ぱい)” の例文
しな塔婆たふばまへにそれから其處そこら一ぱい卵塔らんたふまへ線香せんかうすこしづゝ手向たむけて、けてほつかりとあかつた提灯ちやうちんげてもどつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
顏色かほいろ蒼白あをじろく、姿すがたせて、初中終しよつちゆう風邪かぜやすい、少食せうしよく落々おち/\ねむられぬたち、一ぱいさけにもまはり、往々まゝヒステリーがおこるのである。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
ちょうどそれは日のながい汗の出る季節でもあったゆえに、たびたび少しずつの休憩をしないと、かえってちからぱいの働きができなかった。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
取上見るに女の生首なまくびなりよつ月影つきかげすかして猶熟々つく/″\改し處まがふ方なき妻白妙が首に候間何者の所業なるやと一時はむねも一ぱいに相成我を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「どうだい、これは、自分じぶんはまあなんといふ幸福者しあはせものだらう。こんやは、それこそおも存分ぞんぶんはらぱいうまい生血いきちにありつけるわけだ」
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
A院長エーいんちょうは、居間いまで、これから一ぱいやろうとおもっていたのです。そこへはばかるようなちいさい跫音あしおとがして、ぎの女中じょちゅうけん看護婦かんごふはいってきて
三月の空の下 (新字新仮名) / 小川未明(著)
実はゆうべ茶を買ってくれとたのんでおいたのだが、こんな苦いい茶はいやだ。一ぱい飲むと胃に答えるような気がする。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
王子わうじ街道かいだう横切よこぎつて、いよ/\深大寺じんだいじちかつたのが、午後ごゞの五ぎ。夕立ゆふだちでもるか、そらは一ぱいくもつてた。
毎朝まいあさみづかほあらふ、一ぱいあたまからびようとしたけれども、あんなかには、夜中よなかなにをするかわからぬとおもつてやめた。
星あかり (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
おとうさんはやっとすわって、おちゃを一ぱいのむひまもないうちに、つつみの中から細長ほそながはこして、にこにこしながら
松山鏡 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
何しろうでぱいのところを見せて、すくなくとも日本の洋畫界やうぐわかいに一生面せいめんひらかうといふ野心やしんであツたから、其の用意、其の苦心くしん、實にさん憺たるものであツた。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
さいはひに一ぱいみて歇息やすませ給へとて、酒をあたため、下物さかなつらねてすすむるに、赤穴九一袖をもておもておほひ、其のにほひをくるに似たり。左門いふ。
「ふん。なにをいっても、張合はりあいのねえ野郎やろうだ。めしはらぱいわせてあるはずだに。もっとしっかり返事へんじをしねえ」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
馬車屋ばしゃやのフィアレンサイドは、黒馬旅館くろうまりょかんにきみょうなきゃく荷物にもつはこんだ日の夜おそく、アイピング村のはずれのちいさなビヤホールで、一ぱいかたむけながら
この仕事をするあいだ、私は私の手足や道具などをその牝牛めうしの血にひたし、地面へも同じ血を一ぱいにまいた。
どりゃ、太陽そのゆるやうなまなこげて今日けふひるなぐさめ、昨夜さくや濕氣しっきかわかまへに、どくあるくさたふとしるはなどもをんで、吾等われらこのかごを一ぱいにせねばならぬ。
おや、旦那だんなくおでなさいましたね、金吹町かねふきちやうさんまアらつしやいましたね、今年ことし元日ぐわんじつから縁起えんぎい事ね。乙「とき昼飯ひるめし支度したくをしてちよいと一ぱいおくれ。 ...
七福神詣 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
さあおまへさん此子このこをもいれてつてくだされ、なにをぐたりとておいでなさる、あつさにでもさわりはしませぬか、さうでなければ一ぱいあびて、さつぱりにつて御膳ごぜんあがれ
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
黄色いちゃんぽんうどんの一ぱいを親子で分けあった長い生活、それも、道路妨害ぼうがいとかでめさせられると、荷車をいて北九州の田舎をまわった義父の真黒に疲れた姿
清貧の書 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
近所の子供たちは、皆愉快な庶民的しょみんてき風貌をそなえている。裸足はだしで泥んこになって、毎日遊びあっている。知らぬ間に、博雄のポケットには、メンコやビー玉が一ぱいになっている。
親は眺めて考えている (新字新仮名) / 金森徳次郎(著)
モコウが走って、食堂からやき肉、かたパン、茶、および一ぱいのブランデーを持ってきた。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
表面へうめんにこそせなかつたが、青木さん夫婦ふうふあたまにはさういふおもひがいつも一ぱいだつた。
(旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
ちょっと茶一ぱい飲むにしても、こんなまずい茶をよくも恥かしげもなく出せたものだ。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
おっかさんにいつけられると虔十は水を五百ぱいでもみました。一日一杯畑の草もとりました。けれども虔十のおっかさんもおとうさんも仲々そんなことを虔十に云いつけようとはしませんでした。
虔十公園林 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
私はいきなり、助手じょしゅやほかの火夫かふといっしょに、機関車きかんしゃからとびだして、かけつけていきました。みると、火夫かふは大きなけだものを力一ぱいにおさえつけています。それは、年とった一ぴきの大きなたぬきでした。
ばかな汽車 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
