足音あしおと)” の例文
静かな小路こうぢうちに、自分の足音あしおと丈が高くひゞいた。代助はけながら猶恐ろしくなつた。あしゆるめた時は、非常に呼息いきくるしくなつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
田舎いなかのことでありますから、めったにひとのくる足音あしおともしなかったから、みみずは、安心あんしんして、自分じぶんのすきなうたをうたっていました。
春の真昼 (新字新仮名) / 小川未明(著)
足音あしおとつたのに、子供こどもだらう、おそもなく、葉先はさきうきだし、くちばしを、ちよんとくろく、かほをだして、ちよ、ちよツ、とやる。
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
その足音あしおともちよく野原のはら黒土くろつちそこはうまでひゞきました。それから鹿しかどもはまはるのをやめてみんな手拭てぬぐひのこちらのはうちました。
鹿踊りのはじまり (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
差覗さしのぞきしと/\とまた歩行出あゆみだす折柄をりからばた/\駈來かけく足音あしおとに夫と見る間も有ばこそ聲をばかけ拔打ぬきうち振向ふりむくかさ眞向まつかうよりほゝはづれを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
傷口きずぐちかわいてつたやうでございます。おまけに其處そこには、馬蠅うまばへが一ぴき、わたしの足音あしおときこえないやうに、べつたりひついてりましたつけ。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
二人ふたりは、子供こどもいてあかるいとほりかられて、くらみちあるいた。くらいところても、銀座ぎんざあかるみをあるひと足音あしおときこえた。
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
ホールとホール夫人ふじんがおそい昼食ちゅうしょくをとっていると、その部屋へやからいらいらと歩きまわるきゃく足音あしおとがひびき、そのうちにはげしいいかこえとともに
と降りて来る深夜の足音あしおとなどは、いささか材料が古いから、もっと、現実的な恐怖はないものかと思って居るんだ。
段梯子の恐怖 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
もんいたと思ふとちひさな足音あしおとがして、いきなりお縁側えんがはのところで「さいなら!」などゝ言つてゐます。
冬を迎へようとして (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
と、やがて裏門うらもんに近づく人の足音あしおとがして、だれか門をくぐると、裏庭うらにわとおって法師の方へ近づいて来ました。
壇ノ浦の鬼火 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
ゆきはいよ/\つもるともむべき氣色けしきすこしもえず往來ゆきゝ到底とてもなきことかと落膽らくたんみゝうれしや足音あしおとかたじけなしとかへりみれば角燈かくとうひかゆきえい巡囘じゆんくわい査公さこうあやしげに
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
配下はいか與力よりき同心どうしんふるへあがるし、人民じんみん往來わうらいあるくにもひさくなつて、足音あしおとさへてぬやうにした。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
四邊あたり部室へやでは甲乙たれかれかたこゑかまびすしく、廊下ろうかはしひと足音あしおともたゞならずはやい、濱島はまじまむかしから沈着ちんちやくひとで、何事なにごとにも平然へいぜんかまへてるからそれとはわからぬが
おくさまのすすめで、諭吉ゆきちはかごにのり、そのわきに朝吹あさぶきがついていました。もうひとどおりはなく、さびしいふけのまちに、かご足音あしおとばかりがおとをたてていました。
夜がけた。歩きまわ足音あしおとや、話しごえなどがざわざわし始めた。シューラは目をさました。そのときはじめて気がついたのは、自分の着ているものが何かやぶれたという感じだった。
身体検査 (新字新仮名) / フョードル・ソログープ(著)
ひと足音あしおとおどろいてうしろ振返ふりかへると一人ひとり老人らうじんちかづいてところです。老人らうじんそば
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
高原こうげん高山こうざんのぼ途中とちゆうとりがわれ/\の足音あしおとおどろいて、ふいにつことがあります。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
コトコトと足音あしおとがして、軍曹の肩章けんしょうのある下士官が、少尉の側にピタリと身体を寄せた。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
むしほそったことも、そと白々しらじらけそめて、路地ろじ溝板どぶいたひと足音あしおときこえはじめたことも、なにもかもらずに、ただひとり、やぶだたみうええた寺子屋机てらこやつくえまえ頑張がんばったまま
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
めばぎし/\と床板ゆかいた二人ふたり足音あしおとはゞかつてをんなやみをとこ脊負せおふのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
れでゐて足音あしおとしづかで、ある樣子やうす注意深ちゆういぶか忍足しのびあしのやうである。せま廊下らうかひと出遇であふと、みちけて立留たちどまり、『失敬しつけい』と、さもふとこゑひさうだが、ほそいテノルで挨拶あいさつする。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
にが嘲罵あざけり………はたや、なほはし足音あしおと………
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
足音あしおとぬすむ豹のこび……
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
すると、なにか鼻唄はなうたをうたいながら、ちいさなくつの足音あしおとがして、つぎに、ごもんきました。としちゃんが、かえってきたのです。
年ちゃんとハーモニカ (新字新仮名) / 小川未明(著)
