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懸
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かゝ
ふりがな文庫
“
懸
(
かゝ
)” の例文
こまかき
雨
(
あめ
)
ははら/\と
音
(
おと
)
して
草村
(
くさむら
)
がくれ
鳴
(
なく
)
こほろぎのふしをも
乱
(
みだ
)
さず、
風
(
かぜ
)
一
(
ひと
)
しきり
颯
(
さつ
)
と
降
(
ふり
)
くるは
彼
(
か
)
の
葉
(
は
)
にばかり
懸
(
かゝ
)
るかといたまし。
雨の夜
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
然
(
しか
)
も
猶
(
なほ
)
これは
眞直
(
まつすぐ
)
に
眞四角
(
ましかく
)
に
切
(
きつ
)
たもので、およそ
恁
(
かゝ
)
る
角
(
かく
)
の
材木
(
ざいもく
)
を
得
(
え
)
ようといふには、
杣
(
そま
)
が八
人
(
にん
)
五日
(
いつか
)
あまりも
懸
(
かゝ
)
らねばならぬと
聞
(
き
)
く。
三尺角
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
(
第二十四圖
(
だいにじゆうしず
)
)
壁
(
かべ
)
に
懸
(
かゝ
)
つてゐる
牛
(
うし
)
、
馬
(
うま
)
、
鹿
(
しか
)
などの
繪
(
え
)
はかれ
等
(
ら
)
が
洞穴
(
ほらあな
)
の
中
(
なか
)
の
石壁
(
いしかべ
)
に
彫
(
ほ
)
りつけたり、また
描
(
か
)
いたりした
繪
(
え
)
の
寫
(
うつ
)
しであります。
博物館
(旧字旧仮名)
/
浜田青陵
(著)
アヽお
目
(
め
)
に
懸
(
かゝ
)
つて
少々
(
せう/\
)
お
談
(
だん
)
じ
申
(
まうし
)
てえ事があつて出ましたんで。書生「お
談
(
だん
)
じ
申
(
まうし
)
たい……エヽ先生
八百屋
(
やほや
)
の
甚兵衛
(
じんべゑ
)
さんがお
入来
(
いで
)
で。 ...
八百屋
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
彼女の苦肉の
詐術
(
さじゅつ
)
に
懸
(
かゝ
)
って生きながら不具にされる夫則重を考え、それらの「美」と「醜」とを表わす二つの顔を並べて空想してみると
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
▼ もっと見る
「俺は嘘は言はない。その疑ひがお前にも
懸
(
かゝ
)
つて居るぞ。見るが宜い、寅吉親分は何時縛つたものかと考へて居るぢやないか」
銭形平次捕物控:153 荒神箒
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
殺したことも
却
(
かへ
)
つて彼等三人に
疑
(
うたが
)
ひが
懸
(
かゝ
)
る道理だと三五郎の
計略
(
けいりやく
)
にて
已
(
すで
)
に火葬を頼んだ其時に
若
(
もし
)
もと
己
(
おれ
)
は不
承知
(
しようち
)
を言たら
汝
(
おの
)
れが
懷中
(
ふところ
)
から金を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
午後四時頃、それが済んで、帝劇を出た時は、まだ白くぼやけたやうな日が、快い柔かな光で、お
濠
(
ほり
)
の松の上に
懸
(
かゝ
)
つてゐた。
私の社交ダンス
(新字旧仮名)
/
久米正雄
(著)
其代り、此窮窟な主義だとか、主張だとか、人生観だとかいふものを
積極的
(
せききよくてき
)
に
打
(
う
)
ち
壊
(
こは
)
して
懸
(
かゝ
)
つた
試
(
ためし
)
もない。実に平凡で
好
(
い
)
い。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
十二代
(
じゆうにだい
)
景行天皇
(
けいこうてんのう
)
が、
筑紫
(
つくし
)
の
高田
(
たかだ
)
の
行宮
(
あんぐう
)
に
行幸
(
ぎようこう
)
されたときには、
長
(
なが
)
さ
九千七百尺
(
きゆうせんしちひやくしやく
)
のその
丸太
(
まるた
)
が、
橋
(
はし
)
になつて
懸
(
かゝ
)
つてゐました。
森林と樹木と動物
(旧字旧仮名)
/
本多静六
