生命せいめい)” の例文
生命せいめいをまっとうしているとしたら、そのうちにきっと奇妙な事件がおこり、新聞やラジオの大きなニュースとして報道されるだろう。
金属人間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
飛騨の奥ふかく迷い入る人は、大切な生命せいめいを一個の畚に託して、眼もくらむばかりの急流の上を覚束なくも越えねばならぬのである。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
落葉おちばには灰際はひぎはから外側そとがはつたひてがべろ/\とわたつた。卯平うへい不自由ふじいう火箸ひばし落葉おちばすかした。迅速じんそく生命せいめい恢復くわいふくした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
そのひかったひとみなかに、たとえ肉体にくたいほろびても、けっして永久えいきゅうなない生命せいめいのあることが刹那せつなかんじられたのであります。
少女と老兵士 (新字新仮名) / 小川未明(著)
肉体の生命せいめい奇蹟的きせきてき無事ぶじだったかわりに、あの少年の精神せいしん狂気きょうきあたえられたのではないか? 少女たちはにじ松原まつばらからめいめいのみやこへ帰った。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかるにこゝ一大いちだい事件じけんおこつた。それはほかでもない、吾等われら生命せいめいつなたの沙魚ふかにくがそろ/\腐敗ふはいはじめたことである。
いま社會しやくわいは一回轉くわいてんした。各個人かくこじん極端きよくたん生命せいめいおもんじ財産ざいさんたつとぶ、都市としは十ぶん發達はつたつして、魁偉くわいゐなる建築けんちく公衆こうしゆ威嚇ゐかくする。科學くわがくつき進歩しんぽする。
日本建築の発達と地震 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
それほどおそろしいいきおいでかあさんからいてったしおが——十五ねんのちになって——あのかあさんと生命せいめいりかえっこをしたような人形娘にんぎょうむすめしてた。
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
すなは大正十二年たいしようじゆうにねん關東大地震かんとうだいぢしんおいては十萬じゆうまん生命せいめい五十五億圓ごじゆうごおくえん財産ざいさんとをうしなひ、二年後にねんご但馬たじまくにのけちな地震ぢしんため四百しひやく人命じんめい三千萬圓さんぜんまんえん財産ざいさんとをそん
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
しかし私はここに不衛生なる裏町に住んでいる果敢ない人たちが今なお迷信と煎薬せんじぐすりとにその生命せいめいを托しこの世を夢と簡単にあきらめをつけている事を思えば
ふくだけがちゅうに浮かび、そして、まるで生命せいめいのあるもののように動いて、一枚一枚ぬぎすてられていくのだ。
きまくだん×(16)あらしなか生命せいめいしてたゝかふおまへたちおれたちの前衛ぜんゑい、あゝ×××××(17)
なほ何かをもとさがしてゐる時に、たれも一人としてその生命せいめいつなあたへてくれるものはありませんでした。
冬を迎へようとして (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
さうして挿絵さしゑ桂舟けいしう担当たんとうするなど、前々ぜん/\の紙上から見るとすこぶ異色いしよくを帯びてました、ゆえこれだいる、我楽多文庫がらくたぶんこ生命せいめいだいまたしばら絶滅ぜつめつしたのです
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
おいらなければいず、ぼく池上權藏いけがみごんざうぬるまでおいないだらうとおもひます、ぬるいまはのきはにも、かれさら一段いちだん光明くわうみやうなる生命せいめいのぞんでるだらうとおもひます。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
大地震おほぢしんを、あのときすでに、不氣味ぶきみ按摩あんま豫覺よかくしたるにあらざるか。しからば八千八聲はつせんやこゑきつゝも、生命せいめいだけはたすかつたらう。きぬあらひしむすめも、みづはだこがすまい。
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
日本人は異人種の鈍い憎悪の為めに、生命せいめいの貴さをさとらない処から、廉価な戦死をするのだと云っている。たれの書物をでも見るがい。殆ど皆そんな風に観察している。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
