親切しんせつ)” の例文
けれども、人びとは、この平野がゆたかで、親切しんせつなのに、満足まんぞくしたものでしょう。できるだけこれをかざりたててやろうとしました。
どうしてその青年が、青二にそう親切しんせつなのか分らなかった。しかし今はその青年に力を借りるよりほか道がないことが、青二に分っていた。
透明猫 (新字新仮名) / 海野十三(著)
同時どうじに、いままで世間せけんむかつて、積極的せききよくてき好意かうい親切しんせつ要求えうきうする勇氣ゆうきたなかつたかれは、突然とつぜんこの主人しゆじんまをいでつてすこ間誤まごつくくらゐおどろいた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
そうしてそのにはあたたか健全けんぜんかがやきがある、かれはニキタをのぞくのほかは、たれたいしても親切しんせつで、同情どうじょうがあって、謙遜けんそんであった。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
そこで保名やすなこころのうちにはどくおもいながら、毎日まいにちあおむけになってたまま、親切しんせつむすめ世話せわからだをまかしておくほかはありませんでした。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
クリストフはいつもよるよく眠れないで、夜の間に昼間ひるま出来事できごとを思いかえしてみるくせがあって、そんな時に、小父おじはたいへん親切しんせつな人だと考え
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
私共わたしどもとほくにはうからまゐるものですから、なか/\言葉ことばおぼえられません、でも、あなたがたが親切しんせつにしてくださるのを、なにより有難ありがたおもひます。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
もとよりこばむべき筋合すじあいのものでございませぬから、わたくし早速さっそく身支度みじたくしてこの親切しんせつな、いたる竜神りゅうじんさんのあとについて出掛でかけることになりました。
けれども、先生せんせいのように親切しんせつをしへてくださるひとはなく、やすみの時間じかんにお友達ともだち面白おもしろあそぶことが出來できないから、ときには退屈たいくつすることもありませう。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
よしや千萬里ばんりはなれるとも眞實まこと親子おやこ兄弟けうだいならば何時いつかへつてうといふたのしみもあれど、ほんの親切しんせつといふ一すぢいとにかヽつてなれば
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
はぬことまで親切しんせつはなします。それ仔細しさいわかつてたしかになりはなつたけれども、げん一人ひとり蹈迷ふみまよつたものがある。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
博士は親切しんせつにすすめた。ところが透明人間とうめいにんげんは、くるしそうにうなり声をたてながら、どうしてもねむろうとしなかった。
『おゝ、可愛かあいらしいですな。』と親切しんせつそのかしらでつゝ、吾等われらかたわらいさましきおもてしててる水兵すいへいかへり
はじめは人間の子のニールスをきらっていましたが、のちにはニールスのちえと親切しんせつに感心して、「オヤユビ太郎」とか「オヤユビくん」と呼んで大事だいじにしています。
こう思うとたてもなく、竹童は、神官しんかん菊村宮内きくむらくないに、きょうまでうけた親切しんせつれいをのべ、井上大九郎の舟に送られて、ほのぼのとしらみかけた竹生島ちくぶしまへ別れをつげた——。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まへ去年きよねんわたし寸白すばこいてゐる時分じぶんうち療治れうぢたに、梅喜ばいきさんの療治れうぢ下手へただが、何処どこ親切しんせつ彼様あんじつる人はないツて、うち小梅こうめ大変たいへんまへ岡惚をかぼれをしてゐたよ
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
ゆうべ吉原よしわらかれた捨鉢すてばちなのが、かえりの駄賃だちんに、朱羅宇しゅらう煙管きせる背筋せすじしのばせて、可愛かわいいおせんにやろうなんぞと、んだ親切しんせつなおわらぐさも、かずあるきゃくなかにもめずらしくなかった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
勿論もちろん意味いみ文芸上ぶんげいぜうのことであつた。S、H女性じよせいたいして、Iのやうな婦人ふじんのぞんでゐるやうにやさしい親切しんせつ異性いせいでないことはIつてゐた。そしてそれをくちにしてゐた。
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
この動物園のおじいさんのようなわけのわかった親切しんせつな人もたくさんいます。
曲馬団の「トッテンカン」 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
「まるで、気がよくきいて親切しんせつなおかみさんのような」といっていました。
和太郎さんと牛 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
「きみのいうことにも一理いちりはある。」と、いまでは本式ほんしきに主人になりすました影がいいました。「だいぶ親切しんせつ卒直そっちょくにいってくれられたのだから、わたしも、やはりしんせつに卒直にいこう。 ...
