此間このあひだ)” の例文
うかね。うしよう。」此間このあひだ滿谷が和田三ざうの所へくと来合せて居たモデルに和田が「イレエ、モンペエル」と言つたさうだが
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
此間このあひだのものはもう少し待つて呉れ玉へ」と広田先生が云ふのを、「えゝ、うござんす」と受けて、野々宮さんが庭から出て行つた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
此間このあひだロミオは道外假面だうけめんかぶったるまゝひとはなれててゐる。其中そのうちヂュリエットと一武官ナイトりあうて舞踏をどりはじむる。
見廻しながら私しの年はたしか廿二歳ばかりにてつまは御座りましたが私しをきら此間このあひだ御出おでやりましたと自他じたも分らぬ事を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「君はいつもそのくらゐ運動してゐるといゝんだよ。あんまり図書室にばかり入り込んでゐるつて、此間このあひだ寮長にしかられたらう? ちやんと知つてるぞ」
朧夜 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
何故なぜだつて、なんなの、此間このあひだねえ、先生せんせい修身しうしんのお談話はなしをしてね、ひとなんだから、なか一番いちばんえらいものだつて、さういつたの。母様おつかさんちがつてるわねえ。
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
わたしは裏道にまわつて見た。此処こゝはつい此間このあひだまでもと停車場ていしやぢやうのあつたところで、柵などがまだ依然として残つてた。
父の墓 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
あれは。近「絵草紙ゑざうしだよ。梅「へえゝ綺麗きれいなもんですな、なでて見ちやアわかりませんが、此間このあひだ池田いけださんのおぢやうさまが、これだとおつしやいましたがわかりませんでした。 ...
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
起す松唐松からまつ杉檜森々しん/\として雨ならずとも樹下このしたうるほひたり此間このあひだに在りて始めて人間の氣息ゆるやかなるべきを
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
此間このあひだにチヨイ/\飛入とびいり發掘者はつくつしやえた。野中完一氏のなかくわんいちし伊坂梅雪氏いさかばいせつし小南保之助氏こみなみやすのすけし高橋佛骨氏等たかはしぶつこつしとう
其間そのあひだ余程よほど文章を修行しゆぎやうしたものらしい、増上寺ぞうじやうじ行誡上人ぎやうかいしやうにん石川鴻斎翁いしかはこうさいおうの所へ行つたのはすべ此間このあひだの事で、してもつぱ独修どくしうをした者と見える、なんでも西郷隆盛論さいごうたかもりろんであつたか
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
三州味噌の香気にほひがどうだ、塩加減がどうだ、此の沢庵漬たくあん切形きりかたは見られぬ、此の塩からを此様こんな皿に入れる頓馬はない、此間このあひだ買つた清水焼はどうした、又こわしたのぢやないか
一月一日 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
がらかや此間このあひだこといぶかしう、さら霜夜しもよ御憐おあはれみ、羽織はをりことさへとりへて、仰々ぎやう/\しくもなりぬるかな、あとなきかぜさわしのぶがはらむしこゑつゆほどのことあらはれて
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
なりおほきな物價ぶつか變動へんどうであつて、此間このあひだすくなからざる商賣しやうばい不圓滑ふゑんこつきたしたのである。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
アヽ、我等は何等の多幸多福ぞや、独り此間このあひだに立ちてかつて同胞の情感を傷害せらるゝことなきなり、ただれのみならず、彼等の嫉妬しつと憎悪ぞうを奪掠だつりやく、殺傷の不義非道に煩悶はんもん苦悩するを
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
わたしはかうしてみなさんにかこまれてゐると、氣持きもちいサナトリウムにでもてゐるやうですよ、私達わたしたちためにも、病院びやうゐんやサナトリウムが設備せつびされてゐたら、此間このあひだくなつたSさんなんか、屹度きつとまた
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
一匹のこほろぎが単衣ひとえを着て、街へ仕事をさがしに出掛けましたが、此間このあひだまでつとめてゐた印刷工場で足の上へ重い活字箱を落としてけがをして首を切られ、けがをした足は益々ますますふくれるばかりで
こほろぎの死 (新字旧仮名) / 村山籌子(著)
此間このあひだ始終しゞゆう女王樣ぢよわうさまけつして帽子屋ばうしやからはなされませんでした。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
原口さんは此間このあひだ始終筆を使つかつてゐる。美禰子の方も見てゐる。三四郎は原口さんの諸機関が一度に働らくのを目撃して恐れ入つた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
それから前で分ける形の中に此間このあひだコメデイ・フランセエズ座の女優で三つに分けた人があつた。真中まんなかが立ててあるから丁度ちやうど日本髪の様であつた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
むかがは湯屋ゆややなぎがある。此間このあひだを、をとこをんなも、一頃ひところそろつて、縮緬ちりめん七子なゝこ羽二重はぶたへの、くろ五紋いつゝもんした。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
此間このあひだにロミオは假面かめんのまゝ、巡禮姿じゅんれいすがたのまゝにてヂュリエットにちかづき、ひざまづきてうや/\しくそのる。
かはして別かれしにあらずや然るに此間このあひだも六兩三分と言金子を譯なく合力がふりよくし間もなく其形にて又々まゐらるゝ事餘りなる仕方なりむかしとは違ひ今は眞面目まじめに日々の利潤りじゆんを以て其日を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
れではなに理屈りくつがあつてむをずといふ次第しだいか、くるしからずはうけたまはりたいものだといふに、貴君あなたにはいていたゝかうと此間このあひだからおもひました、だけれども今夜こんやはいけませぬ、何故なぜ/\
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
