たゞ)” の例文
それからわづらひついて、何時いつまでつてもなほらなかつたから、なにもいはないでうちをさがつた。たゞちにわすれるやうに快復くわいふくしたのである。
怪談女の輪 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
あいちやんはたゞちにれが扇子せんすつて所爲せいだとことつていそいで其扇子そのせんすてました、あだかちゞむのをまつたおそれるものゝごとく。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
猛狒ゴリラるいこのあな周圍しうゐきばならし、つめみがいてるのだから、一寸ちよつとでも鐵檻車てつおりくるまそとたら最後さいごたゞちに無殘むざんげてしまうのだ。
のべ長助お光の兩人は是で此方こなた拔目ぬけめはないと小躍こをどりをして立戻り長助はたゞちに訴訟書をぞしたゝめけるすべて公事は訴状面によつ善惡ぜんあく邪正じやしやう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
氏の人生を見るたゞちにその底に横はつてゐる眞髓しんずゐとらへてしまひます。そして、それをもつと充實じうじゆつした意味の短かさを以て表現へうげんします。
三作家に就ての感想 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
藻西太郎は妻に代りて我身を捨んとまで決心したる男なれば倉子が放免せらるゝやたゞちに引取りて元の通りに妻とせり
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
たん以上いじやうかひつてはこしてある。其跡そのあとからは清水しみづ湧出ゆうしゆつして、たゞちにほどひくくなつてる。此所こゝ貝塚かひづかがあらうとは、今日けふまでらなかつた。
独逸ドイツに起りたる宗教改革の気運の漸くルーテルが硬直誠実なる大思想に熟せんとするや、至粋はたゞちに入つてルーテルの声に一種の霊妙なる威力を備へたり。
徳川氏時代の平民的理想 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
見てたゞちに是れ詩人の哲学也と曰ひ明月や池を廻つて夜もすがらと歌ひし為めに芭蕉は斯の如き宗教を有すと断ぜんとす吾人は之が為めに長歎を発せざるを得ざる也。
凡神的唯心的傾向に就て (新字旧仮名) / 山路愛山(著)
其の旨を御老中へ御沙汰に相成り、御老中からたゞちに町奉行へ伝達されましたから、筒井和泉守様は雀躍こおどりするまでに喜ばれ、十一月二十九日に長二郎を始め囚人めしゅうど玄石茂二作
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
そしてローウッドで、私は、いつもよい生徒であり、よい教師であつた故に、監理者の署名した、人物と才能に就いての保證書をたゞちに與へるといふ保證が附け加へられた。
はからずも一大事の密書を手に入れて則重の身にかゝるわざわいを未然に防ぎ得たのを喜び、たゞちに此のことを則重に告げるべきであり、それが又その場合の義務であったにかゝわらず
とも輦轂れんこくもとに住んで、親しく政府の施設を見ようと云ふのである。二人の心底には、秕政ひせいの根本をきはめて、君側くんそくかんを発見したら、たゞちにこれを除かうと云ふ企図が、早くも此時からきざしてゐた。
津下四郎左衛門 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
やまると、たゞちに猛獸まうじう毒蛇どくじや襲撃しふげき出逢であふだらうとはかねての覺悟かくごであつたが、此時このときまで其樣そん模樣もやうすこしもえなかつた。
さて松川に入塾して、たゞちに不開室あかずのまを探検せんとせしが、不開室は密閉したるが上に板戸を釘付くぎづけにしたれば開くこと無し。
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
今度こんどは『召上めしあがれ』といた貼紙はりがみがありませんでしたが、それにもかゝはらずあいちやんはせんいてたゞちにくちびるてがひました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
みぎ文體ぶんてい也ければたゞちに麹町三丁目町醫師村井長庵呼出よびだしの差紙さしがみを札の辻の町役人へ渡されければ非番ひばんの家主即時そくじに麹町の名主の玄關へ持參なし順序じゆんじよ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
然れども人間の霊魂を建築せんとするの技師に至りては、其費やすところの労力はたゞちに有形の楼閣となりて、ニコライの高塔の如く衆目を引くべきにあらず。
人生に相渉るとは何の謂ぞ (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
斯學しがく熱心ねつしんなるこうは、焚火たきびにもあたられず、たゞちに車夫しやふ指揮さしづして、あな上部じやうぶはう發掘はつくつはしめられた。
かくの如く脩辞の問題盛んなると同時に美術的の文学(即ち狭義の文学)は勃然ぼつぜんとして起り来れり。けだし脩辞を以てたゞちに文学の全躰なりとするものは未だ文学を解せざる者なり。
明治文学史 (新字旧仮名) / 山路愛山(著)
給仕が心得て持来るを目科は受取るがいなたゞちに其口なるコロップを抜き其封蝋の青き所を余に示してにッこと笑み、瓶は酒の入たる儘にて幾法いくふらんの銀貨と共に卓子ていぶるの上に残し置き
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
「ビアンカ夫人、御指名とあらば、たゞちに。」