(著)
王樣
(
わうさま
)
の
御殿
(
ごてん
)
かもしれねえ、
自分
(
じぶん
)
はあそこへ
行
(
ゆ
)
くのだらう。きつと
王樣
(
わうさま
)
が
自分
(
じぶん
)
をお
召
(
め
)
しになつたんだ。お
目
(
め
)
に
懸
(
かゝ
)
つたら
何
(
なに
)
を
第
(
だい
)
一に
言
(
ゆ
)
はう。そうだ。
ちるちる・みちる
(旧字旧仮名)
/
山村暮鳥
(著)
竈
(
かまど
)
には
小
(
ちひ
)
さな
鍋
(
なべ
)
が
懸
(
かゝ
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
汁
(
しる
)
は
葢
(
ふた
)
を
漂
(
たゞよ
)
はすやうにしてぐら/\と
煮立
(
にた
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
外
(
そと
)
もいつかとつぷり
闇
(
くら
)
くなつた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
ほんとに
久濶
(
しばらく
)
ですことねエ、私、
貴嬢
(
あなた
)
に御目に
懸
(
かゝ
)
りたくてならなかつたんですよ、手紙でとも思ひましたけれどもね
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
江戸時代に
遡
(
さかのぼ
)
つて
之
(
これ
)
を見れば元禄九年に
永代橋
(
えいたいばし
)
が
懸
(
かゝ
)
つて、
大渡
(
おほわた
)
しと呼ばれた
大川口
(
おほかはぐち
)
の
渡場
(
わたしば
)
は
江戸鹿子
(
えどかのこ
)
や
江戸爵抔
(
えどすゞめなど
)
の
古書
(
こしよ
)
にその跡を残すばかりとなつた。
水 附渡船
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
運
(
うん
)
の
星
(
ほし
)
に
懸
(
かゝ
)
ってある
或
(
さる
)
怖
(
おそろ
)
しい
宿命
(
しゅくめい
)
が、
今宵
(
こよひ
)
の
宴
(
えん
)
に
端
(
はし
)
を
開
(
ひら
)
いて、
世
(
よ
)
に
倦
(
う
)
み
果
(
は
)
てた
我
(
わが
)
命數
(
めいすう
)
を、
非業無慚
(
ひごふむざん
)
の
最期
(
さいご
)
によって、
絶
(
た
)
たうとするのではないか
知
(
し
)
らぬ。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
だが、気に
懸
(
かゝ
)
るのは、銀の金槌で、今度の売立にもあの金槌だけは出て居ないところを見ると、
何
(
ど
)
うかしたのではあるまいかと心配してゐる
向
(
むき
)
もある。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
二年も三年も
懸
(
かゝ
)
つて修業するのなら誰にでも出来る、貴様は少くともそんな意気地の無い真似を
為
(
し
)
てはならぬ。
重右衛門の最後
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
我は夢に、
黄金
(
こがね
)
の羽ある一羽の鷲の、翼をひらきて
空
(
そら
)
に
懸
(
かゝ
)
り、降らんとするをみきとおぼえぬ 一九—二一
神曲:02 浄火
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
さて
某
(
なにがし
)
は
僕
(
ぼく
)
を
從
(
したが
)
へ
我家
(
わがや
)
をさして
歸
(
かへ
)
る
途
(
みち
)
すがら
曩
(
さき
)
に
雲飛
(
うんぴ
)
が石を
拾
(
ひろ
)
つた川と
同
(
おなじ
)
流
(
ながれ
)
に
懸
(
かゝ
)
つて居る
橋
(
はし
)
まで來ると、
僕
(
ぼく
)
は
少
(
すこ
)
し
肩
(
かた
)
を
休
(
やす
)
める
積
(
つも
)
りで石を
欄干
(
らんかん
)
にもたせて
吻
(
ほつ
)
と
一息
(
ひといき
)
石清虚
(旧字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
鐘楼があり、多宝塔があり、そして、正面、石段による適当な高さをもつた本堂には“寂光殿”とした額が
懸
(
かゝ
)
り、その下に、マルに
卍
(
まんじ
)
の、浅黄いろの幕が張つてあつた。
