とし)” の例文
ある、おじさんは、いつもの場所ばしょへきて、としちゃんや、よっちゃんや、とめさんのいるまえで、ひばりをかごからはなしたのでした。
ひばりのおじさん (新字新仮名) / 小川未明(著)
と、海蔵かいぞうさんがいいました。そばにてみると、それはこの附近ふきん土地とちっている、まちとしとった地主じぬしであることがわかりました。
牛をつないだ椿の木 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
このごろはめっきりとしをとって、こんどまたおうといっても、それまできていられるかおぼつかない。ああ、ざんねんなことだ。
羅生門 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
しかし、めくらの法師は、まるで目あきのようにさっさと歩き、いつかとしよりの寺男をあとに、くらがりの中へきえてしまいました。
壇ノ浦の鬼火 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
「それは、とんでもないことです。あなたのようなとしのわかい、たびになれないおぼっちゃんが、一人ひとり江戸えどへおいでになるなんて。」
君が御名みなさちの井の、ゐどのほとりの常磐木ときはぎや、落葉木らくえふぼく若葉わかばして、青葉あをばとなりて、落葉おちばして、としまた年と空宮くうきうに年はうつりぬ四十五しじふいつ
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
女房にようばうあるとし姙娠にんしんして臨月りんげつちかくなつたら、どうしたものか數日すうじつうち腹部ふくぶ膨脹ばうちやうして一うちにもそれがずん/\とえる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
見られ下谷山崎町家持五兵衞せがれ五郎藏其方とし何歳なんさいになるやまたさいはあるかと尋ねらるゝに五郎藏はひよくりと天窓あたまあげじろ/\四邊あたり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
庭の木戸きどをおして細君さいくんが顔をだした。細君はとし三十五、六、色の浅黒あさぐろい、顔がまえのしっかりとした、気むつかしそうな人である。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
たい いゝえ、もうとしが年で、意気地がございません。それはさうと、これはお宅の坊つちやまのぢやございませんでせうかしら……。
ママ先生とその夫 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
ときに、先客せんきやく一人ひとりありましてみぎました。氣高けだかいばかりひんのいゝとしとつたあまさんです。失禮しつれいながら、先客せんきやく邪魔じやまでした。
雪霊記事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「これ俗に山ワロと謂ひ野猨やえんとし経たるもの也。奥羽の深山にはまゝ居る由にて、よく人の心中を知れども人に害を為すことなし」
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
このときは、並木本村なみきもとむら下幸村しもゆきむら鹿沼新田かぬましんでんの三か所に、御造営中あらたに関所を設け、お先手衆さきてしゅうひと組ずつとし番で勤めたものです。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
一休いっきゅうさんは、応永元年おうえいがんねんがつ一日ついたち将軍義満しょうぐんよしみつが、その義持よしもちしょくをゆずったとし南朝なんちょう後小松天皇ごこまつてんのうちちとし、伊予局いよのつぼねははとしてうまれました。
先生と父兄の皆さまへ (新字新仮名) / 五十公野清一(著)
その文書の大意は——我はここにとし久しく住んでいて、家屋門戸もんこみな我が物である。そこへ君が突然に入り込んで済むと思うか。
今は隱退いんたいしてゐる小菅けんすけろうだん關根せきね金次郎名人にむかつて、としをとるとらく手がありちになる。らく手があるやうでは名手とは言へぬ。
宗助そうすけ小六ころくあひだには、まだ二人ふたりほどをとこはさまつてゐたが、いづれも早世さうせいして仕舞しまつたので、兄弟きやうだいとはひながら、としとをばかちがつてゐる。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
この時にあたってヒューゲノー党のよりて以てたのみとなせし唯一の人物はナバールの大公ヘンリーなりき、彼とし若くして武勇に富み
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
すぎとし北国より人ありてこぶしの大さの夜光やくわうの玉あり、よく一しつてらす、よきあたひあらばうらんといひしかば、即座そくざに其人にたくしていはく、其玉もとめたし
そしてとしくとともに、これらのうたあぢはひが、かはつてかんじられてるのです。だからまづ暗記あんきしておいてほしいとおもひます。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
その矻々こつこつとしてとしけみする間には、心頭しばらく用と無用とを度外に置いている。大いなる功績はかくの如くにして始てち得らるるものである。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
投楽散人とうらくさんじんとかいえる人、花都かとの産なり、さるとし水無月みなつきの炎暑にたえかね、昼寝の夢さめて、席上に残せる木枕をみるに、胡蝶一つ羽を休む。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
むつのかみ綱宗公は、おととし、万治元年九月に家督されてから、まる二年にもならぬのに、早くも御隠居ときめられたのですよ
墓塲はかば掃除さうぢ男衆をとこしゆたすくるまではたらけば、和尚おしやうさま經濟けいざいより割出わりだしての御不憫ごふびんかゝり、としは二十からちがうてともなきことをんな心得こゝろゑながら
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
このやま活火山かつかざんであることは明治二十六年めいじにじゆうろくねんいたるまでられなかつたが、このとし突然とつぜん噴火ふんかはじめたゝめ死火山しかざんでなかつたことが證據立しようこだてられた。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
ことこのとしはタメルラン大兵を起して、道を別失八里ベシバリ(Bisbalik)に取り、甘粛かんしゅくよりして乱入せんとするの事あり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