此間このあひだ望蜀生ばうしよくせい故郷こきやうかへり、活東子くわつとうしまたふるはず。幻花子げんくわし相變あひかはらず。それと玄川子げんせんし相手あひてにぼつ/\つて、到頭たうとう鷄屋とりやへいしたまですゝんで、なつころには場所ばしよくなつた。
いやア……大層たいそうひろい……こりやアはらのやうなところだ……おやぼく丈夫ぢやうぶだが、此間このあひだ佐藤進先生さとうすゝむせんせいとてもむづかしいとつたよ、それからさいが心配して、橋本先生はしもとせんせいもらつたらうだらうとふから
明治の地獄 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
爭ひ兄弟親子しんし疎遠になりかたき同士と摺れ合ふよりは幸福なりなど思ひつゞくるうち鵜沼うぬまも過ぎて加納かなふに着きしが此間このあひだの景色川あり山あり觀音坂といふ邊など誠に面白き所なりし岐阜の停車塲ステーシヨンの手前の料理店にりて晝を
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
此間このあひだ御光さんの御母おつかさんがて、三四郎さんも近々大学を卒業なさる事だが、卒業したらうちむすめを貰つて呉れまいかと云ふ相談であつた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
此間このあひだ某新聞が男のひげに対する女の感想を知名な女優から聞いて発表したが、大抵無用な物だと云ふ意見に一致して居た。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
西にし神通川じんつうがは堤防ていばうもつかぎりとし、ひがし町盡まちはづれ樹林じゆりんさかひし、みなみうみいたりてき、きた立山りふざんふもとをはる。此間このあひだ見通みとほしの原野げんやにして、山水さんすゐ佳景かけいいふべからず。
蛇くひ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
母親はゝおやはほた/\としてちやすゝめながら、亥之ゐのいましがた夜學やがくゆきました、あれもおまへかげさまで此間このあひだ昇給しようきうさせていたゞいたし、課長樣くわちやうさま可愛かわゆがつてくださるのでくらゐ心丈夫こゝろじようぶであらう
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
きてゐるやうなら……ときときところところはかはかとし埋葬所はふむりどころなんねん其間そのあひだ先祖せんぞほね填充つまってあり、まだ此間このあひだめたばかりののチッバルトもまぶれの墓衣はかぎのまゝで
乞ふに内にては大聲おほごゑあげどうれと云て立出る長庵を見るよりはやく千太郎是は/\伯父樣をぢさま此間このあひだは御出下され段々だん/\の御世話忝けなし偖御約束の通り今日參上さんじやう致せしと云ふに長庵いと不審いぶかしげに小首こくび
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
へえゝ……種々いろんものりますな、此間このあひだ山田やまださんのぼつちやんがつていらしつたのをわたしにぎつたら、玩具おもちやだとおつしやいましたが、成程なるほどさま/″\のものりますよ、此方こつち玩具おもちや……彼方あつち玩具おもちや
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
此間このあひだうまれたすゑをとこが、ちゝ時刻じこくたものか、ましてしたため、ぞく書齋しよさいけてにはげたらしい。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
名案めいあんはないかな——こゝへ、下町したまちねえさんで、つい此間このあひだまで、震災しんさいのためにげてた……元來ぐわんらい靜岡しづをかには親戚しんせきがあつて、あきらかな、いき軍師ぐんしあらはれた。
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
この美登利みどりさんはなにあそんでる、あめるにおもてての惡戯いたづらりませぬ、また此間このあひだのやうに風引かぜひかうぞと呼立よびたてられるに、はいいまゆきますとおゝきくひて、其聲そのこゑ信如しんによきこえしをはづかしく
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
此間このあひだある雑誌で「力」といふ観念について独仏両者を比較したパラントといふ人の文章を読んだ時、自分はます/\其感を深くした。
点頭録 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
けれどもぶりではたしかにない、あのはらのふくれた様子やうすといつたら、宛然まるで鮟鱇あんかうるので、わたしかげじやあ鮟鱇博士あんかうはかせとさういひますワ。此間このあひだ学校がくかう参観さんくわんたことがある。
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
此間このあひだからなにかと奧齒おくばものはさまりて一々こゝろにかゝることおほし、ひとには取違とりちがへもあるものなにをか下心したこゝろふくんでかくしだてゞはいか、此間このあひだ小梅こうめこと、あれではいかな、れならば大間違おほまちがひのうへなし
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
玄関前に、此間このあひだ引越のときにほどいた菰包こもづゝみ藁屑わらくづがまだこぼれてゐた。座敷ざしきとほると、平岡は机のまへすはつて、なが手紙てがみけてゐる所であつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
此間このあひだ見着みつけた時には、腹は立たないで涙が出たぞ
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
宗助そうすけ此間このあひだ公案こうあんたいして、自分じぶんだけ解答かいたふ準備じゆんびしてゐた。けれども、それははなは覺束おぼつかない薄手うすでのものにぎなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
此間このあひだはら御母おつかさんがて、まあ貴方あなたほど氣樂きらくかたはない、何時いつても萬年青おもとばかり丹念たんねんあらつてゐるつてね。眞逆まさかうでもいんですけれども
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
どうかして、此東京に落付おちついてゐられる様にしてりたい気がする。代助はもう一返あによめに相談して、此間このあひだかねを調達する工面をして見やうかと思つた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
代助は今更あにに向つて、自分の立場たちばを説明する勇気もなかつた。かれはつい此間このあひだ迄全くあにと同意見であつたのである。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)