“付(つ)” の例文
又御身(おんみ)の位地として相当の準備なくては叶(かな)はず、第一病婦の始末だに、尚(なほ)付(つ)きがたき今日の場合、如何(いかん)ともせんやうなきを察し給へ。
母となる (新字旧仮名) / 福田英子(著)
いや、一旦(いったん)はもう杭(くい)を打つたんですが、近所が去年焼けたもんですから、又なんだかごた付(つ)いて……。一体どうなるんでせうかねえ。
赤い杭 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
此大勢(このたいせい)を以(もつ)て推算(すゐさん)すると、朝鮮(てうせん)、臺灣等(たいわんとう)の輸入超過(ゆにふてうくわ)を合算(がつさん)しても、年末迄(ねんまつまで)には一億(おく)六七千萬圓(まんゑん)と云(い)ふ大凡(おほよそ)の豫想(よさう)が付(つ)いたのであつた。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
上等にするとその時フライ鍋で人参(にんじん)と玉葱(たまねぎ)とジャガ芋をよく炒(い)り付(つ)けて牛肉と一緒に今のブラウンソースへ入れて一時間も煮ますが
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
卯平(うへい)は久振(ひさしぶり)で故郷(こきやう)に歳(とし)を迎(むか)へた。彼等(かれら)の家(いへ)の門松(かどまつ)は只(たゞ)短(みじか)い松(まつ)の枝(えだ)と竹(たけ)の枝(えだ)とを小(ちひ)さな杙(くひ)に縛(しば)り付(つ)けて垣根(かきね)の入口(いりくち)に立(た)てたのみである。
土 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
丸で女(をんな)が御白粉(おしろい)を付(つ)ける時の手付(てつき)と一般であつた。実際彼は必要があれば、御白粉(おしろい)さへ付(つ)けかねぬ程に、肉体に誇(ほこり)を置く人である。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
私(わたし)は、霜(しも)に睡(ねむり)をさました劍士(けんし)のやうに、付(つ)け燒(や)き刃(ば)に落(お)ちついて聞(き)きすまして、「大丈夫(だいぢやうぶ)だ。火(ひ)が近(ちか)ければ、あの音(おと)が屹(きつ)とみだれる。」
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
黒い路(みち)がまたひょっくり草の中にあらわれました。そして達二の兄さんが、とつぜん、眼の前に立ちました。達二はしがみ付(つ)きました。
種山ヶ原 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「ふん。昔(むかし)も今(いま)もあるもんじゃねえ。隣近所(となりきんじょ)のこたァ、女房(にょうぼう)がするに極(きま)ッてらァな。行(い)って、こっぴどくやっ付(つ)けて来(き)ねえッてことよ」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
斯く爲しつつ空中の鳥を目掛けて投(な)げる時は、網(あみ)を以て之を覆(おほ)ふと同樣、翼を抑(おさ)へ体を締(し)め付(つ)け鳥をして飛揚(ひやう)する事を得ざらしむ。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
「時間器械の部屋の中というと、あの焼跡の地下室に据(すえ)付(つ)けてある、あれのことだね。君が僕に入(はい)れといったあの器械の中のことだね」
海底都市 (新字新仮名) / 海野十三(著)
古木(こぼく)の樣(やう)な醜(みにく)き腕(うで)を延(のば)して、鐵車(てつしや)の檻(おり)を引握(ひきつか)み、力任(ちからまか)せに車(くるま)を引倒(ひきたほ)さんとするのである。猛犬稻妻(まうけんいなづま)は猛然(まうぜん)として其(その)手(て)に噛(か)み付(つ)いた。
そのうちに、どこからか、彼(かれ)らに向(む)かって、空気銃(くうきじゅう)をうったものがあります。一羽(わ)のすずめは、羽(はね)の付(つ)け根(ね)のあたりを傷(きず)つけられました。
温泉へ出かけたすずめ (新字新仮名) / 小川未明(著)
『いや、御手数です。大した事はなかったんですが……かなり骨を折せやあがった……私は一人を遣(や)っ付(つ)けておいてこいつを』
水晶の栓 (新字新仮名) / モーリス・ルブラン(著)
謂ふ心は、両足を地面(ぢべた)に喰(く)つ付(つ)けてゐて歌ふ詩といふ事である。実人生と何等の間隔なき心持を以て歌ふ詩といふ事である。
弓町より (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
かつて或る暴風雨の日に俄(にわか)に鰻(うなぎ)が喰(く)いたくなって、その頃名代の金杉(かなすぎ)の松金(まつきん)へ風雨を犯して綱曳(つなひ)き跡押(あとおし)付(つ)きの俥(くるま)で駈付(かけつ)けた。
二葉亭余談 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
彼(かれ)は詮方(せんかた)なくお眠(やす)みなさい、とか、左樣(さやう)なら、とか云(い)つて出(で)て來(こ)やうとすれば、『勝手(かつて)にしやがれ。』と怒鳴(どな)り付(つ)ける權幕(けんまく)。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
