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陰氣
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いんき
ふりがな文庫
“
陰氣
(
いんき
)” の例文
新字:
陰気
「
貴方
(
あなた
)
は、
何
(
な
)
んかてえと
家
(
うち
)
が淋しい淋しいツて
有仰
(
おつしや
)
いますけれども、そりや家に病身の人がゐりや、
自然
(
しぜん
)
陰氣
(
いんき
)
になりもしますわ。」
青い顔
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
落
(
お
)
ち
掛
(
か
)
けた
日
(
ひ
)
が
少時
(
しばし
)
竹藪
(
たけやぶ
)
を
透
(
とほ
)
して
濕
(
しめ
)
つた
土
(
つち
)
に
射
(
さ
)
し
掛
(
か
)
けて、それから
井戸
(
ゐど
)
を
圍
(
かこ
)
んだ
井桁
(
ゐげた
)
に
蒞
(
のぞ
)
んで
陰氣
(
いんき
)
に
茂
(
しげ
)
つた
山梔子
(
くちなし
)
の
花
(
はな
)
を
際立
(
はきだ
)
つて
白
(
しろ
)
くした。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
その晩おそく、——多分十一時から十二時迄の間だつたと思ふけれど——
陰氣
(
いんき
)
な床に就く前に私は神樣にお祈りしたのです。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
「
何
(
なん
)
だか
陰氣
(
いんき
)
に
成
(
な
)
りました。こんな
時
(
とき
)
、むかし
一
(
ひと
)
つ
夜具
(
とこ
)
を
被
(
かぶ
)
つた
女
(
をんな
)
の
墓
(
はか
)
へ
行
(
ゆ
)
くと、かぜを
引
(
ひ
)
きさうに
思
(
おも
)
ひますから。」
深川浅景
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
其
(
その
)
うち
年
(
とし
)
が
段々
(
だん/\
)
片寄
(
かたよ
)
つて、
夜
(
よる
)
が
世界
(
せかい
)
の
三分
(
さんぶん
)
の
二
(
に
)
を
領
(
りやう
)
する
樣
(
やう
)
に
押
(
お
)
し
詰
(
つま
)
つて
來
(
き
)
た。
風
(
かぜ
)
が
毎日
(
まいにち
)
吹
(
ふ
)
いた。
其音
(
そのおと
)
を
聞
(
き
)
いてゐる
丈
(
だけ
)
でも、
生活
(
ライフ
)
に
陰氣
(
いんき
)
な
響
(
ひゞき
)
を
與
(
あた
)
へた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
▼ もっと見る
二では
謠
(
うたい
)
の「
善知鳥
(
うとう
)
」など、三では「
阿漕
(
あこぎ
)
」、「
鵜飼
(
うがひ
)
」など
其
(
その
)
適例
(
てきれい
)
である。
幽靈
(
ゆうれい
)
は
概
(
がい
)
して
全體
(
ぜんたい
)
の
性質
(
せいしつ
)
が
陰氣
(
いんき
)
で、
凄
(
すご
)
いものである。
相貌
(
さうぼう
)
なども
人間
(
にんげん
)
と
大差
(
たいさ
)
はない。
妖怪研究
(旧字旧仮名)
/
伊東忠太
(著)
坊主
(
ぼうず
)
までが
陰氣
(
いんき
)
らしう
沈
(
しづ
)
んで
仕舞
(
しまい
)
ましたといふに、みれば
茶椀
(
ちやわん
)
と
箸
(
はし
)
を
其處
(
そこ
)
に
置
(
お
)
いて
父
(
ちゝ
)
と
母
(
はゝ
)
との
顏
(
かほ
)
をば
見
(
み
)
くらべて
何
(
なに
)
とは
知
(
し
)
らず
氣
(
き
)
になる
樣子
(
やうす
)
、こんな
可愛
(
かわひ
)
い
者
(
もの
)
さへあるに
にごりえ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
警鐘
(
けいしよう
)
が
陰氣
(
いんき
)
に響いてくる
太陽の子
(旧字旧仮名)
/
福士幸次郎
(著)
……
話
(
はなし
)
が
騷々
(
さう/″\
)
しい。……
些
(
ち
)
と
靜
(
しづか
)
にしよう。それでなくてさへのぼせて
不可
(
いけな
)
い。あゝ、しかし
陰氣
(
いんき
)
に
成
(
な
)
ると
氣
(
き
)
が
滅入
(
めい
