井戸ゐど)” の例文
とうさんの祖母おばあさんの隱居所いんきよじよになつてた二かい土藏どざうあひだとほりぬけて、うら木小屋きごやはうおり石段いしだんよこに、その井戸ゐどがありました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
『もうないから、萬望どうぞはなして頂戴ちやうだいな』とあいちやんは謙遜けんそんして、『二くちれないわ。屹度きつとそんな井戸ゐどひとくらゐあつてよ』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
ところが井戸ゐどなかよめが身を投げて死んだり、二代目と三代目の主人が気違きちがひになつたりしたのが、其家そのいへつぶれる初まりといふので
塩原多助旅日記 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
いや、とき手代てだい樣子やうすが、井戸ゐどおとしたおとのやうで、ポカンとしたものであつた、とふ。さて/\油斷ゆだんらぬなか
人参 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
けた少時しばし竹藪たけやぶとほしてしめつたつちけて、それから井戸ゐどかこんだ井桁ゐげたのぞんで陰氣いんきしげつた山梔子くちなしはな際立はきだつてしろくした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
何分なにぶん此頃このごろ飛出とびだしがはじまつてわしなどは勿論もちろん太吉たきちくら二人ふたりぐらゐのちからでは到底たうていひきとめられぬはたらきをやるからの、萬一まんいち井戸ゐどへでもかゝられてはとおもつて
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
數十年前すうじふねんぜんよりおこなれる灌水くわんすゐは、北海道ほくかいだう移住後いぢゆうご冬時とうじいへどおこたりたることあらず。このにはいま井戸ゐどなきをもつて、斗滿川とまむがはりておこなへり(飮用水いんようすゐこのかはみづもちゆ)
命の鍛錬 (旧字旧仮名) / 関寛(著)
貴重品きちようひん一時いちじ井戸ゐどしづめることあり。地中ちちゆううづめる場合ばあひすなあつ五分ごぶほどにても有效ゆうこうである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
たれ一言ももの云ず依て越前守は四郎左衞門善右衞門并に井戸ゐど源次郎へ一々聲をかけられコリや憑司夫に居は四郎左衞門善右衞門井戸ゐど源次郎成ぞ此源次郎が四郎左衞門抱の遊女うつせみと云女を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
それぢやあ、わたしはさつき、井戸ゐどのなかに驢馬がおつこちるところを見たが、きつとあなたの驢馬でせう。山羊やぎがおつこつたから、それを助けようとして、驢馬もおつこつたのかも知れません。
エミリアンの旅 (新字旧仮名) / 豊島与志雄(著)
井戸ゐどほどにふかくもければ、教會けうくわい入口程いりぐちほどにはひろくもない、が十ぶんぢゃ、やくにはつ。明日あすたづねてくれい、すればはかなかから御挨拶ごあいさつぢゃ。乃公おれの一しゃうも、誓文せいもん總仕舞そうじまひんでしまうた。
未開社會に於ては井戸ゐどる術、水道をまうくる術も無き譯故わけゆへ、コロボツクルの如きも、水の入用にうようかんじたる時には必ず川邊に至りしならん。遺跡ゐせきより發見はつけんする所の土器の中には椀形わんがたのもの少からず。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
あはてゝ眼をけて「や!」と魂氣たまけた顏をして、恰で手に持ツてゐた大事なたま井戸ゐどの底へすべらし落したやうにポカンとなる。また數分間前すうふんかんまへの状態にかへツて、一生懸命しやうけんめいに名案をしぼり出さうとして見る。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
もろ人が此処にきほひてまなびつるその時おもほゆ井戸ゐどをし見れば
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
井戸ゐどのほとりの丁子ちやうじの花よ。
どんたく:絵入り小唄集 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
もん左側ひだりがはに、井戸ゐど一個ひとつ飮水のみみづではないので、きはめてしほからいが、そこあさい、かゞんでざぶ/″\、さるぼうでらるゝ。
星あかり (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
井戸ゐどくるまにてつなながさ十二ひろ勝手かつて北向きたむきにて師走しはすそらのからかぜひゆう/\とふきぬきのさむさ、おゝえがたとかまどまへなぶりの一ぷんは一にのびて
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あいちやんはふべき言葉ことばもなく、いくらかのおちや麺麭パン牛酪バターとをして、福鼠ふくねずみはう振向ふりむき、『何故なぜみん井戸ゐどそこんでゐたの?』とかへしました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
そのおひな井戸ゐどから石段いしだんあがり、土藏どざうよことほり、桑畠くはばたけあひだとほつて、おうち臺所だいどころまでづゝみづはこびました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
つめたくつて本當ほんと晴々せえ/\とえゝみづぢやねえか、井戸ゐどてえに柄杓ひしやくすやうなんぢや、ぼか/\ぬるまつたくつて」おつたは獨語ひとりごとをいつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
