けづ)” の例文
お前は、毒菓子から目印めじるしの赤い飾り種をけづり取り、懷ろ紙か何かに包んで持つて來る途中、小窓をまたぐとき敷居にこぼしたことだらう。
木曾きそ檜木ひのき名所めいしよですから、あのうすいたけづりまして、かさんでかぶります。そのかさあたらしいのは、檜木ひのき香氣にほひがします。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
けつして安泰あんたいではない。まさつめぎ、しぼり、にくむしほねけづるやうな大苦艱だいくかんけてる、さかさまられてる。…………………
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
高田たかたしろ大手先の広場ひろばに、木をかくけづり尺をしるしてたて給ふ、是を雪竿さをといふ。長一丈也。雪の深浅しんせん公税こうぜいかゝるを以てなるべし。
僕等はいつか工事場らしい板囲いたかこひの前に通りかかつた。そこにも労働者が二三人、せつせとつちを動かしながら、大きい花崗石くわかうせきけづつてゐた。
本所両国 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
汝の願ひの一部は滿つべし、そは汝けづられし木を見、何故に革紐かはひもまとふ者が「迷はずばよくゆるところ」と 一三六—一三八
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
これがためにいかなる重みある詞をけづり給はんも、又いづくより阿のこゑの韻脚を取り給はんも、そは唯だ君が責に歸せん。
入りにし人の跡もやと、此處彼處こゝかしこ彷徨さまよへば、とある岸邊きしべの大なる松の幹をけづりて、夜目よめにもしるき數行の文字。月の光に立寄り見れば、南無三寶。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
正に骨味ほねみけづるが如くあれほどひつ死に眞劍しんけんあらそたゝかはなければならないとは! さう言えば、むかしあらそ將棋せうきやぶれていて死んだわか棋士きしがあつた。
勘次かんじけづつたやうなせたかほ何時いつでもひがんでさうしておこやすいのを彼等かれら嘲笑てうせうまなこもつとほくからのぞくのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
藥草類やくさうるゐってをったが、かほ痩枯やせがれ、眉毛まゆげおほかぶさり、するどひんけづられて、のこったはほねかは
だから、あらゆる方面に向つて、奥行おくゆきけづつて、一等国丈の間口まぐちつちまつた。なまじい張れるから、なほ悲惨ひさんなものだ。うしと競争をするかへると同じ事で、もう君、はらけるよ。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
これを石斧せきふんでゐますが、ながさはたいてい五六寸ごろくすんあるひは二三寸にさんずんぐらゐのもので、かたち御覽ごらんのとほり長方形ちようほうけいであつて一方いつぽうはしけづつてするどくしてありますが、たいていは兩面りようめんからみがいて
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
此處こゝです。』と一言いちごんのこして、鐵門てつもんくゞつた、わたくしもつゞいてそのなかると、たちまる、此處こゝは、四方しほう數百すうひやくけん大洞窟おほほらあなで、前後左右ぜんごさゆうけづつたやう巖石がんぜきかこまれ、上部じやうぶには天窓てんまどのやうな
桂皮をけづつて、熱い湯にとかして持つて来てくれた事があつた。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
樫をけづつた木のへら
妄動 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
いはけづつて點滴したゝみづは、階子ばしごに、垂々たら/\しづくして、ちながら氷柱つらゝらむ、とひやゝかさのむのみ。何處どこいへほのほがあらう。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
手にしたがつて飛ぶ投げ錢、惡者達は鼻を叩かれ、頬をけづられ、中には眼をやられ、こぶしを痛められて、ドツと崩れ立ちます。
ペリイニイは一句を添へず又一句をけづらず、その口吻態度ちとの我に殊なることなくして、人々は此の如く笑ひしなり。
○さて時平が毒奏どくそうはやくあたりて、同月廿五日左降さがう宣旨せんじ下りて右□臣のしよくけづり、従二位はもとのごとく太宰権帥だざいごんのそつとし(文官)筑紫つくし左遷させんに定め玉へり。
ほそたけつたのまでれてよこしました。そのほそたけけづりまして、たけ手桶てをけしますと、それでげられるやうにるのです。みづめます。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
なあにツちんで毎日まいんちさけぴんんだな、さけんぢやわりいなんて醫者いしやなんちや駄目だめだなかたで、檳榔樹びんらうじゆとかなんとかだなんてちつとばかしづゝ、けづつたくすりなんぞ倦怠まだるつこくつてやうねえから
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
何人なんびとすでに「一」字をけづつて「半」字に改めしのちなりき。
はなしを——或時あるときとんさんと一所いつしよえたことのある志賀しがさんがいて、西洋せいやう小説せうせつに、狂氣きやうきごと鉛筆えんぴつけづ奇人きじんがあつて、をんなのとはかぎらない
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
