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甘垂
主人は
肖りたい
名の
下に、
甘垂るい
金玉糖を
幾切か
頬張つた。これは
酒も
呑み、
茶も
呑み、
飯も
菓子も
食へる
樣に
出來た、
重寶で
健康な
男であつた。
祖母に
強求る、
一寸渋る、
首玉へ
噛り
付いて、ようようと二三度鼻声で
甘垂れる、と、もう祖母は
海鼠の様になって、お
由——母の名だ——
彼様に言うもんだから、買って来てお遣りよ、という。
東片町時代には大分
老耄して
居睡ばかりしていたが、この婆さん猫が時々二葉亭の膝へ
這上って
甘垂れ声をして
倦怠そうに
戯れていた。
お延の漢語が突然津田を
擽った。彼は笑い出した。ちょっと
眉を動かしたお延はすぐ
甘垂れるような口調を使った。