)” の例文
御酒ごしゆをめしあがつたからとてこゝろよくくおひになるのではなく、いつもあをざめたかほあそばして、何時いつ額際ひたひぎはあをすぢあらはれてりました。
この子 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
何の氣なしに電車に乘つてから築地にる宇田流水の事を思出して、在宅か否かは知らぬが兎に角無聊を慰める爲めに彼を訪問した。
新帰朝者日記 (旧字旧仮名) / 永井荷風(著)
(いゝえたれりはしませんよ。)とましてふ、婦人をんな何時いつにか衣服きものいで全身ぜんしん練絹ねりぎぬのやうにあらはしてたのぢや。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
犬養氏の考へによると、女は天国や天井の事を気遣つても差支ないが、男は唯もう支那の事だけ心配してればいゝ事になつてゐる。
二十七日の十時に船はポオト・サイド港にり申しさふらひき。暑気にはかに加はり、薄き単衣ひとへとなりて甲板かふばんさふらへど堪へ難くもさふらふかな。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
繃帶ほうたいかわいてれば五六にちてゝいてもいが、液汁みづすやうならば明日あすにもすぐるやうにと醫者いしやはいつたのであるが
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
いたにはあまり人がりませぬで、四五にんりました。此湯このゆ昔風むかしふう柘榴口ざくろぐちではないけれども、はいるところ一寸ちよつと薄暗うすぐらくなつてります。
年始まはり (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
草の生えた石垣いしがきの下、さっきの救助区域の赤い旗の下にはいかだもちやうど来てゐました。花城くゎじゃうや花巻の生徒がたくさん泳いでりました。
イギリス海岸 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
『お早くから難有ありがたう御座いました。留守の子供達もいろいろお世話になりまして難有ありがたう御座いました。御親切はきもに銘じてります。』
帰つてから (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
これ政府せいふ指導しだうまた消費節約せうひせつやく奬勵しやうれいわたつたとふよりも、むし國民自體こくみんじたい事柄ことがら必要ひつえうかんじてつたからだとおもふのである。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
私はこの時母の前へ此三ツの貨幣を置いて其廻そのまはりをトン/\踊りまはつたのを覚えてます、「金の機会に、銀の機会に、あかがねの機会だ」
黄金機会 (新字旧仮名) / 若松賤子(著)
どうもあぶないので、おもふやうにうごかせませなんだが、それでもだいぶきずきましたやうで、かゞみませんが、浸染にじんでりますか。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
教会へは及ばずながら多少の金を取られてる、さうして家庭かない禍殃わざはひ種子たねかれでもようものなら、我慢が出来るか如何どうだらう
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
まる年間ねんかん小言こごとはず、うらみもはず、たゞ御返事ごへんじつてります』でめられたのだからたまらない。をとこはとう/\落城らくじやうした。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
『おまへ亞尼アンニーとかつたねえ、なんようかね。』とわたくししづかにふた。老女らうぢよむしのやうなこゑで『賓人まれびとよ。』と暫時しばしわたくしかほながめてつたが
うもゆるみますと、到底とてももとやうしまわけにはまゐりますまいとおもひますが。なにしろなかがエソになつてりますから」とつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
追駈おつかけ候中とくに日は暮方角はうがくわからず彷徨さまよひりしうちはからずも九助に出會段々の物語りに手間取てまどり追々夜も更行ふけゆくしたがひ月も出しかば夫を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ただお母様が毎日毎日他所よそへ行つて着物のすすぎ洗濯や針仕事をしていくらかの賃金を貰つて来てやつとほそい煙を立てゝりました。
金銀の衣裳 (新字旧仮名) / 夢野久作(著)
なにうまはゐなかつたか? あそこは一たいうまなぞには、はひれないところでございます。なにしろうまかよみちとは、やぶひとへだたつてりますから。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
牛鍋の残りに歓声を挙げるこの未来の横綱達にも幸多かれと祝福してその夜は寝た。翌朝は大錦君と並んで二人曳の俥で場所入りする。
相撲の稽古 (新字旧仮名) / 岡本一平(著)
何だべえせえ、自分のとこでなかつたら具合ぐあえが悪かんべえが? だらハア、おらア酒え飲むのさ邪魔さねえば、何方どつちでもいどら。
赤痢 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
とうさんが玄關げんくわんひろいたて、そのをさおときながらあそんでりますと、そこへもよくめづらしいものきのすずめのぞきにました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
おほくのれいおいては古墳こふん高塚たかつか)と横穴よこあなとは、別種べつしゆかんがへられてる。よしや同所どうしよらうとも、同時代どうじだいとはかんがへられてらぬ。
丁 さう彼方此方あッちこッちることは出來できんわ。(一同に對ひ)ささ、はたらいたはたらいた。暫時ちっとのまぢゃ、はたらいた/\。さうして長生ながいきすりゃ持丸長者もちまるちゃうじゃぢゃ。
誰か一統して民をやすきにらしめんや。又一三八誰にかくみし給はんや。翁云ふ。これ又人道なれば我がしるべき所にあらず。
