此處こゝ)” の例文
新字:此処
じゆく家族的かぞくてき組織そしきであるから各人かくじん共同きようどうものである、塾生じゆくせい此處こゝ自分じぶんいへ心得こゝろえ何事なにごと自分じぶん責任せきにんつてらねばなりません。
女教邇言 (旧字旧仮名) / 津田梅子(著)
『さうだ、神樣に頼みたいことがあつたら、前から拜むより、うしろからさう言つた方がよく聞えるぜ、お賽錢さいせん此處こゝからの方がくよ。』
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
「それはわしほうからいふ言葉ことばでさあ。こうして此處こゝうまれて此處こゝでまた俺等わしらです。一つたび土産みやげはなしでもきかせてくれませんか」
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
『まァ、大層たいそうよろこんでること』あいちやんはおもつてほもつゞけました。『をしへて頂戴てうだいな、ね、わたし此處こゝから何方どつちけばいの?』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
此處こゝぞ御恩の報じ處、なさけを殺し心を鬼にして、つれなき諫言を進むるも、御身の爲め御家の爲め、さては過ぎ去り給ひし父君の御爲ぞや。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
『ぢや、エウゲニイ、フエオドロヰチでも此處こゝんでい、ちよつおれれツてつてるとへ……ちよつとでいからツて!』
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
此處こゝ筒袖つゝそで片手かたてゆつたりとふところに、左手ゆんで山牛蒡やまごばうひつさげて、頬被ほゝかぶりしたる六十ばかりの親仁おやぢ、ぶらりと來懸きかゝるにみちふことよろしくあり。
城の石垣 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そこで、外國人ぐわいこくじん吾等われら立去たちさつたあとで、このしま上陸じやうりくして、此處こゝ自分じぶんが、第一だいいち發見はつけんしたしまだなんかと、くだひたつて無益だめもうすのだ。
ついでだとおもつてたが、此處こゝからぢやあつちのはうのそれつてべえ仕切しきつてすつちんだから、其處そこれてえとおもつて
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
おんあるひと二年目にねんめせていまあるじ内儀樣かみさま息子むすこ半次はんじはぬもののみなれど、此處こゝ死場しにばさだめたるなればいやとてさら何方いづかたくべき
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
此處こゝからはるゝは世界せかいからはるゝもおなこと世界せかいからはるゝはころさるゝもおなこと、すれば追放つゐはうとは死罪しざいかくぢゃ。
この温泉をんせんはたして物質的ぶつしつてきぼく健康けんかう效能かうのうがあるかいか、そんなことわからないがなにしろ温泉をんせんわるくない。すくなくとも此處こゝの、此家このや温泉をんせんわるくない。
都の友へ、B生より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
見らるゝ樣にて何となく居惡ゐにくく成たり最早もはや江戸の勝手かつてわかりたれば此處こゝに居ず共又外に宜處よきところ幾許いくらも有るべしと或時主人久藏にむかひ我等豫々かね/″\日光につくわうの御宮を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
幾らお前さんたちが騷いだツてな、今日は先生がお出なさらねえうちは、何うしたツて此處こゝを通す事ツちやねえ。
解剖室 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
宗助そうすけ此處こゝ訪問はうもんしたのは、十ぐわつすこのある學期がくきはじめであつた。殘暑ざんしよがまだつよいので宗助そうすけ學校がくかう徃復わうふくに、蝙蝠傘かうもりがさもちひてゐたこといま記憶きおくしてゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
裏庭の方の障子は微白ほのじろい。いつの間にか仲働が此處こゝの雨戸丈はけたのである。主人はそばに、夜着の襟に半分程、赤く圓くふとつた顏を埋めて寢てゐる娘を見て、微笑ほゝゑんだ。
半日 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
其眺矚そのてうしよくや甚だ廣濶くわうくわつなるにあらず、否、此處こゝよりはその半腹を登り行く白衣はくいの行者さへ見ゆと言ふなる御嶽の姿も、今日けふは麓の深谷より簇々むら/\と渦上する白雲の爲めに蔽はれて
秋の岐蘇路 (旧字旧仮名) / 田山花袋(著)
なり濶い面積の平野に躑躅や山菖蒲が咲いてゐて高原氣分を漂はせてゐる荒寞の景が人を襲ふが、此處こゝは雪がまだ山々にむらぎえむら殘りの頃か、さなくば秋の夕べの物淋しい頃が
華厳滝 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
大丈夫だいじやうぶだといふところで、望生ぼうせいに一たい如何どうしたのかとうてると、草刈くさかりながに、子供こどもて、去年きよねんくれ此處こゝ大穴おほあなけたのは、此人達このひとたちだとげたために、いくらお前達まへたちねこかぶつても駄目だめだと
古綿ふるわたのごとく此處こゝ寸斷ちぎ彼所かしこ寸斷ちぎ
鬼桃太郎 (旧字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
此處こゝ藝術げいじゆつ偉大ゐだいちからがある。
妖怪研究 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
此處こゝ駿河するがとよばしめよ
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
つけて向ふの村へ何處どこでも行きます廣さは十三里と云ますが左樣さうはございません狐が渡るといふのも昔の話でハイ鯉やふな鰻は大層捕れますダガ十月から彼岸時分まで氷で漁は出來ませんナニサ兎は少し取れますがけだもの何處どこ此處こゝも開けたので一疋も居なくなりましたハイ遊廓なんテ見られたもんでは
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
墓原はかはらたのは十二時過じすぎ、それから、あゝして、あゝして、と此處こゝまであひだのことをこゝろ繰返くりかへして、大分だいぶん時間じかんつたから。
星あかり (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
『そんなことめ!』と女王樣ぢよわうさまさけんで、『眩暈めまひがする』それから薔薇ばら振向ふりむいて、『なにをお前方まへがた此處こゝでしてたのか?』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
