苦勞くらう)” の例文
新字:苦労
いま苦勞くらうこひしがるこゝろづべし、かたちよくうまれたる不幸ふしやはせ不相應ふさうおうゑんにつながれていくらの苦勞くらうをさすることあはれさのまされども
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
などと年甲斐としがひもなくをとこぴきがそんなくだらないことをかんがへたりするのも、麻雀マアジヤン苦勞くらうした人間にんげんでなければわからないあぢかもれない。
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
敦賀つるが良津りやうしんゆゑ苦勞くらうはないが、金石かないははうふねおきがかりして、なみときは、端舟はしけ二三里にさんりまれなければらぬ。これだけでもいのちがけだ。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
その時分じぶん夫婦ふうふ活計くらしくるしいつらつきばかりつゞいてゐた。宗助そうすけ流産りうざんした御米およねあをかほながめて、これ必竟つまり世帶しよたい苦勞くらうからおこるんだとはんじた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
徒勞むだだよおめえ、だれがいふことだつて苦勞くらうはねえんだから」ばあさんたがひ勝手かつてなことをがや/\とかたつゞけた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
聞給ふとなりまことにありがたき事なり然るに當世たうせい奉行ぶぎやう役人やくにんは町人百姓を夜中やちうにてもかまはず呼出よびいだこしかけに苦勞くらう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
今更いまさらおもつてみれば、つとむはもう十九である。九つと三つの子供こどものこされてからの十年間ねんかんは、いま自分じぶん自分じぶんなみだぐまれるほどな苦勞くらう歴史れきしかたつてゐる。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
がけうへ觀音樣くわんのんさまには茶店ちやみせがありました。密柑みかんやたまご 、駄菓子だぐわしなんどをならべて、參詣者おまへりびと咽喉のど澁茶しぶちやしめさせてゐたそのおばあさんは、苦勞くらうしぬいてひとでした。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
カピ長 はて、ちがひにもなるわさ。ひるよるも、せつも、念々刻々ねん/\こく/\はたらいてゐよが、あそんでゐよが、たゞ一人ひとりゐよが、多勢おほぜいともにゐよが、むすめめが縁邊えんぺん苦勞くらうにせなんだときい。
療治れうぢ報酬はうしう藥箱くすりばこ進物しんもつといふのは、すこへんだが、本道ほんだうのほかに外療げれう巧者かうしや玄竹げんちくは、わかもの怪我けが十針とはりほどもつて、いとからんだ血腥ちなまぐさいものを、自分じぶんくちるといふやうな苦勞くらうまでして
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
ひとうへつものはだけ苦勞くらうおほく、里方さとかた此樣このやう身柄みがらでは猶更なほさらのことひとあなどられぬやうの心懸こゝろがけもしなければるまじ
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
しながそれほど苦勞くらうした米穀べいこく問題もんだい死後しご四五年間ねんかん惨憺さんたんたる境遇きやうぐうからやうや解決かいけつげられようとしたのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
可哀氣かはいげに、苦勞くらうやみにわづらつて、おびをしめてもゆるむほど、細々ほそ/″\つてるものを、鐵槌かなづちつやうに、がん/\と、あたまへひゞくまでまをしましたわ。
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
始めし者にて侠氣をとこぎあるうまれ付なれば友次郎がながの病氣にお花が苦勞くらうする樣子を見てどくに思ひ種々いろ/\心を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
おい苦勞くらうち、苦勞くらう宿やどところには兎角とかく睡眠すゐみん宿やどらぬものぢゃが、こゝろきずなうわだかまりのないわかものは、手足てあしよこにするやいなや、心持こゝろもちねむらるゝはずぢゃに、かうはやきさしゃったは
べしは重々ぢゆう/\此方こなたわるけれど母上はゝうへとらへてなにいひつたかおみゝれまいとおもへばこそ樣々さま/″\苦勞くらうもするなれさらでもの御病氣ごびやうきにいとゞおもさを
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
内儀かみさんは成程なるほどさういふ心持こゝろもちるのかと、それから種々いろ/\身分みぶん相應さうおう苦勞くらうまぬことをはなしかせると
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
兄彦三郎は押止め今兩人江戸へ赴く時は母人はゝびといとゞさびしく思され猶も苦勞くらう増給ましたまはんにより其方は母樣のそばに止りてなぐさまゐらせよと漸々やう/\なだすかし正月廿一日いまだ幼弱えうじやくの身を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
あなたもいやだといふし、それわたしも、そりや樣子やうすつてて、一所いつしよ苦勞くらうをしてれたからツたつても、ねえさんにはきまりわるくツて、うちへおまをすわけにはかないしさ。
三尺角拾遺:(木精) (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
夜風よかぜやぶ屏風びやうぶうち心配しんぱいになりてしぼつてかへるから車財布ぐるまざいふのものゝすくなほど苦勞くらうのたかのおほくなりてまたぐ我家わがやしきゐたか
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
おな道理だうりで、さかる/\鈴鹿すゞかくもる=といひ、あはせりたや足袋たびへて=ととなへる場合ばあひには、いづれもつかれやすめるのである、無益むえきなものおもひをすのである、むし苦勞くらうまぎらさうとするのである
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ながれてられるたのみもなしマアどのくらゐかなしからうとらぬことながら苦勞くらうぞかしとて流石さすがわらへばテモじやうさまははなこゝろ
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
所帶しよたい苦勞くらうまで饒舌しやべりやがる、畜生ちくしやうめ。」
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
此年このとしをして人樣ひとさま口入くちいれやら手傳てつだひやら、老耻おひはぢながらもせんまする、れどもしに苦勞くらう出來できぬもの、つく/″\おまへ夫婦ふうふはたらきをるに
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
めづらしききやく馳走ちそう出來できねど好物かうぶつ今川燒いまがはやき里芋さといもころがしなど、澤山たくさんたべろよと言葉ことばうれし、苦勞くらうはかけまじとおもへど大晦日おほみそかせまりたるいゑ難義なんぎ
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
もうれたに太吉たきち何故なぜかへつてぬ、げんさんもまた何處どこあるいてるかしらんとて仕事しごとかたづけて一ぷくすいつけ、苦勞くらうらしくをぱちつかせて、さら土瓶どびんした穿ほぢくり
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
なにごとぞくまでやさしき孝行かう/\のこヽろにす、父君ちヽぎみ母君はヽぎみ苦勞くらうたねよめいりの相談さうだんかけたまふごとに、わがまヽながらわたく一生いつしやうひとりみのねがひあり、おふせにそむくはつみふかけれど
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
かざにしきうらはとはゞなみだばかりぞ薄化粧うすげしやうふか苦勞くらういろかくしてとも無邪氣むじやき物語ものがたりを
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そでいま苦勞くらうはつらくとも暫時しばし辛抱しんばうぞしのべかし、やがて伍長ごちやう肩書かたがきたば、鍛工場たんこうぢやう取締とりしまりともはれなば、いへいますこひろ小女こをんなはし使づかひをきて、そのかよわきみづまさじ
軒もる月 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
婦人をんなはかなしとおももひたえて、松野まつの忠節ちうせつこゝろより、われ大事だいじもふあまりに樣々さま/″\苦勞くらう心痛しんつう大方おほかたならぬこゝろざしるものから、それすらそらふくかぜきて、みゝにだにめんとせざりし
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
なけれど今日けふまでの苦勞くらうなにゆゑぞはんとおもそれよろづねがひを
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)