にはかへんろ記
(新字旧仮名)
/
久保田万太郎
(著)
診察
(
しんさつ
)
の
時
(
とき
)
、
患者
(
くわんじや
)
の
臆病
(
おくびやう
)
、
譯
(
わけ
)
の
解
(
わか
)
らぬこと、
代診
(
だいしん
)
の
傍
(
そば
)
にゐること、
壁
(
かべ
)
に
懸
(
かゝ
)
つてる
畫像
(
ぐわざう
)
、二十
年
(
ねん
)
以上
(
いじやう
)
も
相變
(
あひかは
)
らずに
掛
(
か
)
けてゐる
質問
(
しつもん
)
、
是等
(
これら
)
は
院長
(
ゐんちやう
)
をして
少
(
すくな
)
からず
退屈
(
たいくつ
)
せしめて
六号室
(旧字旧仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
我
(
わ
)
が
品川
(
しながは
)
の
住居
(
じうきよ
)
から
遠
(
とほ
)
くもあらぬ
桐
(
きり
)
ヶ
谷
(
や
)
の
村
(
むら
)
、
其所
(
そこ
)
に
在
(
あ
)
る
氷川神社
(
ひがはじんじや
)
の
境内
(
けいだい
)
に、
瀧
(
たき
)
と
名
(
な
)
に
呼
(
よ
)
ぶも
如何
(
いかゞ
)
であるが、一
日
(
にち
)
の
暑
(
しよ
)
を
避
(
さ
)
けるに
適
(
てき
)
して
居
(
ゐ
)
る
靜地
(
せいち
)
に、
清水
(
しみづ
)
の
人造瀧
(
じんざうたき
)
が
懸
(
かゝ
)
つて
居
(
ゐ
)
るので
探検実記 地中の秘密:01 蛮勇の力
(旧字旧仮名)
/
江見水蔭
(著)
そこで體を突ツ張つて、腕を
組
(
く
)
み
足拍子
(
あしひやうし
)
を取つて、出來るだけえらさうに
寛々
(
ゆる/\
)
と歩いて見る。駄目だ。些ともえらくなれない。何か
妄
(
むやみ
)
と氣に
懸
(
かゝ
)
ツて、不安は
槍襖
(
やりぶすま
)
を作ツて
襲
(
おそ
)
ツて來る。
平民の娘
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
青海
(
せいかい
)
の簾高く捲き上げて、前に廣庭を眺むる大弘間、咲きも殘らず散りも
初
(
はじ
)
めず、
欄干
(
おばしま
)
近く雲かと
紛
(
まが
)
ふ滿朶の櫻、今を盛りに匂ふ
樣
(
さま
)
に、月さへ
懸
(
かゝ
)
りて夢の如き
圓
(
まどか
)
なる影、朧に照り渡りて
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
海龜
(
うみがめ
)
は
深
(
ふか
)
くも
長太息
(
ためいき
)
を
吐
(
つ
)
いて、その
眼前
(
がんぜん
)
に
懸
(
かゝ
)
れる一
枚
(
まい
)
の
屏風岩
(
べうぶいは
)
を
引寄
(
ひきよ
)
せました。
彼
(
かれ
)
は
愛
(
あい
)
ちやんの
方
(
はう
)
を
見
(
み
)
て、
談話
(
はなし
)
をしやうとしましたが、
暫
(
しばら
)
くの
間
(
あひだ
)
、
歔欷
(
すゝりなき
)
のために
其
(
そ
)
の
聲
(
こゑ
)
が
出
(
で
)
ませんでした。
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
斜めに落ちかゝつたやうな位置で皎々と
懸
(
かゝ
)
つてゐた。細かい羽根のやうな冷たさを含んだ尾は、途方もなく大きい
穹形
(
ゆみなり
)
でゆるく消えてゐた。それは人間には一寸
諳
(
そら
)
では画かれない線だつた。
朧夜
(新字旧仮名)
/
犬養健
(著)
驛員が二三人、驛夫室の入口に
倚
(
よ
)
つ
懸
(
かゝ
)
つたり、
蹲
(
しやが
)
んだりして、時々此方を見ながら、何か小聲に語り合つては、無遠慮に
哄
(
どつ
)
と笑ふ。靜子はそれを避ける樣に、ズッと端の方の腰掛に腰を掛けた。
鳥影
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
生得
(
しやうとく
)
の
下戸
(
げこ
)
と、戒行の堅固な處と、氣の強い處と、三つのかね
合故
(
あひゆゑ
)
、目をまはさずにすみ申候、此三つの内が一つ
闕候
(
かけさふらう
)
ても目をまはす怪我にて、目をまはす程にては、療治も二百日餘り
懸
(
かゝ
)
り
可申
(
まうすべく
)
寿阿弥の手紙
(旧字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
