まね)” の例文
兎角とかく一押いちおし、と何處どこまでもついてくと、えんなのが莞爾につこりして、馭者ぎよしやにはらさず、眞白まつしろあを袖口そでくち、ひらりとまねいて莞爾につこりした。
麦搗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
、このくに宿やどなしどもを、おまねきになり、ごちそうなされたら、また、いかなるめずらしいはなしを、おきなさらぬともかぎりますまい。
珍しい酒もり (新字新仮名) / 小川未明(著)
そこで、わたくし心配しんぱいするのは、義侠をとこぎ大佐閣下たいさかつかは、吾等われら大難だいなんたすけやうとして、御自身ごじしん危險きけんをおまねきになるやうことはあるまいか。
どのみち何をやるにしても小屋を拵えなくてはならないが、その小屋を大仏の形で拵えて、大仏をまねぎに使うというのが思い附きなんです。
「ああ、だれかに、ご安否あんぴをたずねてみたいが、めったなものに、そんなことをきけば、みずから人のうたがいをまねくようなものだし……」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今宵こよひ家例かれいり、宴會えんくわいもよふしまして、日頃ひごろ別懇べっこん方々かた/″\多勢おほぜい客人まろうどまねきましたが、貴下こなたそのくみくははらせらるゝは一だん吾家わがや面目めんもくにござる。
次ぎには平生世話になる耶蘇教やそきょう信者しんじゃの家族を招待した。次ぎには畑仕事で始終厄介やっかいになる隣字となりあざの若者等を案内した。今夜は村の婦人連をまねいた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
まねき妻のお梅はなみだながら此度このたび斯樣々々かやう/\の譯にて是非ともなければならぬ金ゆゑ親のため長いあひだでも有まじければ何卒つとめの奉公をしてくれよと事を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
彼等は早くもこの宿へ米友が来たということを知って、相当の礼を以てまねいたから米友はここへ来たのでありました。
こう考える主人は、ときどきそれとなくおくまねいで茶菓ちゃかなどをあたえ、種々しゅじゅ会話かいわをこころみるけれど、かれが心面しんめんになんらのひびきを見いだしえない。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
両親りょうしんおこたらず、わたくしはかもうでてはなみず手向たむけ、またさいとか、五十にちさいとかもうには、その都度つど神職しんしょくまねいて鄭重ていちょうなお祭祀まつりをしてくださるのでした。
いわゆる負けたからとて自分の人格の下がる訳でもなく、また真価をきずつけるものでもない。これがためにあるいは無知の人の笑いをまねくことはあろう。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
三千代のかほ此前このまへつたときよりは寧ろ蒼白あをしろかつた。代助にあごまねかれて書斎の入口いりぐち近寄ちかよつた時、代助は三千代のいきはづましてゐることに気が付いた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「いやこんにちは。おまねきにあずかりまして大へん恐縮きょうしゅくです。」と云いました。みんなは山男があんまり紳士風しんしふう立派りっぱなのですっかりおどろいてしまいました。
紫紺染について (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「とんだ災難さいなんまねいたがいまさらいたしかたもない。裁判所さいばんしょへ来てごらん、教訓きょうくんになることがあるであろう」
其中そのうちに、叔父が不図ふと見ると、田をへだてたる左手ゆんでの丘に一匹の狐がゐて、さながまねくが如くに手をげてゐる。
雨夜の怪談 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
今日のりきみは身をそん愚弄ぐろうまねくのなかだちたるを知り、早々にその座を切上げて不体裁ぶていさいの跡を収め、下士もまた上士に対して旧怨きゅうえんを思わず、執念しゅうねん深きは婦人の心なり
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
人目ひとめ附易つきやす天井裏てんじやうゝらかゝげたる熊手くまでによりて、一ねん若干そくばく福利ふくりまねべしとせばたふせ/\のかずあるのろひの今日こんにちおいて、そはあまりに公明こうめいしつしたるものにあらずや
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
うしろの土手どて自然生しぜんばへおとゝ亥之いのをつて、びんにさしたるすゝきまね手振てぶりもあはれなるなり。
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「級長の松村君は陸軍少将の息子です。この三人なら学問も品行も申し分ありません。照彦様はお仲よしですから、時々おやしきへおまねきしたいとおっしゃるんです」
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
洋人來航するに及んで、物議ぶつぎ紛々ふん/\、東攻西げきして、内訌ないこう嘗てをさまる時なく、終に外國の輕侮けいぶまねくに至る。此れ政令せいれいに出で、天下耳目のぞくする所を異にするが故なり。
江戸には雪のふらざる年もあれば、初雪はことさらに美賞びしやうし、雪見のふね哥妓かぎたづさへ、雪のちや賓客ひんかくまねき、青楼せいろうは雪を居続ゐつゞけなかだちとなし、酒亭しゆていは雪を来客らいかく嘉瑞かずゐとなす。
そらからはあたゝかい日光につくわうまねいてつちからはなががずん/\とさしげてはさらながくさしげるので派手はではなむぎ小麥こむぎにも沒却ぼつきやくされることなくひろめるのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「すべての事は神のみむねりてまねかれたる神を愛する者のためにことごとく働きて益をなすを我らは知れり」(ロマ書八の二十八)とのパウロの言は、すなわちキリスト者の実験である。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
ここまで書いたところで、槇子まきこさんから電話がかかって来ましたの。別にたいしたことではありません。お夕食のおまねきよ。でも、それは明日あすのことですから、休まずに続けますわ。
