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六歩
「ぷッ、」と噴出すように更に笑った女が、
堪らぬといった
体に、裾をぱッぱッと、もとの
方へ、
五歩六歩駈戻って、
捻じたように胸を折って
井は勝手口から
唯六歩、ぼろ/\に腐つた
麦藁屋根が
通路と
井を
覆ふて
居る。
内に
在れば
必ず
筆を取つて書いて
居る
好者と、
巌谷から
噂の有つた
其人で、
始て社に
訪れた時は
紺羅紗の
古羽織に
托鉢僧のやうな
大笠を
冠つて、
六歩を
踏むやうな
手付をして
振込んで来たのです