然れども二つとはなき此の生命せいめいすてても真理しんりの為めにつくさんと欲するものはかくの如き演劇的えんげきてき同盟どうめいに加はることあたはざるなり、なんぢ一致いつちせんと欲する乎、づ汝の主義しゆぎ決行けつかうせよ
時事雑評二三 (新字旧仮名) / 内村鑑三(著)
大塚のうちには何か迎ひに来る物が有るなどと騒ぎをやるにつけて母がつまらぬ易者などにでも見て貰つたか、な話しではあるが一月のうちに生命せいめいが危ふいとか言つたさうな
うつせみ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
少年の頃によく経験したことのあると同じやうな純な敬仰けいこうの心がふと燃え上つた。その時自分の頭に『生命せいめいの故郷』といふことばが一つの尊い啓示が何かのやうにひらめいた。なつかしい詞だ。
愛は、力は土より (新字旧仮名) / 中沢臨川(著)
尾瀬おせが原を戸倉とくらかへるべしと、たちまち一决す、之によりて戸倉にいたるを得べき日数もあらかじ想像さう/″\することを得、衆心はじめて安んじ、犠牲ぎせいに供したる生命せいめいからうじてたもつを得べからしめたり
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
たちまわたくしみみにはっきりとしたひとつのささやき、『これは海神かいじんいかり……今日限きょうかぎみこと生命せいめいる……。』おぼえずはっとして現実うつつにかえれば、みみるはただすさまじきなみおとかぜさけび——が
あんたには何でもないつて? 若くて、生命せいめいと健康に滿ちた、美しくて人を惹きつける、地位と財産といふ賜物たまものを與へられてゐる貴婦人が一人の紳士の前に掛けて微笑ほゝゑんでゐる、その紳士を
な、俗物ぞくぶつ信心しん/″\文学者ぶんがくしや即ちおん作者さくしや様方さまがた生命せいめいなれば、な、俗物ぞくぶつ鑑賞かんしやうかたじけなふするはおん作者さくしや様方さまがた即ち文学者ぶんがくしや一期いちご栄誉えいよなれば、之を非難ひなんするは畢竟ひつきやう当世たうせい文学ぶんがくらざる者といふべし。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
果ては人と人とが物を受け取ったり、物をったりしているのに、己はそれを余所よそに見て、おしつんぼのような心でいたのだ。己はついぞ可哀かわいらしい唇から誠の生命せいめいの酒をませてもらった事はない。
さうしてこのあかるい灯影ひかげに、宗助そうすけ御米およねだけを、御米およねまた宗助そうすけだけ意識いしきして、洋燈ランプちからとゞかないくら社會しやくわいわすれてゐた。彼等かれら毎晩まいばんかうらしてうちに、自分達じぶんたち生命せいめい見出みいだしてゐたのである。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
もし途中でお帰りになるような事がありますと、私たち二人の生命せいめいばかりでなく貴方のお生命いのちまでも危なくなりました上に、肝腎の団長までも取り逃がすような事になるかも知れないと思います。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
生命せいめいの高貴なる工人こうじんとして
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
二少年が意外に感じたのは、このジャンガラ星の上では、植物の生命せいめいというものがひじょうに重く見られていることだった。
宇宙の迷子 (新字新仮名) / 海野十三(著)
かれなやまされた僂麻質斯レウマチス病氣びやうき性質せいしつとしてかれ頑丈ぐわんぢやう身體からだから生命せいめいうばるまでにちからたくましくすることはなく
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
わかいうちは、なんでもぞんざいにあつかったのが、としをとると、どれにも自分じぶんおなじような生命せいめいがあるようにおもえて、いたわるこころしょうずるのでした。
生きぬく力 (新字新仮名) / 小川未明(著)
彼は雨をおかして祇園へ引っ返して行った。そうして、運命の導くままに自分の生命せいめいを投げ出してしまったのであった。
鳥辺山心中 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
蟋蟀は啼くために生れて來たその生命いのちのかなしさを、唯わけも知らず歎いてゐるのだと、知れざる言葉を以て、生命せいめいの苦惱と悲哀とを訴へるやうに思はれるからだ。
虫の声 (旧字旧仮名) / 永井荷風(著)
