トップ
>
人目
>
ひとめ
ふりがな文庫
“
人目
(
ひとめ
)” の例文
出入りの多い客商売であるから、
人目
(
ひとめ
)
に付くのをおそれて、娘と三甚をほかの家にかくまってあるのかも知れないと、半七は考えた。
半七捕物帳:64 廻り灯籠
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
おのづから
智慧
(
ちゑ
)
も
力
(
ちから
)
も
備
(
そな
)
はつて、
陽
(
ひ
)
の
面
(
おもて
)
に、
隱形
(
おんぎやう
)
陰體
(
いんたい
)
の
魔法
(
まはふ
)
を
使
(
つか
)
つて、
人目
(
ひとめ
)
にかくれ
忍
(
しの
)
びつゝ、
何處
(
いづこ
)
へか
通
(
とほ
)
つて
行
(
ゆ
)
くかとも
想
(
おも
)
はれた。
番茶話
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
いつともなく
菊亭右大臣家
(
きくていうだいじんけ
)
の
釣
(
つ
)
り
橋
(
ばし
)
にたたずんだ三人づれの
旅僧
(
たびそう
)
は、
人目
(
ひとめ
)
をはばかりがちに、ホトホトと裏門の
扉
(
と
)
をおとずれていた。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
さういふ
伴侶
(
なかま
)
の
殊
(
こと
)
に
女
(
をんな
)
は
人目
(
ひとめ
)
の
少
(
すくな
)
い
黄昏
(
たそがれ
)
の
小徑
(
こみち
)
につやゝかな
青物
(
あをもの
)
を
見
(
み
)
ると
遂
(
つひ
)
した
料簡
(
れうけん
)
からそれを
拗切
(
ちぎ
)
つて
前垂
(
まへだれ
)
に
隱
(
かく
)
して
來
(
く
)
ることがある。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
すべてが
豪放
(
ごうほう
)
で、雄大で、何でも
人目
(
ひとめ
)
を驚かさなければ止まないと云う御勢いでございましたが、若殿様の御好みは、どこまでも繊細で
邪宗門
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
▼ もっと見る
それも
人目
(
ひとめ
)
を忍びつゝ
刹那
(
せつな
)
のよろこびに生きたのであって、しみ/″\打ち解けて語り合う折などは一と夜もなかったであろう。
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
わけてもその夜は、お
店
(
たな
)
の
手代
(
てだい
)
と女中が
藪入
(
やぶい
)
りでうろつきまわっているような身なりだったし、ずいぶん
人目
(
ひとめ
)
がはばかられた。
姥捨
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
しかし、もっと
人目
(
ひとめ
)
につくようにしなくちゃ、誰も知らないで通ってしまう。よろしい。僕が君のために
画看板
(
えかんばん
)
をかいてやろう
一坪館
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
然
(
しか
)
しこれもまた、
長吉
(
ちやうきち
)
には近所の
店先
(
みせさき
)
の
人目
(
ひとめ
)
が
尽
(
こと/″\
)
く自分ばかりを
見張
(
みは
)
つて
居
(
ゐ
)
るやうに思はれて、とても五分と長く立つてゐる事はできない。
すみだ川
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
「
自分
(
じぶん
)
のような
人目
(
ひとめ
)
をひかない
花
(
はな
)
には、どうして、そんなに
空想
(
くうそう
)
するような、きれいなちょうがきて
止
(
と
)
まることがあろう?」
くもと草
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
ロレ ロミオよ、
出
(
で
)
てござれ、
出
(
で
)
てござれよ、こりゃ
人目
(
ひとめ
)
を
怕
(
おそ
)
れ
憚
(
はゞか
)
る
男
(
をとこ
)
。あゝ、
卿
(
そなた
)
は
憂苦勞
(
うきくらう
)
に
見込
(
みこ
)
まれて、
不幸
(
ふしあはせ
)
と
縁組
(
えんぐみ
)
をお
爲
(
し
)
やったのぢゃわ。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
はかなき
夢
(
ゆめ
)
に
心
(
こゝろ
)
の
狂
(
くる
)
ひてより、お
美尾
(
みを
)
は
有
(
あり
)
し
我
(
わ
)