支倉を取逃がしてから一日として安き思いのなかった石子刑事は、今日の鑑定の結果がひどく気に
懸
(
かゝ
)
るので、すっかり心を暗くして重い足を引摺って、あれこれと思い悩みながら歩んで行くのだった。
支倉事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
月はなほ
夜
(
よ
)
の
氛囲気
(
ふんゐき
)
の
朧
(
おぼろ
)
なる
恐怖
(
おそれ
)
に
懸
(
かゝ
)
る。
邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
懸
(
かゝ
)
る
見
(
み
)
してふ
天
(
あま
)
の
衣
(
きぬ
)
孔雀船
(旧字旧仮名)
/
伊良子清白
(著)
花の
環
(
たまき
)
よ
懸
(
かゝ
)
れかし
花守
(旧字旧仮名)
/
横瀬夜雨
(著)
裙
(
すそ
)
が
未
(
ま
)
だ
此
(
こ
)
の
肱
(
ひぢ
)
に
懸
(
かゝ
)
つて、
橋
(
はし
)
に
成
(
な
)
つて
床
(
ゆか
)
に
着
(
つ
)
く、
仰向
(
あふむ
)
けの
白
(
しろ
)
い
咽喉
(
のど
)
を、
小刀
(
ナイフ
)
でざつくりと、さあ、
斬
(
き
)
りましたか、
突
(
つ
)
いたんですか。
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
此
(
この
)
四郎右衞門は
當年
(
たうねん
)
六十五歳の
老人
(
らうじん
)
なり夫を是より三十五年の
間
(
あひだ
)
殘金
(
ざんきん
)
の
勘定
(
かんぢやう
)
に
懸
(
かゝ
)
らば
是
(
これ
)
何歳
(
なんさい
)
に至るぞや
大岡殿
(
おほをかどの
)
の
仁心
(
じんしん
)
思
(
おも
)
ふべし
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
後向
(
うしろむ
)
きに
成
(
な
)
りて
猶
(
なほ
)
も
鼻緒
(
はなを
)
に
心
(
こゝろ
)
を
盡
(
つく
)
すと
見
(
み
)
せながら、
半
(
なかば
)
は
夢中
(
むちう
)
に
此下駄
(
このげた
)
いつまで
懸
(
かゝ
)
りても
履
(
は
)
ける
樣
(
やう
)
には
成
(
な
)
らんともせざりき。
たけくらべ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
御米
(
およね
)
は
茶器
(
ちやき
)
を
引
(
ひ
)
いて
臺所
(
だいどころ
)
へ
出
(
で
)
た。
夫婦
(
ふうふ
)
はそれぎり
話
(
はなし
)
を
切
(
き
)
り
上
(
あ
)
げて、
又
(
また
)
床
(
とこ
)
を
延
(
の
)
べて
寐
(
ね
)
た。
夢
(
ゆめ
)
の
上
(
うへ
)
に
高
(
たか
)
い
銀河
(
あまのがは
)
が
涼
(
すゞ
)
しく
懸
(
かゝ
)
つた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
おなじく、
深
(
ふか
)
い
罅
(
ひゞ
)
のはいつた
肉體
(
からだ
)
をもつてゐるわたしは、これから
海
(
うみ
)
に
行
(
ゆ
)
かうとしてゐたので、一つはしばらく
先生
(
せんせい
)
にもお
目
(
め
)
に
懸
(
かゝ
)
れまいと
思
(
おも
)
つて。
ちるちる・みちる
(旧字旧仮名)
/
山村暮鳥
(著)
さう聞くと、若し小三郎が昨夜この手拭を忘れて行かなければ、お菊殺しの疑ひは、眞つ直ぐに手拭の持主の小三郎に
懸
(
かゝ
)
つて行くことになるでせう。
銭形平次捕物控:236 夕立の女
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
これにはさしもの平中も
開
(
あ
)
いた口が
塞
(
ふさ
)
がらなかった。彼も今まで数々の女に恋をしかけたが、こんな意地の悪い、皮肉な相手に
懸
(
かゝ
)
ったことはなかった。
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
「そいぢや、お
宅
(
うち
)
の床の間には、師匠のこの幅は
懸
(
かゝ
)
らんで、私のは懸る事になりますな、同じ大きさの
幅
(
ふく
)
でゐて。」と栖鳳氏は一寸
窄口
(
つぼぐち
)
をして笑つた。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
漁夫
