たゞ)” の例文
一、 最初さいしよ一瞬間いつしゆんかんおい非常ひじよう地震ぢしんなるかいなかを判斷はんだんし、機宜きゞてきする目論見もくろみてること、たゞしこれには多少たしよう地震知識ぢしんちしきようす。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
さかうへ煙草屋たばこやにて北八きたはちたしところのパイレートをあがなふ。勿論もちろん身錢みぜになり。舶來はくらい煙草たばこ此邊このへんにはいまれあり。たゞしめつてあじはひならず。
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
たゞしこんなのは、思ひの外思慮が淺く、一てつなことをして大間違ひをするのではないか、——平次はフトそんな事を考へて居る樣子です。
たゞ同棲後どうせいご彼女かのぢよは、けつして幸福かうふくではなかつた。おそらく彼女かのぢよもさう運命うんめいつかまうとおもつて、かれのところへたのではなかつたであらう。
彼女の周囲 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
たゞういふはなしときは、あま遺物ゐぶつないときで、土器どきかほでも貝層かひさうからやうものなら、呼吸こきうをするのさへわすれるくらゐ
たゞし女の容貌は一代や二代で改まる物で無いと云ふ人があるかも知れないが、自分は日本の女の容貌をことごとく西洋婦人の様にしようとは願はない。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
早く縁を切らなければ三藏のうちたゝると云ったが、さては兄貴が生れ変って来たのか、たゞしは又祟りでう云う小児こどもが生れた事か、うも不思議な事だ
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
をみな『わが情は香玉の熱きに似もやらず、たゞ少しく君がおん寂寞さみしさを慰めむのみ』狎れむとすれば遮りて『相見るよろこび、何ぞ必ずしもここにあらむ』
『聊斎志異』より (新字旧仮名) / 蒲原有明(著)
是より夜の明るまで余は眠るにも眠られず、様々の想像を浮べ来りて是かれかと考え廻すに目科は追剥おいはぎ盗坊どろぼうたゞしは又強盗か、何しろ極々ごく/\の悪人には相違なし。
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
さとしおさなきより植木うゑきのあつかひをきて、小器用こぎようはさみ使つかへば、竹箒たけばヽきにぎつて庭男にはをとこぐらゐなんでもなきこと、たゞ素性すじやうられじとばかり、まこと只今たヾいま山出やまだしにて
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
たゞし、資本しほんは一めんいておほいに國家的こくかてきであるから國際戰爭こくさいせんさうおこり、したがつてまた國家的こくかてき社會主義者しやくわいしゆぎしやもあり、コスモポリタンにざる心理しんりはたらきがそこにる。
志保の母が妊娠した時には、頼理には父もなく子もなかつたのである。たゞ頼尚の年齢には疑がある。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
禍福の二門をくゞるのいひに過ぎず、たゞ其謂に過ぎずと観ずれば、遭逢さうほう百端ひやくたん千差万別、十人に十人の生活あり、百人に百人の生活あり、千百万人またおの/\千百万人の生涯を有す
人生 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
たゞ街道がいだう郷村きやうぞん児童ぢどう年十五八九已上におよものおの/\柳の枝を取り皮を木刀ぼくたう彫成きざみなし、皮を以またほか刀上たうしやうまと用火ひにて焼黒やきくろめ皮をもつて黒白のもやうわかつ、名づけて荷花蘭蜜こばらみといふ。
大岡殿より差紙さしがみを以て勘兵衞たな權三助十の兩人尋ねの儀有之これあるつき召連めしつれ罷出まかりいづべきむねたつされければ家主勘兵衞は兩人をよび貴樣達は何ぞわるい客人をのせて物でも取たかたゞし客人の錢金ぜにかね
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ロミオ なんと、れいとほりに斷口上ことわりこうじゃううて入場はひったものか、たゞしはしにせうか?
