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此戀
そんなら
其子は
亡くなつてか、
可憐さうなと
奧さま
憐がり
給ふ、
福は
得意に、
此戀いふも
言はぬも
御座りませぬ、
子供の
事なれば
心にばかり
思ふて
馬廻りに
美男の
聞えは
有れど、
月の
雲井に
塵の
身の
六三、
何として
此戀なり
立けん、
夢ばかりなる
契り
兄君の
眼にかヽりて、
或る
日遠乘の
歸路、
野末の
茶店に
女を
拂ひて
さることなれど
御病氣にでも
萬一ならば
取かへしのなるべきならず
主は
誰人えぞ
知らねど
此戀なんとしても
叶へ
參らせたし
孃さまほどの
御身ならば
世界に
苦もなく
憂ひもなく
御心安くあるべき
筈を