あつ)” の例文
それといふのが、時節柄じせつがらあつさのため、可恐おそろしわるやまひ流行はやつて、さきとほつたつじなどといふむらは、から一めん石灰いしばひだらけぢやあるまいか。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
うしは、おだやかなおおきなをみはって、遠方えんぽうひかりらされてあつそうな景色けしきていましたが、からすがあたまうえでこういますと
馬を殺したからす (新字新仮名) / 小川未明(著)
其日そのひ二人ふたりしてまち買物かひものやうとふので、御米およね不斷着ふだんぎへて、あつところをわざ/\あたらしい白足袋しろたびまで穿いたものとれた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
彼女は「だいなし」ということば無暗むやみつかう癖があった。ややもすると「だいなしにあつい」とか、「だいなしに遅くなった」とかいった。
二階から (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「なんてけち なかぜだらう。くならくらしくふけばいいんだ。あついのに。みてくんな、あせを。どうだいまるでながれるやうだ」
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
には油蝉あぶらぜみあつくなればあつくなるほどひどくぢり/\とりつけるのみで、閑寂しづか村落むらはしたま/\うた※弟きやうだいはかうしてたゞ餘所々々よそ/\しく相對あひたいした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
つまみして障子せうじめた、殘暑ざんしよといふものはわるあつい、空氣くうきかよはないかららである、くもつてゐるから頭痛づつうがする、たまらぬ。
ねこ (旧字旧仮名) / 北村兼子(著)
以上いじようはなししたのは、つゞめていふとあつ𤍠帶ねつたいからだんおんかんといふふうにその各地方かくちほうてきしてよくそだ森林しんりん區域くいきと、そのたい特徴とくちようとでした。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
今日は夏になって以来のあつい日だ。午後は到頭室内九十度に上った。千歳村の生活をはじめて六年、九十度は今日が初である。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
が、きてみるとそれどころか、小さな店がごちゃごちゃとならんで、いやなにおいがして、むしあつくて、どこにも美しいところがありません。
あたまでっかち (新字新仮名) / 下村千秋(著)
あつい或る夜のこと、発明王金博士きんはかせは、そでのながい白服に、大きなヘルメットをかぶって、飾窓かざりまどをのぞきこんでいた。
あつすぐねむくなつたり、懵然ぼんやりするものだから一しんに)こゝろうちかんがへてゐますと、突然とつぜん可愛かあいをした白兎しろうさぎが、そのそばつてました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
印度洋インドやうちう氣※きかうほど變化へんくわはげしいものはない、いまは五ぐわつ中旬ちうじゆんすゞしいときじつ心地こゝちよきほどすゞしいが、あつとき日本につぽん暑中しよちうよりも一そうあついのである。
ベンヺ マーキューシオーどの、もうかへらう。あつくはある、カピューレット奴等やつら出歩であるいてもゐる、出會でっくはしたが最後さいご鬪爭けんくわをせねばなるまい。
あたしはまいばんおきていて、おまえたちのためにおいのりをしていますよ。冬は、みんなが火にあたれるように、夏は、あつさにくるしまないようにね。
「ほら、あのとおりあるきくたびれて、あつさにたって、みずをほしがってにそうになっている人があるのです。」
一本のわら (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
見ると、楼閣ろうかく欄間らんまから飛びこんでいた一尺ばかりの蝙蝠こうもり、すでに秋のあつさもすぎているこのごろなので、つばさに力もなく、厨子ずしの板壁をズルズルとすべってきた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
七月の初め、一週間ばかり続いたあつさの強い日がちょうど全国の高等学校入学の試験の定日ていじつであった。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
さあおまへさん此子このこをもいれてつてくだされ、なにをぐたりとておいでなさる、あつさにでもさわりはしませぬか、さうでなければ一ぱいあびて、さつぱりにつて御膳ごぜんあがれ
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ほんとうにあつくなって、ねむの木もぐったり見えたし、空もまるで、そこなしのふちのようになった。
さいかち淵 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「ぢや、ストリツプはみんなさうね。あつときすゞしくつていゝわ。さア、あんたもおぬぎなさいよ。」と道子みちこをとこのぬぎかけるワイシヤツをうしろからつだつてきはがした。
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
あつおまへうかいな、まだきうの八月だすもん。……八月のいらむしと言ひますのやさかいな。』
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
あつくもなしさむくもなし、じつに気もちのいい朝だ。あなたは、どちらからおいでなさったね」
あるとしなつはじめやかたもり蝉時雨せみしぐれ早瀬はやせはしみずのように、かまびずしくきこえている、あつ真昼過まひるすぎのことであったともうします——やかた内部うちっていたような不時ふじ来客らいきゃく
路傍ろばうくさうへこしけて、握米飯にぎりめしきつし、それからまたテクリしたが、却々なか/\あつい。
恰度ちやうど日盛ひざかり太陽燦然ぎら/\かゞやき、あつさあつし、そのなかしんとしてしづまりかへつてる。
