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聞馴
もっとも、小松原とも
立二とも、我が姓、我が
名を呼ばれたのでもなければ、
聞馴れた声で、
貴郎、と言われた次第でもない。
かと思うとやがて
耳許に
聞馴れた声がして、
頻と自分を呼びながら
身体を
揺動かすものがある。
然うした
折よ、もう
時雨の
頃から、
其の一二
年は
約束のやうに、
井戸の
響、
板の
間の
跫音、
人なき
二階の
襖の
開くのを
聞馴れたが、
婦の
姿は、
當時又多日の
間見えなかつた。
一ツ
人の
聞馴れない、
不思議な
言語があつたんです。