玄關げんくわん)” の例文
新字:玄関
此度錢屋四郎右衞門方へ聖護院宮樣しやうごゐんのみやさま御配下ごはいか天一坊樣御旅舍の儀明家の儀なれば貸申候に昨夜さくや御到着ごたうちやくのち玄關げんくわんへは御紋付きの御幕を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
急信きふしんは××ねん××ぐわつ××にち午後ごごとゞいたので、民子たみこあをくなつてつと、不斷着ふだんぎ繻子しゆすおび引緊ひきしめて、つか/\と玄關げんくわんへ。
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
とうさんが玄關げんくわんひろいたて、そのをさおときながらあそんでりますと、そこへもよくめづらしいものきのすずめのぞきにました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
宗助そうすけ浴衣ゆかた後影うしろかげが、裏口うらぐちところへてなくなるまで其處そこつてゐた。それから格子かうしけた。玄關げんくわんへは安井やすゐ自身じしんあらはれた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
れとらねばくるまそのまヽ玄關げんくわんにいそぐを、さとしなにものともらずあわたヽしくひろひて、懷中ふところにおしれしまヽあとずにかへりぬ。
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
すると其處そこ院長ゐんちやうは六號室がうしつるとき、にはからすぐ別室べつしつり、玄關げんくわん立留たちとゞまると、丁度ちやうど恁云かうい話聲はなしごゑきこえたので。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
昔風むかしふうもんはひると桑園くはゞたけあひだ野路のみちのやうにして玄關げんくわんたつする。いへわづか四間よま以前いぜんいへこはして其古材そのふるざいたてたものらしくいへかたちなしるだけで、風趣ふうちなにいのです。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
屹度きつとつてはれるにしてもあといてくのでなくては勘次かんじには不安ふあんたまらないのである、さうしてかれはぽつさりと玄關げんくわんうづくまつてつてることがせめてもの氣安きやすめであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
祖母おばあさんはれい玄關げんくわんわきにあるはた腰掛こしかけまして、羽織はおりにするぢやう反物たんものと、子供こどもらしい帶地おびぢとを根氣こんきつてれました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
錢屋方へつかはさる兩人の與力は旅館に到り見るに嚴重げんぢうなる有樣なれば粗忽そこつの事もならずとまづ玄關げんくわんに案内をこひ重役ぢうやくに對面の儀を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
宗助そうすけきよめいじたとほりを、小六ころくかへして、はやくしてれとてた。小六ころく外套マントがずに、すぐ玄關げんくわんつてかへした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「あ、あれはね(按摩あんま)とつてね、矢來やらいぢや(いわしこ)とおんなじに不思議ふしぎなかはひるんだよ」「ふう」などと玄關げんくわん燒芋やきいもだつたものである。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
すこぎ、ミハイル、アウエリヤヌヰチはかへらんとて立上たちあがり、玄關げんくわん毛皮けがは外套ぐわいたう引掛ひつかけながら溜息ためいきしてふた。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
いへ間數まかず三疊敷さんでふじき玄關げんくわんまでをれて五間いつま手狹てぜまなれども北南きたみなみふきとほしの風入かぜいりよく、には廣々ひろ/″\として植込うゑこみ木立こだちしげければ、なつ住居すまゐにうつてつけとえて
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ぽつさりとして玄關げんくわんつてるのは悉皆みんな怪我人けがにんばかりである。くびからしろ布片きれつてれもしろ繃帶ほうたいしたたせたものもあつた。其處そこあをかほをしてぐつたりとよこたはつてるものもあつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
ふれぬ此度は相摸守殿には玄關げんくわん式臺迄しきだいまで御見送おんみおくり町奉行は下座敷へ罷出まかりい表門おもてもんを一文字に推開おしひらけば天一坊は悠然いうぜんと乘物のまゝもん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
うち門口かどぐちまでると、いへなかはひつそりして、だれもゐないやうであつた。格子かうしけて、くついで、玄關げんくわんがつても、るものはなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
祖母おばあさんの着物きもの塲所ばしよはおうち玄關げんくわんそばいたきまつてました。そのおにはえるあかるい障子しやうじそば祖母おばあさんの腰掛こしかけはたいてありました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