ぼくですか、ぼくは』とよどんだをとことしころ二十七八、面長おもながかほ淺黒あさぐろく、鼻下びかき八ひげあり、人々ひと/″\洋服やうふくなるに引違ひきちがへて羽織袴はおりはかまといふ衣裝いでたち
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
兄さんは、このごろ、とても機嫌きげんが悪い。夜おそく、ひどく酔っぱらって帰宅した事も、二三度あった。兄さんは、姉さんよりとしが一つ下である。
正義と微笑 (新字新仮名) / 太宰治(著)
が、としわかいし、げい達者たっしゃであるところから、作者さくしゃ中村重助なかむらじゅうすけしきりにかたれて、なに目先めさきかわった狂言きょうげんを、させてやりたいとのこころであろう。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
わたくしおもってそう案内あんないいました。すると、としころ十五くらいえる、一人ひとり可愛かわいらしい小娘こむすめがそこへあらわれました。
うら田圃たんぼへ出て見るとおくはうの物置きの中に素裸体すつぱだかとしころ三十二三になるをとこ棒縛ぼうしばりになつてるのを見て、和尚をしやうおどろき、なか飛込とびこんでて、僧
詩好の王様と棒縛の旅人 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
としころ廿六七、まゆうるはしい口元くちもとやさしい丁度ちやうど天女てんによやう美人びじんわたくし一目ひとめて、この夫人ふじんその容姿すがたごとく、こゝろうるはしく、にも高貴けだか婦人ふじんおもつた。
親父おやぢだのお袋だのの稽古してゐるのを聞き覚えたのである。その文句もんくなんでも観世音菩薩くわんぜおんぼさつの「庭にとしゑんじゆこずゑ」に現れるとかなんとか云ふのだつた。
(新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
それから十四のとしにO市の感化院を脱出ぬけだして無一文で女郎買いに行った。ドッチも喜ぶ話だから多分、無料ただだろうと思って行ったのが一生のアヤマリ。
超人鬚野博士 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
不思議ふしぎにもそのとしとつたへび動物園どうぶつゑんにでもるやうに温順おとなしくしててついぞ惡戲いたづらをしたといふことをきません。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
無論むろんわからないわ』とあいちやんはきはめてすみやかにこたへて、『けど、それはまつたくそんなにながあひだおなとしでゐるからだわ』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
はじめてつく/″\とそれを見れば、ながい顏、まるい顏、眼のつツたのやくちの大きいのと、さまざまなうちにも、おしなべてみんながとしりましたこと。
冬を迎へようとして (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
つまりそのとし日本につぽん外國がいこく輸出ゆしゆつした總額そうがく一億一千七百萬圓いちおくいつせんしちひやくまんえんよりもまだはるかおほくの金額きんがくだつたので、人々ひと/″\はみんな洪水こうずい大慘害だいさんがいにはふるあがつたものです。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
そして少しひがんだ者たちは自分の愚を認めるよりも葉子をとし不相当にませた女と見るほうが勝手だったから。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
はいる前によくくつをふき、みんなに一人一人ひとりひとりとしの順に挨拶あいさつをし、それから部屋へやのいちばん末座まつざにいって坐った。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
津島様は弘高から東大仏文科を卒えて、たしか亡くなったとしちゃんとは御同年のお方でいらっしゃいます。
さうかうするうちに三年さんねんばかりたちました。そのとし春先はるさきから、赫映姫かぐやひめは、どうしたわけだか、つきのよいばんになると、そのつきながめてかなしむようになりました。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
さだめしもうとしよりのおばあさんになつて當時とうじ自分じぶんくらゐのむすめおやとなつてゐることであらうとおもひます。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
明治四十一年といへば小劍の三十五歳のとしであるから、それからずつと小説を書きつづけてゐれば、小劍は、もつとちやんとした作家になつてゐたかもしれない。
「鱧の皮 他五篇」解説 (旧字旧仮名) / 宇野浩二(著)
としちょうじて、小学校という不可解な社会生活に入って行かねばならなかった時、彼はどれ程か当惑し、恐怖を感じたことであろう。彼は誠に異様な小学生であった。
(新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「これかね? おやおや、としもまめで豆撒き給えかし。ふうむ、今夜の句だ。源太郎、お前かい?」
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
積上つみあげられたる雜具がらくたうへに、いつでも烟管きせるくはへて寐辷ねそべつてゐるのは、としつた兵隊上へいたいあがりの、いろめた徽章きしやういてる軍服ぐんぷく始終ふだんてゐるニキタと小使こづかひ
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
併し代々だい/″\学者で法談はふだん上手じやうず和上わじやうが来て住職に成り、とし何度なんどか諸国を巡回して、法談でめた布施ふせを持帰つては、其れで生活くらしを立て、御堂みだう庫裡くりの普請をもる。
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
そのため年齢としも二十二三にはられるので、まこととしはそれよりふたみつツはつてゐるかもれない。
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
ブラ/\と面白おもしろき空想をつれにしてどて北頭きたがしら膝栗毛ひざくりげあゆませながら、見送みおくはててドヤ/\と帰る人々が大尉たいゐとしいくつならんの、何処いづこ出生しゆつしやうならんの、あるひ短艇ボートこと
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)