かゝ)” の例文
こまかきあめははら/\とおとして草村くさむらがくれなくこほろぎのふしをもみださず、かぜひとしきりさつふりくるはにばかりかゝるかといたまし。
雨の夜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
しかなほこれは眞直まつすぐ眞四角ましかくきつたもので、およそかゝかく材木ざいもくようといふには、そまが八にん五日いつかあまりもかゝらねばならぬとく。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
第二十四圖だいにじゆうしずかべかゝつてゐるうしうま鹿しかなどのはかれ洞穴ほらあななか石壁いしかべりつけたり、またいたりしたうつしであります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
アヽおかゝつて少々せう/\だんまうしてえ事があつて出ましたんで。書生「おだんまうしたい……エヽ先生八百屋やほや甚兵衛じんべゑさんがお入来いでで。 ...
八百屋 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
彼女の苦肉の詐術さじゅつかゝって生きながら不具にされる夫則重を考え、それらの「美」と「醜」とを表わす二つの顔を並べて空想してみると
「俺は嘘は言はない。その疑ひがお前にもかゝつて居るぞ。見るが宜い、寅吉親分は何時縛つたものかと考へて居るぢやないか」
殺したこともかへつて彼等三人にうたがひがかゝる道理だと三五郎の計略けいりやくにてすでに火葬を頼んだ其時にもしもとおれは不承知しようちを言たらおのれが懷中ふところから金を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
午後四時頃、それが済んで、帝劇を出た時は、まだ白くぼやけたやうな日が、快い柔かな光で、おほりの松の上にかゝつてゐた。
私の社交ダンス (新字旧仮名) / 久米正雄(著)
其代り、此窮窟な主義だとか、主張だとか、人生観だとかいふものを積極的せききよくてきこはしてかゝつたためしもない。実に平凡でい。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
十二代じゆうにだい景行天皇けいこうてんのうが、筑紫つくし高田たかだ行宮あんぐう行幸ぎようこうされたときには、なが九千七百尺きゆうせんしちひやくしやくのその丸太まるたが、はしになつてかゝつてゐました。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
王樣わうさま御殿ごてんかもしれねえ、自分じぶんはあそこへくのだらう。きつと王樣わうさま自分じぶんをおしになつたんだ。おかゝつたらなにだい一にはう。そうだ。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
かまどにはちひさななべかゝつてる。しるふたたゞよはすやうにしてぐら/\と煮立にたつてる。そともいつかとつぷりくらくなつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
ほんとに久濶しばらくですことねエ、私、貴嬢あなたに御目にかゝりたくてならなかつたんですよ、手紙でとも思ひましたけれどもね
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
江戸時代にさかのぼつてこれを見れば元禄九年に永代橋えいたいばしかゝつて、大渡おほわたしと呼ばれた大川口おほかはぐち渡場わたしば江戸鹿子えどかのこ江戸爵抔えどすゞめなど古書こしよにその跡を残すばかりとなつた。
水 附渡船 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
うんほしかゝってあるさるおそろしい宿命しゅくめいが、今宵こよひえんはしひらいて、てたわが命數めいすうを、非業無慚ひごふむざん最期さいごによって、たうとするのではないからぬ。
だが、気にかゝるのは、銀の金槌で、今度の売立にもあの金槌だけは出て居ないところを見ると、うかしたのではあるまいかと心配してゐるむきもある。
二年も三年もかゝつて修業するのなら誰にでも出来る、貴様は少くともそんな意気地の無い真似をてはならぬ。
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
我は夢に、黄金こがねの羽ある一羽の鷲の、翼をひらきてそらかゝり、降らんとするをみきとおぼえぬ 一九—二一
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
さてなにがしぼくしたが我家わがやをさしてかへみちすがらさき雲飛うんぴが石をひろつた川とおなじながれかゝつて居るはしまで來ると、ぼくすこかたやすめるつもりで石を欄干らんかんにもたせてほつ一息ひといき
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
鐘楼があり、多宝塔があり、そして、正面、石段による適当な高さをもつた本堂には“寂光殿”とした額がかゝり、その下に、マルにまんじの、浅黄いろの幕が張つてあつた。
にはかへんろ記 (新字旧仮名) / 久保田万太郎(著)
診察しんさつとき患者くわんじや臆病おくびやうわけわからぬこと、代診だいしんそばにゐること、かべかゝつてる畫像ぐわざう、二十ねん以上いじやう相變あひかはらずにけてゐる質問しつもん是等これら院長ゐんちやうをしてすくなからず退屈たいくつせしめて
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
品川しながは住居じうきよからとほくもあらぬきりむら其所そこ氷川神社ひがはじんじや境内けいだいに、たきぶも如何いかゞであるが、一にちしよけるにてきして靜地せいちに、清水しみづ人造瀧じんざうたきかゝつてるので
そこで體を突ツ張つて、腕を足拍子あしひやうしを取つて、出來るだけえらさうに寛々ゆる/\と歩いて見る。駄目だ。些ともえらくなれない。何かむやみと氣にかゝツて、不安は槍襖やりぶすまを作ツておそツて來る。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
青海せいかいの簾高く捲き上げて、前に廣庭を眺むる大弘間、咲きも殘らず散りもはじめず、欄干おばしま近く雲かとまがふ滿朶の櫻、今を盛りに匂ふさまに、月さへかゝりて夢の如きまどかなる影、朧に照り渡りて
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
