性質せいしつ)” の例文
もしみぎのような性質せいしつ心得こゝろえてゐると、こゝろ落着おちつき出來できるため、危急ききゆう場合ばあひ機宜きゞてきする處置しよち出來できるようにもなるものである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
あるところに、性質せいしつちがった姉妹きょうだいがありました。おなはははらからまれたとは、どうしてもかんがえることができなかったほどであります。
灰色の姉と桃色の妹 (新字新仮名) / 小川未明(著)
人はぜんあいし道を求めないでいられない。それが人の性質せいしつだ。これをおまえたちはかたくおぼえてあとでもけっしてわすれてはいけない。
やまがたといひして、土地とち樣子ようすからその性質せいしつべて、そこに青々あを/\した野菜やさいいろを、印象深いんしようぶかくつかんで、しめしてゐます。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
『あなたがたなかにも、人間にんげんきなものときらいなもの、また性質せいしつのさびしいものと陽気ようきなものと、いろいろ相違そういがあるでしょうね?』
わたしたちはずいぶん性質せいしつがちがっていた。たぶんそれでかえってしょうが合うのかもしれなかった。かれはやさしい、明るい気質きしつを持っていた。
ひと交際かうさいすることかれいたつてこのんでゐたが、其神經質そのしんけいしつな、刺激しげきされやす性質せいしつなるがゆゑに、みづかつとめてたれとも交際かうさいせず、したがつまた親友しんいうをもたぬ。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
しかし琉球りゆうきゆうのものになりますと、臺灣たいわんとはないで、日本内地につぽんないち繩紋式土器じようもんしきどきおな性質せいしつ土器どきいつしょにるのであります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
かれなやまされた僂麻質斯レウマチス病氣びやうき性質せいしつとしてかれ頑丈ぐわんぢやう身體からだから生命せいめいうばるまでにちからたくましくすることはなく
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
宗助そうすけ自分じぶん境遇きやうぐうやら性質せいしつが、夫程それほど盲目的まうもくてき猛烈まうれつはたらきあへてするにてきしないことふかかなしんだ。いはんや自分じぶんこのやまらすべきすでかぎられてゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
つみばつ」はじつにこの險惡けんあくなる性質せいしつ苦慘くさん實况じつけうを、一個いつこのヒポコンデリアかんうへ直寫ちよくしやしたるものなるべし。
罪と罰(内田不知庵訳) (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
この魚族ぎよぞくは、きわめて性質せいしつ猛惡まうあくなもので、一時いちじ押寄おしよせてたのは、うたがひもなく、吾等われら餌物えものみとめたのであらう。わたくしそのぐんたちま野心やしんおこつた。
「むろんだ、ドノバンはただいばりたいのが病で、性質せいしつは善良なんだから、ぼくはなんとも思っていないよ」
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
だつて、その方も、スキャチャード先生が私が嫌ひなやうに、あなたの性質せいしつが嫌ひなのよ。ね、さうでせう。
二ではうたいの「善知鳥うとう」など、三では「阿漕あこぎ」、「鵜飼うがひ」などその適例てきれいである。幽靈ゆうれいがいして全體ぜんたい性質せいしつ陰氣いんきで、すごいものである。相貌さうぼうなども人間にんげん大差たいさはない。
妖怪研究 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
○こゝにわが郡中ぐんちゆう山村さんそんに(不祥ふしやうのことなれば地名人名をはぶく)まづしき農夫のうふありけり、老母と妻と十三の女子七ツの男子あり。此農夫性質せいしつ篤実とくじつにしてよく母につかふ。
そんなふうに、彼はすっかりあまやかされてだめになるところだった。しかしさいわいなことに、彼はまれつきかしこ性質せいしつだったので、ある一人の男のよい影響えいきょうをうけてすくわれた。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
犠牲ぎせいだとか精神的せいしんてき教育けういくだとか能弁的のうべんてき社界しやかいうつたへながら自らは米国的べいこくてき安楽主義あんらくしゆぎるものなり、即ち義を見て為し得ざる卑怯者ひけうしやなり、即ち脳髄のうずい心臓しんざう性質せいしつことにするものなり