俗眼だもあやまつことなきなり、たゞ夫れ悪の外被に蔽はれたる至善あり、善の皮肉に包まれたる至悪あるを看破するは、古来哲士の為難なしがたしとするところ、凡俗の容易に企つるあたはざる難事なり。
心機妙変を論ず (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
何よりもおぼつかなきは御所勞ごしよらうなり。かまへて、さもと、三年みとせのはじめのごとくに、きうぢ(灸治きうぢ)させたまへ。やまひなき人も無常むじやうまぬかれがたし。たゞし、としのはてにあらず法華經ほけきやう行者ぎやうじやなり。
ト僕ガ言つてはヤツパリ広目屋臭ひろめやくさい、おい悪言あくげんていするこれは前駆ぜんくさ、齷齪あくせくするばかりが平民へいみんの能でもないから、今一段の風流ふうりう加味かみしたまへたゞ風流ふうりうとは墨斗やたて短冊たんざく瓢箪へうたんいひにあらず(十五日)
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
たゞ、『貴方あんた』と言つたのが、『君』に變つてゐた。
葉書 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
一寸ちよつとくつさき團栗どんぐりちたやうなかたちらしい。たゞしその風丰ふうばう地仙ちせんかく豫言者よげんしやがいがあつた。小狡こざかしきで、じろりと
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
たゞ此斥候このせつこう報告書ほうこくしよともづくべきものは、たん地震波ぢしんぱ種々しゆ/″\形式けいしきのみであるから、これを書取かきと其上そのうへにそれをることを必要ひつようとする。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
何処どこから手を出して掛金を外すのか、たゞ栓張しんばりを取っていか訳が分りません、脊伸せいのびをして上からさぐって見ると、かんぬきがあるようだが、手が届きません。
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
今日けふしかし、其博士そのはかせ先導せんだうであるから、我々われ/\自由じいう内部ないぶまでるをた。たゞし、五六人宛にんづゝ交代かはりがはりである。
女體のひたひの夜光石のことは誰にも言ふな、それからお前は、遊佐の右太吉を搜し出して、本人に氣付かれないやう、一と晩見張るのだ。——たゞし、餘計なちよつかいを
たゞ街道がいだう郷村きやうぞん児童ぢどう年十五八九已上におよものおの/\柳の枝を取り皮を木刀ぼくたう彫成きざみなし、皮を以またほか刀上たうしやうまと用火ひにて焼黒やきくろめ皮をもつて黒白のもやうわかつ、名づけて荷花蘭蜜こばらみといふ。
たゞこしらつき貳尺四寸無名物むめいものふち赤銅しやくどうつるほりかしらつの目貫りよう純金むくつば瓢箪へうたんすかぼりさや黒塗くろぬりこじりぎん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
たゞ夫丈それだけの事をかたために、急用として、わざ/\三千代を呼んだ所が、玩具おもちや詩歌しかに類してゐた。けれども、三千代は固より、斯う云ふ意味での俗を離れた急用を理解し得る女であつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
次に忌日吾を祭る時は孝経第一、次に論語、忌日広く吾を祭らむと思はば、内経素問、内経霊枢、次に甲乙経、第三は通俗に随て、請僧誦仏経。是は大過なるべからず。たゞ所好このむところは普門品也。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
さてもこのみのくまでに上手じやうずなるか、たゞしは此人このひとひし果報くわはうか、しろかね平打ひらうち一つに鴇色ときいろぶさの根掛ねがけむすびしを、いうにうつくしく似合にあたまへりとれば、束髮そくはつさしのはな一輪いちりん中々なか/\あいらしく
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
三月さんぐわつのはじめ、御近所ごきんじよのお醫師いしやまゐつて、つゝましく、しをらしく、たゞあま見榮みばえのせぬをとこうでをあらはにして、神妙しんめう種痘しゆとうませ
大阪まで (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
たゞ享保元年きようほがんねん西暦せいれき千七百十六年せんしちひやくじゆうろくねん)にける新燃鉢しんもえばち噴火ふんかは、霧島噴火史上きりしまふんかしじようおいもつとはげしく、したがつて最高さいこう損害記録そんがいきろくあたへたものであつた。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
たゞしは業平村に居りましたゆえ業平文治と付けたのか、又は浪島を業平となまって呼びましたのか、安永年間の事でございますからわたくしにもとんと調べが付きませんが