其家そのうちはたいした身代しんだいだから、なんとかいふのある結構けつこうな石でこしらへた立派りつぱ井戸ゐどださうだ。
塩原多助旅日記 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
すてて遁しこそ遺恨ゐこんなれと自殺してせしとぞ又瀬川は年頃云交いひかはせし男と連副つれそひしに何時となく神氣しんきくるひ左右の小鬢こびんに角の如きこぶ出來し故人々彼の留守居るすゐ執念しふねんにてや有んと云しが何時いつしか人の見ぬ間に井戸ゐどへ身を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
井戸ゐどのふちに茶碗ちやわんゆゑ、けんのんなるべし。(かしや、かなざもの、しんたてまつる云々うんぬん)これは北海道ほくかいだう僻地へきち俚謠りえうなり。
寸情風土記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
うさぎあなしばらくのあひだ隧道トンネルのやうに眞直まつすぐつうじてました。まらうとおもひまもないほどきふに、あいちやんは非常ひじようふか井戸ゐどなかちて、びッしよりになりました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
大暑たいしよ井戸ゐどみづまでらしてりつけるころはそれまでに幾度いくたび勘次かんじ穀桶こくをけからるのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
... こりやア面白おもしろ怪談くわいだんだが、おまへなにを知らないか、塩原多助しほばらたすけといふ本所ほんじよ相生町あひおひちやう丁目ちやうめ炭屋すみや怪談くわいだんを」「知りませぬ」「さうかね、塩原多助しほばらたすけといふ炭屋すみや井戸ゐど内井戸うちゐどであつたさうだが、 ...
塩原多助旅日記 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
老婆ばあさんは中風ちゆうふうぬし、おきぬさんはおよめくをいやがつてうら井戸ゐど飛込とびこんで仕舞しまつた、おまへ不人情ふにんじやうれをてゝくし、もうなにもつまらない、なん傘屋かさやあぶらひきなんぞ
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
とうさんのおうちには井戸ゐどつてありました。その井戸ゐど柄杓ひしやくみづめるやうなあさ井戸ゐどではありません。いても、いても、なか/\釣瓶つるべあがつてないやうな、ふかい/\井戸ゐどでした。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
ことよるであつた。むかしんだいへ一寸ちよつと見富けんたうかない。さうだらう兩側りやうがはとも生垣いけがきつゞきで、わたしうちなどは、木戸内きどうち空地あきち井戸ゐどりまいてすもゝ幾本いくほんしげつてた。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
わたしもおあとからまゐりまするとてのうちには看護まもりひまをうかゞひていだすこと二度にど三度さんどもあり、井戸ゐどにはふたき、きれものとてははさみ一挺いつちやうにかゝらぬやうとの心配こゝろくばりも、あやふきはやまひのさするわざかも
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
東京とうきやうて、京都きやうと藝妓げいこに、石山寺いしやまでらほたるおくられて、其處等そこら露草つゆぐささがして歩行あるいて、朝晩あさばん井戸ゐどみづきりくと了簡れうけんだとちがふんです……矢張やつぱ故郷ふるさとことわすれた所爲せゐ
月夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
こけのしたにてかばいしもゆるぐべし、井戸ゐどがはにかけみづをのぞきしこと三四およびしが、つく/″\おもへば無情つれなしとても父樣とゝさま眞實まことのなるに、れはかなくりてからぬひとみゝつたへれば
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
うしたをりよ、もう時雨しぐれころから、の一二ねん約束やくそくのやうに、井戸ゐどひゞきいた跫音あしおとひとなき二階にかいふすまくのを聞馴きゝなれたが、をんな姿すがたは、當時たうじまた多日しばらくあひだえなかつた。
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
このみづはこりや井戸ゐどのでござりますか。)と、きまりもわるし、もじ/\くとの。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「やられたさうだね、井戸ゐどみづで。……うもわたしたちのはう大警戒だいけいかいだ。」
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
……たとへば、地震ぢしんから、水道すゐだう斷水だんすゐしたので、此邊このへんさいはひに四五箇所しごかしよのこつた、むかしの所謂いはゆる番町ばんちやう井戸ゐどへ、家毎いへごとからみづもらひにむれをなしてく。……たちまをんなにはませないとやしき出來できた。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あの、井戸ゐどそばを、にはつて裏木戸うらきどから、勝手かつてつてたらしい。
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
おにごつこのときおにぎめのうたに、……(あてこに、こてこに、いけのふち茶碗ちやわんいて、あぶないことぢやつた。)おな民謠集みんえうしふに、のいけに(いけ)のててあり。あの土地とちにてふいけは井戸ゐどなり。
寸情風土記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)