れにもあらず、
人目
(
ひとめ
)
無
(
な
)
ければ
涙
(
なみだ
)
に
袖
(
そで
)
をおし
浸
(
ひた
)
し、
誰
(
た
)
れを
戀
(
こ
)
ふると
無
(
な
)
けれども
大空
(
おほそら
)
に
物
(
もの
)
の
思
(
おも
)
はれて
われから
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
アアいう
人目
(
ひとめ
)
に着く
粧
(
よそお
)
いの婦人に対してはとかくにあらぬ評判をしたがるもんだから、我々は沼南夫人に顰蹙しながらも余りに耳を傾けなかった。
三十年前の島田沼南
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
花茎
(
かけい
)
は一株から一、二本、
肥
(
こ
)
えた株では十本余りも出ることがある。そして
濃紫色
(
のうししょく
)
の花が、いつも
人目
(
ひとめ
)
を
惹
(
ひ
)
くのである。
植物知識
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
衣服
(
いふく
)
調度類
(
ちょうどるい
)
でございますか——
鎌倉
(
かまくら
)
にもそうした
品物
(
しなもの
)
を
売
(
う
)
り
捌
(
さば
)
く
商人
(
あきうど
)
の
店
(
みせ
)
があるにはありましたが、さきほども
申
(
もう
)
した
通
(
とお
)
り、
別
(
べつ
)
に
人目
(
ひとめ
)
を
引
(
ひ
)
くように
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
如何に貧乏な書生生活でも、東京で二十円の借家から六畳
二室
(
ふたま
)
の
田舎
(
いなか
)
のあばら家への引越しは、
人目
(
ひとめ
)
には可なりの
零落
(
れいらく
)
であった。奉公人にはよい
見切時
(
みきりどき
)
である。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
余は
鰥寡孤独
(
かんかこどく
)
憂
(
うれい
)
に沈むもの、或は貧困
縷衣
(
るい
)
にして
人目
(
ひとめ
)
を
憚
(
はばか
)
るもの、或は罪に
恥
(
はじ
)
て
暗処
(
あんしょ
)
に神の
免
(
ゆるし
)
を求むるものの
許
(
もと
)
を問い、ナザレの
耶蘇
(
いえす
)
の貧と孤独と
恵
(
めぐみ
)
とを語らん
基督信徒のなぐさめ
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
人目
(
ひとめ
)
に
附易
(
つきやす
)
き
天井裏
(
てんじやうゝら
)
に
掲
(
かゝ
)
げたる
熊手
(
くまで
)
によりて、一
年
(
ねん
)
若干
(
そくばく
)
の
福利
(
ふくり
)
を
掻
(
か
)
き
招
(
まね
)
き
得
(
う
)
べしとせば
斃
(
たふ
)
せ/\の
数
(
かず
)
ある
呪
(
のろ
)
ひの
今日
(
こんにち
)
に
於
(
おい
)
て、そは
余
(
あま
)
りに
公明
(
こうめい
)
に
失
(
しつ
)
したるものにあらずや
もゝはがき
(新字旧仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
冷
(
つめ
)
たい
月
(
つき
)
の
光
(
ひかり
)
に
射
(
さ
)
されて、
人目
(
ひとめ
)
に
掛
(
かゝ
)
らぬ
石
(
いし
)
の
中
(
なか
)
に
封込
(
ふうじこ
)
められた
蟾蜍
(
ひきがへる
)
の
如
(
ごと
)
く、わが
身
(
み
)
は
醜
(
みにく
)
い
鉱皮
(
くわうひ
)
の
下
(
した
)
に
押
(
お
)
し
籠
(
こ
)
められてゐる
時
(
とき
)
、ほかの
人
(
ひと
)
たちは
清浄
(
しやうじやう
)
な
肉身
(
にくしん
)
で
上天
(
じやうてん
)
するのだらう。
癩病やみの話
(新字旧仮名)
/
マルセル・シュウォッブ
(著)
人目
(
ひとめ
)
を
避
(
さ
)
けるために、わざと
蓙巻
(
ござまき
)
を
深
(
ふか
)
く
垂
(
た
)
れた
医者駕籠
(
いしゃかご
)
に
乗
(
の
)
せて、
男衆
(
おとこしゅう
)
と
弟子
(
でし
)
の
二人
(
ふたり
)
だけが
付添
(
つきそ
)
ったまま、
菊之丞
(
きくのじょう
)
の
不随
(
ふずい
)
の
体
(
からだ
)
は、その
日
(
ひ
)
の
午近
(
ひるちか
)
くに、
石町
(
こくちょう
)
の
住居
(
すまい
)
に
運
(
はこ
)
ばれて
行
(
い
)
