日頃ひごろ)” の例文
むしあひはんした放縱はうじう日頃ひごろ自然しぜん精神せいしんにも肉體にくたいにも急激にはか休養きうやうあたへたのでかれ自分じぶんながら一はげつそりとおとろへたやうにもおもはれて
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
わたくし頭髪かみたいへんに沢山たくさんで、日頃ひごろはは自慢じまんたねでございましたが、そのころはモーとこりなので、かげもなくもつれてました。
もんはなれて、やがて野路のみちかゝところで、横道よこみちからまへとほくるまうへに、蒋生しやうせい日頃ひごろ大好物だいかうぶつの、素敵すてきふのがつてた。
麦搗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
次の朝ミル爺さんは気がついてみると、海のまん中にある大きな岩の上にたおれていました。そばにいるのは日頃ひごろ仲のいいコックのジムです。
海からきた卵 (新字新仮名) / 塚原健二郎(著)
康頼 わしはそれよりも、日頃ひごろ念ずる神様の不思議の力によって、みやこへ帰ることの許さるるよう祈ったほうがいいと思うようになりました。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
御機嫌ごきげんちがひたらばれまでとしてあそびのかはりのおいとまねがひしに流石さすが日頃ひごろつとめぶりもあり、一日すぎてのつぎはやきてはやかへれと
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
見て扨は重五郎日頃ひごろ我につらく當りしはかへつなさけありし事かと龍門りうもんこひ天へのぼ無間地獄むげんぢごく苦痛くつうの中へ彌陀如來みだによらい御來迎ごらいかうありて助を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
母様はますますあなたを可愛かあいがり、あなたもますます母様に尽したのでした。この日頃ひごろあなたは病気ではあったものの、なおかつ機嫌がよかった。
少年・春 (新字新仮名) / 竹久夢二(著)
今宵こよひ家例かれいり、宴會えんくわいもよふしまして、日頃ひごろ別懇べっこん方々かた/″\多勢おほぜい客人まろうどまねきましたが、貴下こなたそのくみくははらせらるゝは一だん吾家わがや面目めんもくにござる。
日頃ひごろは彼も、レビュー見物にひとしおの風情ふぜいを添える思いつきとして、大いに賛意を表していたその仮面を、今はのろわないではいられなかった。
人間豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
わが日頃ひごろちかひそむくものなればおほせなれども御免下ごめんくだされたし、このみてするものはなきいやしきわざの、わが身も共々とも/″\牛馬ぎうばせらるゝをはぢともせず
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
が、日頃ひごろいかつい軍曹ぐんそう感激かんげきなみださへかすかににぢんでゐるのをてとると、それになんとないあはれつぽさをかんじてつぎからつぎへと俯向うつむいてしまつた。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
わたくしが日頃ひごろ行きれた浅草あさくさ公園六区ろっく曲角まがりかどに立っていたのオペラかんの楽屋で、名も知らなければ、何処どこから来るともわからない丼飯屋どんぶりめしやじいさんが
勲章 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
お婆様はやがてきっとなって私を前にすえてこう仰有おっしゃいました。日頃ひごろはやさしいお婆様でしたが、その時の言葉には私は身も心もすくんでしまいました。
溺れかけた兄妹 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
いいえ、はなすものか、江戸中えどじゅうに、おんなかずほどあっても、おもめたのはおまえ一人ひとり。ここでえたな、日頃ひごろねがもうした、不動様ふどうさま御利益ごりやくちがいない。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
北向の部屋の外には、裏木戸から勝手へ通うわずかばかりの空地がある。そこには日頃ひごろ植物の好きな節子が以前の神田川に近い家の方から移し植えたはぎがある。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
これはすでに十ねんからまへことで、其後そのゝちうまれた最早もはや八歳はつさいになりますが、さて、わたくし日頃ひごろのぞみは、自分じぶんうして、海外かいぐわい一商人いつしやうにんとしてつてるものゝ