時事雑評二三 (新字旧仮名) / 内村鑑三(著)
あれはまったくのところ、きりょうしではございませぬ。しかしまこと性質せいしつをもっておりますし、およぎをさせますと、ほか子達こたちくらい、——いやそれよりずっと上手じょうずいたします。
八つくちをふさぎて大人おとな姿すがたにこしらへられしより二十二の今日けふまでに、下宿屋住居げしゆくやずまゐ半分はんぶんつもりても出入でいり三ねんはたしかに世話せわをうけ、伯父おぢ勝義かつよし性質せいしつむづかしいところから
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
くのごとくに貨幣價値くわへいかち下落げらくから保護ほご永續えいぞくすべき性質せいしつのものにあらず
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
此想像このそうぞうにして誤りからんか、コロボツクルは我々日本人は勿論もちろんアイヌもおそきらふ可き食人の習慣しふくわんを有せし人民にして、其性質せいしつ日本人及ひアイヌとは大に異りたるものと云ふ可きなり。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
雷鳥らいちようははひまつの高山植物こうざんしよくぶつ若芽わかめ食物しよくもつとしてゐます。性質せいしつ遲鈍ちどんですから、ひと近寄ちかよつても容易よういげません。つゑたゝけばおとせそうなひくそらを、うろ/\まはつてゐます。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
『おまへは、何故なぜわたしがおまへかないかと、不思議ふしぎおもつてるにちがひない』良久やゝあつ公爵夫人こうしやくふじんは、『理由わけは、わたしがおまへ紅鶴べにづる性質せいしつあやぶんでるからなの。ひとためしてやうかしら?』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
聞時はしきりににくく思はれ他人ひとの事にても何分なにぶんすて置れぬ性質せいしつなり是犬はやうにして正直なるけものゆゑねこたぬき其外そのほか魔性ましやう陰獸いんじうを見る時は忽地たちまち噛殺かみころすが如しおのれせいはんして陰惡いんあくたくむものは陽正やうせいの者是を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
内乱の性質せいしつ如何いかんは以て干渉の有無うむ判断はんだんするの標準ひょうじゅんとするにらざるなり。
かれは、いたっておとなしい性質せいしつで、自分じぶんのほうからほかのものに手出てだしをしてけんかをしたり、悪口わるくちをいったりしたことがありません。
どこで笛吹く (新字新仮名) / 小川未明(著)
貧乏びんぼうながら、こせつかずにくらしてゐたことはとぼしきまゝのうたて、いかにもひとなつかしい、善良ぜんりようなこの歌人かじん性質せいしつおもはれます。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
むしろそのあまりに強情かたくな性質せいしつ……一たんうとおもえばあくまでそれをとうそうとする、我侭わがまま気性きしょうめであったようにおもわれました。
これはその山體さんたいつくつてゐる岩石がんせき玄武岩げんぶがん)の性質せいしつるものであつて、そのけてゐるさい比較的ひかくてき流動りゆうどうやすいからである。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
ひと交際こうさいすることはかれいたってこのんでいたが、その神経質しんけいしつな、刺激しげきされやす性質せいしつなるがゆえに、みずかつとめてたれとも交際こうさいせず、したがってまた親友しんゆうをもたぬ。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
ただそこから風や草穂くさぼのいい性質せいしつがあなたがたのこころにうつって見えるならどんなにうれしいかしれません。
サガレンと八月 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
兩者りやうしやあひだには何等なんら性質せいしつ變化へんくわせしむべき作用さようおこるでもなく、れはみづあぶら疎外そぐわいするのか、あぶらみづ反撥はんぱつするのかつひ機會きくわいいのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
