荷物にもつ)” の例文
三十七ねんぐわつ十四幻翁げんおう望生ぼうせい二人ふたりとも馬籠まごめき、茶店ちやみせ荷物にもつ着物きものあづけてき、息子むすこ人夫にんぷたのんで、遺跡ゐせきむかつた。
『なあに、柳川君やながはくんには片附かたづけるやうな荷物にもつもないのさ。』と濱島はまじまこゑたかわらつて『さあ。』とすゝめた倚子ゐすによつて、わたくしこの仲間なかまいり
「おい、ぼやぼやするな。しっかりと荷物にもつをかかえてあるけ。そのノートはだいじなんだ。なくすんじゃないぞ、しっかり持ってろ!」
さうして座敷ざしきすみ瞽女ごぜかはつて三味線さみせんふくろをすつときおろしたとき巫女くちよせ荷物にもつはこ脊負しよつて自分じぶんとまつた宿やどかへつてつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
失ひ夫より江戸に下らんとして大津おほつ宿外しゆくはづれより惡漢に付れ終にお花をうばひ取れ斯樣々々かやう/\わけにて取返とりかへせしが其のせつ荷物にもつと路金百兩を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「どうか、この荷物にもつ無事ぶじ先方せんぽうとどけてくれ。そうすればかえりにあんころもちをってやるぞ。」と、おとこは、うしにいったのであります。
ある男と牛の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
其處そこで、でこぼこと足場あしばわるい、蒼苔あをごけ夜露よつゆでつる/\とすべる、きし石壇いしだんんでりて、かさいで、きしくさへ、荷物にもつうへ
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それは、茶いろの少しぼろぼろの外套がいとうて、白いきれでつつんだ荷物にもつを、二つに分けてかたけた、赤髯あかひげのせなかのかがんだ人でした。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
職務の分量にとどまらずして職務の品性ひんせいをよくせよというのである。十貫目かんめ荷物にもつになうものに、務めて荷物十一貫目を荷えというのでない。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
荷物にもつといふは大八だいはちたゞひとくるまきたりしばかり、兩隣りやうどなりにおさだめの土産みやげくばりけれども、いへうち引越ひつこしらしきさわぎもなく至極しごく寂寞ひつそりとせしものなり。
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そんなでも、うま荷物にもつをつけ、合羽かつぱむら馬方うまかたかれてゆきみちとほることもありました。とうさんが竹馬たけうまうへから
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
大男はかなりのあいだおもい荷物にもつをひきずっていきましたが、もうどうにもそれいじょうすすめなくなりましたので
むすめはきっとこの中にいいおみやげがはいっているのだろうとおもって、にこにこしながら、おかあさんのお手伝てつだいをして、荷物にもつおくまではこんで行きました。
松山鏡 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
の中のかわず——おまえなんかに天下のことがわかるものか、この島をでたら、分相応ぶんそうおうに、人の荷物にもつでもかついで、その駄賃だちん焼餅やきもちでもほおばッておれよ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
火事を見物しようじゃないかといって、その火事の中へどん/\這入はいって行た。所が荷物にもつを片付けるので大騒ぎ。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
お客は、いきなりび起きると、あわてて着物を引っかけ、荷物にもつをかき集めてはしごだんけ下りました。
神様の布団 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
松井田にて西洋人のりしとき、車丁の荷物にもつを持ちはこびたると、松井田より本庄まで汽車きしゃのかよわぬ軌道を、洋服きたる人の妻子婢妾にとおらせ、猶きたらでか
みちの記 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
荷物にもつ背中せなかむすびつけてわたしたちは出発した。カピがよろこんで、ほえて、すなの中をころげていた。
京都きやうといた一日目いちにちめは、夜汽車よぎしやつかれやら、荷物にもつ整理せいりやらで、徃來わうらい日影ひかげらずにらした。二日目ふつかめになつてやうや學校がくかうると、教師けうしはまだ出揃でそろつてゐなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
いよ/\といふた。荷物にもつといふ荷物にもつは、すつかりおくられた。まづをとこ一足ひとあしきに出發しゆつぱつして先方せんぱう都合つがふとゝのへ、それから電報でんぱうつて彼女かのぢよ子供こどもぶといふ手筈てはずであつた。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
うま母仔おやこ百姓男ひやくせうをとこにひかれてまちへでかけました。母馬おやうまおほきな荷物にもつをせをつてゐました。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
税関附ぜいくわんづき官吏くわんりて、大蔵省おほくらしやうから桑港税関長さうかうぜいくわんちやうてた書面しよめんうつしれる。ると、一周会員しうくわいいん荷物にもつ東京駐剳大使とうきやうちうさつたいし照会せうくわいがあつたので、一々検査けんさくはふるにおよばぬとの内訓ないくんである。
検疫と荷物検査 (新字旧仮名) / 杉村楚人冠(著)
一番最初にかけて来たのは、赤いリボンの帽子ぼうしをかぶったかあいいおじょうちゃんでした。それから、おじょうちゃんのお母さん、荷物にもつをドッサリ持った書生しょせいさん——と、こう三人です。
赤とんぼ (新字新仮名) / 新美南吉(著)
鹽原巡査人夫の荷物にもつわかち取り自ら之をふてのぼる、他の者亦之に同じくす、人夫等つひに巳を得ず之にしたがふ、此に於て相互救護きうごさくを取り、一行三十余名れつただして千仭の崖上がいじやう匍匐ほふくして相登る
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
どんな山の中でもきます、わたし生国しやうこく越中ゑつちう富山とやまで、反魂丹売はんごんたんうりですから、荷物にもつ脊負せおつて、まだくすりひろまらない山の中ばかりつて歩くのです、さうしてまた翌年よくねんの山の中をつて歩くので
塩原多助旅日記 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