みんなにまた口汚くちぎたなくいわれる疑懼ぎくと、ひとつは日頃ひごろ嘲弄ちょうろうされる復讐ふくしゅうの気持もあって、実に男らしくないことですが、手近にあった東海さんの上着からバッジをぬす
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
ことに私をば娘のやうに思ひ、日頃ひごろの厚きなさけは海山にもたとへ難きほどに候へば、なかなかことばを返し候段にては無之これなく、心弱しとは思ひながら、涙のこぼれ候ばかりにて
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
打つて變りし瀧口が今日此頃けふこのごろの有樣に、あれ見よ、當世嫌ひの武骨者ぶこつものも一度は折らねばならぬ我慢なるに、笑止や日頃ひごろ吾等を尻目に懸けて輕薄武士と言はぬ計りの顏
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
細長い男は返事もせずに、帽子を脱いで、胸のあたりをあおいでいる。日頃ひごろからなるひさしさえぎられて、菜の花を染め出す春の強き日を受けぬ広きひたいだけは目立って蒼白あおしろい。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
わたしは、父が時々出すくせで、打解けてわたしに話しかけはしまいかと心待ちにしていた。……けれど父は、つね日頃ひごろの例の冷たいお愛想をすら、言ってはくれなかった。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
自分はあずまの田舎大尽だいじんごとくすべて鷹揚おうように最上等の宿舎に泊り、毎日のんきに京の見物、日頃ひごろけちくさくため込んだのも今日この日のためらしく、惜しげも無く金銀をまき散らし
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
さいはひなるかな、せふ姙娠中にんしんちゆう屡〻しば/\診察を頼みし医師は重井おもゐと同郷の人にして、日頃ひごろ重井おもゐの名声を敬慕し、彼と交誼こうぎを結ばん事を望み居たれば、此人このひとによりて双方の秘密を保たんとて
母となる (新字旧仮名) / 福田英子(著)
うなると日頃ひごろ探檢氣たんけんきしやうじて、危險きけんおもはず、さらおくはうすゝむと、如何いかに、足下あしもと大々蜈蜙だい/″\むかでがのたくツてる——とおもつたのはつかで、龕燈がんどうらしてると
たうとうおしまひには日頃ひごろから大好きだつたアングルの橙色の重い本まで尚一層のがたさのために置いてしまつた。——何といふ呪はれたことだ。手の筋肉に疲勞が殘つてゐる。
檸檬 (旧字旧仮名) / 梶井基次郎(著)
その内に数馬はどう思ったか、多門へ体当たいあたりを試みました。どう思ったかと申しますのは日頃ひごろ数馬は体当りなどは決して致さぬゆえでございまする。わたくしははっと思いました。
三右衛門の罪 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
日頃ひごろ自慢のあごひげを、だれにとられたのか、それとも抜け落ちてしまつたのか、とにかく起きて、のどがかわいたので、水をのみに、ふら/\と川の方へ行く途中でくまに会ひますと熊は
ライオンの大損 (新字旧仮名) / 村山籌子(著)
万に一つ治る奇蹟きせきがあるのだろうかと、寺田は希望を捨てず、日頃ひごろけちくさい男だのに新聞広告で見た高価な短波治療機ちりょうきを取り寄せたり、枇杷びわの葉療法の機械を神戸こうべまで買いに行ったりした。
競馬 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
わたくしも少しおどろきまして、此分このぶんではとてこと出来できまいと困りましたから、わたし日頃ひごろ御贔屓ごひいきあづかりまする貴顕きけんのおかたところまゐりまして、みぎのお話をいたしますると、そんならばさいはひわたくしくから
牛車 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
とおずおず口移しに真似まねて言った。不断、お蘭のいうことはすべて賢い言葉だと思って、口移しに真似て見るのが四郎の癖であった。日頃ひごろはそれも愛嬌あいきょうに思えたが、今日はお蘭には悲しかった。
みちのく (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
日頃ひごろ眺むる東京の煙も、此四五日は大息おおいき吐息といきの息巻荒くあがる様に見える。然し此処ここは田舎である。都の師走しわすは、田舎の霜月しもつき冬枯ふゆがれの寂しい武蔵野は、復活の春を約して、麦が今二寸に伸びて居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
