ほど)” の例文
くりけた大根だいこうごかぬほどおだやかなであつた。おしなぶんけば一枚紙いちまいがみがすやうにこゝろよくなることゝ確信かくしんした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
数本のアカシアの枝を透しながらくっきりと見えている、ほど遠くの、真っ白な、小さな橋をはじめて見でもするように見入っていた。
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
宗助そうすけにも御米およねにもおもけないほどたまきやくなので、二人ふたりともなにようがあつての訪問はうもんだらうとすゐしたが、はたして小六ころくくわんするけんであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
剣菱ここに論語、聖書の中より二三節を抜摘して、公平なる批評を加えて、孔子や耶蘇がほど利口な事をいったか研究して見よう。
論語とバイブル (新字新仮名) / 正宗白鳥(著)
みんなが想像したほど水は来ず、別荘のある近所は、わずかに浪頭がかぶった位と見えて、砂地が汚ならしく濡れているばかりだった。
九月一日 (新字新仮名) / 水上滝太郎(著)
お浪との会話はなしをいいほどのところにさえぎり、余り帰宅かえりが遅くなってはまた叱られるからという口実のもとに、酒店さかやへと急いで酒を買い
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
諸君しよくん御經驗ごけいけんであらうが此樣こんときにはとてもねむられるものではない、いらだてばいらだほどまなこえてむねにはさま/″\の妄想もうざう往來わうらいする。
「……貴公のごとき前世紀の怪物かいぶつが花岡伯爵家の子弟教育に従事するは身のほど知らず、ふとどき千万せんばんなり。時勢を見よ。時勢を見よ……」
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
統計とうけいによれば、餘震よしんのときの震動しんどうおほいさは、最初さいしよ大地震だいぢしんのものに比較ひかくして、その三分さんぶんいちといふほどのものが、最大さいだい記録きろくである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
したるとおどろほどくびながくなつてて、まるでそれは、はる眼下がんかよこたはれる深緑しんりよくうみからくきのやうにえました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
面附つらつきこそはれよりもよけれ、脛附すねつきが十人並にんなみ以上いじゃうぢゃ、それからあしどうやはふがほどいが、ほかには、ま、るゐい。
「子犬」といわれて取ってあげるのは、草鞋わらじに子犬が二つむつれている形でした。大きさもほどよく、ほんとに可愛らしいのでした。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
ゆづりしとぞこゝに又丁山と小夜衣の兩人はほどなく曲輪くるわを出てたり姉の丁山二世と言替いひかはせし遠山とほやまかん十郎と云し人も病死なせしかば其跡を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
けれど泥がふかいから、足がはまつたら最後二度と拔けなかつた。水の外につかまるものが無いのだから、もがけばもがくほどどろに吸はれて行く。
筑波ねのほとり (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
まったく、ばかなたぬきです。汽車にばけるなんて、よくそんなあぶなっかしいことができたものです。むてっぽうにもほどがありますよ。
ばかな汽車 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
頭部の肉は顱頂骨ろちょうこつが透いて見えるほどひからびていて、ビカビカ光る引釣ひっつりがあって、その上全面に一本の毛髪も残っていなかった。
悪霊 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ンガオド何歳ナンボだバ。ワイのナ今歳コドシ二十六だネ。なにわらふんダバ。ンガ阿母オガあねダテ二十歳ハダヂしたヲドゴたけアせ。だけアそれほどチガはねエネ。
地方主義篇:(散文詩) (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
しかるに初雪しよせつのち十月のころまでにこの二条ふたすぢ小流こながれ雪のため降埋ふりうめられ、流水は雪の下にあり、ゆゑ家毎いへごとくむべきほどに雪を穿うがち水用すゐようを弁ず。
齋藤巡査さいとうじゆんさ眞鶴まなづる下車げしやしたので自分じぶん談敵だんてきうしなつたけれど、はら入口いりくちなる門川もんかはまでは、退屈たいくつするほど隔離かくりでもないのでこまらなかつた。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
さういふひとたちは、かぞげることの出來できないほどたくさんありますから、こゝにはごくわづかの代表者だいひようしやだけをしておきませう。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
夏の食物と冬の食物とはおのずからその種類と配合とを違えなければなりませんけれども物にはほど加減かげんがあって一方に偏すると害が起ります。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
おこのがはらったのはずみが、ふとかたからすべったのであろう。たもとはなしたその途端とたんに、しん七はいやというほど、おこのにほほたれていた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
一面からえば氏はあまり女性に哀惜あいせきを感ぜず、男女間の痴情ちじょうをひどく面倒めんどうがることにおいて、まったくめずらしいほどの性格だと云えましょう。
んでゐるむねには、どんな些細ささいふるえもつたはりひゞく。そして凝視みつめれば凝視みつめほどなんといふすべてがわたししたはしくなつかしまれることであらう。
日の光を浴びて (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
そのこたうけたまはらずば歸邸きていいたしがたひらにおうかゞひありたしと押返おしかへせば、それほどおほせらるゝをつゝむも甲斐かひなし、まことのこと申あげ
