得意とくい)” の例文
りよ行の時にはもうこひ人のやうな伴侶はんりよで、撮影さつえい現像げんぞうつけ技量ぎれう自然しぜんと巧くなつて、學校での展覽會てんらんくわいでは得意とくいな出ひんぶつであり
こんどは用吉君ようきちくんが、得意とくい相手あいてくびをしめにかかったが、反対はんたい自分じぶんくびをしめつけられ、ゆでだこのようになってしまった。
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
などゝいふから、益々ます/\国王こくわう得意とくいになられまして、天下てんかひろしといへども、乃公おれほどの名人めいじんはあるまい、と思つておいでになりました。
詩好の王様と棒縛の旅人 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
わたしが鉱山こうざんにはいっていたあいだ、かれは十八フランもうけた。かれはこのたいそうな金をわたしにわたすとき、ひどく得意とくいであった。
わたし公爵夫人こうしやくふじんになつたら』とあいちやんは獨語ひとりごとつて(はなは得意とくい口振くちぶりではなかつたが)『まつた厨房だいどころには胡椒こせうかないことにしやう、 ...
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
大体だいたい天狗てんぐはたらきはそうおおきいものではないらしく、普通ふつう人間にんげんかかって小手先こてさきの仕事しごとをするのがなにより得意とくいだともうすことでございます。
いま彼女かのぢよかほをごりと得意とくいかげえて、ある不快ふくわいおものために苦々にが/\しくひだりほゝ痙攣けいれんおこしてゐる。彼女かのぢよつてく。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
あんずるに、團子だんご附燒つけやきもつ美味うまいとしてある。鹽煎餅しほせんべい以來このかた江戸兒えどつこあまあまいのをかぬ。が、なにかくさう、わたし團子だんごあんはう得意とくいとする。
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そんなときです、とくちゃんは、いつもする得意とくいの、ゆびくちれて、あかんべいをして、としさんのかおをのぞきます。
春の日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
しかし得意とくいといふことは多少たせう競爭きやうさう意味いみする。自分じぶんきなことはまつた天性てんせいといつてもからう、自分じぶんひとりけばばかりいてたものだ。
画の悲み (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
そんなら其子そのこくなつてか、可憐かわいさうなとおくさまあはれがりたまふ、ふく得意とくいに、此戀このこひいふもはぬも御座ござりませぬ、子供こどもことなればこゝろにばかりおもふて
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
問「幕府の御成立は、尊氏公にすれば、大望成就じょうじゅ得意とくいでありましょうに、なぜそれを境に、お迷いが始まったので」
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これ白坊主しろばうず」とそつけなくいつた。かれなべといふのがいやでさういつたのである。かね博勞ばくらうはうまくあるものとらへたやう得意とくいつて村落中むらぢゆうひゞかせた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
三日月みかづきなりにってある、にいれたいくらいのちいさなつめを、母指おやゆび中指なかゆびさきつまんだまま、ほのかな月光げっこうすかした春重はるしげおもてには、得意とくいいろ明々ありありうかんで
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
宗助そうすけこれより以上いじやうつて坂井さかゐこといたことがなかつた。學校がくかうめた當座たうざは、順境じゆんきやうにゐて得意とくい振舞ふるまひをするものにふと、いまろとおこつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
けさも、これまでにやってきたことを、得意とくいになって話すんですからね。あきれたもんです。署長! あの男はもう、かなりたくさんの人をきずつけています。
みだりに外語ぐわいご濫用らんようして得意とくいとするのふうが、一にちは一にちよりはなはだしきにいたつては、その結果けつくわ如何いかゞであらう。
国語尊重 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
「なんだろう、この部屋は。錬金術師れんきんじゅつしの部屋みたいだが、おい、四本君。これは君のお得意とくいの科目だぜ」
時計屋敷の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
呼江戸の得意とくいのこらず預け私し成人せいじんの後娘にめあはせんとの遺言ゆゐごんを利兵衞も承知しようちに付父茂兵衞は安心あんしんいたしやが相果あひはて申候夫より利兵衞は江戸へいでみせをも開し由四五年を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
富士男にほめられて、コスターはさっと顔をあからめながら、しかも得意とくいそうに鼻穴をふくらました。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
それはつくるのに大へんほねが折れたし、得意とくいなものであった。自分がどんなに芸術家げいじゅつかであるか見せてやりたかった。ゴットフリートはしずかにみみかたむけた。それからいった。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
茶番ちやばんをやる水兵すいへいもある、軍樂ぐんがくそうする仲間なかまもある、武村兵曹たけむらへいそう得意とくいに、薩摩琵琶さつまびわ河中島かはなかじま』の一段いちだんかたつた。このをとこに、此樣こんかくげいがあらうとは今日けふまで氣付きづかなかつた。
そして、相手あひてとりしたほうへとだんだんちひさくなつてちてゆき、えなくなつてしまふと、そのときこそ得意とくいさうにはねらして、カラカラとそらのまんなかで、わらふのだつた。
火を喰つた鴉 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)
写本しやほん挿絵さしゑ担当たんたうした画家ぐわか二人ふたりで、一人ひとり積翠せきすゐ工学士こうがくし大沢三之介おほさはさんのすけくん一人ひとり緑芽りよくが法学士はうがくし松岡鉦吉まつをかしやうきちくん積翠せきすゐ鉛筆画えんぴつぐわ得意とくいで、水彩風すゐさいふうのもき、器用きよう日本画にほんぐわつた
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