われは日頃ひごろ約翰様ヨハネさま帰依信仰きえしんかうしてゐる。此御方このおかたもやはり浮浪ふらうにあらせられて、接続つゞきいお言葉ことばまをされたではいか。さぞかしあたゝかいお言葉ことばであつたらう。さうへば、今年ことしはるじつ温和をんわだ。
私は、私の流儀に従って、日頃ひごろ尊敬する大音楽家の列伝を書いた。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
がらにもなくこんなことをかんがえて、西蔵チベットんでる仲間なかまからす一々いちいちたづねてはなしたが、みんな日頃ひごろラランの悪知慧わるぢえをよくつてゐるので、だれ一緒いつしよばうとするものがなかつた。ラランは不気嫌ふきげんだつた。
火を喰つた鴉 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)
キクッタはそれを見て、日頃ひごろおもひがかなつたと、大悦おほよろこびでした。
熊捕り競争 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
日頃ひごろ剽軽へうきんさで松さんは、仔鹿の頭のところに、しやがみこんだ。
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
無情はお前日頃ひごろのつとめ。
ルバイヤート (新字新仮名) / オマル・ハイヤーム(著)
いよいよ駄目だめ観念かんねんしましたときに、わたくし自分じぶん日頃ひごろ一ばん大切たいせつにしていた一かさね小袖こそでを、形見かたみとして香織かおりにくれました。
葉子は日頃ひごろから成績の悪い生徒ではありませんでした。けれど鉛筆と紙さえ持つと、何時いつでも——授業の時間でさえも絵をきたがる癖がありました。
先生の顔 (新字新仮名) / 竹久夢二(著)
日頃ひごろ閑卻かんきゃくしている慚愧ざんきと絶望のねんが動き初めるにつれて、自分は一体どうしてここまで堕落する事ができたものかと、我ながら不思議な心持にもなって来る。
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
おゝ、ヂュリエット、おまひ艶麗あてやかさがおれ柔弱にうじゃくにならせて、日頃ひごろきたうておいた勇氣ゆうききっさきにぶってしまうた。
聞き扨は日頃ひごろ仕方しかたおもひ當りたりとそれより二人に歸り庄三郎に金子をわたしけるにお常忠八は是を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
日頃ひごろ沈着ちんちやくで、何事なにごとにも動顛どうてんしたことのない大佐たいさおもてには、此時このとき何故なにゆゑか、心痛しんつうきはまりなきいろえたのである。
日頃ひごろ彼の気質として、心を決することは行うことに等しかった。泉太、繁の兄弟の子供の声も最早彼の耳には入らなかった。ただ、心を決することのみが彼を待っていた。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
燒け殘りたる築垣ついがきの蔭より、屋方やかたの跡をながむれば、朱塗しゆぬり中門ちゆうもんのみ半殘なかばのこりて、かどもる人もなし。嗚呼あゝ被官ひくわん郎黨らうたう日頃ひごろちように誇り恩をほしいまゝにせる者、そも幾百千人の多きぞや。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
如何いかきゝ如何いかばかりあんじやしけん、どくのことしてけるよ、いで今日けふくれなんとするを、れいあしおとするころなり、日頃ひごろくもりしむねかゞみすゞしき物語ものがたりはらさばやとばかり
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
松江しょうこう日頃ひごろ、おいらの大好だいすきとかで、いたおろしをしたのはもとより、版下はんしたまでをあつめているほどしゃ仲間なかま、それがゆうべ、芝居しばいかえりにひょっこりって、このつぎ狂言きょうげんには
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
が、門の奥にある家は、——茅葺かやぶき屋根の西洋館はひっそりと硝子ガラス窓をとざしていた。僕は日頃ひごろこの家に愛着を持たずにはいられなかった。それは一つには家自身のいかにも瀟洒しょうしゃとしているためだった。
悠々荘 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
わしはこちらでまだ三浦みうら殿様とのさまに一もおにかかりませぬが、今日きょうひいさまのお手引てびきで、早速さっそく日頃ひごろのぞみかなえさせていただわけにはまいりますまいか。