臺所だいどころ)” の例文
新字:台所
宗助そうすけは五六日前にちまへ伊藤公いとうこう暗殺あんさつ號外がうぐわいたとき、御米およねはたらいてゐる臺所だいどころて、「おい大變たいへんだ、伊藤いとうさんがころされた」とつて
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ひとへに寄縋よりすがる、薄暗うすぐらい、えさうに、ちよろ/\またゝく……あかりつてはこの一點ひとつで、二階にかい下階した臺所だいどころ内中うちぢう眞暗まつくらである。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
とうさんはそのあたらしい草履ざうりをはいたあしで、おうち臺所だいどころそとあそんでにはとりきました。おほきな玉子たまごをよくとうさんに御馳走ごちさうしてれたにはとり
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
以て當寺の檀家だんか一同へ御目見を仰付らるべし此旨村中むらぢうへ申達すべしとの事なり下男共げなんども何事も知らざれば是を聞てきもつぶし此頃迄臺所だいどころで一つに食事しよくじ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
以前いぜんねこつて、不潔ふけつなものをかれてこまつたばかりか、臺所だいどころらしたといふので近所きんじよから抗議かうぎまうまれて、ために面倒めんどう外交關係がいかうかんけいおこしたことがあつてから
ねこ (旧字旧仮名) / 北村兼子(著)
こうみえてもまだ貴樣等きさまら臺所だいどころ土間どまにおすはりして、おあまりを頂戴ちやうだいしたこたあ、たゞの一どだつてねえんだ。あんまおほきなくちたゝきあがると、おい、くればんはきをつけろよ
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
次が臺所だいどころで、水瓶みづがめでも手桶てをけでも金盥かなだらいでも何でも好く使込むであツて、板の間にしろかまどにしろかまにしろお飯櫃はちにしろ、都てふきつやが出てテラ/\光ツてゐた。雖然外はきたない。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
行火あんくわあたるならいつでもとこなかれていてはらないぞえ、さんは臺所だいどころのもとをこゝろづけて、旦那だんなのおまくらもとへはいつもとほりおわかしにお烟草盆たばこぼんわすれぬやうにして御不自由ごふじいうさせますな
うらむらさき (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ひとりでこと/\と臺所だいどころおとをたてゝゐたりするやうになつた。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
小六ころくなんにもこたへなかつた。臺所だいどころからきよつて含嗽茶碗うがひぢやわんつて、戸袋とぶくろまへつて、かみ一面いちめんれるほどきりいた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
あの、とほりだ。さすがに、たゝみうへへはちかづけないやうにふせぐが、天井裏てんじやううらから、臺所だいどころねずみえたことは一通ひととほりでない。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
聞し周藏しうざう七左衞門の兩人も馳來り勝手より手燭てしよくを取寄る此時村の小使あるき三五郎は臺所だいどころて居たりしが物音ものおとに驚き金盥かなだらひ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
そのおひな井戸ゐどから石段いしだんあがり、土藏どざうよことほり、桑畠くはばたけあひだとほつて、おうち臺所だいどころまでづゝみづはこびました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
其樣そんところかへるにあたるものかちつともおつかないこといからわたしうちなさい、みんなも心配しんぱいすることなん此子このこぐらゐのもの二人ふたり三人さんにん臺所だいどころいたならべておまんまべさせるに文句もんくるものか
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
それも下女げぢよ臺所だいどころはたらいてゐるときは、だしもだが、きよかげおともしないとなると、なほことへん窮屈きゆうくつかんじがおこつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
裏町うらまち表通おもてどほり、いましむる拍子木ひやうしぎおとも、いしむやうにきしんで、寂然しんとした、臺所だいどころで、がさりと陰氣いんきひゞく。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
告て臺所だいどころへ下り所化しよけへもあつく禮をのべ居たる處へ奧の方より侍僧じそう出來いできたり明日は未明みめいの御供そろひにて相良まで御出あるにより陸尺ろくしやく仲間ちうげん支度したくすべしと申渡しけるを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
うちにはひろいた玄關げんくわんと、田舍風ゐなかふう臺所だいどころ入口いりぐちと、入口いりぐちが二つになつてましたが、その臺所だいどころ入口いりぐちからますと、爐邊ろばたではもう夕飯ゆふはんはじまつてました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
かちんくにはらないよ、臺所だいどころ火消壺ひけしつぼからずみつてておまへ勝手かつていておべ、わたし今夜中こんやぢゆう一枚ひとつげねばならぬ、かど質屋しちや旦那だんなどのが御年始着ごねんしぎだからとてはりれば
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