った。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
島
(
しま
)
の
宮
(
みや
)
まがりの
池
(
いけ
)
の
放
(
はな
)
ち
鳥
(
どり
)
人目
(
ひとめ
)
に
恋
(
こ
)
ひて
池
(
いけ
)
に
潜
(
かづ
)
かず 〔巻二・一七〇〕 柿本人麿
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
彼が
人目
(
ひとめ
)
を
惹
(
ひ
)
き世にはびこったことを喜ばぬものがいかに多かったであろう。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
振舞
(
ふるまひ
)
小遣
(
こづかひ
)
など與へて喜ばせ聲を
潜
(
ひそ
)
めつゝ
其方
(
そなた
)
の主人の娘お高殿に
我等
(
われら
)
豫々
(
かね/″\
)
心
(
こゝろ
)
を
懸
(
かく
)
る所お高殿も氣のある
容體
(
ようす
)
なれども
御母殿
(
おふくろどの
)
が
猿眼
(
さるまなこ
)
をして居る故
咄
(
はなし
)
も
出來難
(
できがた
)
ければ貴樣に此文を
渡
(
わた
)
す
間
(
あひだ
)
能々
(
よく/\
)
人目
(
ひとめ
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
人目
(
ひとめ
)
を避けて、うなだるゝあはれの君よ。
きその日は
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
ここには
人目
(
ひとめ
)
ないものを。
ゴンドラの唄
(旧字旧仮名)
/
吉井勇
(著)
人目
(
ひとめ
)
惹かなきや
おさんだいしよさま
(新字旧仮名)
/
野口雨情
(著)
……それが、
溝
(
どぶ
)
を
走
(
はし
)
り、
床下
(
ゆかした
)
を
拔
(
ぬ
)
けて、しば/\
人目
(
ひとめ
)
につくやうに
成
(
な
)
つたのは、
去年
(
きよねん
)
七月
(
しちぐわつ
)
……
番町學校
(
ばんちやうがくかう
)
が
一燒
(
ひとや
)
けに
燒
(
や
)
けた
前後
(
あとさき
)
からである。
間引菜
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
リノリウムの
床
(
ゆか
)
には
何脚
(
なんきゃく
)
かのベンチも背中合せに並んでいた。けれどもそこに腰をかけるのは
却
(
かえ
)
って
人目
(
ひとめ
)
に立ち兼ねなかった。
春
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
一
度
(
ど
)
でもしめやかに
語
(
かた
)
り
合
(
あ
)
うた
兩性
(
りやうせい
)
が
邂逅
(
であ
)
へば
彼等
(
かれら
)
は一
切
(
さい
)
を
忘
(
わす
)
れて、それでも
有繋
(
さすが
)
に
人目
(
ひとめ
)
をのみは
厭
(
いと
)
うて
小徑
(
こみち
)
から一
歩
(
ぽ
)
木
(
き
)
の
間
(
あひだ
)
に
身
(
み
)
を
避
(
さ
)
ける。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
反
(
かえ
)
って
人目
(
ひとめ
)
に
極
(
ご
)
くつきやすいところへ放り出して置くのが
流行
(
はや
)
っていると、こんな話を面白
可笑
(
おか
)
しく、この
海原力三
(
うなばらりきぞう
)
という船員が話して聞かせた。
ゴールデン・バット事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
呂宋兵衛
(
るそんべえ
)
が身をぬいた
空駕籠
(
からかご
)
のなかへ、
咲耶子
(
さくやこ
)
のからだを
押
(
お
)
しこんで、その、
人目
(
ひとめ
)
につく身なりの上へ、
蚕婆
(
かいこばばあ
)
と同じくろい
服
(
ふく
)
をふわりとかぶせた。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
パリス
侍童
(
わらは
)
よ、
其
(
その
)
炬火
(
たいまつ
)
をおこせ。
彼方
(
あち
)
へ
往
(
い
)
て、つッと
離
(
はな
)
れてゐい。……いや、それを
消
(
け
)
せ、
人目
(
ひとめ
)
に
掛
(
かゝ
)
りたうない。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
人目
(
ひとめ
)
を忍ぶ身には煙草の火も
禁物
(
きんもつ
)
である。まして迂闊にしゃべることも出来ないので、二人は無言の
行
(