)
る。
間引菜
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
それは
京都
(
きやうと
)
に
共通
(
きようつう
)
な
暗
(
くら
)
い
陰氣
(
いんき
)
な
作
(
つく
)
りの
上
(
うへ
)
に、
柱
(
はしら
)
や
格子
(
かうし
)
を
黒赤
(
くろあか
)
く
塗
(
ぬ
)
つて、わざと
古臭
(
ふるくさ
)
く
見
(
み
)
せた
狹
(
せま
)
い
貸家
(
かしや
)
であつた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
そして此の
陰氣
(
いんき
)
なじめ/\した室にも、何處となく、
小意氣
(
こいき
)
な
瀟洒
(
さつぱり
)
した江戸的氣風が現はれてゐた。
平民の娘
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
内
(
うち
)
は
只
(
たゞ
)
陰氣
(
いんき
)
で
出
(
で
)
る
時
(
とき
)
に
端
(
はし
)
を
捲
(
まく
)
つた
夜具
(
やぐ
)
も
冷
(
つめ
)
たく
成
(
な
)
つて
居
(
ゐ
)
た。
彼
(
かれ
)
は
漸
(
やうや
)
く
火鉢
(
ひばち
)
に
麁朶
(
そだ
)
を
燻
(
くべ
)
た。
彼
(
かれ
)
は
側
(
そば
)
に
重箱
(
ぢゆうばこ
)
と
小鍋
(
こなべ
)
とが
置
(
お
)
かれてあるのを
見
(
み
)
た。
蓋
(
ふた
)
をとつたら
重箱
(
ぢゆうばこ
)
には
飯
(
めし
)
があつた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
あちらの方には、立派な道具などがあるには違ひないのでございますが、ひどく
陰氣
(
いんき
)
でガランとしてをりまして、私なぞとても一人で
寢
(
やす
)
む氣にはなれませんのでございますよ。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
何
(
ど
)
うしたからとて
人並
(
ひとな
)
みでは
無
(
な
)
いに
相違
(
さうい
)
なければ、
人並
(
ひとなみ
)
の
事
(
こと
)
を
考
(
かんが
)
へて
苦勞
(
くろう
)
する
丈
(
だけ
)
間違
(
まちが
)
ひであろ、あゝ
陰氣
(
いんき
)
らしい
何
(
なん
)
だとて
此樣
(
こん
)
な
處
(
ところ
)
に
立
(
た
)
つて
居
(
ゐ
)
るのか、
何
(
なに
)
しに
此樣
(
こん
)
な
處
(
ところ
)
へ
出
(
で
)
て
來
(
き
)
たのか
にごりえ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
一
枚
(
まい
)
……二
枚
(
まい
)
、と
兩方
(
りやうはう
)
で、ペエジを
遣
(
やツ
)
つ、
取
(
とツ
)
つして、
眠氣
(
ねむけ
)
ざましに
聲
(
こゑ
)
を
出
(
だ
)
して
讀
(
よ
)
んで
居
(
ゐ
)
たが、
恁
(
か
)
う
夜
(
よ
)
が
更
(
ふ
)
けて、
可恐
(
おそろ
)
しく
陰氣
(
いんき
)
に
閉
(
とざ
)
されると、
低
(
ひく
)
い
聲
(
こゑ
)
さへ
霰ふる
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
空
(
そら
)
を
見
(
み
)
ると
凍
(
こほ
)
つてゐる
樣
(
やう
)
であるし、
家
(
うち
)
の
中
(
なか
)
にゐると、
陰氣
(
いんき
)
な
障子
(
しやうじ
)
の
紙
(
かみ
)
を
透
(
とほ
)
して、
寒
(
さむ
)
さが
浸
(
し
)
み
込
(
こ
)
んで
來
(
く
)
るかと
思
(
おも
)
はれる
位
(
くらゐ
)
だのに、
御米
(
およね
)
の
頭
(
あたま
)
はしきりに
熱
(
ほて
)
つて
來
(
き
)
た。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
二三
日
(
にち
)
の
間
(
あひだ
)
は
片口
(
かたくち
)
や
摺鉢
(
すりばち
)
に
入
(
い
)
れた
葬式
(
さうしき
)
の
時
(
とき
)
の
残物
(
ざんぶつ
)
を
喰
(
た
)
べて一
家
(
か
)
は
只
(
たゞ
)
ばんやりとして
暮
(
くら
)
した。
雨戸
(
