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伊藤公
宗助は五六
日前伊藤公暗殺の
號外を
見たとき、
御米の
働いてゐる
臺所へ
出て
來て、「おい
大變だ、
伊藤さんが
殺された」と
云つて
御米もつまりは
夫が
歸宅後の
會話の
材料として、
伊藤公を
引合に
出す
位の
所だから、
宗助が
進まない
方向へは、たつて
話を
引張たくはなかつた。
其後日毎の
新聞に
伊藤公の
事が五六
段づゝ
出ない
事はないが、
宗助はそれに
目を
通してゐるんだか、ゐないんだか
分らない
程、
暗殺事件に
就ては
平氣に
見えた。