「さようでございましょうとも、で、えきにございますお荷物にもつの中に、実験道具じっけんどうぐをおいれになっていらっしゃるのでございますか?」
「どうしてえおとつゝあ、昨夜ゆんべはそんでもさむかなかつたつけゝえ」かれ荷物にもつ卯平うへいすそはうおろしてむねむすんだおびきながらいつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
荷物にもつ背中せなかって、薬売くすりうりの少年しょうねんは、今日きょうらぬ他国たこくみちあるいていました。きたまちから行商群ぎょうしょうぐん一人ひとりであったのです。
薬売りの少年 (新字新仮名) / 小川未明(著)
とゞめの一刀を刺貫さしとほもろい奴だと重四郎は彼の荷物にもつ斷落きりおとしてうちより四五百兩の金子を奪ひ取つゝ其儘そのまゝ此所を悠然いう/\と立去りやが旅支度たびじたく
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
すもものかきねのはずれから一人の洋傘ようがさ直しが荷物にもつをしょって、この月光をちりばめたみどり障壁しょうへき沿ってやって来ます。
チュウリップの幻術 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
うま荷物にもつをつけてときはなか/\ほねれますが、一にち仕事しごとをすまして山道やまみちかへつてるのはたのしみなものですよ。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
みづつたとはこと停車場ステエシヨンわりしづかで、しつとりと構内こうない一面いちめんれてる。赤帽君あかばうくん荷物にもつたのんで、ひろところをずらりと見渡みわたしたが、約束やくそく同伴つれはまだない。
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
やがて曲馬団きょくばだんの一行を乗せた汽車は出発しゅっぱつしてしまいました。一人あとにのこされた新吉はがっかりしてその場につっ立っていました。まもなく曲馬の荷物にもつ倉庫そうこの方へ引かれて行きました。
曲馬団の「トッテンカン」 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
荷物にもつ通運便つううんびんにてさきへたゝせたればのこるは一つに輕〻かる/″\しき桂次けいじ今日けふ明日あすもと友達ともだちのもとをせめぐりてなにやらん用事ようじはあるものなり、わづかなる人目ひとめひまもとめておぬひたもとをひかえ
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
翌日よくじつあさはや門野かどの荷車にぐるまを三台やとつて、新橋の停車場ていしやば迄平岡の荷物にもつ受取うけとりにつた。実はうからいて居たのであるけれども、うちがまだきまらないので、今日けふ迄其儘にしてあつたのである。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
弦月丸げんげつまる舷梯げんていたつすると、私共わたくしども乘船じやうせんことすで乘客じやうきやく名簿めいぼわかつてつたので、船丁ボーイはしつてて、いそがはしく荷物にもつはこぶやら、接待員せつたいゐんうや/\しくぼうだつして、甲板かんぱん混雜こんざつせる夥多あまたひと押分おしわけるやらして
するとその日の夕方ゆうがた、おとうさんは荷物にもつをしょって
松山鏡 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
荷馬車にばしやをもい。やまのやうな荷物にもつです。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
「ええ、そうです。また、この荷物にもつろして、すぐに、今夜こんやのうちにかえるつもりです。」と、うまいてきたおとこはいいました。
子供と馬の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ふつうの人間にんげん持物もちものらしいのは、トランクだけだった。トランクは二個あった。そのほかの荷物にもつときたら、なんともいえずふうがわりなのだ。
受し者なればお里のお豐は洗濯せんたくをし又惣内の甚兵衞は日傭ひよう駈歩行かけあるき手紙使てがみづかひつちこね草履ざうり取又は荷物にもつかつぎ何事に依ず追取稼おつとりかせぎを爲し漸々其日を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
はこなかにやなんだねえつてんなあ、人形坊にんぎやうばうだつて本當ほんたうかね」まへはうわかしゆ巫女くちよせ荷物にもつかけていつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
園丁えんていはまた唐檜とうひの中にはいり洋傘ようがさ直しは荷物にもつそこ道具どうぐのはいった引き出しをあけかんを持って水をりに行きます。
チュウリップの幻術 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
この東京行とうきやうゆきは、とうさんがうまれてはじめてのたびでした。とうさんが荷物にもつ用意よういといへば、ちひさな翫具おもちやかばんでした。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
まへまあちつやすんでと、深切しんせつにほだされて、なつかしさうに民子たみこがいふのを、いゝえ、さうしてはられませぬ、お荷物にもつ此處こゝへ、もし御遠慮ごゑんりよはござりませぬ、あし投出なげだして
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
これが荷物にもつるもあり、御懇命ごこんめいうけまするお出入でいり人々ひと/″\手傳てつだひ手傳てつだひとて五月蠅うるさきをなかばことはりてあつまりしひとだけにかめのぞきのぬぐひ、それ、とつてたまへば、一どう打冠うちかぶ
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
最後さいごにいろんな荷物にもつをのせた馬車がいくつもつづいて行きます。
曲馬団の「トッテンカン」 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
といいながら、背中せなか荷物にもつ手伝てつだってろしました。
松山鏡 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
荷物にもつをもつてよ」
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
わたしは、あのおも荷物にもつ車室しゃしつなかで、そんなことには無頓着むとんちゃくに、わらったり、はなしたりしていた人間にんげんが、にくらしくてしかたがありません……。
負傷した線路と月 (新字新仮名) / 小川未明(著)