不意ふい)” の例文
まなこはなたず睥睨へいげいしてる、猛狒ゴリラ益々ます/\たけ此方こなたうかゞつてる、この九死一生きうしいつしやうわか不意ふいに、じつ不意ふいに、何處どこともなく一發いつぱつ銃聲じうせい
その人は次官であるから随分身分のある人で、その人の親類が長州にあって、これに手紙をやった所が、その手紙を不意ふいと探偵に取られた。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
びきのありは、あまり不意ふいなことにびっくりしましたが、がついたときには、あかうえって、かわうえながれていたのです。
三匹のあり (新字新仮名) / 小川未明(著)
自分じぶんそれ澤山たくさんだとかんがへて、器械きかいなんぞとひざあはかたならべたかのごとくに、きたいところまで同席どうせきして不意ふいりて仕舞しまだけであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
と、不意ふいをくったとんぼぐみ小姓こしょうたちは、旋風つむじにまかれたの葉のように、睥睨へいげいする大鷲おおわしはらの下で、こけつ、まろびつ、悲鳴ひめいをあげて
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それから今度こんどは風がきたちまち太陽は雲をはずれチュウリップのはたけにも不意ふいに明るくしました。まっな花がぷらぷらゆれて光っています。
チュウリップの幻術 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
はなしまぎれて、友造ともざうは、こゝに自分じぶんたちが不意ふいにめぐりあはうとして、れがために同伴つれなかからくるまをはづして引込ひきこんだものとおもつてしまつたらしい。
月夜車 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
と、はなかせてゐるうちに、をつとあたまなかには二三にちまへつまとの對話たいわ不意ふいおもうかんでた。をつとわれらず苦笑くせうした。
画家とセリセリス (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
不意ふいを打たれた金将軍は桂月香を小腋こわきに抱えたまま、高いはりの上へ躍り上った。が、行長の投げつけた剣は宙に飛んだ金将軍の足の小指を斬り落した。
金将軍 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
検事けんじがもしバルブレンのおかみさんを調べることになると、せっかくの雌牛めうしがちっとも不意ふいではなくなること
外套がいとうのポケットへっこんでみたが、手にあたらない。と、不意ふいがついて見ると、それは人の外套がいとうだった。シューラはさもいまいましそうにさけんだ。
身体検査 (新字新仮名) / フョードル・ソログープ(著)
學び得て覺えある惡漢しれものなれ共不意ふいと云多勢たぜいにて押伏おしふせられし事故汚面々々をめ/\召捕めしとられけり斯て又友次郎は其朝馬喰町の旅宿をあけ寅刻なゝつに立出て板橋の方へいたり吾助を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
そのとき不意ふいわたくし枕辺まくらべちかくお姿すがたあらわして、いろいろと難有ありがたなぐさめのお言葉ことばをかけ、またなにくれとくわしい説明せつめいをしてくだされたのは、れいわたくし指導役しどうやく神様かみさまでした。
吾が国に雪吹ふゞきといへるは、猛風まうふう不意ふいおこりて高山平原かうざんへいげんの雪を吹散ふきちらし、その風四方にふきめぐらして寒雪かんせつ百万のとばすが如く、寸隙すんげきあひだをもゆるさずふきいるゆゑ
不意ふいに彼は我と我身をふるひ起たせようとする樣子だつた。あらゆる現實の證據が彼を捉へたのである。
のぶさんうした鼻緒はなをつたのか、其姿そのなりどうだ、ッともいなと不意ふいこゑくるもののあり。
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
庄屋は、不意ふいこおり奉行の訪問に、心臓をしめつけられながら、炉べりで平伏した。
大岡越前の独立 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
勘次かんじつゞいてなげうつた。曲者くせものすでちたけれどかれ不意ふい襲撃しふげきあわてゝふしくれつたかきつまづいてたふれた。かれつきあしひきずらねばあるけぬほど足首あしくび關節くわんせつ疼痛とうつうかんじたのであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
をとこ不意ふいをくらつておどろいたやうにをんなかほたまゝなんともはない。
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
お政は、きょう不意ふいにその母がなくなったと聞かせられたのである。
告げ人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
竹見は、不意ふいくらって、その場によろよろ、しりもちをついた。
火薬船 (新字新仮名) / 海野十三(著)
古池のそばにすがれし河楊かはやなぎ不意ふいにうごかす雀が白く
雀の卵 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
この野原のはらにさしかかると、汽車きしゃはしきりに警笛けいてきらしつづけましたが、不意ふいに、停車場ていしゃばでもないのにまってしまったのです。
白い影 (新字新仮名) / 小川未明(著)
かれながら過去くわこ二三時間じかん經過けいくわかんがへて、そのクライマツクスが突如とつじよとして如何いかにも不意ふいおこつたのを不思議ふしぎかんじた。かつかなしくかんじた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
右のこわきに、咲耶子さくやこのからだを引っかかえていた。不意ふいに、当身あてみをうけたのであろう、彼女かのじょは力のない四をグッタリとのばしていた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たちまち、暗澹あんたんたる海上かいじやうに、不意ふい大叫喚だいけうくわんおこつたのは、本船ほんせんのがつた端艇たんていあまりに多人數たにんずうせたため一二そうなみかぶつて沈沒ちんぼつしたのであらう。
