えら)” の例文
これがわたしにはきみょうに思えたし、それとともに、売り買いをするのにこんな真夜中まよなかの時間をえらんだということもふしぎであった。
博物館はくぶつかんにはみなさんのつてゐるように、種々しゆ/″\品物しなものならべてありますが、たいていはある種類しゆるいのものばかりをえらんで、陳列ちんれつしてあるのです。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
乳母 はて、おまへ阿呆あほらしいおひとぢゃ、あのやうなをとこえらばッしゃるとはいのぢゃ。ロミオ! ありゃ不可いけんわいの。
かんがえてごらん、これまでわたしたちの代表だいひょうとしてえらんだ代議士だいぎしが、ほんとうに、わたしたちのうえおもってくれたといえるかい。
心の芽 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ひめいつしよう懸命けんめいおもつてゐるかたがこんなにたくさんあるのだから、このうちからこゝろにかなつたひとえらんではどうだらう
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
しるしたものゝなかには實驗じつけんおこなるものもあるから、教師きようし父兄ふけい指導しどうもとに、安全あんぜん場所ばしよえらびて、これをこゝろみることはきはめて有益ゆうえきなことである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
そして、えらみ出されたのが僕なんです。あなたはいつも春泥の作品を非難する僕をまんまと傀儡に使って、かたきうちをしてやろうと思ったのでしょう。
陰獣 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ことに人夫は皆藤原村及小日向村中血気けつき旺盛わうせいの者にして、予等一行と辛苦しんくを共にし、古来こらい未曾有みそういう発見はつけんをなさんと欲するの念慮ねんりよある者のみをえらびたるなり
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
ちょうど袖子そでこがあの人形にんぎょうのためにいくつかのちいさな着物きものつくってせたように、とうさんはまた袖子そでこのために自分じぶんこのみによったものをえらんでせていた。
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
仮にその想像が半分でもあたっているとすると、しとぎが我々のはれの食物として、えらまれた理由はほぼわかるのである。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
しかるにあるとし八幡宮はちまんぐうがこの鶴岡つるがおか勧請かんじょうされるにつけ、その神木しんぼくとして、わしかずある銀杏いちょううちからえらされ、ここにうつえられることになったのじゃ。
外人の眼を以てるときは、戊辰ぼしんにおける薩長人さっちょうじん挙動きょどうと十年における西郷の挙動と何のえらむところあらんや。
富士ふじのぼるには、普通ふつう吉田口よしだぐち御殿場口ごてんばぐち大宮口おほみやぐちみつつの登山道とざんみちがありますが、森林帶しんりんたいながらのぼるには吉田口よしだぐちか、大宮口おほみやぐちえらんだほうがいゝとおもひます。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
この童子は、佐々の部将、桜甚助が、弓を張っては、味方の者を、えらちしているのをながめて、大胆にも
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかるになんぞはからん、開会の始めにあたり上院にその人ありと聞こえたルート氏が座長ざちょうえらばれた。この人の手腕しゅわんでも出席者の昂奮こうふんなだめ得ないであろう。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
公園からだらだらのさか西谷にしたにの方へ、日かげをえらみ選み小急ぎになると、桑畑の中へ折れたところで、しおらしい赤い鳳仙花ほうせんかが目についた。もう秋だなと思う。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
ウルピノさん聖人ひじりおつしやつたやうに、むかしから色々いろ/\口碑くちつたへのあるなかで、船旅ふなたびほど時日ときえらばねばならぬものはありません、凶日わるいひ旅立たびだつたひと屹度きつと災難わざはひ出逢であひますよ。
「その運命ならばもうあなたはおえらびになつたのです。それに從つてゐらつしやらなくてはいけません。」
天下てんかたからといふものはすべてこれを愛惜あいせきするものにあたへるのが當然たうぜんじや、此石このいしみづかく其主人しゆじんえらんだので拙者せつしやよろこばしくおもふ、然し此石の出やうがすこはやすぎる
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
念佛衆ねんぶつしううちにはえらばれて法願ほふぐわんばれて二人ふたりばかりのぢいさんが、むづかしくもない萬事ばんじ世話せわをした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
えらび突出しの仕着しきせより茶屋々々の暖簾のれんに至る迄も花々敷吉原中大評判おほひやうばんゆゑ突出つきだしの日より晝夜ちうやきやくたえる間なく如何なる老人みにくき男にても麁末そまつに扱はざれば人々皆さき
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ぼく松男君まつおくんはいつだったか、ろんよりしょうこ、ごんごろがねがはたしてごんごろごろとるかどうかためしにいったことがある。しずかなときをぼくたちはえらんでいった。
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
また彼は家の人たちのいわい日を一わすれることがなかった。だれかのいわい日になると、きっとやってきて、心をこめてえらんだかわいい贈物おくりものをポケットからとりだした。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
全体、恭一にせよ、次郎にせよ、何でわざわざこんな家をえらんで預けられたのかというと、それは、母のお民が、子供の教育について一かどの見識家けんしきかだったからである。
次郎物語:01 第一部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
お母様がその錦絵をおえらみになったホントのお心持ちが初めてわかったような……けれどもまた
