其中そのなか)” の例文
貝層かひそうきはめてあさいが、其下そのした燒土やけつちそうつて、其中そのなかすくなからず破片はへんがある。幻翁げんおうげんると、香爐形こうろがたさう同一どういつだといふ。
子守こもりがまた澤山たくさんつてた。其中そのなか年嵩としかさな、上品じやうひんなのがおもりをしてむつつばかりのむすめ着附きつけ萬端ばんたん姫樣ひいさまといはれるかく一人ひとりた。
迷子 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
往来はくらくなる迄込み合つてゐる。其中そのなかで木戸番が出来る丈大きな声を出す。「人間から出る声ぢやない。菊人形からる声だ」
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
其中そのなかの一人は同じ村外れの一軒のあばから金色きんいろの光りが輝きいでるのを見て不思議に思つてうかがつて見ますと何様どうでせう
金銀の衣裳 (新字旧仮名) / 夢野久作(著)
をはるやあいちやんは、一ぽんがあつて、其中そのなか眞直まつすぐ這入はいれるのにがつきました。あいちやんは『これは奇妙きめうだ!』とおもひました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
あツと驚いて再び蓋をすると、其中そのなか物馴ものなれた一人が「えてものだ、鉄砲を撃て。」と云ふ。一同すぐに鉄砲をつて、何処どこあてともしに二三ぱつ
雨夜の怪談 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
エイフツドクハク伊等イとう各國かくこく上等じやうとう船客せんきやくいづれも美々びゞしき服裝ふくさうして着席ちやくせきせる其中そのなかまじつて、うるはしき春枝夫人はるえふじん可憐かれん日出雄少年ひでをせうねんとの姿すがたえた。
尾張町へ来ると客はほとんど入れかわった。が、乗って来る客の半分は依然買物に来た婦人達であった。其中そのなかに彼は先刻資生堂で卓を同じくした婦人を見付みつけ出した。
乗合自動車 (新字新仮名) / 川田功(著)
廣庭ひろにはむいかまくちからあをけむ細々ほそ/″\立騰たちのぼつて軒先のきさきかすめ、ボツ/\あめ其中そのなかすかしてちてる。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
月より流るゝかぜこずえをわたるごとに、一庭の月光げつくわう樹影じゆえい相抱あひいだいておどり、はくらぎこくさゞめきて、其中そのなかするのは、無熱池むねつちあそぶのうをにあらざるかをうたがふ。
良夜 (新字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
ぐつと襟元をつかんで引寄せられるやうな強い魅力を感じると共に、はては我れを忘れて其中そのなかへ突きつて共に顛倒てんだうし共に混迷したいやうな気持になるのはう云ふわけであらう。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
これを熟視じゆくしされると、兩對岸りようたいがんあひ接觸せつしよくしてゐた模樣もよう想像そう/″\せられるであらうが、さう接續せつぞくしてゐたとかんがへてのみ説明せつめいられる地理學上ちりがくじよう事項じこうが、また其中そのなかふくまれてゐるのである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
其中そのなかけて苦勞性くろうせうのあるおひとしのびやかにあとをやつけたまひし、ぐりにぐればさて燈臺とうだいのもとらさよ、本郷ほんごう森川町もりかはちようとかや神社じんじやのうしろ新坂通しんざかどほりに幾搆いくかまへの生垣いけがきゆひまわせしなか
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
々大なる石片せきへんり、打ち壞き小破片とし、其中そのなかより目的にかなひたるものをえらす迄は右に記せし所に同樣どうやうなるべきも、夫よりのちは或は左手さしゆに獸皮の小片を持ち皮越かはこしに石片せきへんつま
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
去年から今年にかけて、故国の動乱を避けて、漂泊さすらいの旅に出た露西亜の音楽家達が、幾人も幾人も東京の楽壇をにぎわした。其中そのなかには、ピアノやセロやヴァイオリンの世界的名手さえ交っていた。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
やがて行列がた。何でも長いものだつた。さむの前を静かな馬車やくるまが何台となく通る。其中そのなかに今話したちいさな娘がゐた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
『さうか、だけど屹度きつとくづおなぐらゐはいつてたにちがひない』帽子屋ばうしや不平ふへいたら/″\で、『麺麭パン庖丁ナイフ其中そのなかんだナ』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
今度こんどこの弦月丸げんげつまる航海かうかいには乘客じやうきやくかずは五百にんちか船員せんゐんあはせると七百にん以上いじやう乘組のりくみであるが、其中そのなか日本人につぽんじんといふのは夫人ふじん少年せうねんわたくしとの三めいのみ
追手おっての人々もおなじ村境むらざかいまで走って来たが、折柄おりからの烈しい吹雪ふぶきへだてられて、たがいに離れ離れになってしまった。其中そのなかでも忠一は勇気をして直驀地まっしぐらに駈けた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
縁側えんがはきてひらき、「いざ御覽ごらんあそばさるべし」とつかふ。「一寸ちよいと其中そのなかはひつてよ」と口輕くちがるまをされければ、をとこハツといひて何心なにごころなくかごはひる。