なんためわたしだの、そら此處こゝにゐる不幸ふかう人達計ひとたちばかりがあだか獻祭けんさい山羊やぎごとくに、しゆうためこゝれられてゐねばならんのか。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
日出雄少年ひでをせうねんたゞ一人ひとりさだめてさびしく、待兼まちかねことだらうと、おもつたので、わたくし大佐たいさわかれげて、此處こゝ立去たちさことけつした。
はらつたら此處こゝにあんぞ」といつてばたりと飯臺はんだいふたをした。あと勘次かんじ蒲團ふとんからずりしてたら、むぎばかりのぽろ/\しためしであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
ロミオ 心臟しんざう此處こゝのこってゐるのに、なんかへることが出來できようぞい? どん土塊つちくれめ、引返ひッかへして、おのが中心たましひさがしをれ。
いまぢあ、すこしれやしたがね、此處こゝへはじめて南洋なんやうからたときあ、まだ殘暑ざんしよころだつたがそれでも、毎日々々まいにち/\/\、ぶるぶるふるえてゐましただよ
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
老叟らうそうしづかに石をでゝ、『我家うちの石がひさし行方ゆきがたしれずに居たが先づ/\此處こゝにあつたので安堵あんどしました、それではいたゞいてかへることにいたしましよう。』
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
此年このとし三のとりまでりてなかにちはつぶれしかど前後ぜんご上天氣じやうてんき大鳥神社おほとりじんじやにぎわひすさまじく、此處こゝかこつけに檢査塲けんさばもんよりみだ若人達わかうどたちいきほひとては
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
誰れ見ねども膝もくづさず、時々鬢のほつれに小波さゞなみを打たせて、吐く息の深げなるに、哀れは此處こゝにも漏れずと見ゆ。主はぞ、是れぞ中宮ちゆうぐうが曹司横笛なる。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
かこち昨夜ゆうべ四日市よつかいちへんなる三人の若い者此處こゝ妓樓あそびやそれ遊興あがりて夜をふか宿いねるに間もなく夜はしらみたりと若い者に起され今朝けさしもぶつ/\とつぶやきながら妓樓あそびや
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
『さうだ。此處こゝで下りるんだよ。……けども來る時に此處こゝで停つたかね。』と、小池は考へ込むふうをした。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
此處こゝはわが姉のとつげる家にて、さらに心置くべきもの一人もあらねば、長くとゞまりて、御嶽おんたけにも登り給へ、王瀧わうたきにも遊び給へ、殊に、橋戸はしど村は木曾山中屈指の勝と稱せらるゝところなれば
秋の岐蘇路 (旧字旧仮名) / 田山花袋(著)
彼處かしこ此處こゝたはぶるゝ
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
「あの、後程のちほど内證ないしよう御新姐ごしんぞさんが。きつ御待おまあそばせよ。此處こゝに。ござんすか。」とさゝやいて、すぐに、ちよろりとえる。
麦搗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
夫人ふじん牢屋らうやる』とつて女王樣ぢよわうさま死刑執行者しけいしつかうしやに、『此處こゝれてまゐれ』そこ死刑執行者しけいしつかうしやごとはしりました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
だが、あんまり威張ゐばれないて、此樣こんくるま製造こしらへては如何どうでせうと、此處こゝまで工夫くふうしたのはこのわたくしだが、肝心かんじん機械きかい發明はつめい悉皆みんな大佐閣下たいさかつかだよ。
ロレ ならば、此處こゝにござれ。わしひとりかう。はて、氣懸きがゝりになってたわ。おゝ、こりゃなに不祥ふしゃうこと出來しゅつらいしたのではいからぬまでい。
此處こゝたよ、そんなにばらなくつたつてえゝから、なんだかおとつゝあは」おつぎの勘次かんじしかこゑやはらかでさうして明瞭めいれう勘次かんじみゝひびいた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
いとまともならば彌々いよ/\病人びやうにん伯父おぢ心配しんぱいをかけ、痩世帶やせせたいに一日の厄介やくかいどくなり、其内そのうちにはと手紙てがみばかりをりて、此處こゝこゝろならずもおくりける。
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そとにでても、此處こゝで一つのさやなかで、かうしておたがひにおほきくなつたことをわすれないで、仲善なかよくしませうね」
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
此處こゝなりれます。』と老爺ぢいさんぼくそばこしおろして煙草たばこひだした。けれど一人ひとり竿さをだけ場處ばしよだからボズさんはたゞ見物けんぶつをしてた。
都の友へ、B生より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
はいはうから病人びやうにんなのですがな。』とハヾトフは小聲こごゑふた。『や、わたし聽診器ちやうしんきわすれてた、つてますから、ちよつ貴方あなた此處こゝでおください。』
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
背負せおひて立出是も西の方へ行しがやがて伊勢屋の家内かないさわぎ立しゆゑ私し此處こゝらば盜賊の連累まきぞへに成んと是をおそれて迯出せしをりかくとらはれて候なりと申せしかば大岡殿是を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
『して其人は何處いづこにおする』。『そは此處こゝより程とほからぬ往生院わうじやうゐんなづくる古き僧庵に』。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
『不信心な人。……此處こゝまで來て拜みやはりやへんね。』
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
さるほどに、やままたやまのぼればみねます/\かさなり、いたゞき愈々いよ/\そびえて、見渡みわたせば、見渡みわたせば、此處こゝばかりもとを、ゆきふうずる光景ありさまかな。
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)