殊に日が暮れているとはいえ人家や、電車道に近い薄明るい処で、これだけの思い切った仕事を遣(や)っ付(つ)けている以上、生やさしい度胸ではない。
近眼芸妓と迷宮事件 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
殊に此年(ことし)に入ってからはお母さんの急(せ)っ付(つ)き方が頻繁(ひんぱん)になった。絶えず機会を覗っているらしい。次のような問答は僕の度々洩れ聞くところだ。
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
若(わか)き血潮(ちしほ)の漲(みな)ぎりに、私は微醺(びくん)でも帶(お)びた時のやうにノンビリした心地(こゝち)になツた。友はそんなことは氣が付(つ)かぬといふ風(ふう)。
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
そのうちに荒田老に付(つ)き添(そ)っていた鈴田が、平木中佐と何かしめしあわせたあと、朝倉先生の近くによって来てたずねた。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
気(き)が付(つ)いて伊香刀美(いかとみ)が振(ふ)り返(かえ)ってみますと、すぐうしろの松(まつ)の木の枝(えだ)に、ついぞ見(み)たこともないような、美(うつく)しい真(ま)っ白(しろ)な着物(きもの)が掛(か)けてありました。
白い鳥 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
是(これ)から長家(ながや)の者が五六人付(つ)いて出かけましたが、お寺は貧窮山難渋寺(ひんきゆうさんなんじふじ)と云(い)ふので、本堂(ほんだう)には鴻雁寺(こうがんじ)が二挺(てう)点(とも)つて居(ゐ)る。金
黄金餅 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
浜には津軽(つがる)や秋田(あきた)へんから集まって来た旅雁(りょがん)のような漁夫たちが、鰊(にしん)の建網(たてあみ)の修繕をしたり、大釜(おおがま)の据(す)え付(つ)けをしたりして、黒ずんだ自然の中に
生まれいずる悩み (新字新仮名) / 有島武郎(著)
カキツバタの語原は書きつけ花の意で、その転訛(てんか)である。すなわち、書きつけは摺(す)り付(つ)けることで、その花汁(かじゅう)をもって布を摺(す)り染(そ)めることである。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
足(あし)をばた/\やつて大聲(おほごゑ)を上(あ)げて泣(な)いて、それで飽(あ)き足(た)らず起上(おきあが)つて其處(そこ)らの石(いし)を拾(ひろ)ひ、四方八方に投(な)げ付(つ)けて居(ゐ)た。
画の悲み (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
火(ひ)に慣(な)れないものは火(ひ)を恐(おそ)れるために、小火(ぼや)の中(うち)にこれを押(おさ)へ付(つ)けることが出來(でき)ずして大事(だいじ)に至(いた)らしめることが多(おほ)い。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
一所(ひとつところ)に土橋がかかっていた。その下に枯蘆(かれあし)が茂っていた。また一所に樋(ひ)の口があった。枯れた苔(こけ)が食(く)っ付(つ)いていた。
隠亡堀 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「あら、長(ちやう)ちやんも居(ゐ)たの。学校がお休み………あら、さう。」其(そ)れから付(つ)けたやうに、ほゝゝほと笑つて、さて丁寧(ていねい)に手をついて御辞儀(おじぎ)をしながら
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
紅(あか)い木(こ)の実(み)を摘取(つみと)ると、すぐそれが汚(けが)れて了(しま)ひ、ちよいと草木(くさき)の根(ね)を穿(ほじ)つても、この手(て)が付(つ)くと凋(しぼ)んでゆく。
そういいながら吉は釣瓶の尻の重りに縛(しば)り付(つ)けられた欅(けやき)の丸太(まるた)を取りはずして、その代わり石を縛り付けた。
笑われた子 (新字新仮名) / 横光利一(著)
惡(わ)るくすると取(とり)かへしの付(つ)かぬ事(こと)になると申(まをし)まして、夫(そ)れで其時(そのとき)申(まをし)ました、私(わたし)が郷里(きやうり)の幼(おさ)な友達(ともだち)に是(こ)れ/\斯(か)う言(い)ふ娘(こ)が有(あ)つて、肝(かん)もちの、はつきりとして
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
崇拝者ポトカ伯夫人がニースから駆(か)け付(つ)けると、瀕死(ひんし)のショパンは、この同国人に何か歌ってくれと言った。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂、野村あらえびす(著)