たゞ公務こうむ餘暇よかある一團いちだん士官しくわん水兵等すいへいら吾等われらある船室せんしつみちびき、れたる衣服きものがせ、あたらしき衣服ゐふくあたへ、なかにも機轉きてんよき一士官しくわん興奮こうふんためにと、いそぎ「ブランデー」の一ぱいをさへめぐんでれた。
そのどちらもの顔一ぱい西日にしびと共にてり渡つた事でした。
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
「旦那は平家の一ぱいみずわれを御存知でしょうな」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
烏竜茶ウーロンちやをもう一ぱい。」
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
関羽かんうぱいさけ
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
みそはぎそばには茶碗ちやわんへ一ぱいみづまれた。夕方ゆふがたちかつてから三にん雨戸あまどしめて、のない提灯ちやうちんつて田圃たんぼえて墓地ぼちつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
得たれば久々ひさ/″\にて一ぱいのまふと或料理屋あるれうりや立入たちいり九郎兵衞惣内夫婦三人車座くるまざになりさしおさへ數刻すうこく酌交くみかはせしがやゝ戌刻過いつゝすぎやうやく此家を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
顔色かおいろ蒼白あおじろく、姿すがたせて、しょっちゅう風邪かぜやすい、少食しょうしょく落々おちおちねむられぬたち、一ぱいさけにもまわり、ままヒステリーがおこるのである。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
「もう、ふるさとにかえれば、もうとおもっても、まれないのだから、一ぱいだけんでゆこう……。」とおもいました。
砂漠の町とサフラン酒 (新字新仮名) / 小川未明(著)
……たび単衣ひとへのそゞろさむに、はだにほのあたゝかさをおぼえたのは一ぱいのカクテルばかりでない。焚火たきびひとなさけである。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ぎっしり、抽斗ひきだしぱいつまった衣装いしょうを、一まいのこらずたたみうえへぶちまけたそのなかを、松江しょうこう夢中むちゅうッかきまわしていたが、やがてえながらしん七にめいじた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
あのロボのやつには、これまでにもう羊や牝牛めうし合わせて二千頭あまりやられています。一体おおかみは意地きたないやつで、なんでもはらぱい食いさえすれアいい。
わたしうちて、さけを一ぱいせといふゆゑ、一がふけてしますると、湯呑ゆのみで半分もまないうちに、しぶつらをして、これまでにんなしぶさけんだ事がないといひましたから
詩好の王様と棒縛の旅人 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
帰りに山嵐は通町とおりちょうで氷水を一ぱいおごった。学校で逢った時はやに横風おうふうな失敬な奴だと思ったが、こんなにいろいろ世話をしてくれるところを見ると、わるい男でもなさそうだ。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そのせつに、おくさんのまぶたに一ぱいにじんでゐたなみだにひよいとがつくと、今まで何氕なにげなさをよそほつてゐた青木さんの心はおもはずよろめいた。青木さんはあわててイスからち上つた。
(旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
このにち運動うんどうは、ほねずいまで疲勞ひろうするやうかんじるのであるが、そのあらげたる破片はへん食卓しよくたくの一ぐうならべて、うして、一ぱいやるとき心持こゝろもちといふものは、んともはれぬ愉快ゆくわいである。
むら酒屋さかや店前みせさきまでくると、馬方うまかたうまをとめました。いつものやうに、そしてにこにことそこにはいり、どつかりとこしをろして冷酒ひやざけおほきなこつぷ甘味うまさうにかたむけはじめました。一ぱいぱいまた一ぱい
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
これでもびるかとおさへるやうな仕方しかたに、へて眞直まつすぐにびたつこと人間にんげんわざにはかなふまじ、いていてつくくして、うつたへたいにもちゝこゝろかねのやうにえて、ぬるぱいたまはらんなさけもなきに
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
おどろいてはいけません。わたしはけっしてあやしいものではありません。大ぜいの悪者わるものわれて、こんなにけがをしたのです。どうぞみずを一ぱいませてください。のどがかわいて、くるしくってたまりません。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
小原捕手こはらほしゅはいつもよりはやく目をさましそれから十ぱいのつるべ水を浴び心身をきよめてから屋根にあがって朝日をおがんだ。これはいかなる厳冬といえども一度も休んだことのないかれの日課である。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
舶来はくらいウェスキイ 一ぱい、二りん半。」と書いてありました。
カイロ団長 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
勘次かんじ自分じぶん壁際かべぎはにはたきゞが一ぱいまれてある。そのうへ開墾かいこん仕事しごとたづさはつてなんといつてもたきゞ段々だんだんえてくばかりである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
半時間毎はんじかんごとくらいかれ書物しょもつからはなさずに、ウォッカを一ぱいいでは呑乾のみほし、そうして矢張やはりずに胡瓜きゅうり手探てさぐりぐ。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
ビールを、ガブ、ガブ、むかわりに、一ぱいみずを、かやのもとにやればいいのにと、子供こどもは、おもったのです。
あらしの前の木と鳥の会話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
持出もちいだせば雲助どもは是は有難う御座りますと手ん/″\に五六ぱいヅツひつかける所へ藤八ソレさかな銘々めい/\に金二分づつやるに雲助はイエ親方是は入やせんと辭退じたいなすを馬鹿を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)