「はあ、……」と、くのにはひつたをんなかほは、途中とちう不意ふいかはつたかとおもふ、すゞしけれども五月ごぐわつなかばの太陽したに、さびしいかげした。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
をとこ太刀たちいてゐるだけに、ちから相當さうたうにあつたやうですが、不意ふいたれてはたまりません。たちまち一ぽんすぎがたへ、くくりつけられてしまひました。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
が、やがて不意ふい松葉まつばからはなれるとはちはぶんとあがつた。三にんははつとどよめいた。けれども、はち大事だいじ犧牲ぎせい蜘蛛くも死骸しがい警戒けいかいしにつたのだつた。
画家とセリセリス (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
吾が国に雪吹ふゞきといへるは、猛風まうふう不意ふいおこりて高山平原かうざんへいげんの雪を吹散ふきちらし、その風四方にふきめぐらして寒雪かんせつ百万のとばすが如く、寸隙すんげきあひだをもゆるさずふきいるゆゑ
かく日頃ひごろただ一人ひとりやまなかじこもり、めったに外界がいかいせっする機会おりのないわたくしにとりて、うした少女しょうじょとの不意ふい会合かいごうにもものめずらしいかぎりでございました。
その扉の前を通つて、この食物の荷物を持つてるところに不意ふいうちをくはされる危險を冒さなくては、勉強室の方へは行けなかつた。で、私はじつとこちらの端に立つてゐた。
くるまもなし、女中ぢよちうれずか、やれ/\まはやなか這入はいれ、さあ這入はいれ、うも不意ふいおどろかされたやうでまご/\するわな、格子かうしめずともしがめる、かくおく
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
バルブレンの手にわたすだろう。バルブレンのおっかあが一人きりだったら、あの人に向かってわたしたちの言うことがうそかどうか聞こうとする。そうなればもうあの人の不意ふい
所が清水はドウも怖くてわれない、不意ふいと捕まえられて首をられるのではなかろうかとおもって真実がかれない。一応はただ知らぬと答えたれども、薩摩の方では中々うたがって居る様子。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
すると不意ふいに、空でブルルッとはねの音がして、二ひきの小鳥がりてまいりました。
貝の火 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
させ置て不意ふいに幸手へ押掛おしかけ三五郎を討取うちとる工夫くふう幾等いくらも有うと言ふに掃部も成程敵は知て居上ならばマア急事せくこともねへが彼が兄弟分の重四郎と云ふやつは少し手強てごはひ奴なり然し侠氣たてひきも有奴だから親分の敵を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
それでれい無言むごんで、不意ふいにうしろから兼吉にげんこをくれた。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
あるがたに、不意ふいむすめかえってきました。両親りょうしんは、見違みちがえるようにうつくしく、快活かいかつになっていたのにおどろいたのです。
笑わない娘 (新字新仮名) / 小川未明(著)
だから其所そこふにしのびない苦痛くつうがあつた。彼等かれら殘酷ざんこく運命うんめい氣紛きまぐれつみもない二人ふたり不意ふいつて、面白おもしろ半分はんぶんおとしあななかおとしたのを無念むねんおもつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
そのは、今更いまさらながら、瞬時しゆんじいへども、こゝろかげが、ねつへないものゝごとく、不意ふいのあやまちで、怪我けがをさしたひと吃驚びつくりするやうに、ぎんふたを、ぱつとつた。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
と、竹童ちくどうからだは小さいが身ごなしの敏捷びんしょうおどろくばかり、不意ふい蔦之助つたのすけに飛びかかったと思うと、かれの手から手紙をひッたくって、バラバラと逃げだした。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
老婆の話が完ると、下人はあざけるやうな聲でねんを押した。さうして、一あしまへへ出ると、不意ふいに、右の手を面皰から離して、老婆の襟上えりがみをつかみながら、かう云つた。
羅生門 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
不意ふい出来事できごとに、女房にょうぼうおもわずキャッ! とさけんで、地面じべた臀餅しりもちをついてしまいましたが、そのころ人間にんげん現今いま人間にんげんとはちがいまして、すこしはかみごころがございますから
此ふゞきは不意ふいにあるものゆゑ、晴天せいてんといへども冬の他行たぎやうには必蓑笠みのかさを用ること我国の常なり。
其處そこだツ、日本男兒につぽんだんじたましひは——。』と木像もくぞうのやうにだまつてつた武村兵曹たけむらへいそう不意ふいさけんだ。
とんでもない親類しんるゐくやうなつたのさ、わたし明日あすあのうら移轉ひつこしをするよ、あんまりだしぬけだからさぞまへおどろくだらうね、わたしすこ不意ふいなのでまだ本當ほんたうともおもはれない
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
始めて松木に逢うその時はすでに文久四年となり、四年の何月かドウモ覚えない、寒い時ではなかった、夏か秋だと思いますが、或日肥後七左衛門ひごしちざえもん不意ふいと私方に来て、松木が居るが
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
不意ふいにうるんだつまひとみ刹那せつな意識いしきしながら、をつとはわざとげつけるやうにつた。なにおもいものがむねた。そして、をつと壁掛かべかけると、いそあしにアトリエのはうつてつた。
画家とセリセリス (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
大臣だいじんの家のくるみの木が、きりの中から不意ふいに黒く大きくあらわれました。