『福鼠(ふくねずみ)はさぞ心地(こゝろもち)が惡(わる)いだらう』と愛(あい)ちやんは思(おも)ひました、『只(たゞ)眠(ねむ)つてるばかりで氣(き)が付(つ)かないんだわ』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
男はまさしく餓えたように女のそばに喰(く)っ付(つ)き廻っていて、物憂い昼間の仕事台に向っていたときの男とは別人のような元気と精力をもっているようにおもわれた。
香爐を盗む (新字新仮名) / 室生犀星(著)
舟(ふね)がまた一間半(けんはん)ばかり岸(きし)を離(はな)れた時(とき)、玄竹(げんちく)は下男(げなん)を促(うなが)して兩掛(りやうが)けを擔(かつ)がせ、大急(おほいそ)ぎで岸(きし)へ駈(か)け付(つ)けて
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
山田(やまだ)とも付(つ)かず石橋(いしばし)とも付かずでお茶を濁(にご)して居(ゐ)たのです、其頃(そのころ)世間(せけん)に持囃(もてはや)された読物(よみもの)は、春(はる)のや君(くん)の書生気質(しよせいかたぎ)、南翠(なんすゐ)君(くん)の何(なん)で有つたか、社会小説(しやくわいせうせつ)でした、それから
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
其時(そのとき)村(むら)の内(うち)に一人(ひとり)の老人(としより)がありまして、其塲(そのば)に驅(か)け付(つ)けて參(まい)り、錢(おあし)を呑(の)んだと云(い)ふ話(はなし)を聞(きい)たが就(つい)ては、私(わたくし)が實驗(じつけん)があるから、其(そ)れをば何卒(どうぞ)行(や)ツて見(み)て呉(く)れ、其法(そのはう)と申(まう)すは
付(つ)て飛石に押(おし)たるものならんか右二ヶ條の趣(おもむ)き而已(のみ)にても心付べき筈(はず)なり是(これ)調(しら)べし人の過(あやま)りにして勿々(なか/\)罪は斷し難(がた)し且又其夜傳吉が參りし占(うらな)ひ者を呼で傳吉の歸りし刻限(こくげん)を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
だから、木村博士を怪しいと考えたのですが、木村博士が盗賊をするのはおかしいと思い、死体を見ると、果たして黒子(ほくろ)が付(つ)け黒子(ぼくろ)だったので、替え玉だなと思ったのです。
紫外線 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
額のつまった、眼元口元の凜々(りゝ)しい顔に子供らしい怒りを含んで、つッと立った儘弟と私の方をきり/\睨(ね)め付(つ)けている。信一は一と縮みに縮み上って蒼くなるかと思いの外
少年 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
けれども藩士の禄券と云うものは悪銭身に付(つ)かずと云(い)うような訳(わ)けで、終(つい)にはなくして仕舞(しま)って何もありはしない。兎(と)に角(かく)に中津(なかつ)藩の穏かであったと云うことは間違いない話です。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
日本海軍の起源(きげん)は、安政初年の頃(ころ)より長崎にて阿蘭人(オランダじん)の伝(つた)うるところにして、伝習(でんしゅう)およそ六七年、学生の伎倆(ぎりょう)も略(ほぼ)熟(じゅく)したるに付(つ)き、幕議(ばくぎ)、遠洋(えんよう)の渡航を試(こころみ)んとて軍艦(ぐんかん)咸臨丸(かんりんまる)を艤装(ぎそう)し
警官(けいくわん)を出張(しゆつちやう)さして嚴(げん)に取締(とりしまり)を付(つ)けたのであるが、それでも參詣人(さんけいにん)は一向(かう)减(げん)じ無(な)い。
そうした彼の思想は父信秀の代からのもので政略や付(つ)け焼刃(やきば)ではないようだ。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
蕉風の付(つ)け合(あひ)に関する議論は樋口功(いさを)氏の「芭蕉研究」に頗(すこぶ)る明快に述べられてゐる。尤も僕は樋口氏のやうに、発句は蕉門の竜象(りゆうざう)を始め蕪村も甚だ芭蕉には劣つてゐなかつたとは信ぜられない。
芭蕉雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
祖母に強求(ねだ)る、一寸(ちょっと)渋る、首玉(くびったま)へ噛(かじ)り付(つ)いて、ようようと二三度鼻声で甘垂(あまた)れる、と、もう祖母は海鼠(なまこ)の様になって、お由(よし)——母の名だ——彼様(あんな)に言うもんだから、買って来てお遣りよ、という。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
以前何かの折に一寸引合に出した事のある米国の劇場監督チヤールズ・フロオマンは、恐ろしい厳(やかま)し屋(や)で、相手が誰であらうと、自分の指図に従はないものは手厳しく遣(や)つ付(つ)けるので名高い男だつた。
君(きみ)が死(し)を以(もつ)て貼(は)り付(つ)けたビラの跡(あと)はまだ生々(なま/\)しい。
學海居士(ガクカイコジ)の評文(ひようぶん)の目(め)に付(つ)きたるも之(これ)を以(もつ)てなり。
「罪と罰」の殺人罪 (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)