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人聲
喧しき
田畑の
人聲と(
愛ちやんの
知つてる)
變じました、——
遠方に
聞ゆる
家畜の
唸り
聲は、
海龜の
重々しき
歔欷であつたのです。
が、もの
音、
人聲さへ
定かには
聞取れず、たまに
駈る
自動車の
響も、
燃え
熾る
火の
音に
紛れつゝ、
日も
雲も
次第々々に
黄昏れた。
玄關から
病室へ
通ふ
戸は
開かれてゐた。イワン、デミトリチは
寐臺の
上に
横になつて、
肘を
突いて、さも
心配さうに、
人聲がするので
此方を
見て
耳を
欹てゝゐる。