彼女も主家おもや離家はなれとの往復のほかには、家事向きの用事らしい用事もなく、いつも二人はいつしよにられた。私は退屈の時には本を讀んだ。
雪をんな (旧字旧仮名) / 葛西善蔵(著)
茂吉の「わがからだ机に押しつくるごとくにしてみだれごころをしづめつつり」「いきづまるばかりにいかりしわがこころしづまり行けと部屋をとざしつ」
茂吉の一面 (新字新仮名) / 宇野浩二(著)
本人ほんにん自營獨立じえいどくりつこゝろさへさだまつてれば、どんな塲所ばしよしても、またどんな境遇きやうぐうしよしても差支さしつかへなく、變通自在へんつうじざいでありませう。
女教邇言 (旧字旧仮名) / 津田梅子(著)
『ほんとに、さうでしたねえ』とだれ合槌あひづちうつれた、とおもふと大違おほちがひ眞中まんなか義母おつかさんいましもしたむい蒲鉾かまぼこいでらるゝところであつた。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
仏のまへに新薦あらこもをしきて幽霊いうれいらする所とし、入り口の戸をもすこしあけおき、とぎたてたる剃刀かみそり二てうを用意よういし今や/\と幽霊いうれい待居まちゐたり。
如何どうしてわたしぞんじてりませう?』つてあいちやんはみづか其勇氣そのゆうきおどろきました。『それはわたしつたことではありません』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
親父も喜んでわしに話す元來御目附といへば天下の樞機にあづかる人。其人のうちれば自然海内かいだいの形勢も分かるであらう。
兵馬倥偬の人 (旧字旧仮名) / 塚原渋柿園塚原蓼洲(著)
余は幸ひ苺作には力を入れらざりし為め左程さほどにも無之候これなくさふらへども、目下のところ五百ドル程の負債出来奮闘真最中に候。
新らしき祖先 (新字旧仮名) / 相馬泰三(著)
いく丁斑魚めだかでも滿足まんぞくられんなら、哲學てつがくずにはられんでせう。いやしく智慧ちゑある、教育けういくある、自尊じそんある、自由じいうあいする、すなはかみざうたる人間にんげんが。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
軽々しく出行であるかれるのも面白くない、余り顔を見せん方が見識がいけれど、然し、近頃のやうにこもつてばかりるのは、第一衛生におまへ良くない。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
かげで繪は一日々々に繪になツて來る、繪にるに從ツて其れが平凡となる、時には殆んど調子さへ出てらぬ劣惡れつあくな作のやうに思はれることもあツた。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
天のめぐみは二重である、とはシエイクスピアの句にあるが、この事業たるや、かくして三重の恵となつてるのであるから、に大したものではなからうか。
翻訳製造株式会社 (新字旧仮名) / 戸川秋骨(著)
そしてその向ふに、同じつくりの二階屋がずらりと幾軒いくけんも並んで、の裏を見せてる。二階屋の裏! 其処そこには蚊帳かやが釣つたまゝになつていへもあつた。
父の墓 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
現時げんじひとよりうらやまるゝほど健康けんかうたもれども、壯年さうねんころまでは體質たいしついたつてよわく、頭痛づつうなやまされ、み、しば/\風邪ふうじやをかされ、えずやまひためくるしめり。
命の鍛錬 (旧字旧仮名) / 関寛(著)
((孫子))(三二)輜車ししやうちり、して計謀けいぼうす。田忌でんきへいいててうかんとほつす。孫子そんしいは
實際頭巾にて覆はれるべき耳の形がそとに作り設けて有ればとて格別かくべつに不審をいだくにも及ばざるべし。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
我背子わがせこれば屋戸やどくささへおもひうらがれにけり 〔巻十一・二四六五〕 柿本人麿歌集
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
……われは画工の手に取りすがりて、最早もはや登りゆくべし、こゝにはりたくなしとむつかりたり。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
揺るるともただ見てらむ、消ゆるともまた見て居らむ、堪へ堪へて日の暮るるまで、なほなほに寂しがりつつ。わが宿の竹の林の夕あかり、裏山松の松風も聴けば親しさ。
彼は眞面目なる努力の跡を世に殘して、新思潮のおもむくべき道に悲しむべき先驅者となつたのである。彼は天成の詩人であつた。彼は一日として歌はずにはられぬ詩人である。
新しき声 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
其建物そのたてものをいへば松田まつだ寿仙じゆせん跡也あとなり常磐ときは萬梅まんばい跡也あとなり今この両家りやうけにんまへ四十五銭と呼び、五十銭と呼びて、ペンキぬり競争きやうそう硝子張がらすはり競争きやうそうのきランプ競争きやうそう火花ひばならし候由そろよしそろ
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
「いや僕は、観光団といふ言葉を聞くと、妙な懐しさを感ぜずにはられないんだ。」
環魚洞風景 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
「旦那さい。ぬーん、悪事やなくとお、びらん。此処くまんかい、かくくゐていど、やびいたる。」
奥間巡査 (新字旧仮名) / 池宮城積宝(著)
ある地方ちはう郡立病院ぐんりつびやうゐんに、長年ながねん看護婦長かんごふちやうをつとめてるもとめは、今日けふにち時間じかんからはなたれると、きふこゝろからだたるんでしまつたやうな氣持きもちで、れて廊下らうかしづかにあるいてゐた。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
いどは勝手口からたゞ六歩むあし、ぼろ/\に腐つた麦藁屋根むぎわらやね通路かよひぢいどふてる。
水汲み (新字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)