あまど
)
はいつものやうに
引
(
ひ
)
いた
儘
(
まゝ
)
で
陰氣
(
いんき
)
であつた。
卯平
(
うへい
)
を
加
(
くは
)
へて四
人
(
にん
)
はお
互
(
たがひ
)
が
只
(
たゞ
)
冷
(
ひやゝ
)
かであつた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
傍
(
そば
)
へゆけば
逃
(
に
)
げる、はなしを
爲
(
す
)
れば
怒
(
おこ
)
る、
陰氣
(
いんき
)
らしい
氣
(
き
)
のつまる、どうして
好
(
よ
)
いやら
機嫌
(
きげん
)
の
取
(
と
)
りやうも
無
(
な
)
い、
彼
(
あ
)
のやうなこ六づかしやは
思
(
おも
)
ひのまゝに
捻
(
ひね
)
れて
怒
(
おこ
)
つて
意地
(
いぢ
)
はるが
爲
(
し
)
たいならんに
たけくらべ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
俺が死んだら
何
(
ど
)
うする? 其の
癖
(
くせ
)
お前は、俺の體が
虚弱
(
きよじやく
)
だとか、俺の性質が
陰氣
(
いんき
)
だとか
謂
(
い
)
ツて、絶えず俺のことを
罵倒
(
ばたう
)
してゐる、罵倒しながら、
俺
(
おれ
)
に依ツて
自己
(
じこ
)
の
存立
(
そんりつ
)
を安全にしてゐるのだから
青い顔
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
裏町
(
うらまち
)
、
表通
(
おもてどほ
)
り、
火
(
ひ
)
を
警
(
いまし
)
むる
拍子木
(
ひやうしぎ
)
の
音
(
おと
)
も、
石
(
いし
)
を
噛
(
か
)
むやうに
軋
(
きし
)
んで、
寂然
(
しん
)
とした、
臺所
(
だいどころ
)
で、がさりと
陰氣
(
いんき
)
に
響
(
ひゞ
)
く。
間引菜
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
元來
(
もとより
)
一
腹
(
ぷく
)
一
對
(
つゐ
)
の
中
(
なか
)
に
育
(
そだ
)
ちて
他人
(
たにん
)
交
(
ま
)
ぜずの
穩
(
おだや
)
かなる
家
(
いへ
)
の
内
(
うち
)
なれば、さして
此兒
(
このこ
)
を
陰氣
(
いんき
)
ものに
仕立
(
したて
)
あげる
種
(
たね
)
は
無
(
な
)
けれども、
性來
(
せいらい
)
をとなしき
上
(
うへ
)
に
我
(
わ
)
が
言
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
の
用
(
もち
)
ひられねば
兎角
(
とかく
)
に
物
(
もの
)
のおもしろからず
たけくらべ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
地震
(
ぢしん
)
めつたになし。しかし、
其
(
そ
)
のぐら/\と
來
(
く
)
る
時
(
とき
)
は、
家々
(
いへ/\
)
に
老若
(
らうにやく
)
男女
(
なんによ
)
、
聲
(
こゑ
)
を
立
(
た
)
てて、
世
(
よ
)
なほし、
世
(
よ
)
なほし、
世
(
よ
)
なほしと
唱
(
とな
)
ふ。
何
(
なん
)
とも
陰氣
(
いんき
)
にて
薄氣味
(
うすきみ
)
惡
(
わる
)
し。
寸情風土記
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
珍
(
めづ
)
らしい
事
(
こと
)
陰氣
(
いんき
)
のはなしを
聞
(
き
)
かせられる、
慰
(
なぐさ
)
めたいにも
本末
(
もとすゑ
)
をしらぬから
方
(
はう
)
がつかぬ、
夢
(
ゆめ
)
に
見
(
み
)
てくれるほど
實
(
じつ
)
があらば
奧樣
(
おくさま
)
にしてくれろ
位
(
ぐらい
)
いひそうな
物
(
もの
)
だに
根
(
ね
)
つからお
聲
(
こゑ
)
がゝりも
無
(
な
)
いは
何
(
ど
)
ういふ
物
(
もの
)
だ
にごりえ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
闇
(
やみ
)
に
咲
(
さ
)
く
花
(
はな
)
の、たとへば
面影
(
おもかげ
)
はほのかに
白
(
しろ
)
く、あはれに
優
(
やさ
)
しくありながら、
葉
(
は
)
の
姿
(
すがた
)
の、
寂
(
さび