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
たゞしその時代じだいには、精々せい/″\打製石斧だせいせきふか、石鏃屑せきぞくくづくらゐで、格別かくべつおどろくべき珍品ちんぴんらぬのであつた。
さう言つて案内してくれたのは、太吉とは兄弟分の——たゞしあまり仲のよくない良助です。
とらへて詮議すべしと又々本堂へ立歸りコリヤ和尚をしやうかくしたるに相違あるまじサア早く出せたゞし又何れへ落したるや明白めいはくに云へばし云はぬに於ては此方にも了簡れうけんが有るぞと詰寄つめよせけれども住持はなほじやくとして只今申せし通り少しも知らぬことなり然るを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
たゞ金石間近かないはまぢかになつたとき甲板かんぱんはうなにらんおそろしいおとがして、みんなが、きやツ!とさけんだときばかり、すこ顏色かほいろへたぢや。
旅僧 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
たゞ地震ぢしんおこようすなは地震ぢしんはいかなる場所ばしよおいてどんな作用さようおこるかの大體だいたい觀念かんねんるため、地球ちきゆう表面ひようめんちか部分ぶぶん構造こうぞうべさしてもらひたい。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
今達者でおれと口真似をしたのは其の島人にはあらざるか、たゞし心の迷いかは知らぬが、かゝる矢種やだねのあるからには、何時いつしか人の来るに相違ない、あゝ有難い/\
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
島吉はたゞし書を入れました。
たゞ愛のためには必ずしも我といふ一種勝手次第なる観念の起るものにあらず、完全なる愛は「無我」のまたの名なり。
愛と婚姻 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
たゞ櫻島さくらじまはかういふ大噴火だいふんか百年ひやくねんあるひ二三百年にさんびやくねん間隔かんかくもつ繰返くりかへすので、したがつて鎔岩ようがん流出量りゆうしゆつりようおほく、前回ぜんかい場合ばあひいちろく立方粁りつぽうきろめーとる計算けいさんせられてゐるが
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
おとゝ祖五郎の行方は知れず、お国にいる事やら、たゞしは途中でわずらってゞもいやアしまいか、などと心細い身の上で何卒どうぞして音信たよりをしたいと思っても何処どこにいるか分らず
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ついてまがると、眞晝間まつぴるままくおとした、舞臺ぶたい横手よこてのやうな、ずらりとみせつきのながい、ひろ平屋ひらやが、名代なだい團子屋だんごやたゞ御酒肴おんさけさかなとも油障子あぶらしやうじしるしてある。
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
たゞしこの鎔岩ようがん流出りゆうしゆつするかいなかはその火山かざん特性とくせいにもるのであつて、鎔岩流出ようがんりゆうしゆつかならおこるものともかぎらない。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
何か知らんとすかして見れば、樵夫きこりが立てましたか、たゞしは旅僧たびそう勤行ごんぎょうでもせし処か、家と云えば家、ほんの雨露うろしのぐだけの小屋があります。文治は立止って表から大声に
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
けばこれから越前ゑちぜんつて、ちがふが永平寺えいへいじたづねるものがある、たゞ敦賀つるが一泊いつぱくとのこと。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
で、業平橋に住居して居りました処から業平文治といいますか、乃至ないし浪島を誤って業平と申しましたか、たゞしは男のいところから綽名あだないたしたものかはしかと分りませぬ。
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
たゞ、いさゝかみづかやすんずるところがないでもないのは、柳田やなぎださんは、もつてそのしようあたるのだが、わたしはう間接かんせつで、よりにつたかくで、按摩あんまかみをもませてるのは家内かない
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
如何いかゞ致そうかと照も心配致して、又々旅立たびだちを致そうか、たゞしはあやまって信州の親族の処へ参ろうかと思って居った所で有るが、一人の娘を谷間へ落して殺したのも是も皆ばち
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)