けもの足音あしおとのやうで、までとほくのはうから歩行あるいてたのではないやう、さるも、ひきところと、気休きやすめにかんがへたが、なかなかうして。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
いへもん這入はいると、今度は門野かどのが、主人の留守を幸ひと、大きな声で琵琶歌をうたつてゐた。それでも代助の足音あしおといて、ぴたりとめた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
牧師ぼくしは、はじかれたように廊下ろうかにとびだした。あらあらしい足音あしおと廊下ろうかをかけぬけ、台所だいどころのうら口のかんぬきを、らんぼうにひきあけているらしい。
ことさま/″\にうもへられぬおもひのありしに、飛石とびいし足音あしおとより冷水ひやみづをかけられるがごとく、かへりみねども其人そのひとおもふに、わな/\とふるへてかほいろかわるべく
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
見て汝は何者なるやわれ今宵こよひ此質屋へ忍び入り思ひのまゝぬすまんといま引窓ひきまどより這入はひりたるに屋根にて足音あしおとする故不思議ふしぎおも出來いできたりたり汝聲を立てなば一うちこほりの如きやいば
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
此時このとき少年せうねん餘程よほど疲勞つかれてえるので、わたくし肩車かたぐるませてすゝんだ。だれでも左樣さうだが、あまりにシーンとしたところでは、自分じぶん足音あしおとさへ物凄ものすごほどで、とても談話はなしなどの出來できるものでない。
そして、しばらく自分じぶんだちとはかゝはりもなく、行來ゆきゝするひと足音あしおといてゐた。
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
どう足音あしおとしのばせて、ふすまけたてにもくばりながら、つぎった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
それでいて足音あしおとしずかで、ある様子ようす注意深ちゅういぶか忍足しのびあしのようである。せま廊下ろうかひと出遇であうと、まずみちけて立留たちどまり、『失敬しっけい』と、さもふとこえいそうだが、ほそいテノルでそう挨拶あいさつする。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
微風そよかぜ足音あしおとたてず
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
足音あしおとす、生血なまちした
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
「どなた!」といって、おかあさんは、がられました。かねは、全神経ぜんしんけいをおかあさんの足音あしおとえていくほうあつめていました。
風雨の晩の小僧さん (新字新仮名) / 小川未明(著)
足音あしおとは向ふへ遠退とおのいて行く。三四郎は庭先にはさきへ廻つて下駄を突掛つゝかけた儘孟宗藪の所から、一間余の土手を這ひ下りて、提燈のあとを追掛おつかけて行つた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
しかし部屋へやには、なんのかわりもない。気のまよいかなと、夫人ふじんがよこになりかけると、となりの部屋へやから、ぱたぱたと、はだしで歩く足音あしおとがはっきりときこえた。
そのほかにはちいさき子供こどもの二三にんりて細螺きしやごはじきのおさなげなことしてあそぶほどに、美登利みどりふとみゝてゝ、あれれか買物かひものたのではいか溝板どぶいた足音あしおとがするといへば、おや左樣さう
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
廊下らうかゆく重き足音あしおと
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
あるあさのことです。ちいさな子供こどもたちは、一、二ちょうはなれた、いけみずこおったといって、そのほうへ、足音あしおとをたててかけてゆきました。
愛は不思議なもの (新字新仮名) / 小川未明(著)
けれども、そのまないた下駄は、足音あしおと遠退とほのくに従つて、すうとあたまからして消えて仕舞つた。さうしてが覚めた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
いま客人きやくじんながさまだ車代しやだいくれんともせず何時いつまでたするこゝろにやさりとてまさかにはたりもされまじなんとしたものぞとさしのぞおくかた廊下らうかあゆ足音あしおとにもおもてくわつあつくなりて我知われしらずまたかげ
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
その着物きものをおしいただいて、いまやそこをろうとしたときであります。うしろへちいさな足音あしおとがして、すずをふるような、さわやかなこえ
羽衣物語 (新字新仮名) / 小川未明(著)
今度こんどまへ反對はんたいに、足音あしおと段々だん/\とほくのはうるにしたがつて、かすかになつた。さうして一番いちばん仕舞しまひにぴたりと何處どこかでまつた。宗助そうすけながら、はつとした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
いらはつともきかなかつたと正太しようたもちう/\たこかいのめて、れか中間なかまたのではいかとうれしがるに、かどなるひと此店このみせまへまでたりける足音あしおときこえしばかりれよりはふつとえて
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「よし、おれが、今日きょうはしとめてくれるぞ。」とりきんで、猟師りょうし足音あしおとしのんで、ちかよって、そのようすをうかがいました。ところがどうでしょう。
猟師と薬屋の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
美禰子のかげが次第に出来あがりつゝある。ふとつた画工の画筆ブラツシだけが動く。それうごく丈で、みゝには静かである。ふとつた画工もうごく事がある。然し足音あしおとはしない。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
三味さみ景氣けいきよくきこえて亂舞らんぶ足音あしおとこれよりぞきこそめぬ。
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)