たゝ)” の例文
マーキュ 猫王ねこまたどの、九箇こゝのつあるといふ足下おぬしいのちたッたひとつだけ所望しょもうしたいが、其後そののち擧動次第しこなししだいのこ八箇やッつたゝみじくまいものでもない。
「おやもうそつちのはうつたのかい、それぢや彼處あすこたゝくんだよ」内儀かみさんはいつてわかれた。おつぎはすぐ自分じぶん裏戸口うらどぐちつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
すると、椽側にちかく、ぴしやりとすねたゝおとがした。それから、ひとが立つて、おくへ這入つて行く気色けしきであつた。やがて話声はなしごえきこえた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
いやういふところやまひは多くあるものだからな、これから一つ打診器だしんき肺部はいぶたゝいて見てやらう。登「いやそれうもあぶなうございます。 ...
華族のお医者 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
ぺん宣言書せんげんしよ==其は頭から尻尾しつぽまで、爆發ばくはつした感情の表彰へうしやうで、激越げきえつきはめ、所謂阿父のよこつらたゝき付けた意味のものであツた。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
歩行あるきうち先夜せんや伊勢屋の前へまゐかゝりし時腹痛ふくつうにて難儀仕なんぎつかまつり夜更なれども詮方せんかたなく伊勢屋の戸をたゝき湯をもらはんとぞんじ候處一かうに戸を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
それから乾菓子ひぐわしべました。おほきなとり其味そのあぢわからないとつてこぼす、ちひさなとりせて背中せなかたゝいてもらう、それは/\大騷おほさわぎでした。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
大きな須弥壇しゆみだん金鍍きんめつきをした天蓋てんがい賓頭盧尊者びんづるそんじやの木像、其処此処に置かれてある木魚、それを信者達は代る代るやつてきてたゝいた。
ある僧の奇蹟 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
車をり閉せし雨戸をたゝかんとするに、むかしながらの老婆の声はしはぶきと共に耳朶じだをうちぬ。次いで少婦せうふの高声を聞きぬ。
三日幻境 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
これを二碗にわんかたむけた鄰家りんか辻井つじゐさんはむか顱卷はちまき膚脱はだぬぎの元氣げんきつて、「さあ、こい、もう一度いちどゆすつてろ。」とむねたゝいた。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
しかるに米兵らは朱肉をつかふことを知らないので、ロー石のスタンプにインクをつけてゴム印同様に習慣的にポンとたゝきつけるのである。
老残 (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
左樣さやう殘念ざんねんながら、西班牙イスパニヤや、亞弗利加アフリカはう今度こんど斷念だんねんしました。』と、わたくしがキツパリとこたへると、かれはポンとひざたゝいて
「君、さう泣くな、村井」とポンと肩をたゝいてなだめたるは、同じく苦学の配達人、年は村井と云へるに一ツ二ツも兄ならんか
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
ひたひを平手でたゝいて舌をペロリと出し乍らも八五郎は諦めてしまひました。此上セガむと平次は花見の入費に女房の身の皮をぎかねないのです。
づ好かつた。』と叔父は屠牛場の門を出た時、丑松の肩をたゝいて言つた。『先づまあ、これで御関所は通り越した。』
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
絶えざる低い大太鼓おほだいこの音に例のごとく板をバタバタたゝく音がきこえて、左手の辻番つじばん小屋のかげから仲間ちゆうげんござかゝへた女とが大きな声で争ひながら出て来る。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
法師丸はそのしーんとした闇の中で、夜着をかむって、まんじりとせずに息を凝らしていると、やがて老女の足音がして、衝立の戸をほと/\とたゝいた。
はゝア、そんな階級の女なのだなと、ゆき子は池袋の自分の小舎こやを思ひ出してゐた。いまごろは、尋ねて来て、扉をこつこつたゝいてゐるかも知れない。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
流石さすが明治めいぢおん作者さくしや様方さまがたつうつうだけありて俗物ぞくぶつ済度さいどはやくも無二むに本願ほんぐわんとなし俗物ぞくぶつ調子てうし合点がてんして幇間たいこたゝきておひげちりはらふの工風くふう大悟たいご
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
それならばものたゝつち使つかふものかといふに、それにはあま細工さいくぎてゐるようにもおもはれるので、はたしてなに使つかはれたものかすこぶうたがはしいくらゐです。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
白粉花おしろいばな夜中よなかに表をたゝくから、雨戸あまどを明けてふと見れば、墓場の上の狐火きつねびか、暗闇くらがりのなかにおまへの眼が光る。噫、おしろい、おしろい、よごれたよる白粉花おしろいばな
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
ではみんなよ、はやおおきくなつて、きみたちも勇敢ゆうかんなプロレタリアの鬪士とうしとなつて、きみたちやきみたちのおとうさんおかあさんをくるしめてゐるやつらをたゝきのめしてくれ!