(
ぎよふ
)
は
鮭
(
さけ
)
が
深夜
(
しんや
)
に
網
(
あみ
)
に
懸
(
かゝ
)
るのを
待
(
ま
)
ちつゝ、
假令
(
たとひ
)
連夜
(
れんや
)
に
渡
(
わた
)
つてそれが
空
(
むな
)
しからうともぽつちりとさへ
眠
(
ねむ
)
ることなく
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
二階は十二畳敷
二間
(
ふたま
)
で、
階段
(
はしご
)
を上つたところの一間の右の
一隅
(
かたすみ
)
には、
欅
(
けやき
)
の
眩々
(
てら/\
)
した長火鉢が据ゑられてあつて、鉄の五徳に南部の
錆
(
さ
)
びた
鉄瓶
(
てつびん
)
が
二箇
(
ふたつ
)
懸
(
かゝ
)
つて
重右衛門の最後
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
君等は直ぐ
左様
(
さう
)
云ふからこまる——今迄篠田君の
身辺
(
まはり
)
には
一抹
(
いちまつ
)
の
妖雲
(
えううん
)
が
懸
(
かゝ
)
つて居たのだ、篠田君自身は無論知らなかつたであらうが——現に
何時
(
いつ
)
であつたか
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
あの
姫
(
ひめ
)
の
美麗
(
あてやか
)
さで、
輝
(
かゞや
)
く
燭火
(
ともしび
)
が
又
(
また
)
一
段
(
だん
)
と
輝
(
かゞや
)
くわい!
夜
(
よる
)
の
頬
(
ほゝ
)
に
照映
(
てりは
)
ゆる
彼
(
あ
)
の
姫
(
ひめ
)
が
風情
(
ふぜい
)
は、
宛然
(
さながら
)
黒人種
(
エシオツプ
)
の
耳元
(
みゝもと
)
に
希代
(
きたい
)
の
寶玉
(
はうぎょく
)
が
懸
(
かゝ
)
ったやう、
使
(
つか
)
はうには
餘
(
あま
)
り
勿體無
(
もったいな
)
く
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
わがいたく思ひ
惑
(
まど
)
ふを見て淑女曰ふ。天もすべての自然も、かの一點にこそ
懸
(
かゝ
)
るなれ 四〇—四二
神曲:03 天堂
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
清「へい新湊町九番地にいる家根屋の清次郎と申します者で、始めてお目に
懸
(
かゝ
)
りました」
西洋人情話 英国孝子ジョージスミス之伝
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
控所
(
ひかへじよ
)
は、
壁
(
かべ
)
に
大
(
おほ
)
きい
額縁
(
がくぶち
)
に
填
(
はま
)
つた
聖像
(
せいざう
)
が
懸
(
かゝ
)
つてゐて、
重
(
おも
)
い
燈明
(
とうみよう
)
が
下
(
さ
)
げてある。
六号室
(旧字旧仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
お房の其の美しい肌が處女の
清淨
(
せいじやう
)
を
保
(
たも
)
ツてゐるか何うかといふこと、
設
(
よし
)
また其の肌が清淨を保ツてゐるにしても、其の心は何者かに
汚
(
けが
)
されてゐはせぬかといふことが氣に
懸
(
かゝ
)
つて來たのであつた。
平民の娘
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
葉
(
は
)
の
裏
(
うら
)
に
虹
(
にじ
)
懸
(
かゝ
)
り
孔雀船
(旧字旧仮名)
/
伊良子清白
(著)
が、
誰
(
たれ
)
も
来
(
き
)
ては
不可
(
いけな
)
い、
屹
(
きつ
)
と
来
(
き
)
ては
不可
(
いけな
)
い、いづれ、やがて
其
(
そ
)
の
仕事
(
しごと
)
が
出来
(
でき
)
ると、お
浦
(
うら
)
と
一所
(
いつしよ
)
に、
諸共
(
もろとも
)
にお
目
(
め
)
に
懸
(
かゝ
)
つて
更
(
あらた
)
めて
御挨拶
(
ごあいさつ
)
をする。
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
懸
常用漢字
中学
部首:⼼
20画
“懸”を含む語句
心懸
懸合
引懸
追懸
行懸
突懸
懸隔
出懸
手懸
言懸
云懸
一生懸命
鈴懸
凭懸
思懸
打懸
取懸
吹懸
念懸
懸崖
...