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眞似事
今宵は
舊暦の十三
夜、
舊弊なれどお
月見の
眞似事に
團子をこしらへてお
月樣にお
備へ
申せし、これはお
前も
好物なれば
少々なりとも
亥之助に
持たせて
上やうと
思ふたれど
驛名を書いた
立札の雨風に
晒されて黒く汚れたのが、雜草の生えた
野天のプラツトフオームに立つてゐる
眞似事のやうな
停車場を、汽車は一
聲の
汽笛とゝもに過ぎ去つた。
無住にも
爲て置れず我思ふには年こそ
行ねど寶澤は七歳の時より感應院が
手元にて
修行せし者なり
殊には外の子供と
違ひ
發明なる
性質にて
法印の
眞似事は
最早差支なし我等始め村中が
世話してやらば
相續として
差支へなし
然すれば
先住感應院に於ても
嘸かし
草葉の
蔭より喜び申すべし此儀如何と
述ければ
名主どのゝ云るゝ事なり寶澤は