ぎょう
)
に入ったように、桜の蔭にしゃがんで黙っていた。
半七捕物帳:65 夜叉神堂
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
彼
(
かれ
)
はせめて
貨車
(
かしゃ
)
の
中
(
なか
)
にでも
身
(
み
)
を
隠
(
かく
)
すことができたら、
幸福
(
しあわせ
)
だと
考
(
かんが
)
えましたので、
人目
(
ひとめ
)
をしのんで、
貨車
(
かしゃ
)
に
乗
(
の
)
り
込
(
こ
)
もうとしますと、
中
(
なか
)
から、
思
(
おも
)
いがけなく
海へ
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
すてんか
明日
(
あす
)
こそはと
窺
(
うかゞ
)
ふ
心
(
こゝろ
)
に
怠
(
おこた
)
りなけれど
人目
(
ひとめ
)
の
關守
(
せきもり
)
何
(
なん
)
として
隙
(
ひま
)
あるべき
此處
(
こゝ
)
に
七年
(
しちねん
)
身
(
み
)
はまだ
籠中
(
ろうちゆう
)
の
鳥
(
とり
)
。
別れ霜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
格子戸
(
かうしど
)
の
格子
(
かうし
)
を一本々々一生懸命に
磨
(
みが
)
いて
居
(
ゐ
)
るのもある。
長吉
(
ちやうきち
)
は
人目
(
ひとめ
)
の多いのに
気後
(
きおく
)
れしたのみでなく、さて
路地内
(
ろぢうち
)
に
進入
(
すゝみい
)
つたにした
処
(
ところ
)
で、自分はどうするのかと初めて反省の地位に返つた。
すみだ川
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
ひと
目
(
め
)
でいい、ひと
目
(
め
)
でいいから
会
(
あ
)
いたいとの、
切
(
せつ
)
なる
思
(
おも
)
いの
耐
(
た
)
え
難
(
がた
)
く、わざと
両国橋
(
りょうごくばし
)
の
近
(
ちか
)
くで
駕籠
(
かご
)
を
捨
(
す
)
てて、
頭巾
(
ずきん
)
に
人目
(
ひとめ
)
を
避
(
さ
)
けながら、この
質屋
(
しちや
)
の
裏
(
うら
)
の、
由斎
(
ゆうさい
)
の
仕事場
(
しごとば
)
を
訪
(
おとず
)
れたおせんの
胸
(
むね
)
には
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
何
(
ど
)
うかすると
石
(
いし
)
の
手水鉢
(
てうづばち
)
が、
柳
(
やなぎ
)
の
影
(
かげ
)
に
青
(
あを
)
いのに、
清
(
きよ
)
らかな
掛手拭
(
かけてぬぐひ
)
が
眞白
(
まつしろ
)
にほのめくばかり、
廊下
(
らうか
)
づたひの
氣勢
(
けはひ
)
はしても、
人目
(
ひとめ
)
には
唯
(
たゞ
)
軒
(
のき
)
の
荵
(
しのぶ
)
。
浅茅生
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
彼等
(
かれら
)
は
外
(
そと
)
からの
人目
(
ひとめ
)
を
雨戸
(
あまど
)
に
避
(
さ
)
けて
其
(
そ
)
の
唯一
(
ゆゐいつ
)
の
娯樂
(
ごらく
)
とされてある
寶引
(
はうびき
)
をしようといふのであつた。
疊
(
たゝみ
)
には八
本
(
ほん
)
の
紺
(
こん
)
の
寶引絲
(
はうびきいと
)
がざらりと
投
(
な
)
げ
出
(
だ
)
された。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
これは何も彼等の好みの病的だったためではない。ただ
人目
(
ひとめ
)
を避けるためにやむを得ずここを選んだのである。
早春
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
帰府の道中も同道しては
人目
(
ひとめ
)
に立つので、お近は一と足おくれて帰って来て、そっと音羽の屋敷に忍び込んだ。
半七捕物帳:69 白蝶怪
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
泣
(
な
)
くにも
人目
(
ひとめ
)
を
恥
(
はぢ
)
れば二
階
(
かい
)
座敷
(
ざしき
)
の
床
(
とこ
)
の
間
(
ま
)
に
身
(
み
)
を
投
(
なげ
)
ふして
忍
(
しの
)
び
音
(
ね
)
の
憂
(
う
)
き
涕
(
なみだ
)
、これをば
友
(
とも
)
朋輩
(
ほうばい
)
にも
洩
(
も
)
らさじと
包
(
つゝ