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
いかほど機会を待つても昼中ひるなかはどうしても不便である事をわづかにさとり得たのであるが、すると、今度はもう学校へはおそくなつた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
その山の頂上まで十ちょうほどある所を下僕しもべ二人にぶさって昇りましたけれども、何分にも痛くて動けませんので二日ばかり山中に逗留とうりゅういたし
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
「だまれ。僕なんか殺されて一向さしつかえないとは、何というぐさだ。おせっかいにもほどがある、何というあきれた——」
海底都市 (新字新仮名) / 海野十三(著)
こんな看板かんばんけたうちが一けんしかないほどたうげちいさなむらでした。そこに人達ひとたちはいづれもやまうへたがやすお百姓ひやくしやうばかりでした。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
ソコで無事に港についたらば、サアどうも彼方あっちの人の歓迎とうものは、それは/\実に至れり尽せり、この上の仕様しようがないと云うほどの歓迎。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
あつたところでございますか? それは山科やましな驛路えきろからは、四五ちやうほどへだたつてりませう。たけなかすぎまじつた、人氣ひとけのないところでございます。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
鋭利な解剖刀のような普遍的法則が、それさえあればこの拷問的の荒縄を涙が出るほど切りとばしてばらばらにしてやるのに。
小さき良心:断片 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
「おい、かあさん、これはとてもうまいぞ!、もっともらおう!」といったが、べればべるほど、いくらでもべられるので
たとへば昆蟲こんちゆう標本室ひようほんしつにはひつてますと、めづらしい蝶々ちよう/\甲蟲かぶとむしなどのかはつた種類しゆるいのものがおどろほどたくさんにあつめてあります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
そのうち大筒方が少しづつ西へ歩くので、坂本は西側の人家に沿うて、十けんほど前へ出た。三人の筒はほとんど同時に発射せられた。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
ほどなく一人ひとりのおじいさんの指導霊しどうれいれられて、よく見覚みおぼえのある、あのうつくしい敦子あつこさまがそこへひょっくりとあらわれました。
僕は白状するけれども、前の羽左衛門が大好きでね、あのひとが死んで、もう、歌舞伎かぶきを見る気もしなくなったほどなのだ。
フォスフォレッスセンス (新字新仮名) / 太宰治(著)
「なに貴女あなたそれほどでも有りますまいで……なんでもいたほどではないものどす……そー御心配しやはると御子をこはんより貴女あなたほうが御よはりどすえ」
夜汽車 (新字旧仮名) / 尾崎放哉(著)
かつて何人も知らなかつた、これほどの大発明を、自分が独創で考へたといふことほど、得意を感じさせることはなかつた。
田舎の時計他十二篇 (新字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
酒も体にまわり、だいぶあるじの舌もくたびれて来たらしい。武蔵は、この辺でと思い立ち、ほどよく辞去して戸外おもてへ出てきた。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
日本にほん化物ばけもの後世こうせいになるほど面白おもしろくなつてるが、これはじ日本にほん地理的關係ちりてきくわんけい化物ばけもの想像さうざうする餘地よちがなかつたためである。
妖怪研究 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
私はその頃心の中に色々な問題をあり余るほど持っていた。そして始終齷齪あくせくしながら何一つ自分を「満足」に近づけるような仕事をしていなかった。
小さき者へ (新字新仮名) / 有島武郎(著)
「然うかい、君も然うなのかい、」と私は引取ツて、「工場の前も幾度いくたびとほツたか知れないが、今日ほど悲しいとかんじたことはこれまで一度いちどもなかツた。 ...
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
ほどて、兵士共が女王の室の戸を開くと、女王は黄金の床の上に眠るが如く死んで居て、二人の侍女も虫の息であつた。
毒と迷信 (新字旧仮名) / 小酒井不木(著)
その間に鉄の腕は狼の腹まではいり、狼は苦しまぎれに鉄の腕骨をくだきたり。狼はその場にて死したれども、鉄もかつがれて帰りほどなく死したり。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
貴方あなたがもしわたくしが一ぱん無智むちや、無能むのうや、愚鈍ぐどんほどいとうておるかとってくだすったならば、また如何いかなるよろこびもっ
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
二八六大倭やまとの神社に仕へまつる当麻たぎま酒人きびとといふ翁なり。二八七道のほど見たててまゐらせん。いざ給へとて出でたてば、人々あとにつきて帰り来る。
わたし去年きよねんふゆつまむかへたばかりで、一たい双方さうはうとも内気うちきはうだから、こゝろそこから打釈うちとけるとほどれてはゐない。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
わたしはにわかに空腹をおぼえ、月の出を待つあいだに何処どこかで夕餉ゆうげをしたためておく必要があることを思ってほどなく堤の上を街道の方へ引き返した。
蘆刈 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
嫁は真白に塗って、掻巻かいまきほどの紋付のすそを赤い太い手で持って、後見こうけんばあさんかかみさんに連れられてお辞儀じぎをして廻れば、所謂顔見せの義理は済む。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)