それがございましたので、はじたゞ骨惜ほねをしみをしない、親切しんせつ同宿どうしゆくだとぞんじてゐました豐干ぶかんさんを、わたくしども大切たいせつにいたすやうになりました。するとふいとつてしまはれました。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
「何の用でここへ来たの、何かしらべに来たの、しらべに来たの、何かしらべに来たの。」もう相手あいてにならないと思いながら私はだまって海の方を見ていましたら風は親切しんせつにまた叫ぶのでした。
サガレンと八月 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
がいせし土地へは歸り難しとすゐして斯は言しなるべし忠相ぬし又も忠兵衞に打向うちむかひ此度は珍事ちんじ忽地たちまちにして斯善惡を分ちし事一は糊賣のりうりお金が親切しんせつ丁稚でつち和吉の忠義によれば和吉は此まゝ引連歸りて目を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
にわ金魚鉢きんぎょばちに、なにかかくしているとがついてからは、近所きんじょからもつまはじきされている老人ろうじんたいし、ことさら親切しんせつにしてやつて、そのかくしているものがなにかということをるのにつとめたのでした。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
このせいの高い老人ろうじんは、ともかく親切しんせつな主人であるらしい。
あら まあうれしい! 親切しんせつ看護婦かんごふさんだわ
おやじさんは親切しんせつにいってくれました。
清造と沼 (新字新仮名) / 宮島資夫(著)
こんな親切しんせつなことばを聞くのは、けさからはじめてです。ニールスはすっかりうれしくなって、ガチョウのくびにとびつきたいくらいでした。
おばあさんは、囲炉裏いろりにまきをくべて、あたたかくしてくれたり、おかゆをいてお夕飯ゆうはんべさせてくれたり、いろいろ親切しんせつにもてなしてくれました。
安達が原 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
さうして其眼そのめにはあたゝか健全けんぜんかゞやきがある、かれはニキタをのぞくのほかは、たれたいしても親切しんせつで、同情どうじやうつて、謙遜けんそんであつた。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
が、親切しんせつ車夫くるまやは、そのしんずるものにつて、たのまれたきやくわたすまでは、建場々々たてば/\を、幾度いくたび物色ぶつしよくするのが好意かういであつた。で、十里じふり十五里じふごり大抵たいていく。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
たのみてあやにかけたる許嫁いひなづけのえにしおやなりなり同舅同士あひやけどうしなり不足ふそくしなあらばたまへと彼方かなたにばかり親切しんせつ
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
先刻さつき宗助そうすけ樣子やうすを、どく觀察くわんさつした同僚どうれうは、かれ質問しつもんおく雜談ざつだん以上いじやうのある意味いみみとめたものとえて、まへよりはもつと親切しんせつその方面はうめんはなしをしてかした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ここまでるのには、御本人ごほんにん苦労くろうも一ととおりではありませぬが、かげになり、日向ひなたになって、親切しんせつにおみちびきくだされたかみさまがたのお骨折ほねおりは容易よういなものではございませぬ。
あとれい快活くわいくわつなる武村兵曹たけむらへいそうがやつてて、武骨ぶこつなる姿すがた親切しんせつに、吾等われら海水かいすいみ、天日てんぴこがされて、ぼろ/\になつた衣服ゐふく取更とりかへやら、洗湯せんたう世話せわやら、日出雄少年ひでをせうねんためには
うまいあめぼうでもしゃぶらしてやろうと思って、ひとが親切しんせつにいったものを、コケおどしの刃物はものなんぞふりまわして、よせやい、おれだって、はばかりながら、刀ぐらいはしているんだからな
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ほかの人が親切しんせつにしてくれなかったからといって、きたくなった時のもある。天気がよくて、いつも親切にわらいかけて下さる神様かみさまのような大空おおぞらが見えるからといって、楽しくなった時のもある。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
すゝめ申しに參りましたといひければ長三郎は片頬かたほみ今に初ぬ和郎そなた親切しんせつ主人思ひは有難けれどなまじ戸外へ出る時はかへつて身のどく目の毒なればたゞ馴染なじみし居間に居て好な書物をよみながら庭の青葉を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
までえて、数匹すうひき仔魚しぎょを、親切しんせつにもつてきてくれたのである。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
親切しんせつ看護婦かんごふさんが走つてきた
まさ驪山りさんつて陛下へいか相抱あひいだくべき豊肥妖艶ほうひえうえんひとそのをとこたいする取廻とりまはしのやさしさ、へだてなさ、親切しんせつさに、人事ひとごとながらうれしくて、おもはずなみだながれたのぢや。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そのやうなつまらぬかんがへをつて、つまらぬ仕向しむけをいたしまするつまへ、のやうな結構けつこうひとなればとて親切しんせつむかはれましやうか、お役所やくしよから退けておかへあそばすに
この子 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
保名やすなからだもとどおりになるにはなかなか手間てまがかかりました。むすめはそれでも、毎日まいにちちっともきずに、親身しんみ兄弟きょうだい世話せわをするように親切しんせつ世話せわをしました。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
今夜こんや見解けんげ出來できないかもれませんから、明朝みやうてう明晩みやうばん御誘おさそまをしませう」と親切しんせつつてれた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
そして、婦人が親切しんせつに答えてくれたことを感謝かんしゃして、じぶんはこれでやっと満足しました、と言った。
そしてその御物越おんものごしはいたってしとやか、わたくしどもがどんな無躾ぶしつけ事柄ことがら申上もうしあげましても、けっしてイヤないろひとつおせにならず、どこまでも親切しんせつに、いろいろとおしえてくださいます。
とも態々わざ/\休暇きうかつて、自分じぶんとも出發しゆつぱつしたのではいか。ふか友情いうじやうによつてゞはいか、親切しんせつなのではいか。しかじつ是程これほど有難迷惑ありがためいわくことまたらうか。降參かうさんだ、眞平まつぴらだ。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
「これへ」と、さしまねいた親切しんせつ武士ぶし
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
御奉行所へ御呼出しになり文右衞門へ引會ひきあはされしところ其節そのせつ折惡をりあしく私しが御當地に居合せざれば文右衞門が金子の出所しゆつしよあきらかならず因つて今に入牢じゆらうなし居る由實に親分大變が出來たるなりと云ば私しの親切しんせつかへつあだとなりおんある人に難儀なんぎ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)