた百姓ひやくしやう權藏ごんざうであります。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
はなしくと、なんでも韃靼人だつたんじんむらに、其夫人そのふじんと、土地とち某公爵ぼうこうしやくとのあひだ小説せうせつがあつたとのことだ、とかと。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
ロンドン以外いがいでは、スコットランドのエヂンバラをはじめイギリスの大都市だいとし地方ちほうまちむらにある博物館はくぶつかんひとつ/\かぞぐるならば數百すうひやくにもたつするくらゐであります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
相模女のおむら、始めのうちは、大きい眼を開いて、看護みとるつもりでしたが、次第に猛烈に睡気ねむけに襲われると、我にもあらず、健康ないびきをかいて寝込んでしまいました。
わず半里はんりか一となりのむらくのにさえ、やれ従者ともだ、輿物のりものだ、御召換おめしがえだ……、半日はんにちもかかって大騒おおさわぎをせねばならぬような、あんな面倒臭めんどうくさ現世げんせ生活せいかつおくりながら
御新造は年三十で名をおむらさんといい、大柄ない器量の方で、おさだという女中が居ります。
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
品川しながは住居じうきよからとほくもあらぬきりむら其所そこ氷川神社ひがはじんじや境内けいだいに、たきぶも如何いかゞであるが、一にちしよけるにてきして靜地せいちに、清水しみづ人造瀧じんざうたきかゝつてるので
此處ここは、御存ごぞんじでせう、ほら××むらのH病院びやうゐんですのよ。
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
やまうさぎがふもとのむらのおまつりにでかけました。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
むらのはづれにちら/\するは
桜さく島:春のかはたれ (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
きそむら立出たちいでゝ
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
むらと村とは長橋ながはし
筑波ねのほとり (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)