このほこらいたゞく、鬱樹うつじゆこずゑさがりに、瀧窟たきむろこみちとほつて、断崖きりぎし中腹ちうふく石溜いしだまりのいはほわづかひらけ、たゞちに、くろがね階子はしごかゝ
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あいちやんは爪先つまさき立上たちあがり、きのこふちのこくまなくうちはしなくもそのたゞちにおほきなあを芋蟲いもむし出合であひました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
此時このとき電光艇でんくわうていはるかのおきから海岸かいがんちかづきたり、櫻木海軍大佐さくらぎかいぐんたいさは、無事ぶじ一隊いつたい水兵すいへいとも上陸じやうりくしてたので、陸上りくじやう一同いちどうたゞちに其處そこ驅付かけつけた。
それが彌生式やよひしきたゞちに結合けつがふされるかいなかは、いま斷言だんげんするあたはずだが、特種とくしゆ貝塚かひづかるとみとめられたうへは、それが彌生式土器やよひしきどきおほ關係くわんけいいうしてるとまではへるのである。
と申さるゝ時麹町三丁目瀬戸物屋忠兵衞たゞちに白洲へ呼込よびこみと相成長庵のかたはらに蹲踞うづくまる是を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
洗礼を施さゞる悪しきにあらず、然れども洗礼を施さゞるを以てたゞちに基督の弟子となり了したりと思ふは大早計なり、すべて心の基督に通じたるとき、即ち心が基督の水に浴したる時
各人心宮内の秘宮 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
然れども彼れは哲学者の如く論理に因つて之を得ざるなり。彼れは論理以上の者を有す。彼れは論理の媒介に因つて天地を解釈せず。彼れは不思議なる直覚を以てたゞちに天地と人生とを見る。
詩人論 (新字旧仮名) / 山路愛山(著)
かくて生田はたゞちに牢屋へ入られしが
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
で、たゞちに木材もくざい伐更きりあらためて、第二だいにざうきざみはじめた。が、またさくたいする迫害はくがい一通ひととほりではないのであつた。ねこんで行抜ゆきぬける、ねずみかじる。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ふものは、碌々ろく/\貝塚かひづか發掘はつくつしてもせずに、たゞちに地中ちちう秘密ひみつつたふりをして、僅少きんせうなる遺物ゐぶつ材料ざいれうに、堂々だう/\たる大議論だいぎろんならべ、うして自個じこ學説がくせつてるのにきふひといでもい。
ぐる/\といそいでまはつて取着とつついてつてのぼる。と矢間やざまつきあかかつた。魔界まかいいろであらうとおもふ。が、猶予ためらひまもなくたゞちに三階目さんがいめのぼる……
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
われく、明帝めいてい洛水らくすゐあそべることあり。なみあをくして白獺はくだつあり。妖婦えうふよくするがごとにしてあいし。ひといたるをるや、こゝろあるごとくしてたゞちにかくる。
聞きたるまゝ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
用意よういをはればたゞちにはしりて、一本榎いつぽんえのきうろより數十條すうじふでうくちなはとらきたり、投込なげこむと同時どうじ緻密こまかなるざるおほひ、うへにはひし大石たいせきき、枯草こさうふすべて、したより爆※ぱツ/\けば
蛇くひ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
背後うしろからながめて意気いきあがつて、うでこまぬいて、虚空こくうにらんだ。こしには、暗夜あんやつて、たゞちに木像もくざう美女たをやめとすべき、一口ひとふり宝刀ほうたうびたるごとく、威力ゐりよくあしんで、むねらした。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
一寸ちよつと横顏よこがほ旦那だんなはう振向ふりむけて、ぐに返事へんじをした。細君さいくんが、またたゞちに良人をつとくちおうじたのは、けだめづらしいので。……西洋せいやうことわざにも、能辯のうべんぎんごとく、沈默ちんもくきんごとしとある。
山の手小景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
雨戸あまどを一まいツトけると、たゞちに、東西南北とうざいなんぼくへ五眞白まつしろやまであるから。
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
すで獻立こんだてしてちたればたゞちに膳部ぜんぶ御前ごぜんさゝげつ。「いま一膳いちぜんはいかゞつかまつらむ」とうかゞへば、幼君えうくん「さればなりそのぜんかごなかつかはせ」との御意ぎよい役人やくにんいぶかしきことかなと御顏おんかほみまもりて猶豫ためらへり。
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
積薪せきしんおもはず悚然ぞつとして、たゞちに衣冠いくわんつくろひ、わかよめはゞかりあり、しうとねやにゆき、もし/\とこゑけて、さて、一石いつせきねがひませう、とすなはたしなところふくろより局盤きよくばんいだし、黒白こくびやく碁子きしもつしうとたゝかふ。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
都人士とじんしもし此事このことうたがはば、たゞちにきたれ。
蛇くひ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)