よくおぼえてはないが、玄關げんくわんかゝると、出迎でむかへた……お太鼓たいこむすんだ女中ぢよちうひざまづいて——ヌイと突出つきだした大學生だいがくせいくつがしたが、べこぼこんとたるんで、其癖そのくせ
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
玄關げんくわんから病室びやうしつかよひらかれてゐた。イワン、デミトリチは寐臺ねだいうへよこになつて、ひぢいて、さも心配しんぱいさうに、人聲ひとごゑがするので此方こなたみゝそばだてゝゐる。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
母樣はゝさま御機嫌ごきげんよう新年しんねんをおむかひなされませ、左樣さやうならばまいりますと、暇乞いとまごひわざとうやうやしく、おみね下駄げたなほせ、お玄關げんくわんからおかへりではいおかけだぞと圖分づぶ/\しく大手おほでりて
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
一度いちどうちはひつて、神棚かみだなと、せめて、一間ひとまだけもと、玄關げんくわん三疊さんでふつちはらつた家内かないが、また野天のでん逃戻にげもどつた。わたしたちばかりでない。——みなもうなか自棄やけつた。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
始終とほしごたごたしてらち御座ござりませぬといふ、めうことのとおもひしが掃除さうぢのすみて日暮ひぐれれがたに引移ひきうつきたりしは、合乘あひのりのほろかけぐるま姿すがたをつゝみて、ひらきたるもん眞直まつすぐりて玄關げんくわんにおろしければ
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
……間違まちがつたら、ゆるしツこ、たしか、たう時事新報じじしんぱうもよほしであつたとおもふ。……二人ふたりともまだ玄關げんくわんたが、こんなこと大好だいすきだから柳川やながは見物けんぶつ參觀さんくわんか、參觀さんくわんした。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
松野まつのこたへぬ、秋雨あきさめはれてのち一日今日けふはとにはかおもたちて、糸子いとこれいかざりなきよそほひに身支度みじたくはやくをはりて、松野まつのまちどほしく雪三せつざうがもとれよりさそいぬ、とれば玄關げんくわん見馴みなれぬくつそくあり
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
塾生じゆくせい家族かぞくとがんで使つかつてゐるのは三室みま四室よまぎない。玄關げんくわんはひると十五六疊じふごろくでふ板敷いたじきそれ卓子テエブル椅子いすそなへて道場だうぢやうといつたかくの、英漢數學えいかんすうがく教場けうぢやうになつてる。
怪談女の輪 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
まへさまお一人ひとりのおわづらひはお兩人ふたりのおなやみと婢女共をんなどもわらはれてうれしときしが今更いまさらおもへばことさらにはせしかれたものならず此頃このごろしは錦野にしきの玄關げんくわんさきうつくしくよそほふたくらべてれよりことばけられねど無言むごん行過ゆきすぎるとは
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
部屋へや四疊よでふけた。薄暗うすぐらたてなが一室いつしつ兩方りやうはうふすま何室どつちほか座敷ざしき出入でいり出來できる。つまおくはうから一方いつぱうふすまけて、一方いつぱうふすまから玄關げんくわん通拔とほりぬけられるのであつた。
怪談女の輪 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
……その玄關げんくわん六疊ろくでふの、みぎ𢌞まはえんにはに、物數寄ものずきせて六疊ろくでふ十疊じふでふつぎ八疊はちでふつゞいて八疊はちでふかは張出はりだしの欄干下らんかんしたを、茶船ちやぶね浩々かう/\ぎ、傳馬船てんま洋々やう/\としてうかぶ。
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ときに、長野泊ながのどまりの翌日よくじつ上野うへのへついて、つれとは本郷ほんがうわかれて、わたし牛込うしごめ先生せんせい玄關げんくわんかへつた。其年そのとしちゝをなくしために、多日しばらく横寺町よこでらまち玄關げんくわんはなれてたのであつた。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
のために東京とうきやうから故郷くにかへ途中とちうだつたのでありますが、よごれくさつた白絣しろがすりを一まいきて、頭陀袋づだぶくろのやうな革鞄かばんひとけたのを、玄關げんくわんさきでことわられるところを、めてくれたのも
雪霊記事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
わたし小家こいへ餘寒よかんいま相去あひさまをさずだつたが——おたく來客らいきやくがくびすをせつしておびたゞしい。玄關げんくわんで、わたしたち友達ともだち留守るす使つかふばかりにもるからと、おにいりの煎茶茶碗せんちやぢやわんひとつ。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
さて其夜そのよこゝへるのにもとほつたが、矢來やらい郵便局いうびんきよくまへで、ひとりでしたおぼえがある。もつと當時たうじあをくなつておびえたので、おびえたのが、可笑をかしい。まだ横寺町よこでらまち玄關げんくわんときである。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)