押絵の奇蹟 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
しかしながら、いたづらに完全くわんぜんもののみをえらび、金錢きんせんちからもつ買入かひいれ、あるひりてあつめて、いたづらに其數そのすうおほきをほこものごときは、けつしてらぬのである。
万記録は所謂いはゆる風説が大部分を占めてゐるので、其中から史実をえらみ出さうとして見ると、獲ものはすこぶる乏しい。しかし記事が穴だらけなだけに、私はそれに空想を刺戟しげきせられた。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
……じつは、一寸ちよつとりて蕎麥そばにしたいところだが、かけ一枚いちなんぞは刹那主義せつなしゆぎだ、泡沫夢幻はうまつむげん、つるりとえる。俥代くるまだい差引さしひくとそのいづれかをえらばねばならないふところだから、其處そこ餡氣あんけで。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
さうして、この門の上へ持つて來て、いぬのやうにてられてしまふばかりである。えらばないとすれば——下人の考へは、何度なんども同じ道を低徊した揚句あげくに、やつとこの局所へ逢着はうちやくした。
羅生門 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
このあき狂言きょうげんに、良人おっとえらんだ「おせん」の芝居しばいを、重助じゅうすけさんがきおろすという。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
められる方が災難さ。目隠しが低い鼻の上へずっこけてえらみ討ちに捕まえるんだもの、やり切れないよ。御覧よ、先刻さっきお前さんに嘗められたおこまちゃんの頬が、火脹ひぶくれになったじゃないか
温泉の出ているということを標榜ひょうぼうして、そこを別荘地にえらむ顧客を待っているのである。そうして堀ぬき井戸を掘るような装置が至るところにしてあるのは、皆新らしく温泉を掘っているのである。
別府温泉 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
それにいつも夕暮れのわしい時分をえらんで馬に積んだり車に載せたりして運んで来た。和尚さんは入り口に出て挨拶して、まずさしで、俵から米を抜いて、それを明るい戸外おもてに出して調べてみる。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
にはかぬところ劣等れつとう人間にんげんすこしもえらところいのだ。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
その書物のえらかたはでたらめか、さもなければ表題ひょうだいのおもしろいものをつかみ出して来るにすぎなかったが、やはり書物は書物であった。
それは、えらんだものにもつみがあったんだよ。ひとがなかったのだ。ただ、空宣伝からせんでんにおどらされたり、山師やましのようなものにあやつられたからだ。
心の芽 (新字新仮名) / 小川未明(著)
最後さいごに、『二人ふたりあいだ子供こどもができたらそれをる』という約束やくそくちまして、とうとう黄道吉日こうどうきつじつえらんでめでたく婿入むこいりということになったのでした。
もしこのはさまると、人畜じんちく牛馬ぎゆうば煎餅せんべいのようにつぶされるといはれ、避難ひなん場所ばしよとしては竹藪たけやぶえらべとか、戸板といたいてこれをふせげなどといましめられてゐる。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
ここにさぐりここにあがなひ、これを求めて之を得たり、すこしくえらむに稗官小説はいくわんせうせつを以てし、実をひろひ、疑ひき、皇統を正閏せいじゆんし、人臣を是非し、あつめて一家のげんを成せり。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そんなんぢやねえのとれな」勘次かんじおほきなのをえらんで三つとつた。たまごかはにはしほすこいた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
げたときかれは、鼓打つゞみうちである従弟いとこが、業体げふたいひ、温雅をんが上品じやうひんやさしいをとこの、さけ酔払ゑひはらふと、場所ばしよえらばず、外套ぐわいたういで、威勢ゐせいよくぱつと投出なげだす、帳場ちやうば車夫しやふなどは
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
えらみしたことを感謝してゐるのでございますよ。エアさんは、私にとつても、ほんとに有難いお友達ですし、アデェルにとつても、親切な行屆いた先生でゐらつしやるのでございますよ。
そのにはかぬところ劣等れっとう人間にんげんすこしもえらところいのだ。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
えらみしに初代の瀬川は大傳馬町の或大盡あるだいじん根引ねびきせられ其後名をつぐほどの者なければ暫くたえたれども是迄瀬川にならぶ全盛なし今度このたびかゝへしお高は元の瀬川にすぐれるともおとるまじとて瀬川と名を付け新造禿迄かぶろまで
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
よばるゝものはおほしといへどもえらばるゝものすくなし。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
選集をえらみしよりの山の秋
六百句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
なんと並々なみなみならぬ心遣こころづかいと、努力どりょくが、そのかたむけられていることか。たとえば、雨風あめかぜかれても容易よういれそうもない、じょうぶなえだえらばれていました。
ある夏の日のこと (新字新仮名) / 小川未明(著)
いや、少なくともそのばん歌ったように歌うのを開いたことがなかった。かれは二つの歌をえらんだ。一つはジョセフの物語で、一つはリシャール獅子王ししおうの歌であった。
彼所あそこなんぶか……つまり籠城中ろうじょうちゅうにそなたがかくれていた海岸かいがん森蔭もりかげじゃ。いまでも里人達さとびとたちは、とおむかしことをよく記憶おぼえていて、わざとあの地点ところえらぶことにいたしたらしい……。
かく可凄すさまじくもまた可恐おそろしき、大薩摩おほさつまたけなかばにくもつらぬく、大木たいぼくみきたかえだ綾錦あやにしきいとなみ、こゝにむすめきしが、もとよりところえらびたれば、こずゑましらつたふべからず、した谷川たにがはなり。
妙齢 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)