)
しく、
陰氣
(
いんき
)
に、
黒
(
くろ
)
いのが、ありとしも
見
(
み
)
えぬ
雲
(
くも
)
がくれの
淀
(
よど
)
んだ
月
(
つき
)
に
浅茅生
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
……
急
(
きふ
)
ごしらへの
油
(
あぶら
)
の
足
(
た
)
りない
白
(
しら
)
ちやけた
提灯
(
ちやうちん
)
一具
(
ひとつ
)
に、
小
(
ちひ
)
さくなつて、
家中
(
うちぢう
)
が
目
(
め
)
ばかりぱち/\として、
陰氣
(
いんき
)
に
滅入
(
めい
)
つたのでは、
何
(
なん
)
にも
出來
(
でき
)
ず、
口
(
くち
)
もきけない。
十六夜
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
五月雨
(
さみだれ
)
の
陰氣
(
いんき
)
な
一夜
(
あるよ
)
、
坂
(
さか
)
の
上
(
うへ
)
から
飛蒐
(
とびかゝ
)
るやうなけたゝましい
跫音
(
あしおと
)
がして、
格子
(
かうし
)
をがらりと
突開
(
つきあ
)
けたと
思
(
おも
)
ふと、
神樂坂下
(
かぐらざかした
)
の
其
(
そ
)
の
新宅
(
しんたく
)
の
二階
(
にかい
)
へ、いきなり
飛上
(
とびあが
)
つて
春着
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
變
(
へん
)
に
陰氣
(
いんき
)
で
不氣味
(
ぶきみ
)
な
晩
(
ばん
)
でございました。ちやうど
來
(
き
)
なすつた
時
(
とき
)
、
目白
(
めじろ
)
の
九
(
こゝの
)
つを
聞
(
き
)
きましたが、いつもの
八
(
や
)
つころほど
寂寞
(
ひつそり
)
して、びゆう/\
風
(
かぜ
)
ばかりさ、おかみさん。
夜釣
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
呼出
(
よびだ
)
しを
掛
(
か
)
ける
氣
(
き
)
の、
勝手
(
かつて
)
は
知
(
し
)
つた
裏口
(
うらぐち
)
へ
𢌞
(
まは
)
つて、
垣根
(
かきね
)
から
覗
(
のぞ
)
くと、
長閑
(
のどか
)
な
日
(
ひ
)
の
障子
(
しやうじ
)
を
開
(
あ
)
けて、
背戸
(
せど
)
にひら/\と
蝶々
(
てふ/\
)
の
飛
(
と
)
ぶのを
見
(
み
)
ながら、
壁
(
かべ
)
は
黒
(
くろ
)
い
陰氣
(
いんき
)
な
納戸
(
なんど
)
に
一席話
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
何
(
なに
)
も、
油堀
(
あぶらぼり
)
だつて、そこにづらりと
並
(
なら
)
んだ
藏
(
くら
)
が——
中
(
なか
)
には
破壁
(
やれかべ
)
に
草
(
くさ
)
の
生
(
は
)
えたのも
交
(
まじ
)
つて——
油藏
(
あぶらぐら
)
とも
限
(
かぎ
)
るまいが、
妙
(
めう
)
に
油壺
(
あぶらつぼ
)
、
油瓶
(
あぶらがめ
)
でも
積
(
つ
)
んであるやうで、
一倍
(
いちばい
)
陰氣
(
いんき
)
で
深川浅景
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
「
沈
(
しづ
)
んだ
船
(
ふね
)
——」と、
思
(
おも
)
はず
私
(
わたし
)
が
聲
(
こゑ
)
を
掛
(
か
)
けた。
隙
(
ひま
)
も
無
(
な
)
しに、
陰氣
(
いんき
)
な
水音
(
みづおと
)
が、だぶん、と
響
(
ひゞ
)
いた……
人魚の祠
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
前
(
まへ
)
なる
縁
(
えん
)
の
障子
(
しやうじ
)
に
掛
(
か
)
けた、十
燭
(
しよく
)
と
云
(
い
)
ふ
電燈
(
でんとう
)
の
明
(
あかり
)
の
屆
(
とゞ
)
かない、
昔
(
むかし
)
の
行燈
(
あんどん
)
だと
裏通
(
うらどほ
)
りに
當
(
あた
)
る、
背中
(
せなか
)
のあたり
暗
(
くら
)
い
所
(
ところ
)
で、
蚊
(
か
)
がブーンと
鳴
(
な
)
く……
其
(
そ
)
の、
陰氣
(
いんき
)
に、
沈
(
しづ
)
んで、
殺氣
(