赤い旗 (旧字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
利休は女房のたゝつた茶器を、一つ一つ拾ひ上げて、克明にそれを漆で継いだものだ。そして女房のちんちんなどは素知らぬ顔で相変らずお茶をすゝつてゐた。
こうみえてもまだ貴樣等きさまら臺所だいどころ土間どまにおすはりして、おあまりを頂戴ちやうだいしたこたあ、たゞの一どだつてねえんだ。あんまおほきなくちたゝきあがると、おい、くればんはきをつけろよ
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
ナントおつ出来でかしたではござらぬか、此詩このし懐中くわいちうしたれば、もんたゝいておどろかしまをさんかとは思ひしが、夢中むちう感得かんとくなれば、何時いつ何処どこにても、またやらかすとわけにはかず
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
『私が喰べるのですよ、誰が昌作さんなんかに上げるもんですか。』とらず口をたゝいて
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
「地面のやつ、寝込みをあんまり早くたゝき起されたんで機嫌きげんを悪くしてゐやがるんだよ。」
新らしき祖先 (新字旧仮名) / 相馬泰三(著)
夕方になつてから、津島は大工が張つて行つた、湯殿の板敷をくはたゝきこはしてゐた。
風呂桶 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
準備をしてゐる久しい間には、折々をり/\成功の時の光景がまぼろしのやうに目に浮かんで、地上に血を流す役人、脚下にかうべたゝく金持、それから草木さうもくの風になびくやうにきたする諸民が見えた。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
それから彼は一つの手函てばこを持ち出した。それは方一尺あるかない小さなきりの白木で出来てゐて、厭に威嚇するやうな銀色の大きい錠が下りてゐる。彼はそれをぽん/\とたゝいて見せて
手品師 (新字旧仮名) / 久米正雄(著)
もし蔽ひ得べしとせば其の哲学的根拠は如何、吾人は之れをたゝかざるを得ざる也。
国民性と文学 (新字旧仮名) / 綱島梁川(著)
雷鳥らいちようははひまつの高山植物こうざんしよくぶつ若芽わかめ食物しよくもつとしてゐます。性質せいしつ遲鈍ちどんですから、ひと近寄ちかよつても容易よういげません。つゑたゝけばおとせそうなひくそらを、うろ/\まはつてゐます。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
たはむれに枯草かれくさうつした子供等こどもらは、はるかにえる大勢おほぜい武士ぶし姿すがたおそれて、周章あわてながらさうと、青松葉あをまつばえだたゝくやら、えてゐるくさうへころがるやらして、しきりにさわいでゐた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
或人あるひと義母おつかさん脊後うしろからその脊中せなかをトンとたゝいて『義母おつかさん!』とさけんだら『オヽ』とおどろいて四邊あたりをきよろ/\見廻みまはしてはじめて自分じぶん汽車きしやなかること、旅行りよかうしつゝあることにくだらう。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
一人でをこつて、カン/\とたゝ煙管きせるの音も前よりははげしくをぼへた。
夜汽車 (新字旧仮名) / 尾崎放哉(著)
祖父から子供のをり冬の炉辺のつれ/″\に聞かされた妖怪変化えうくわいへんげに富んだ数々の昔噺むかしばなしを、一寸法師の桶屋をけやつち馬盥ばだらひたゝいてゐると箍が切れね飛ばされて天に上り雷さまの太鼓叩きに雇はれ
途上 (新字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
どこかで鋼鉄の板をたゝ
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
かたたゝいて童形どうぎやう
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
女同士をんなどうしはわあとたゞわらごゑはつして各自てんで對手あひていたりたゝいたりしてみだれつゝさわいだ。突然とつぜん一人ひとりがおつぎのかみへひよつとけた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「いえ信念しんねんさへあればだれでもさとれます」と宜道ぎだう躊躇ちうちよもなくこたへた。「法華ほつけかたまりが夢中むちゆう太鼓たいこたゝやうつて御覽ごらんなさい。 ...
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
いろんな事をつてやアがる、て/\、ウームアヽ痛いウム、オイおくま躯中からだぢゆうしびれて……こつちへはいつて背中せなかを二ツ三ツたゝいてくれ。
振返ふりかへり樣三刀四刀に切殺せり其中に下女はおもて迯出にげいで人殺々々ひとごろし/\よばはりながら金盥かなだらひたゝき立てしかば近隣の人々馳付はせつける樣子を見て金を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
と、あるきやくたゝく。……まあおほいに勉強べんきやうをして、むすめようきにつた。——さうすると、そのおきやくが、「鍋下なべした」をつていとつた。
廓そだち (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
余が去れる後数分、警吏は令状をたづさへて平民社をたゝけり、厳達して曰く「嗚呼あゝ増税」の一文、社会の秩序を壊乱するものありよつて之を押収あふしふすと
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
今一いまひとつ、わたくしは松島海軍大佐かいぐんたいさなる姓名せいめいみゝにして、たちま小膝こひざをポンとたゝいたよ。讀者どくしや諸君しよくん! 松島海軍大佐まつしまかいぐんたいさとはたれであらう?
私より年上の権八は毎朝造船部へかん/\たゝき(鉄のさびを叩き落す少年労働者)に出て二十銭づつまうけて帰つた。次の弟はまだ小学校に通つてゐた。
ある職工の手記 (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
不図応接室の戸をたゝく音がした。急に二人は口をつぐんだ。た叩く。『お入り』と声をかけて、校長は倚子いすを離れた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
ロレ あれ、あのたゝくことは!……れぢゃな!……はやちゃ。とらへられうぞよ。……しばらく/\!……ちゃ/\。
中門のあたりとおぼしい所にほと/\と戸をたゝく者があるので、開けて見ると、亡くなった筈の菅丞相がたゝずんでいた。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
道徳の府なる儒学も、平民の門をたゝくことは稀なりし、高等民種のうちにすら局促たる繩墨じようぼく覊絆きはんを脱するに足るべき活気ある儒学に入ることを許さゞりしなり。
徳川氏時代の平民的理想 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)