○さて時平が毒奏どくそうはやくあたりて、同月廿五日左降さがう宣旨せんじ下りて右□臣のしよくけづり、従二位はもとのごとく太宰権帥だざいごんのそつとし(文官)筑紫つくし左遷させんに定め玉へり。
盜られて了つては、配偶つれあひが死んでから十五年の間の、骨をけづるやうな苦勞も、皆んな無駄になつてしまひました
琅玕らうかんもてけづり成せるが如し。これに登らんと欲すれば、巖扉みつに鎖して進むべからず。すゐするに、こは天堂に到る階級きざはしにして、其門扉は我が爲めに開かざるならん。
ときにはもう幾度いくたび勝負しやうぶをした揚句あげくつちのついてのこぼれたやつをけづしたりしてあそびました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
こゑあるはひとりかけひにして、いはきざみ、いしけづりて、つめたえだかげひかる。がためのしろ珊瑚さんごぞ。あのやまえて、たにえて、はるきたきざはしなるべし。
月令十二態 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「知つてるわけぢやないが、地獄極樂の活人形とは、あんまり手際が違ひ過ぎる。それに、あの佛像の臺座を見ると、めいけづつて書き變へた跡があるんだ」
売茶翁ちやをうるおきなに問ば、これは山蔭やまかげの谷にあるなり、めしたまはゞすゝめんといふ。さらばとてひければおきな菜刀なきりはうてうとりさらのなかへさら/\とおとしてけづりいれ、豆のをかけていだせり。
けづりてなせる青巌あをいは
若菜集 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
いはおもて浮模様うきもやうすそそろへて、上下うへしたかうはせたやうな柳条しまがあり、にじけづつてゑがいたうへを、ほんのりとかすみいろどる。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
崖の上をけづつたほんの少しばかりの空地ですが、こゝで調べるには、往來から見える氣遣ひはありません。
売茶翁ちやをうるおきなに問ば、これは山蔭やまかげの谷にあるなり、めしたまはゞすゝめんといふ。さらばとてひければおきな菜刀なきりはうてうとりさらのなかへさら/\とおとしてけづりいれ、豆のをかけていだせり。
魔的まてき警察けいさつしのんで、署長しよちやうどのの鉛筆えんぴつさきするどはりのやうにけづつて、ニヤリとしたのがある、と談話はなしをされた。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
又六は伜のめいけづつた上、神々しい素木しらきの佛樣へ、見世物向きに、あんな下品な彩色をして了ひました。
我が塩沢しほざは近辺きんへんの風俗に、正月十五日まへ七八歳より十三四までの男のわらべどもさいの神勧進くわんじんといふ事をなす。少し富家ふかわらべこれをなすには𣖾木ぬるでのきを上下よりけづかけつばの形を作る、これを斗棒とぼうといふ。
けづとき釣合つりあひひとつで、みづれたときかたちがふでねえかの、たてまればしやうがある、よこれば、んだりよ。……むづことではねえだ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「お前は默つてゐろ、——横町の御浪人は、鎧通よろひどほしで内職の妻楊枝つまやうじけづつてるぢやないか、御用聞き風情が、唐紙の穴を塞いだところで、御政道の瑕瑾かきんにはならないよ」
炎天えんてんうみなまりかして、とろ/\とひとみる。かぜは、そよともかない。斷崖だんがいいはしほけづつてしたす。やまにはかげもない。くさいきれはまぼろしけむりく。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ヒヨロヒヨロと床の間のかへでの柱に當つて、少しばかりめり込んだのを、刄物で楓の柱をけづつて掘り出したんだらう、それはその晩のうちに人知れずやつたことだらうが
奧へ行つて南縁からそつとのぞいたことだらう、——清八が毒菓子の目印の赤い飾り種をけづつて、お孃さんのところへ置くのを見ると、矢もたてもたまらず、その毒菓子を
わたし薪雜棒まきざつぽうつてて、亞鉛トタン一番いちばんしのぎけづつてたゝかはうかな。」と喧嘩けんくわぎてのぼうちぎりで擬勢ぎせいしめすと、「まあ、かつたわね、ありがたい。」とうれしいより、ありがたいのが
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
反けたために、僅かのところで喉笛のどぶえに突つ立つのをまぬかれたが、部屋の中の薄暗がりで、茶を入れてゐた娘の頬をけづつて、その矢は向うの唐紙に突き立つたのだ——これぢや
水源みなもと岩井沼いはゐぬまおこすとふ、浦川うらかはながれすゑが、ひろつてうみそゝところちかかつた。旅館りよくわんてまだいくほどもないところに——みちそばに、切立きつたてた、けづつた、おほきいはほの、矗々すくつのをた。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「いや、ヤスリで峰をけづつた剃刀があるやうだが、あれは何處をる時使ふんだえ」
ちやうひとみはなして、あとへ一歩ひとあし振向ふりむいたところが、かは曲角まがりかどで、やゝたか向岸むかうぎしの、がけうち裏口うらぐちから、いはけづれるさま石段いしだん五六段ごろくだんりたみぎはに、洗濯せんたくものをしてむすめが、あたかもほつれくとて
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「兩端がその麻糸を掛けるやうにけづつてあるだらう——そいつは弓だよ」
なんでも他人たにんつたのを内證ないしよけづらないでは我慢がまん出來できない。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)