佛人フツジンごとくに輕佻けいてふうごやすきにあらず、默念焦慮もくねんせうりよして毒刄どくじん懷裡かいりたくはふるは、じつ露人ロジン險惡けんあくなる性質せいしつなり。
罪と罰(内田不知庵訳) (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
たびたびわたしはかの女の目になみだが流れているのを見た。それがかの女の心の苦しみを語っていた。でもやさしい快活かいかつ性質せいしつからその苦しみはすぐに消えた。
其頃そのころ大佐たいさ年輩としごろ三十二三、威風ゐふう凛々りん/\たる快男子くわいだんしで、その眼光がんくわう烱々けい/\たると、その音聲おんせい朗々ろう/\たるとは、如何いかにも有爲いうゐ氣象きしやう果斷くわだん性質せいしつんでるかをおもはしめた。
○こゝにわが郡中ぐんちゆう山村さんそんに(不祥ふしやうのことなれば地名人名をはぶく)まづしき農夫のうふありけり、老母と妻と十三の女子七ツの男子あり。此農夫性質せいしつ篤実とくじつにしてよく母につかふ。
りながらこの問題もんだいじつ哲學てつがく領分れうぶんぞくするもので、容易ようゐ解決かいけつされぬ性質せいしつのものである。
建築の本義 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
そこで代助は、あの大人おとなしさは、羞恥はにか性質せいしつ大人おとなしさだから、ミスの教育とは独立に、日本の男女の社交的関係から来たものだらうと説明した。ちゝはそれもうだと云つた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ことに直立ちよくりつして歩行ほこうしたものであることが、あしほね性質せいしつによつて十分じゆうぶん想像そう/″\せられます。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
樹木じゆもくのこの性質せいしつつておくことは大切たいせつなことで、庭木にはきゑかへるときにも、やまゑつけるときでも、それ/″\の陰樹いんじゆ陽樹ようじゆかによつて、それ/″\適當てきとう土地とちゑることが必要ひつようです。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
無住むぢうにもて置れず我思ふには年こそゆかねど寶澤は七歳の時より感應院が手元てもとにて修行しゆぎやうせし者なりことには外の子供とちが發明はつめいなる性質せいしつにて法印ほふいん眞似事まねごと最早もはや差支さしつかへなし我等始め村中が世話せわしてやらば相續さうぞくとして差支さしつかへなしすれば先住せんぢう感應院に於てもさぞかし草葉くさばかげより喜び申すべし此儀如何とのべければ名主なぬしどのゝ云るゝ事なり寶澤は
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
げんさんは会社かいしゃにつとめて、ごくほがらかな性質せいしつでありましたが、さんはそれにくらべて口数くちかずすくない、うちきなところがありました。
クラリネットを吹く男 (新字新仮名) / 小川未明(著)
古今集こきんしゆうのち、たくさん勅撰集ちよくせんしゆうやらいろんな歌人かじんのめい/\の家集かしゆうといふものがてゐるが、うたのほんとうの性質せいしつといふものは、だいたい
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
まつうめせいくらべるとたけせいはずっとやせぎすで、なにやらすこ貧相ひんそうらしくえましたが、しかし性質せいしつはこれが一ばん穏和おとなしいようでございました。
ハワイの火山かざんのように海底かいていからあがつて出來できたものは、鎔融状態ようゆうじようたいおい比較的ひかくてき流動りゆうどうやす性質せいしつつてゐることは、まへにもべたところであるが
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
はじめはかれもむくれたままでいたが、まもなく、気がわりやすい性質せいしつだけに、なにかほかのことに考えがうつって、手まねで、よし、外へ散歩さんぽれて行くなら
櫻木海軍大佐さくらぎかいぐんたいさその性質せいしつからいつても、かゝる擧動きよどうでたのはおほいするところがあつたに相違さうゐない。
なみができたらかならずそれがなおろうとする。それは波のあがったとこが下ろうとするからだ。このように水のつめたいこと、しめすこと下に行こうとすることは水の性質せいしつなのだ。
其癖そのくせかれ性質せいしつとして、兄夫婦あにふうふごとく、荏苒じんぜんさかひ落付おちついてはゐられなかつたのである。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)