海龜うみがめふかくも長太息ためいきいて、その眼前がんぜんかゝれる一まい屏風岩べうぶいは引寄ひきよせました。かれあいちやんのはうて、談話はなしをしやうとしましたが、しばらくのあひだ歔欷すゝりなきのためにこゑませんでした。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
斜めに落ちかゝつたやうな位置で皎々とかゝつてゐた。細かい羽根のやうな冷たさを含んだ尾は、途方もなく大きい穹形ゆみなりでゆるく消えてゐた。それは人間には一寸そらでは画かれない線だつた。
朧夜 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
驛員が二三人、驛夫室の入口にかゝつたり、しやがんだりして、時々此方を見ながら、何か小聲に語り合つては、無遠慮にどつと笑ふ。靜子はそれを避ける樣に、ズッと端の方の腰掛に腰を掛けた。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
生得しやうとく下戸げこと、戒行の堅固な處と、氣の強い處と、三つのかね合故あひゆゑ、目をまはさずにすみ申候、此三つの内が一つ闕候かけさふらうても目をまはす怪我にて、目をまはす程にては、療治も二百日餘りかゝ可申まうすべく
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
支倉を取逃がしてから一日として安き思いのなかった石子刑事は、今日の鑑定の結果がひどく気にかゝるので、すっかり心を暗くして重い足を引摺って、あれこれと思い悩みながら歩んで行くのだった。
支倉事件 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
月はなほ氛囲気ふんゐきおぼろなる恐怖おそれかゝる。
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
かゝしてふあまきぬ
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
花のたまきかゝれかし
花守 (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
すそひぢかゝつて、はしつてゆかく、仰向あふむけのしろ咽喉のどを、小刀ナイフでざつくりと、さあ、りましたか、いたんですか。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
この四郎右衞門は當年たうねん六十五歳の老人らうじんなり夫を是より三十五年のあひだ殘金ざんきん勘定かんぢやうかゝらばこれ何歳なんさいに至るぞや大岡殿おほをかどの仁心じんしんおもふべし
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
後向うしろむきにりてなほ鼻緒はなをこゝろつくすとせながら、なかば夢中むちう此下駄このげたいつまでかゝりてもけるやうにはらんともせざりき。
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
御米およね茶器ちやきいて臺所だいどころた。夫婦ふうふはそれぎりはなしげて、またとこべてた。ゆめうへたか銀河あまのがはすゞしくかゝつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
おなじく、ふかひゞのはいつた肉體からだをもつてゐるわたしは、これからうみかうとしてゐたので、一つはしばらく先生せんせいにもおかゝれまいとおもつて。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
さう聞くと、若し小三郎が昨夜この手拭を忘れて行かなければ、お菊殺しの疑ひは、眞つ直ぐに手拭の持主の小三郎にかゝつて行くことになるでせう。
これにはさしもの平中もいた口がふさがらなかった。彼も今まで数々の女に恋をしかけたが、こんな意地の悪い、皮肉な相手にかゝったことはなかった。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「そいぢや、おうちの床の間には、師匠のこの幅はかゝらんで、私のは懸る事になりますな、同じ大きさのふくでゐて。」と栖鳳氏は一寸窄口つぼぐちをして笑つた。
漁夫ぎよふさけ深夜しんやあみかゝるのをちつゝ、假令たとひ連夜れんやわたつてそれがむなしからうともぽつちりとさへねむることなく
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
二階は十二畳敷二間ふたまで、階段はしごを上つたところの一間の右の一隅かたすみには、けやき眩々てら/\した長火鉢が据ゑられてあつて、鉄の五徳に南部のびた鉄瓶てつびん二箇ふたつかゝつて
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
君等は直ぐ左様さう云ふからこまる——今迄篠田君の身辺まはりには一抹いちまつ妖雲えううんかゝつて居たのだ、篠田君自身は無論知らなかつたであらうが——現に何時いつであつたか
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
あのひめ美麗あてやかさで、かゞや燭火ともしびまただんかゞやくわい! よるほゝ照映てりはゆるひめ風情ふぜいは、宛然さながら黒人種エシオツプ耳元みゝもと希代きたい寶玉はうぎょくかゝったやう、使つかはうにはあま勿體無もったいな
わがいたく思ひまどふを見て淑女曰ふ。天もすべての自然も、かの一點にこそかゝるなれ 四〇—四二
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
清「へい新湊町九番地にいる家根屋の清次郎と申します者で、始めてお目にかゝりました」
控所ひかへじよは、かべおほきい額縁がくぶちはまつた聖像せいざうかゝつてゐて、おも燈明とうみようげてある。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
お房の其の美しい肌が處女の清淨せいじやうたもツてゐるか何うかといふこと、よしまた其の肌が清淨を保ツてゐるにしても、其の心は何者かにけがされてゐはせぬかといふことが氣にかゝつて來たのであつた。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
うらにじかゝ
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
が、たれては不可いけない、きつては不可いけない、いづれ、やがて仕事しごと出来できると、おうら一所いつしよに、諸共もろともにおかゝつてあらためて御挨拶ごあいさつをする。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)