怠惰屋の弟子入り (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
と、いって、おかあさんは、あのみちあつ日盛ひざかりにとお人々ひとびとをかぞえあげました。
牛をつないだ椿の木 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
汽車は日にさらしたるに人を載することありて、そのおりのあつさ堪えがたし、西国にてはさぞ甚しからん。このたびの如き変ある日には是非ぜひなけれど、客をあまりに多くるるは、よからぬことなり。
みちの記 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
あついにつけ、さむいにつけ、せつないおもいは、いつも谷中やなかそらかよってはいたが、いまではおまえ人気娘にんきむすめ、うっかりあたしがたずねたら、あらぬ浮名うきなてられて、さぞ迷惑めいわくでもあろうかと、きょうがまで
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
それどころぢやありませんよ、去年の夏霍亂かくらんで死んだ小僧の友吉だつて、私はあつあたりや霍亂とは思へなかつたんです、町内のお幇間たいこ醫者が、胡麻化してしまつたけれど、霍亂が、あんなひどい苦しみやうを
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
蒸しあつなよかぜものあまあせれつつ
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
あつき草いきれにきりぎりす啼き
そぞろごと (旧字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
あつさもあついし
歌時計:童謡集 (旧字旧仮名) / 水谷まさる(著)
つとめがらにたいしても、いさゝとりつくろはずばあるべからずと、むねのひもだけはきちんとしてゐて……あついから時々とき/″\だらける。……
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「ほんとうに、おとうさんのおっしゃったように、時節じせつがわるいのだ。こんなにあつくなったので、すぐかわいて、れるかもしれない。」
僕のかきの木 (新字新仮名) / 小川未明(著)
このあついのに、んなものをてゝくのは、氣狂きちがひじみてゐるが、れてところがないから、仕方しかたがない」と述懷じゆつくわいをした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
井戸端ゐどばたにぼつさりとしげりながら日中につちうあつさにぐつたりとしをれて鳳仙花ほうせんくわの、やつとすがつてはな手拭てぬぐひはしれてぼろつとちた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
おばあさんは病気びょうきで、よわっていらっしゃるけれど、こういうものをあがると、きっと元気になるのよ。じゃ、あつくならないうちに、いってらっしゃい。
はるうつくしいはなくのがたく、なつあついときにすゞしい木蔭こかげしい以上いじようは、にはでも、まちのなみでも、おなじように可愛かわいがつてやらねばなりません。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
そのばんあつさをはら凉雨れううた、昨夜ゆうべねこのために十ぶんられなかつたあはせに今夜こんや熟睡じゆくすゐしようとおもつた。
ねこ (旧字旧仮名) / 北村兼子(著)
むかし、尾張国おわりのくに一人ひとりのお百姓ひゃくしょうがありました。あるあつなつの日にお百姓ひゃくしょうは田のみずまわっていますと、きゅうにそこらがくらくなって、くろくもが出てきました。
雷のさずけもの (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
あいちやんは扇子せんす手套てぶくろとをげ、大廣間おほひろまはなはあつかつたので、始終しゞゆう扇子せんす使つかひながらはなつゞけました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
りく菩提樹ぼだいじゅの蔭に「死の宗教」の花が咲いた印度のうみは、を求めてくことを知らぬ死の海である。烈しいあつさのせいもあろうが、印度洋は人の気を変にする。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
をりからすこあつくるしくとも半天はんてんのぬがれぬはづかしさ、らうめづらしくうれしきを、ゆめかとばかり辿たどられて、このがつあたつきとあるを、ひとにははれねどもゆびをるおも
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「おあつうござ※す。」私が挨拶あいさつしましたらその人は少しきまりわるそうに笑って
イギリス海岸 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
それからあつときにはいへうしろながれて清流せいりう身體からだきよめ、すゞしいときには留守居るすゐ水兵すいへい日出雄少年ひでをせうねん凖備ようゐしてれるこの孤島しまには不相應ふさうおう奇麗きれい浴湯よくたうはいつて、やがたのしい夕食ゆふしよくをはると
たえがたいほどのあつさの密林の中に、人間を恐ろしいとも思わぬはえありの群とたたかいながら、二時間のあまり、同じところにじっとしていることは、それだけでもたえがたいことだった。
恐竜島 (新字新仮名) / 海野十三(著)
みやもりにはたくさんの老木らうぼくがありました。大方おほかたそれはまつでした。やまうへたかみからあたりを睨望みをろして、そしていつもなんとかかとか口喧くちやかましくつてゐました。あつければ、あつい。さむければ、またさむいと。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
「ああ、あれがもうしたな。あれをきくとあつくなるて。」
牛をつないだ椿の木 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
かういふあつには、えてちがひめいたさわぐものぢゃ。