なんとなく袖子そでこにむかってすねているような無邪気むじゃきさは、一層いっそうその子供こどもらしい様子ようすあいらしくせた。こんないじらしさは、あの生命せいめいのない人形にんぎょうにはなかったものだ。
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
だい一は、國民こくみん眞劍しんけん生命せいめい財産ざいさん尊重そんてうするにいたることである。生命せいめい毫毛こうもうよりもかろんじ、財産ざいさん塵芥ぢんかいよりもけがらはしとする時代じだいにおいては、地震ぢしんなどは問題もんだいでない。
日本建築の発達と地震 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
そうだ、すべてのことが、忍剣にんけん生命せいめいを、かみの毛一すじで持たしてあるのだ。それが神刑しんけいなのだ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
きみわすれましたか、秘密造船所ひみつざうせんじよなかには、海底戰鬪艇かいていせんとうてい生命せいめいのこされてつたことを。』
實際じつさい地震ぢしんまつたおこることなきくにおいては、生命せいめい財産ざいさん關係かんけいある方面ほうめん研究けんきゆう無意味むいみであるけれども、適當てきとう器械きかいさへあれば、世界せかい遠隔えんかくした場所ばしよおこつた地震ぢしん餘波よは觀測かんそくして
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
はなしではあるが一月ひとつきのうちに生命せいめいあやふいとかつたさうな、いてるとあまこゝろよくもないに當人たうにんしきりといやがる樣子やうすなり、ま、引移ひきうつりをするがからうとて此處こゝさがさせてはたが
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
代ってわしが言う。——いかにも、お百合さんは村の生命せいめいじゃ。
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
彼等かれらふゆ季節きせつおい生命せいめいたもつてくのにはすべての機能きのう停止ていししてしまらねばらぬ。それでなければ彼等かれら氷雪ひようせつため枯死こしせねばならぬ。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
かれは、ただちに病院びょういんへかつぎまれました。きずさいわいにあし挫折ざせつだけであって、ほかはたいしたことがなく、もとより生命せいめいかんするほどではなかったのです。
空晴れて (新字新仮名) / 小川未明(著)
ことに、仕事中、彼女があやう生命せいめいを落しそうなことが二度もあったが、その両度とも、風の如くに帆村探偵が姿を現わして、危難から救ってくれたことがある。
鬼仏洞事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
日本にほん國民こくみんしん生命せいめいたふときをり、財産ざいさんおもんずべきをつたのは、ツイちかごろのことである。
日本建築の発達と地震 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
西洋近世の芸術は文学はいふも更なり、絵画彫刻音楽に至るまでまた昔日せきじつの如く広漠たる高遠の理想を云々うんぬんせず概念の理論を排してひたすらける生命せいめいの泉を汲まんとす。
矢立のちび筆 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
ただここに残っているのは、重傷にくるしめるの坑夫ていの男一人いちにんである。これについて厳重に詮議するより他はないが、何分にも生命せいめい危篤きとくという重体であるから、手の着様つけようが無い。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
とびら表面ひやうめんには黄色きいろのペンキで「海底戰鬪艇かいていせんとうてい生命せいめい」なる數字すうじしるされてあつた。
ひと生命せいめいあることをらせがほよそほつた。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
生命せいめい絶叫ぜっきょうだ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おな生命せいめいゆうしている人間にんげんのすることにくらべて、はかりれない、暴力ぼうりょく所有者しょゆうしゃである自然しぜんのほうが、どれほどおそろしいかしれないとおもっていました。
しんぱくの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)