キャラコさん:08 月光曲 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
そのまなざしは治子にてさらに気高けだかく、手に持つ小枝をもて青年をまねぐさまはこなたに舟を寄せてわれと共に恋の泉をくみたまわずや、流れ流れていずこまでゆかんとしたもうぞ
わかれ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
金切聲かなきりごゑで耳をつんざかれたり、それに次いでかしましい驚きの洪水でまくし立てられたりする危險をまねかないでも、安全に非常なしらせを話すことの出來る禮儀正しい、落着いた人間だつた。
アハヽヽおどろいちまつたな……コヽ予々かね/″\まねきになりました半田屋はんだや長兵衛ちやうべゑで。
にゆう (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
とにかくに半金の五拾両は面白可笑おかしくつかて候事なれば、唯今のうちあきらめを付け申さず候ては、思ひもかけぬわざわいまねぐも知れずと、樹上の金子の事はきつぱり思切るやうにと心掛け申候。
榎物語 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
そこで長者は、何か雷の神の好きなものでまねき落してやろうと考えました。
雷神の珠 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
ひとかかえもあろうとおもわれるはすに、かれたつゆたまは、いずれも朝風あさかぜれて、そのあしもとにしのるさざなみを、ながしながらいたはなべにまね尾花おばなのそれとはかわったきよ姿すがた
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
なんぢを愛す、我汝をまねぐ、嗚呼あゝ、わが、善惡の名によりて。
(旧字旧仮名) / アダ・ネグリ(著)
アリ・ババはモルジアナをまねいて、その耳に口をつけて
綺麗きれいにひろげて小魚こうをまね
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
まねきて、かかるなんぢ
鬼桃太郎 (旧字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
ですけれど、あの、おまねかれたら、懐中ふところへならなほことだし、冥土めいどへでも、何処どこへでもきかねやしますまい……と真個ほんとうおもひました。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「わんわんや、わんわんや。」と、かわいらしい、ほんとうにこころからやさしいこえして、ちいさなしてまねくのでした。
幾年もたった後 (新字新仮名) / 小川未明(著)
諸君しよくん好奇心こうきしんからわざはひまねいたばつとして、海底戰鬪艇かいていせんとうてい竣成しゆんせいしたあかつきにも、裝飾かざり船室せんしつ辛房しんぼうせねばなりませんよ。
上へうかゞふには餘人にてはよろしからず兼々御懇命ごこんめいかうむる石川近江守然るべしとて近江守をまねかれ委細ゐさい申しふく御機嫌ごきげん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「かれらのことです、かれらのことでござります。けっして、汚名おめいをさらすような結果をまねきはいたしますまい」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もうすこしのことで、その安井やすゐおな家主やぬしいへ同時どうじまねかれて、となあはせか、むかあはせにすわ運命うんめいにならうとは、今夜こんや晩食ばんめしすままでゆめにもおもけなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
いかにその演説が教育に関係するを要しないとても、青年が主賓しゅひんになっている以上は、まねかれる弁士はただ能弁のうべんだとか悧口りこうだとかいうだけの資格では足りない。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
されば、ちかしい友達ともだちをばたんだ五六めいかぎまねくことにしませう。……したが、貴下こなた木曜日もくえうびでようござるか?
月番つきばんになっては、慰兵会費を一銭ずつ集めて廻って、自身役場に持参じさんした。村の耶蘇教会にも日曜毎にちようごとに参詣して、彼が村入して程なくまねかれて来た耳の遠い牧師の説教せっきょうを聴いた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
十一ぐわつの二十八にち旦那だんなさまお誕生日たんぜうびなりければ、年毎としごと友達ともだち方々かた/″\まねまいらせて、周旋しうせんはそんじよしやうつくしきをりぬき、珍味ちんみ佳肴かこううちとけの大愉快おほゆくわいつくさせたまへば
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
へびかへる蟲類むしるゐ假死かし状態じやうたいあひだ彼等かれら目前もくぜんせまつて未來みらいくるしみをまねために、過去くわこくるしかつた記念きねんである缺乏けつばふしたこめむぎごと消耗せうまうしてくのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
手のさき天窓あたまさきそろへ、どうめて閑雅しとやか辞儀じぎをして、かね/″\おまねきにあづかりました半田屋はんだや長兵衛ちやうべゑまうす者で、いたつて未熟みじゆくもの、此後こののちともお見知みしかれて御懇意ごこんいに願ひますとふと
にゆう (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
あんたは愚かだ。何故なら苦しい思をしてゐながらあんたはその最高の感情を近くにまねかうともしなければ、こちらから、あんたを待つてゐる所でそれに會はうと一あし踏み出さうともしないから。
とおまねきになって
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
かれらからいろいろのはなしくだけでも無益むえきではないであろうから、正月しょうがつには、かれらをまねいて、ひとつ盛大せいだい宴会えんかいひらいて、みようとおもう……。
珍しい酒もり (新字新仮名) / 小川未明(著)