すると、甚兵衛の評判ひょうばんはもうそのみやこにもつたわっていますので、見物人けんぶつにんが朝からつめかけて、たいへんな繁昌はんじょうです。甚兵衛は得意とくいになって、毎日ひょっとこの人形をおどらせました。
人形使い (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
其所そこ來合きあはせた一紳士しんしが、貴君方あなたがたなにをするんですかととがめたので、水谷氏みづたにし得意とくい考古學研究かうこがくけんきう振舞ふりまはした。其紳士そのしんししきりに傾聽けいちやうしてたが、それではわたくし仲間なかまれてもらひたい。
あとに殘つたのは、唯、ある仕事しごとをして、それが圓滿ゑんまんに成就した時の、安らかな得意とくいと滿足とがあるばかりである。そこで、下人は、老婆らうばを見下しながら、少し聲をやはらげてかう云つた。
羅生門 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
マーキュ はららごかれたにしん干物ひものといふ面附つらつきぢゃ。おゝ、にしは、にしは、てもまア憫然あさましい魚類ぎょるゐとはなられたな! こりゃ最早もうペトラークが得意とくい戀歌こひかをおものともござらう。
情操じょうそう教育の価値があるであろう。家庭でも、子供をおだてあげて、一つやって御覧というと、子供等は得意とくいになって、足を動かしたり、手をたたいたり、腕を廻したりするのが普通だ。
親は眺めて考えている (新字新仮名) / 金森徳次郎(著)
そのうちに宮中にあるご宴会えんかいがあって、臣下の者の妻女たちが、おおぜいおしにあずかりました。すると大楯連おおだてのむらじの妻は、女鳥王めとりのみこのお腕飾りを得意とくいらしく手首にかざってまいりました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
マスノはかかえていた石を、すてるのをわすれたように、得意とくいの表情になって
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
むかふの一ぴきはそこで得意とくいになつて、したして手拭てぬぐひを一つべろりとめましたが、にはかにこはくなつたとみえて、おほきくくちをあけてしたをぶらさげて、まるでかぜのやうにんでかへつてきました。
鹿踊りのはじまり (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
かんじてゐるところはよろしいが、うへ三句さんくがごた/\として、かんじた氣分きぶんがすっきりとあらはれてゐません。けれどもこのひとは、まづ大體だいたいかういふ調子ちようしに、一筋ひとすぢうたふのが得意とくいだつたとえます。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
清兵衛は得意とくいになって、朝月を見つけた話をきかせたうえ
三両清兵衛と名馬朝月 (新字新仮名) / 安藤盛(著)
得意とくいべんふるひ落語二席を話す。
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
新吉は得意とくい絶頂ぜっちょうにいました。
曲馬団の「トッテンカン」 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
醤油屋しょうゆやというのは、むかしからあるみせで、この近在きんざい人々ひとびと得意とくいとしていました。おじいさんもごろっているので、そのいえたずねたのであります。
夜の進軍らっぱ (新字新仮名) / 小川未明(著)
かれはもっともむずかしいげいの一つをやりとげたときと同様に、得意とくいらしくわたしの賞賛しょうさんもとめていた。これはほんの二、三秒の出来事であった。
ばばあはヒラヒラとばしのそばまできて、かたくじた裏門うらもんを見まわしていたが、やがて得意とくいそうに「ひひひひひひひひ」と、ひとりで笑いをもらした。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また、それだけにつりがうまい。素人しろうとにはむづかしいといふ、鰻釣うなぎつり絲捌いとさばきはなかでも得意とくいで、一晩ひとばん出掛でかけると濕地しつち蚯蚓みゝず穿るほどひとかゞりにあげてる。
夜釣 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
友達ともだちおほかれ寛濶くわんくわつうらやんだ。宗助そうすけ得意とくいであつた。かれ未來みらいにじやううつくしくかれひとみらした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
『あのひとはわたくしの分霊ぶんれいけてまれたものであるが、あれが一ばん名高なだかくなってります……。』そうわれたときにはたいそうお得意とくい御模様おんもようえていました。
「どうだえ、博勞ばくらううまくてたんべ、どつちも依怙贔負えこひいきなしつちとこだ」相手あひて得意とくいつてつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
緑のかえるは黄色のかえるの上にとびかかっていきました。このかえるはとびかかるのが得意とくいでありました。
二ひきの蛙 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
老人はそのきょくいた。——クリストフは祖父そふと一しょに作曲さっきょくしたことが、ひどく得意とくいだった。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
『それ、其處そこに!』とつて王樣わうさまは、洋卓テーブルうへ栗饅頭くりまんぢうゆびさしながら、得意とくいげにまをされました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
きこそもの上手じやうずとやらで、自分じぶん學課がくゝわうちでは同級生どうきふせいうち自分じぶんおよぶものがない。數學すうがくとなら、はゞかりながらたれでもいなんて、自分じぶんおほい得意とくいがつてたのである。
画の悲み (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
江戸歌舞伎えどかぶき荒事あらごとともに、八百八ちょう老若男女ろうにゃくなんにょが、得意中とくいちゅう得意とくいとするところであった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
加へけれどもしるしなきゆゑ茂兵衞の枕元まくらもとへ金屋利兵衞をはじめ家内のこらず呼集よびあつわれ此度の病氣全快びやうきぜんくわい覺束おぼつかなし因て江戸の得意とくいを利兵衞殿へあづけ申なりせがれ吉三郎成人迄せいじんまで何卒我が得意先とくいさき
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
子犬は得意とくいそうに尾を振りながら、こう白へ話しかけました。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)