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人聲
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ひとごゑ
喧しき
田畑の
人聲と(
愛ちやんの
知つてる)
變じました、——
遠方に
聞ゆる
家畜の
唸り
聲は、
海龜の
重々しき
歔欷であつたのです。
が、もの
音、
人聲さへ
定かには
聞取れず、たまに
駈る
自動車の
響も、
燃え
熾る
火の
音に
紛れつゝ、
日も
雲も
次第々々に
黄昏れた。
玄關から
病室へ
通ふ
戸は
開かれてゐた。イワン、デミトリチは
寐臺の
上に
横になつて、
肘を
突いて、さも
心配さうに、
人聲がするので
此方を
見て
耳を
欹てゝゐる。
ロレ
人聲がする。……こりゃ
姫よ、ま、
早う
出てござれ、そこは
死や
疫癘や
無理な
睡眠の
宿ぢゃほどに。
人間以上の
力の
爲に
折角の
計畫が
皆敗れた、さ、
早うござれ。
と、いきなり
左の
方でガチヤガチヤと
劍鞘の
鳴る
音がした。ゴソツと
靴の
地にこすれる
音がした。
同時に「ウウツ‥‥」と
唸る
人聲がした。
私がぎよツとして
振り
返る
隙もなかつた。
何の手も無く奪ひ取り懷中せんとする
折から
後より
人聲がする故に重四郎は
振返り彼は定めし
子分の
奴等何も恐るゝにはあらねども
水戸浪人奴は
些手強き
奴見付られては
面倒也早々此場を
其中、
姫の
目覺めしゆゑ、
天の
爲せる
業は
是非に
及ばず、ともかく
出てござれ、と
勸むるうちに、
近づく
人聲、
予駭き
逃出ましたが、
絶望の
餘にや、
姫は
續いて
參りもせず
恁て、
數時間を
經たりし
後、
身邊の
人聲の
騷がしきに、
旅僧は
夢破られて、
唯見れば
變り
易き
秋の
空の、
何時しか
一面掻曇りて、
暗澹たる
雲の
形の、
凄じき
飛天夜叉の
如きが
縱横無盡に
馳せ
𢌞るは
ヂュリ や、
人聲? なりゃ、
片時も
早う。……おゝ、
嬉しや、
短劍!(ロミオが佩びたる短劍を取りて)さ、
鞘はこゝに。(と胸を貫き)そこに
居附いて、
予を
死なせてくれ。