)
むに
根生
(
こんぜう
)
のしつかりした、
氣
(
き
)
のつよい
子
(
こ
)
といふ
者
(
もの
)
はあれど
にごりえ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
つとめに
出
(
で
)
るときは、お
化粧
(
けしょう
)
をして、そのふうがりっぱなので、
人目
(
ひとめ
)
には、いきいきとして、
美
(
うつく
)
しくうつるので、さぞゆかいな
日
(
ひ
)
を
送
(
おく
)
ってるだろうと
思
(
おも
)
うけれど、
家
(
いえ
)
へ
帰
(
かえ
)
って
アパートで聞いた話
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
しかし踊り子がいつも左へ傾いた顔をしていたのでは
美感
(
びかん
)
上困る。そこで気のつく
度
(
たび
)
に、ヒョイと首を逆にひねる。この場合、右へは、右へ振ったが振りすぎて
人目
(
ひとめ
)
を引くようになる。
間諜座事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
人目
(
ひとめ
)
を
避
(
さ
)
くるは
相身互
(
あひみたが
)
ひ、
浮世
(
うきよ
)
を
煩
(
うるさ
)
う
思
(
おも
)
ふ
折
(
をり
)
には、
身一
(
みひと
)
つでさへも
多
(
おほ
)
いくらゐ、
強
(
あなが
)
ち
同志
(
つれ
)
を
追
(
お
)
はずともと、
只
(
たゞ
)
もう
己
(
おの
)
が
心
(
こゝろ
)
の
後
(
あと
)
をのみ
追
(
お
)
うて、
人目
(
ひとめ
)
を
避
(
さ
)
くる
其人
(
そのひと
)
をば
此方
(
こちら
)
からも
避
(
さ
)
けました。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
〽落ちて
行衛
(
ゆくゑ
)
も
白魚
(
しらうを
)
の、舟のかゞりに
網
(
あみ
)
よりも、
人目
(
ひとめ
)
いとうて
後先
(
あとさき
)
に………
すみだ川
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
公卿輩
(
くげばら
)
の
公達
(
きんだち
)
なかまでは、やごとなき
摂家
(
せっけ
)
の姫君をすら、
萩
(
はぎ
)
すすきの野ずえに
担
(
か
)
き盗み出しまいらせて、朝月のほの白むまで、露しとどな目にお遭わせして、
人目
(
ひとめ
)
密
(
ひそ
)
に、帰しまいらせたとか。
新・平家物語:02 ちげぐさの巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
二足
(
にそく
)
つかみの
供振
(
ともぶり
)
を、
見返
(
みかへ
)
るお
夏
(
なつ
)
は
手
(
て
)
を
上
(
あ
)
げて、
憚樣
(
はゞかりさま
)
やとばかりに、
夕暮近
(
ゆふぐれぢか
)
き
野路
(
のぢ
)
の
雨
(
あめ
)
、
思
(
おも
)
ふ
男
(
をとこ
)
と
相合傘
(
あひあひがさ
)
の
人目
(
ひとめ
)
稀
(
まれ
)
なる
横※
(
よこしぶき
)
、
濡
(
ぬ
)
れぬ
前
(
きき
)
こそ
今
(
いま
)
はしも
怪談女の輪
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
お
落
(
おと
)
しなさるな、と
呼
(
よ
)
びもならず、
俄
(
には
)
かに
心付
(
こヽろづき
)
て
四邊
(
あたり
)
を
見
(
み
)
れば、
花
(
はな
)
に
吹
(
ふ
)
く
風
(
かぜ
)
我
(
わ
)
れを
笑
(
わら
)
ふか、
人目
(
ひとめ
)
はなけれど
何處
(
どこ
)
までも
恐
(
おそ
)
ろしく、
庭掃除
(
にはそうぢ
)
そこそこに
唯
(
たヾ
)
人
(
ひと
)
に
逢
(
あ
)
はじと
計
(
はか
)
り
暁月夜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
先頃
大殿様
(
おおとのさま
)
御一代中で、一番
人目
(
ひとめ
)
を
駭
(
おどろ
)
かせた、
地獄変
(
じごくへん
)
の
屏風
(
びょうぶ
)
の由来を申し上げましたから、今度は若殿様の御生涯で、たった一度の不思議な出来事を御話し致そうかと存じて居ります。
邪宗門
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
人
常用漢字
小1
部首:⼈
2画
目
常用漢字
小1
部首:⽬
5画
“人”で始まる語句
人
人間
人々
人気
人形
人数
人魂
人力車
人影
人通