さつき
)
を
帶
(
お
)
びた
樣子
(
やうす
)
は
浅茅生
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
……
寂
(
さび
)
しいにつけ、
陰氣
(
いんき
)
につけ、
隨所
(
ずゐしよ
)
停車場
(
ステエシヨン
)
の
燈
(
ともしび
)
は、
夜汽車
(
よぎしや
)
の
窓
(
まど
)
の、
月
(
つき
)
でも
花
(
はな
)
でもあるものを——
心
(
こゝろ
)
あての
川崎
(
かはさき
)
、
神奈川
(
かながは
)
あたりさへ、
一寸
(
ちよつと
)
の
間
(
ま
)
だけ、
汽車
(
きしや
)
も
留
(
とま
)
つたやうに
思
(
おも
)
ふまでで
雨ふり
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
中途
(
ちうと
)
で
落
(
お
)
ちるのは、
屆
(
とゞ
)
かないので。
其
(
そ
)
の
砂利
(
じやり
)
が、
病院
(
びやうゐん
)
の
裏門
(
うらもん
)
の、あの
日中
(
ひなか
)
も
陰氣
(
いんき
)
な、
枯野
(
かれの
)
へ
日
(
ひ
)
が
沈
(
しづ
)
むと
云
(
い
)
つた、
寂
(
さび
)
しい
赤
(
あか
)
い
土塀
(
どべい
)
へ、トン……と……
間
(
あひ
)
を
措
(
お
)
いては、トーンと
當
(
あた
)
るんです。
艶書
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
激
(
はげ
)
しく
動
(
うご
)
くは
胸
(
むね
)
ばかり……づん/\と
陰氣
(
いんき
)
な
空
(
そら
)
から、
身體
(
からだ
)
を
壓附
(
おしつ
)
けられるやうで
三人の盲の話
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
手
(
て
)
もしびれたか、きゆつと
軋
(
きし
)
む……
水口
(
みづくち
)
を
開
(
あ
)
けると、
茶
(
ちや
)
の
間
(
ま
)
も、
框
(
かまち
)
も、だゞつ
廣
(
ぴろ
)
く
大
(
おほ
)
きな
穴
(
あな
)
を
四角
(
しかく
)
に
並
(
なら
)
べて
陰氣
(
いんき
)
である。
引窓
(
ひきまど
)
に
射
(
さ
)
す、
何
(
なん
)
の
影
(
かげ
)
か、
薄
(
うす
)
あかりに
一目
(
ひとめ
)
見
(
み
)
ると、
唇
(
くちびる
)
がひツつツた。
夜釣
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
一停車場
(
あるステイシヨン
)
で、
彼
(
かれ
)
の
隣
(
となり
)
に
居
(
ゐ
)
た、
黒地
(
くろぢ
)
の
質素
(
しつそ
)
な
洋服
(
やうふく
)
を
着
(
き
)
て、
半外套
(
はんぐわいたう
)
を
被
(
はお
)
つて、
鳥打
(
とりうち
)
を
被
(
かぶ
)
つた
山林局
(
さんりんきよく
)
の
官吏
(
くわんり
)
とも
思
(
おも
)
ふ、
痩
(
や
)
せた
陰氣
(
いんき
)
な
男
(
をとこ
)
が、
薄暗
(
うすぐら
)
い
窓
(
まど
)
から
顏
(
かほ
)
を
出
(
だ
)
して、
通
(
とほり
)
がかりの
驛員
(
えきゐん
)
を
呼
(
よ
)
んで
聞
(
き
)
いた。
魔法罎
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
其
(
そ
)
の
蟋蟀
(
こほろぎ
)
と、
婦
(
をんな
)
の
聲
(
こゑ
)
を
沈
(
しづ
)
んで
聞
(
き
)
いて、
陰氣
(
いんき
)
らしく
浅茅生
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
寂然
(
ひつそり
)
した
日中
(
ひなか
)
の
硫黄
(
ゆわう
)
ヶ
島
(
しま
)
に
陰氣
(
いんき
)
な
音響
(
ひゞき
)
。
艶書
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
と
丁
(
てい
)
が
陰氣
(
いんき
)
に
怒
(
おこ
)
つた。
麻を刈る
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
陰
常用漢字
中学
部首:⾩
11画
氣
部首:⽓
10画
“陰氣”で始まる語句
陰氣臭