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ぼく溪流けいりう沿ふてこのさびしい往來わうらいあてもなくるいた。ながれくだつてくも二三ちやうのぼれば一ちやう其中そのなかにペンキで塗つたはしがある、其間そのあひだを、如何どん心地こゝちぼくはぶらついたらう。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
其中そのなかにバルザツクの旧宅を保管して居ると云ふ老人は内藤鳴雪めいせつ翁そつくりの顔をして居た。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
緑葉りよくえふはやしでめぐらしてる、其中そのなか畑地はたちほかには人一個ひとひとりえぬ。
してすつかり其中そのなかに集めてしまひました。
金銀の衣裳 (新字旧仮名) / 夢野久作(著)
其中そのなかくゞつたがあふぐとこずえしろい、つきかたち此処ここでもべつにかはりはかつた、浮世うきよ何処どこにあるか十三夜じふさんやで。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
糸のが止むと、又もや話声はなしごえや笑い声が聞えた。其中そのなかにお葉の声も聞えるかと、重太郎はなおも耳を傾けていた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
かれへやすみたゝんであつた薄汚うすぎたない蒲團ふとんいて、其中そのなかもぐんだ。すると先刻さつきからのつかれで、なにかんがへるひまもないうちに、ふかねむりにちて仕舞しまつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
恰度ちやうど立去たちさるべきときました、いけにはそろ/\其中そのなかんだ澤山たくさんとり動物どうぶつ群集ぐんじゆうしてました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
此二このふたつ悲劇ひげきをわつて彼是かれこれするうち大磯おほいそくと女中ぢよちゆうが三にんばかり老人夫婦としよりふうふ出迎でむかへて、その一人ひとりまどからわたしたつゝみ大事だいじさうに受取うけとつた。其中そのなかには空虚からつぽ折箱をりも三ツはひつてるのである。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
彌次連やじれん其中そのなかからだい一にわたくし飛掛とびかゝつてた一にんは、獨逸ドイツ法學士はふがくしとかいふをとこ隨分ずゐぶん腕力わんりよくたくましい人間にんげんであつたが、此方こなた多少たせう柔道じうだう心得こゝろえがあるので、拂腰こしはらひ見事みごときまつてわたくしかち、つゞいてやつ
其中そのなかで、末吉すゑよし貝塚かひづかは、やゝのぞみがある。
其中そのなかでも、彼女かれは蛇の申子もうしごで、背中に三つのうろこが有るということが、一般の人々に最も多く信ぜられていた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
さうして兩手りやうてはして、其中そのなかくろあたまんでゐるから、ひぢはさまれてかほがちつともえない。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
幼君えうくんきつとならせたまひて、「けつしてづることあひならず一生いつしやう其中そのなかにてくらすべし」とおもてたゞしてのたまふ氣色けしきたはむれともおもはれねば、何某なにがしあまりのことにことばでず、かほいろさへあをざめたり。
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
其中そのなかには宮籠みやごもりといふ慣例もあつた。三四郎のうちでは、年に一度いちどづゝむら全体へ十円寄附する事になつてゐる。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
見舞みまひ盛花もりばなを、貴方あなたなんだとおもひます——わざとね——青山あをやま墓地ぼちつて、方々はう/″\はか手向たむけてあります、其中そのなかから、りたけれてないのをつて、こしらへてたんですもの、……
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そのあひだ宗助そうすけ懷手ふところでをしてそばつてゐた。さうしてとこけるやいなや、そこ/\に着物きものてゝ、すぐ其中そのなかもぐんだ。御米およね枕元まくらもとはななかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
幼君えうくん「さてなんにてもしよくこのむべし、いふがまゝにあたふべきぞ、退屈たいくつならば其中そのなかにてうたひまひ勝手かつてたるべし。たゞ兩便りやうべんようほかそとづることをゆるさず」と言棄いひすててたまひぬ。
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
が、代助がます/\たのむので、では云つてげませうと前置をして、代助のうかしてゐる例を挙げ出した。梅子は勿論わざと真面目まじめを装つてゐるものと代助を解釈した。其中そのなか
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
食卓しよくたくは、人数にんず人数にんずだけに、左程大きくはなかつた。部屋のひろさに比例して、むしすぎる位であつたが、純白じゆんぱくな卓布を、取り集めた花でつゞつて、其中そのなか肉刀ナイフ肉匙フオークいろえてかゞやいた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
代助は二三の唐物ひやかして、入用いりやうしな調とゝのへた。其中そのなかに、比較的たかい香水があつた。資生堂で練歯磨ねりはみがきを買はうとしたら、わかいものが、しくないと云ふのに自製のものをして、しきりすゝめた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)