大根曳だいこひきは、家々いへ/\行事ぎやうじなり。れよりさき、のきにつりてしたる大根だいこ臺所だいどころきて澤庵たくあんすをふ。今日けふたれいへ大根曳だいこひきだよ、などとふなり。
寸情風土記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
いつもごと臺所だいどころからすみ持出もちだして、おまへひなさらないかとけば、いゝえ、とおきやうつむりをふるに、ではればかり御馳走ごちそうさまにならうかな、本當ほんたう自家うち吝嗇奴けちんばうめやかましい小言こごとばかりやがつて
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
いづみが、またはじめたぜ。」そのたゞひとつの怪談くわいだんは、先生せんせいが十四五のとき、うらゝかなはる日中ひなかに、一人ひとり留守るすをして、ちやにゐらるゝと、臺所だいどころのおへツつひえる。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
臺所だいどころ豪傑儕がうけつばら座敷方ざしきがた僭上せんじやう榮耀榮華えいえうえいぐわいきどほりはつし、しやて、緋縮緬小褄ひぢりめんこづままへ奪取ばひとれとて、竈將軍かまどしやうぐん押取おつとつた柄杓ひしやく采配さいはい火吹竹ひふきだけかひいて、鍋釜なべかま鎧武者よろひむしや
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
つゞいて、臺所だいどころを、こと/\と跫音あしおとがして、いたかゝる。——いたへ、とき二人ふたり姿すがたたのであるが——また……實際じつさいより、おもいたひろこと
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
臺所だいどころれば引窓ひきまどから、えんてば沓脱くつぬぎへ、見返みかへれば障子しやうじへ、かべへ、屏風びやうぶへかけてうつります。
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
こゝろいて、すばやい春葉しゆんえふだから、「みづだ、みづだ。」と、もう臺所だいどころぶのがきこえて、わたしかけおりるのと、入違いれちがひに、せま階子段はしごだん一杯いつぱい大丸おほまるまげの肥滿ふとつたのと、どうすれつたか
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
もう一呼吸ひといきで、あがるところであつた。臺所だいどころから、座敷ざしきへ、みづ夜具やぐ布團ふとん一所いつしよちまけて、こたつはたちまながれとなつた。が屈強くつきやうきやく居合ゐあはせた。女中ぢよちうはたらいた。家内かないおちついた。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
何時いつにか、住居すまひはひつて縁側えんがは座敷ざしき臺所だいどころ、とまゝにふたつがくるあそぶ。
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
臺所だいどころより富士ふじゆ。つゆ木槿むくげほのあかう、茅屋かややのあちこちくろなかに、狐火きつねびかとばかりともしびいろしづみて、池子いけごふもときぬたをりから、いもがりくらん遠畦とほあぜ在郷唄ざいがううたぼんぎてよりあはれささらにまされり。
逗子だより (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ぴつたりめたふすままい……臺所だいどころつゞくだゞつぴろ板敷いたじきとのへだてる……出入口ではひりぐちひらきがあつて、むしや/\といはらんゑがいたが、年數ねんすうさんするにへず、で深山みやまいろくすぼつた、引手ひきてわき
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
臺所だいどころから縁側えんがは仰山ぎやうさんのぞ細君さいくんを「これ平民へいみんはそれだからこまる……べものではないよ。」とたしなめて「うだい。」と、裸體らたい音曲師おんぎよくし歌劇オペラうたふのをつてせて
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
これはさすがに、井戸端ゐどばたで、のりけるわけにはかない、さりとて用人ようにん若御新造わかごしんぞ、さして深窓しんさうのとふではないから、隨分ずゐぶん臺所だいどころに、庭前ていぜんではあさに、ゆふに、したがひのつまなまめかしいのさへ
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
臺所だいどころせま張出はりだしで、おさんはれてから自分じぶん行水ぎやうずゐ使つかつた。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
うち女中ぢよちうなさけで。……あへ女中ぢよちうなさけふ。——さい臺所だいどころから葡萄酒ぶだうしゆ二罎にびん持出もちだすとふにいたつては生命いのちがけである。けちにたくはへた正宗まさむね臺所だいどころみなながれた。葡萄酒ぶだうしゆ安値やすいのだが、厚意こゝろざし高價たかい。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
いかゞぢや、それでて、二階にかいで、臺所だいどころ一切いつさいつき、洗面所せんめんじよも……
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
綴蓋とぢぶた女房にようばうせま臺所だいどころで、總菜そうざい菠薐草はうれんさうそろへながら
大阪まで (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
臺所だいどころ手桶てをける。」
夜釣 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
野原のはらのやうな臺所だいどころ
麦搗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)